後宮の死体は語りかける

炭田おと

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16_あらためて

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 それから私と殿下は、聞き込みでわかったことを、二人に説明した。


「・・・・まさか独秀どくしゅう殿下が・・・・」

 その名前を聞いて、仲弓ちゅうきゅうさんは考え込んだ。


「もし独秀どくしゅう殿下が今回の件に関わっているのなら、宮女きゅうじょに手を出したことがばれないように、口封じに翠蘭すいらんを殺したということでしょうか?」

「いくら独秀どくしゅう殿下といえども、そんな短絡的なことをするとは思えません」

 仲弓ちゅうきゅうさんの推測に、浩成こうせい様が異を唱えた。

「それに独秀どくしゅう殿下の仕業なら、内廷ないていで殺すよりも、翠蘭すいらんを外に連れ出してから殺すでしょう。遺体を外に運び出せなくなるのに、わざわざ内廷ないていで殺す理由がない。それよりも、事実を知った曹貴妃そうきひ様が激怒し、翠蘭すいらんを折檻したと考えたほうが、しっくりきます。宮女きゅうじょの中には、度を越した折檻で命を落とす者もおります」

「命を落とすような罰は、父上が禁じたはずだ」

「従わず、裏で宮女きゅうじょを折檻する者もおります」

曹貴妃そうきひ様はたおやかな方に見えましたが、実際は違うのですか?」

曹貴妃そうきひは表向きは優しく、たおやかに見えますが、下々に見せる顔は違うそうです。承粋宮しょうすいきゅう宮女きゅうじょ達は、よく怪我をしているんだとか。貴妃の機嫌次第で、厳しい折檻を受けることもあるそうです。・・・・それで、一生残る傷をつけられた宮女きゅうじょもいるんだとか」


 曹貴妃そうきひ様は、たおやかな女性に見えた。

 でも、内廷ないていで権力を守らなければならない立場にいる人だ。きっと、二つの顔を使い分ける必要があったのだろう。


「・・・・これ以上内廷ないていで聞き込みをしても、誰も真実を話してくれないでしょう。曹貴妃そうきひ様が翠蘭すいらんを殺したのなら、真実を知っているのはおそらく、承粋宮しょうすいきゅう宮女きゅうじょ達だけですが、彼女達は絶対に口を割りません」

「だろうな・・・・」

 仲弓ちゅうきゅうさんの口から、溜息が零れ落ちた。

「でも、怪しい人物が、独秀どくしゅう殿下か曹貴妃そうきひ様の二人に絞られたことは、幸いです。この二人の周辺を探れば――――」

「いえ、容疑者を絞れたとは言えないでしょう」

 そう言ったのは、俊煕しゅんき殿下だ。

嶺依りょうい殿、翠蘭すいらんという宮女きゅうじょはもしかしたら、子を授かっていたかもしれないんですよね?」


「断言はできませんが、その可能性はあります。――――少なくとも翠蘭すいらんさんは、未通ではありませんでした」


「!?」


 三人は驚きを顔に張りつけて、固まってしまった。


「身体の中を調べた時に、わかりました。昔、故郷の助産師に、身体の中を見て、未通かどうかを調べる方法を教えてもらったんです。教えてもらった時は、こんな知識一生役に立つことはないだろうと思っていましたが、まさかこんな場面で役立つとは」

「そ、そうか・・・・」

 凍り付いたまま動かなくなった殿下の代わりに、仲弓ちゅうきゅうさんが相槌を打ってくれた。


 微妙な空気になり、隙間を埋めるように、寒々しい風が流れていく。


嶺依りょうい・・・・俺に殿下の前では発言に気をつけるようにと言ったのは、お前なんだぞ」

「すみません・・・・」


 仲弓ちゅうきゅうさんに、咎めるような視線を向けられた。どうやらこれは、男性に話すことではなかったようだ。


「あ、あはは・・・・そ、その・・・・すみません」

 笑って誤魔化そうとするものの、雰囲気は和やかにはなってくれない。


「それで殿下、もう一つの可能性とは?」

「え、ええ」

 この気まずさを吹き飛ばすには、話を先に進めるしかないと思い、殿下に先をうながすと、殿下は咳払いした。


内廷ないてい宮女きゅうじょが、父上以外の男の子を授かったとなれば、大問題です。翠蘭すいらんや貴妃だけじゃなく、大官たいかんや女官も大勢、罰されることになったでしょう。・・・・直接関わっていなくても、防げなかったという点で、咎めを受けます」

「発覚を恐れて、翠蘭すいらんを殺したと、殿下はお考えなのですか?」

「あくまでも可能性の一つですが。それで、これからどうしましょうか?」

「直接、独秀どくしゅう殿下に話を聞きに行くしかないんじゃないでしょうか?」


「そうですね。――――叔父上が宮女きゅうじょの懐妊に関与していたのだとしたら、これは許されないことです。直接、叔父上を問い詰めましょう」


 俊煕しゅんき殿下は、薄く笑った。


 ――――なぜか、その笑顔を見ていると、背筋が寒くなる。


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