49 / 56
48_壁の中の死体の真相_二
しおりを挟む「経緯は複雑ですから、順序だてて説明したいと思います」
説明を間違えれば、私は貴人を侮辱した罪で、裁かれることになるだろう。慎重に話を進める必要があった。
「――――まず、発端となったのは、曹貴妃様のご懐妊です」
「それが発端だと? 発端は、翠蘭の懐妊では?」
「二人の懐妊は同じ年です。ですがやはり、発端は曹貴妃様のご懐妊だと言えるでしょう。曹貴妃様は皇子を産んだ功績により、四夫人の位を授かったと聞いております」
「ああ、私が位を授けた」
「・・・・・・・・」
背中に感じる視線のうち、突き刺さるように鋭いのは、曹貴妃様の視線だろう。焼けつくような憎悪を感じる。
「注目すべき点は、曹貴妃様が翠蘭さんの出産を手伝っている部分です。なにせ、翠蘭さんは宮女です。人目を忍んで逢瀬を重ねることはできても、子を産むことは、流れるままには行えません。膨らんでいくお腹を見れば、誰かが懐妊に気づいたでしょう」
「曹貴妃の手を借りなければ、翠蘭は子は産めぬ、か・・・・。だがそもそも、そなたの、〝翠蘭は子供を産んでいた〟という推測は正しいのか?」
陛下は足を組みなおし、頬杖を突く。
「翠蘭が子を産んだという推測は、そなたの、翠蘭の腰骨の歪みが、子を産んだ女人の症状に似ている、という一点だけで成り立っている。それも、断言できるほどの確かな材料ではあるまい」
「おっしゃる通りです」
「そもそも翠蘭が子を産んでいたのなら、その子はどこに行った? 翠蘭の家族は流刑地へ流され、頼れる親族はいなかったはずだ」
「問題は、そこなのです。――――もし、翠蘭さんが子を授かっていたのなら、その子は今、どこにいるのか」
私は深呼吸する。
「・・・・今回の事件の調査のために、俊煕殿下に、病で逝去された莫氏の方々の、くわしい症状を調べてもらいました。その結果、咳や蕁麻疹、高熱などの症状に見舞われた皇子が、それから数年以内にお亡くなりになられていることがわかりました。病の原因は、不明です」
また、群臣はざわめく。敵意が、さらに強まった。
「先帝の時代にも、同じ症状で逝去された皇子や、皇太弟がいらっしゃいます。すべて、お亡くなりになられたのは、咳や蕁麻疹、高熱などの症状が表れてから、数年以内です。・・・・持ち直し、病を克服された方は、一人もいません」
「貴様、何が言いたい!」
――――おそらくこれは、血の病だろう。
先祖から子孫へ、容姿の特徴や能力は、受け継がれていく。
だけど引き継がれるのはそればかりではない。一部、特殊な病なども引き継がれてしまうことがある。
莫氏の男子にも、代々受け継がれてしまう病があるのだろう。
天寿を全うしている方々も多いところを見ると、発症する人とそうではない人に分かれているようだ。おそらくは母方の血が、病を押さえ込むのだろうと思う。
だけどこれは、言ってはならないこと。皇族である莫氏は神聖な存在、帝位を守るため、莫一族の神秘性は守られなければならないからだ。
私ですら気づいたことなのだから、皇宮にいる大医達はとっくに気づいていたはず。だけど、彼らは口を閉ざし続けてきた。
――――だから、血の病などとは、口にしてはならない。
(・・・・難しい)
莫氏の血の病だとは言わないまま、説明を続けなければならない。
3
あなたにおすすめの小説
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
幼馴染に10年片想いしてたら、冷酷御曹司にプロポーズされました
ほーみ
恋愛
春の匂いが、駅前の並木道をくすぐる。満開の桜の下、私はひとり歩いていた。駅までの道は、高校時代、彼とよく歩いた道だ。
制服姿の学生が笑いながらすれ違っていくのを横目に、私はスマホを見下ろした。
「今日、伝えるって決めたんじゃなかったの?」
送信したきり返信のないメッセージ。画面には「既読」の文字があるだけだった。
――渡瀬 湊。私が10年間片想いをしている、幼馴染。
【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました
藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。
次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
仕事で疲れて会えないと、恋人に距離を置かれましたが、彼の上司に溺愛されているので幸せです!
ぽんちゃん
恋愛
――仕事で疲れて会えない。
十年付き合ってきた恋人を支えてきたけど、いつも後回しにされる日々。
記念日すら仕事を優先する彼に、十分だけでいいから会いたいとお願いすると、『距離を置こう』と言われてしまう。
そして、思い出の高級レストランで、予約した席に座る恋人が、他の女性と食事をしているところを目撃してしまい――!?
君に恋していいですか?
櫻井音衣
恋愛
卯月 薫、30歳。
仕事の出来すぎる女。
大食いで大酒飲みでヘビースモーカー。
女としての自信、全くなし。
過去の社内恋愛の苦い経験から、
もう二度と恋愛はしないと決めている。
そんな薫に近付く、同期の笠松 志信。
志信に惹かれて行く気持ちを否定して
『同期以上の事は期待しないで』と
志信を突き放す薫の前に、
かつての恋人・浩樹が現れて……。
こんな社内恋愛は、アリですか?
モテ男とデキ女の奥手な恋
松丹子
恋愛
来るもの拒まず去るもの追わずなモテ男、神崎政人。
学歴、仕事共に、エリート過ぎることに悩む同期、橘彩乃。
ただの同期として接していた二人は、ある日を境に接近していくが、互いに近づく勇気がないまま、関係をこじらせていく。
そんなじれじれな話です。
*学歴についての偏った見解が出てきますので、ご了承の上ご覧ください。(1/23追記)
*エセ関西弁とエセ博多弁が出てきます。
*拙著『神崎くんは残念なイケメン』の登場人物が出てきますが、単体で読めます。
ただし、こちらの方が後の話になるため、前著のネタバレを含みます。
*作品に出てくる団体は実在の団体と関係ありません。
関連作品(どれも政人が出ます。時系列順。カッコ内主役)
『期待外れな吉田さん、自由人な前田くん』(隼人友人、サリー)
『初恋旅行に出かけます』(山口ヒカル)
『物狂ほしや色と情』(名取葉子)
『さくやこの』(江原あきら)
『爆走織姫はやさぐれ彦星と結ばれたい!』(阿久津)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる