【完結】婚約者はお譲りします!転生悪役令嬢は世界を救いたい!

白雨 音

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思った通りで、医務室を出た所、厳しい顔つきのパトリックが、
貧乏揺すりをしつつ待ち構えていた。

「クララ!何があったか、ちゃんと話して!僕が力になるから!」

きっと、パトリックは相手の男子生徒たちをボコボコにするだろう。
いや、陰湿に、遠回しに社会的抹殺を試みるだろうか?
パトリックならばやり兼ねない気がするので、わたしは割って入った。

「パトリック、クララは自分で足を滑らせて池に落ちたのよ、あなたも聞いたでしょう?」

「そんな話を信じる程、僕は馬鹿じゃないよ!」

「そんな事を言うから、クララも言えないんでしょう?
自分で足を滑らせて池に落ちるなんて、誰も信じない様な事が起こったんだもの」

わたしが肩を竦めると、パトリックは唖然とし、それからわたしを睨み付けた。

「君は聞いたんだね?誰がやったか僕に話してよ、クララを虐めた事を後悔させてやる!」

おお!怖い!

「思い違いよ、クララは虐められてなんていないわ。
今日は少し運が悪かっただけ、でも、顔色も良くなったし、目も輝いてるわ。
虐められている子に見える?」

パトリックが顔を顰めたまま、クララを覗き込む…
案の定、クララはぽっと赤くなり、そのオリーブグリーンの目は輝いた。
尤も、鈍感なパトリックは気付かなかった。

「確かに、顔色は良くなったかな…
悪かったよ、つい、昔の癖で…僕の中で、クララはあの頃のままなんだ…
泣き虫で、僕の側から離れなかったよね…僕が、ずっと守って来たのに…」

それは、クララにとっては、うれしくない言葉だ。
クララの顔は一気に暗くなった。

「パトリックが守ってあげてたの?あなたも小さかったでしょう?
それなのに、身を挺して女の子を護るなんて、中々出来る事じゃないわ…」

想像すると微笑ましかったが、
パトリックは顔を真っ赤にし、目を吊り上げた。

「ぼ、僕は、昔は大きい方だったんだよ!ただ、閉じ籠って、勉強ばかりしてたから…
身長も伸びなくて…そうじゃなきゃ、僕だって今頃は、ブランドンに並んでたさ!」

「ブランドンは無理よ、あれは規格外だから」

わたしが冷静に言うと、パトリックは「むっ」とし、黙り込んだ。
夢を壊しちゃったかしら?
気の毒に思い、フォローを入れようとしたのだが…

「パトリックは小柄な方がいいわよ、可愛いもの」

「か、か、可愛いとか言うなーーー!!!」

パトリックは叫ぶと、ダッシュで行ってしまった。
《可愛い》は、禁句だった様だ。


「クララ、一緒に帰りましょう」

わたしはクララ誘い、一緒に帰った。
道すがら、他愛のない会話を交わしていると、クララも緊張が解けたらしく、
わたしの話に笑ってくれた。

クララは下級貴族用の寮なので、途中で別れる事になる。

「もう大丈夫そうね、また明日ね、クララ」

「はい、アラベラ様、今日は、本当にありがとうございました」

クララは頬を赤く染め、可愛らしく微笑んだ。

良い子だわ…
流石、ハンナの妹だ。

「想いを実らせてあげたいわね…」

それには、やはり、トゥルーエンドしかない!

「頑張らなきゃ!」

わたしは気合を入れ、寮に入った。


「ハンナ!あなたの妹と友達になったわよ!」

この胸の喜びを早く伝えたくて、わたしは部屋に入るなり、挨拶代わりに言っていた。
ハンナは驚き、こちらも挨拶を忘れていた。

「妹が、アラベラ様と!?友達なんて、恐れ多いです…」

「あら、魔法学園では、家柄なんて関係ないのよ?
会ってみたら、凄く良い子だったから、友達になったの!
流石、ハンナの妹ね!とっても可愛いし、素直で、側に居るだけで癒されるわ」

わたしが言うと、ハンナはうれしそうな顔をした。

「ありがとうございます、そんな風に言って頂けるなんて…
クララは内気ですし、友達もいないみたいで、
学園に馴染めていないんじゃないかと、心配だったんです…」

クララは心配させない様に振る舞っていただろうが、あまり誤魔化せてはいない様だ。
良く知っているからこそ、察しちゃうわよね…

「これからはもう、心配なんてしなくていいわよ、ハンナ!
この、アラベラ・ドレイパーが友人なんですもの!」

悪役令嬢が友達なら、怖いもの無し!だろう。
尤も、断罪に巻き込まない様にしなきゃ、ね…

「ありがとうございます、アラベラ様…」

ハンナに感謝の眼差しを向けられ、気恥ずかしさと後ろめたさから、
わたしは早々に話を切り上げた。

「いいのよ、さぁ、着替えて食堂に行くわ!お腹がペコペコなの!」


◇◇


翌日、教室に入ると、早速、パトリックから謝罪を受けた。

「ドレイパー、昨日は君の話も聞かず、君がやったと決めつけ、責めてしまった。
謝るよ、僕が悪かった、ごめん」

昨日言われた事は、正直、ショックだった。
随分、仲良くなれていた気がしたが、そう思っていたのは自分だけで、
パトリックはわたしを完全に信じている訳ではない…と思い知らされた。
でも、わたしの目的は、エリーから攻略対象者を引き離す事だもの!
それに、悪役令嬢だもの、今、良い顔をしていても、断罪の場になれば、
皆に手の平を返されるのだから、どちらでも構わないじゃない…
それを考えると、気持ちは沈んだ。

悪役令嬢は孤独なのね…

「ドレイパー、怒っているよね、本当にごめん!」

わたしが沈んでいたからか、パトリックがしきりに謝っている。

「いいのよ、あなたがあんな風に怒った所、初めて見たわ、
それだけクララが大事なんでしょう?」

「うん…昨日も言ったけど、クララは幼馴染で、小さい頃から知っているから…
僕の中では未だに小さな妹なんだ」

わたしは内心で頭を振った。

「パトリック、彼女は、いつまでもあなたの手の中にはいないわよ?
もう、十七歳になるんだもの、一人の立派なレディよ。
あなたにはそう見えなくても、他の人にはそう見えているわよ」

パトリックが顔色を変えた。

「待って!それじゃ、クララに言い寄っている男がいるっていうの!?
そいつが、クララを池に突き落としたんだな!」

「違うわよ!勘違いしないで!だけど、クララを好きになる男子もいるわよ。
クララは内気だけど、可愛いし、素直で性格も良いわ」

「そうだよ!だから、悪い男に騙されるに決まってるよ!!」

パトリックが、バン!と机を叩く。

う、うーん。
クララがパトリックを好きでいる間は、大丈夫じゃないかしら?
でも、上手い事を言われたら、信じちゃいそうよね…
『パトリックには好きな人がいるから、諦めた方がいい!
彼を忘れる為に、僕と付き合いましょう!』とかね?

「決めつけはいけないわ、それに、学園にそんな悪い男はいないわよ。
学園生なら、将来も有望だし、いいんじゃないかしら?」

「学園生なんて、あり得ないね!どうせ、卒業したら、関係を解消するに決まってるよ!
クララは捨てられる…可哀想だよ…」

パトリックは顔を顰め、ぶつぶつと暗い事を呟いている。
こんなに真剣になっていて、恋愛感情は無いのかしら?
それとも、恋愛感情に気付いていないのかしら?
今の所、エリーに心を奪われているみたいだし…

それでも、パトリックがクララを溺愛している事は確かだ。
後はクララの努力次第とも思えるが、クララはクララで、自分に自信が無い。
自分に自信が持てるまでは、パトリックに迫ったりはしないだろう…

ああ、難しいわね!





昨日の事もあり、わたしはなるべくクララを気に掛ける様にしていた。
休憩時間には、Cクラスの教室の前を無駄に通り、中を覗いたりもした。
席を立ち、話したり笑ったりして、賑やかだ。
Cクラスは、Aクラスと違い、女子が半数近くいるので、高い声も聞こえてくる。
そんな中、クララは一人で本を読んでいた。
『友達がいないみたい』という、ハンナの推測は当たっていそうだ。

「まぁ、虐められていなきゃ、いいわ」


昼休憩になり、教室までクララを誘いに行ったのだが、その姿は既に無かった。

「ねぇ、クララを知らない?」

「アラベラ様!?クララ・ケードですか?
彼女なら、まだ戻って来ていません、動物学の授業で…
彼女、いつも一番最後まで居るから…教室の方です」

動物学の授業は、別棟に教室があり、外には飼育小屋もある。

「教室の方ね、ありがとう、行ってみるわ」

それにしても、一番最後まで教室に居るなんて、クララらしいわね。

昼休憩に入り、別棟には生徒の姿は無く、静まり返っていた。
だから、直ぐにそれに気付いた___

「う…う…」

廊下の端で、蹲り、泣いている生徒…

「クララ!」

わたしは彼女の元に駆けつけた。

「どうしたの!?また、何かされたの?」

クララは顔を上げず、膝を抱えたまま泣き続ける。
見ると、彼女の足元に、茶色のおさげが一本、落ちてきた。

「髪を切られたの?」

瞬間、怒りが沸き上がった。
わたしは切られたおさげを掴み、いきり立った。

「こんな事、するなんて!絶対に許さないわよ!!」

「止めて!きっと、もっと酷い事されるわ…!」

もう、二度とさせない為よ!後悔させてやるわ!
わたしの中でどす黒いものが渦巻いている。
だが、今はそれよりも…と、わたしの理性が訴えた。

「そうね、まずは、髪をなんとかしなくちゃ…
髪を伸ばす魔法とかってあるの?」

「分かりません…魔法薬にあるかもしれませんけど…持ってなくて…」

クララが顔を歪め、また泣き出した。
わたしは彼女の背中を撫で、立たせた。

「ここは、魔法学園よ?薬が無いなら、作ればいいのよ!
魔法薬学の教室に行きましょう!」

丁度、昼休憩で、生徒もいない。
何でも自由に使えるわ!

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