【完結】婚約者はお譲りします!転生悪役令嬢は世界を救いたい!

白雨 音

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「おい、ドレイパー、週末にラピッドの大会あるから、応援に来いよ」

前に一度応援に行ったからか、ブランドンが誘ってくれた。
スポーツ関連に疎いわたしは、《ラピッド》が何かも知らなかった。

「ラピッドって?」

聞くと、大いに呆れた顔をされた。

「《ラピッドシュート》だよ、おまえ、一度もやった事無いのか?
どうやって生きてきたんだよ!」

「生きるのに必要だとは知らなかったわ、サバイバルゲームなの?」

「ちげーよ!一年の授業でもやっただろう?良く単位取れたな」

そこは、それ、適当にやった振りをしていたのよ。
わたしは「忘れちゃったわ」と肩を竦めた。

「簡単に話すぞ!七人制の球技で、二つのボールを使い、ぶつけ合うんだ。
当てられた相手は抜けて行き、生き残りの少ないチームが負けだ。
制限時間は前半十分、後半十分、結構キツイぜ!」

「なんだ、ドッジボールみたいなものね」

「ドッジボール?」

思わず、前世の記憶が口を突き、わたしは慌てて手で口を押えた。

「何でもないわ、単純そうなゲームね」

「馬鹿!これは、体力、知力、精神力に加え、魔力の腕が試される、奥深いゲームだ!」

「あら、そうなの?」と、安易に聞いてしまったのは失敗だった。
ブランドンは目を爛々とさせ、《ラピッドシュート》を熱く語り始めた。

ドッジボールと似ているが、違う点も幾つかあった。

投げる際には、魔法でボールの速さや威力を増幅させるのだが、
危険な為、ボールの容量は決まっていて、魔力が大きすぎると破裂する。
破裂させたチームは、マイナス点となる。

身を交わして避ける方法もあるが、主には、攻撃魔法で撃墜するか、
防御魔法を使って止める。
防御魔法を使うのだから、当てるのは難しいのではないか?と思うが、
相手チームがボールを投げるまでは、魔法を使ってはいけない決まりがある。
間違って魔法を使った場合は、マイナス点となる。
チームでマイナス点が十点溜まると、誰か一人を脱落させる事になる。


「中々面白そうじゃない!」

「だろー!観に来いよ!俺の勇姿を見せてやるぜ!」

「ええ、行くわ」

放課後はサイファーの助手をしているので、週末ならば好都合だった。
わたしは快諾し、パトリックを振り返った。

「パトリックも行くんでしょう?」

エリーと一緒に行くのではないか?と探りを入れてみると…

「うん、エリーと一緒に行く事にしてるよ」

あっさりと返って来た。
予想を裏切らない子ね!!

「それじゃ、わたしはクララを誘うわ」

わたしが言った途端、パトリックが「え!?」と声を上げた。

「クララはこんなの興味無いよ、野蛮だし…」

「野蛮!?馬鹿言うな!」と喚き出したブランドンはさて置き。
「誘ってみるだけ、誘ってみるわ」と言うと、パトリックが《この世の終わり》の様な顔をした。

「クララに来て欲しくないの?
もしかして、『格好良いブランドンに惚れるかも!』って、思ってる?」

ズバリと聞くと、パトリックは顔を赤くし、「そんなんじゃないよ!」と顔を背けた。

クララが心変わりするなど、わたしには考えられなかった。
それが出来ていれば、とっくに他の男子を好きになっている筈だ。
だが、恋する男子のパトリックには、分からないのだ___

「だったら、あなたも出ればいいじゃない」

「僕が?」

パトリックは怪訝な顔をしたが、何と言っても、彼は我が学年の次席だ。
ただのスポーツであれば、小柄なパトリックには、体力、身体的なハンデもあるだろうが、
魔法戦ならば、十分に…いや、過分に太刀打ち出来るだろう。

「魔法が使えるんだから、大丈夫よ。
それに、《ラピッドシュート》は一年生の時に習ったんでしょう?
ブランドン、七人揃えば、大会に出られるのよね?」

「そりゃ、そうだけど、大会まで後四日だぜ?
人数揃えられるのか?」

「パトリックとわたしとクララで、三人は決まっているから、どうにかなるわよ」

わたしが指を折って数えていると、パトリックは飛び上がった。

「クララも出す気なの!?駄目だよ!危険だし…
クララは魔法も得意じゃないんだよ?」

「大丈夫よ、クララだって学園生なんだから、相応の魔力を持っている筈よ。
ただ、自信が無いだけよ、あなたが教えてあげたらいいわ、パトリック。
ついでに、わたしの方も教えてね☆」

「無理だよ!怪我するから、止めた方がいいよ!」

心配症のパトリックは、力の限り反対していたが、
わたしの脳内は、残り四人を探す事で忙しかった。


早速、クララのクラスへ行き、参加を求めた所、やはり自信無さげだった。

「私なんかが入ったら、きっと、足を引っ張ってしまいます…」

「大丈夫よ!何かあれば、わたしが守ってあげるし、
大会まで、パトリックが教えてくれるって言ってるわ!」

パトリックの名を出すと、クララの目が輝いた。

「あの、それなら、やってみます…でも、私は補欠にして下さい…」

「補欠なんて言わないで!あなたがいなきゃ、大会にも出られないの!」

「え…そ、そうなんですか…?」

「わたしを助けると思って、お願い!クララ!」

わたしが目を潤ませ、縋る様にして頼むと、人の好いクララは頷いてくれた。

「は、はい、頑張ります!」

「ありがとうクララ!」

わたしは感謝を込め、クララを熱く抱擁したのだった。

むぎゅうううう♡


「さて、これで、残りは四人ね!」

この球技に一番必要なのは、魔力の腕だろう。
わたしの知り合いには限度があるし、女性ばかりにしてしまうと、パトリックが気の毒だ。

「ドロシア、ジャネット、週末の《ラピッドシュート》の大会に出ようと思うんだけど、
誰か適任はいないかしら?四名足りないのよ」

わたしが聞くと、二人は顔を合わせ、手を取り合った。

「それでしたら、ジェローム様にお話ししてみますわ!」

「え…ジェローム?」

攻略対象者なので、ハイスペックなのは確かだが…

「残り三枠は、ファンダムからの選出で、交代で出るのはいかがでしょうか?」

ああ…
ジェロームのファンダムに飲み込まれてしまうわ…
わたしは胸を張り、一喝した。

「ドロシア、ジャネット、これは遊びじゃなくてよ!」

遊びだけど。

「ファンダムの子の選出は任せるけど、能力重視よ!
あなたちも、会長、副会長だからって、易々と試合に出られると思わないでね!
これから毎日、放課後はジェロームを連れて練習に出て頂戴!」

二人は満面の笑みで、「はい!必ずそう致しますわ!」と答えた。


わたしはパトリックに話し、放課後、練習場を借りて貰う事にした。
だが、教室に戻って来たパトリックの顔は暗かった。

「大会前だから、何処も使えないって…」

「そう、困ったわね…コート以外で考えましょうか…」

思案を巡らせていた所、ドロシアとジャネット、そして…
キラキラと輝くジェロームがやって来た。

「話は僕のファンダムの子から聞かせて貰ったよ。
僕で良ければ、力になってあげよう。
練習場だけど、僕が話を付けて、一コート空けて貰ったから、そこでいいかな?
明日から使えるよ」

流石、攻略対象者!何て便利な人かしら!!
わたしは飛び上がりそうになる自分をなんとか抑え、威厳を持って答えた。

「ありがとうございます、助かりましたわ!一緒に優勝目指して頑張りましょう!」

「ふふ、輝いているね、元気の良い女の子は好きだよ、
それじゃ、明日の放課後___」

ジェロームはウインクし、教室を出て行った。
う、うーん、流石、女誑しね…

「ドレイパー、あの人が四人目なの?」

パトリックが胡乱な目をしている。

「そ、そうなのよ!他に居なかったの!それに、女子ばかりだと、あなたも嫌でしょう?」

ジェロームを入れても、男子は二人だけど。
パトリックが臍を曲げるのではないかと、冷や冷やしていたが、
パトリックはあっさりと頷いた。

「いや、いいと思うよ、ジェローム様は魔力の腕も高いし、チームの要の戦力だよ」

チームに要は、パトリックとジェロームだけよ。

パトリックが乗り気だったので、安堵していたが、続けて…
「残りの三人は?」と聞かれ、わたしの顔は引き攣った。

「人数だけは確保したわ…」

質は計り知れないが、量は十分だろう。

「兎に角、明日から、練習を頑張りましょう!」

わたしは押切り、授業の準備を始めた。





練習場は確保出来たものの…
放課後はサイファーと助手契約をしている為、断りを入れる事にした。

「チームを組んで、週末に《ラピッドシュート》の大会に出る事になったの。
それで、明日から週末まで、放課後に練習をする事になって…三日間だけよ!
その間は、昼休憩に手伝うから、それでいいかしら?」

サイファーはいつも通り、穏やかな表情で聞いていた。
聞き終わると、「ふっ」と笑い、頷いた。

「ええ、私の方はそれで構いませんよ」

そんな風に言われると、まるで、来ても来なくてもいいみたいに聞こえる。
少しは役に立っていると思っていたのに…
もう少し、残念がってくれてもいいわよね?

「そういうものですか…」

「え?」

何か呟きが聞こえ、目を上げたが、サイファーは全く違う事を言った。

「それで、その《ラピッドシュート》というのは、どういうものなのですか?」

わたしも物を知らない方だが、サイファーも相当らしい。

「先生、知らないんですか?魔法学園では一年生の必須科目なんですよ!」

わたしは大袈裟に驚いて見せ、ブランドンとパトリックから仕入れた情報を、
あたかも自分の知識の如く、披露した。
サイファーは頷きながら聞いていた。

「そうですか、それは面白そうですね」

「先生も観に来ていいわよ」

「それでは、時間があれば、覗いてみましょう」

きっと、社交辞令ね、大人だもの!

わたしは全く本気にせず、「それじゃ、昼休憩に来るわね!」と教室を出た。

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