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政略結婚
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見合いの席ではヒヤヒヤしたものの、予定通り婚約した。
両家を訪れた際にはどちらの家族も本人も緊張していた。
アランと二人で出席する夜会では、だんだんと一緒にいることに慣れてきた。
アランはお洒落に疎いと自分でも言っていた。使用人の意見を頼りにしているらしく、清潔感のある服装と振る舞いをしている。体を鍛えているのでダンスもしっかりとしたリードをしてくれる。
ミランダはダンスが苦手だが、まあまあ合わせることはできる。
従兄弟たちとも夜会で出会うと挨拶する。
「ミランダ嬢、婚約おめでとうございます。そしてありがとう。アランは結婚する気があるのかと心配だったけれど、あなたの話をするようになってやっと安心している」
どんな話をしたのだろう。
帰りの馬車で問い詰めると、恥ずかしいから言えないとごまかす。
「教えてくれないと横に座りますよ」
ビクッと体を縮める。
大きな犬のようだ。
「ミランダ嬢のことを彼らに話した覚えはないのですが、見合いの前に不安だったので色々相談していて。だから、うまくいっているのかとか聞かれてしまうんですよ。」
不安だったのか。
「アラン様みたいな人を嫌がる女性なんていないと思いますが」
「そんなことは……。今まで夜会でダンスを誘ったこともないし、紹介されたこともあるけど挨拶のあと会話が下手なせいでうまくいかなかった。」
「そうですか?アラン様はいつも話を良く聞いてくださいます。それに、一緒に出掛けるときも私の希望を聞いてくださいます。」
「それはデートコースを考える自信がないからです。それに、単純にミランダ嬢の好きな食べ物や行きたい場所を知りたかったから」
……ミランダは顔には出ないが内心叫んでいた。
(はあ、可愛い……!)
誠実で女性に慣れてなくて。不安そうに眉を下げてじっと見つめられると、本当に待てをしている犬を思い出す。
「私は昔から勉強が好きではないし、成績も良くなかったんです。なので、ミランダ嬢の縁談の相手が私で良かったのかと不安でした。」
「そうですよね。実は、何度か今までにも夜会などで言われたことはあります。女は勉強ができたって仕方がないと」
「そんな失礼な奴がいるのですか?
そんな奴とは付き合わなくていい」
「若い方ではなく、上の世代の方のほうが偏見があるようです」
「あ、そうでしたか。てっきり、若い男性があなたにフラれた腹いせに言ったのかと……」
勘違いを恥ずかしそうにだんだん口ごもる。
「アランさまは嫌ではないですか?といっても私は一族の中では凡才で妹ほど目立ちません……良くも悪くも」
「そんなことは思いません。僕から見てあなたは……その、知的で思慮深くて確かに自分とは正反対だと思うけれど。
どこかで、頭のいい人には合理的で冷たいイメージがあったんだと思います。でもそれは子供のような無知によるもので、実際のあなたは優しい人だ。だからあなたの一族も、色々な人がいるんだと思います。
今まで交わらなかった方が親戚になるというのは不思議な感じです
」
「私も」
ミランダは微笑むだけで終わった。
夜に、寝る前に思い出してベッドでジタバタ暴れた。
(わたしも、アランさまの素直なところがとても良いと思ったのに、言えばよかった)
でも、好きというのは言えない。
政略結婚だから。
思ったより良い相手で良かったという安心はあっても
片方から愛情を向けられることを喜ぶとは限らない。
長い時間をかけて愛情を育むべきで、こんなにドキドキして恋をしてるなんて、そんな場合じゃない気がする。
私ばかりアラン様を好きになっても辛いだけかもしれない
いつかは、愛し合う夫婦になりたいけれど。
あの優しい人は私に合わせてくれようとするだろうから。
アランは従兄弟に
「デートどうだった?」
と聞かれて机に付した。
「ミランダ嬢が可愛い……」
ため息。
「なんでため息なんだよ」
「可愛すぎて我慢できない」
「我慢してるのが意味がわからない。なんであんなお行儀良く好青年のフリをしているのかわからない」
「だって、粗野な男は嫌いだろう。」
「そうでもないんじゃないか。アランのことは気に入ってるみたいだし」
「でもできるだけ荒っぽいことはしたくないし嫌われたくない。可哀想だろう。逃げられないんだから」
アランがいうと、従兄弟はニヤニヤした。
「逃がす気ないんだな。前から夜会で遠くから見てたもんな」
「見るくらいは自由だろ」
両家を訪れた際にはどちらの家族も本人も緊張していた。
アランと二人で出席する夜会では、だんだんと一緒にいることに慣れてきた。
アランはお洒落に疎いと自分でも言っていた。使用人の意見を頼りにしているらしく、清潔感のある服装と振る舞いをしている。体を鍛えているのでダンスもしっかりとしたリードをしてくれる。
ミランダはダンスが苦手だが、まあまあ合わせることはできる。
従兄弟たちとも夜会で出会うと挨拶する。
「ミランダ嬢、婚約おめでとうございます。そしてありがとう。アランは結婚する気があるのかと心配だったけれど、あなたの話をするようになってやっと安心している」
どんな話をしたのだろう。
帰りの馬車で問い詰めると、恥ずかしいから言えないとごまかす。
「教えてくれないと横に座りますよ」
ビクッと体を縮める。
大きな犬のようだ。
「ミランダ嬢のことを彼らに話した覚えはないのですが、見合いの前に不安だったので色々相談していて。だから、うまくいっているのかとか聞かれてしまうんですよ。」
不安だったのか。
「アラン様みたいな人を嫌がる女性なんていないと思いますが」
「そんなことは……。今まで夜会でダンスを誘ったこともないし、紹介されたこともあるけど挨拶のあと会話が下手なせいでうまくいかなかった。」
「そうですか?アラン様はいつも話を良く聞いてくださいます。それに、一緒に出掛けるときも私の希望を聞いてくださいます。」
「それはデートコースを考える自信がないからです。それに、単純にミランダ嬢の好きな食べ物や行きたい場所を知りたかったから」
……ミランダは顔には出ないが内心叫んでいた。
(はあ、可愛い……!)
誠実で女性に慣れてなくて。不安そうに眉を下げてじっと見つめられると、本当に待てをしている犬を思い出す。
「私は昔から勉強が好きではないし、成績も良くなかったんです。なので、ミランダ嬢の縁談の相手が私で良かったのかと不安でした。」
「そうですよね。実は、何度か今までにも夜会などで言われたことはあります。女は勉強ができたって仕方がないと」
「そんな失礼な奴がいるのですか?
そんな奴とは付き合わなくていい」
「若い方ではなく、上の世代の方のほうが偏見があるようです」
「あ、そうでしたか。てっきり、若い男性があなたにフラれた腹いせに言ったのかと……」
勘違いを恥ずかしそうにだんだん口ごもる。
「アランさまは嫌ではないですか?といっても私は一族の中では凡才で妹ほど目立ちません……良くも悪くも」
「そんなことは思いません。僕から見てあなたは……その、知的で思慮深くて確かに自分とは正反対だと思うけれど。
どこかで、頭のいい人には合理的で冷たいイメージがあったんだと思います。でもそれは子供のような無知によるもので、実際のあなたは優しい人だ。だからあなたの一族も、色々な人がいるんだと思います。
今まで交わらなかった方が親戚になるというのは不思議な感じです
」
「私も」
ミランダは微笑むだけで終わった。
夜に、寝る前に思い出してベッドでジタバタ暴れた。
(わたしも、アランさまの素直なところがとても良いと思ったのに、言えばよかった)
でも、好きというのは言えない。
政略結婚だから。
思ったより良い相手で良かったという安心はあっても
片方から愛情を向けられることを喜ぶとは限らない。
長い時間をかけて愛情を育むべきで、こんなにドキドキして恋をしてるなんて、そんな場合じゃない気がする。
私ばかりアラン様を好きになっても辛いだけかもしれない
いつかは、愛し合う夫婦になりたいけれど。
あの優しい人は私に合わせてくれようとするだろうから。
アランは従兄弟に
「デートどうだった?」
と聞かれて机に付した。
「ミランダ嬢が可愛い……」
ため息。
「なんでため息なんだよ」
「可愛すぎて我慢できない」
「我慢してるのが意味がわからない。なんであんなお行儀良く好青年のフリをしているのかわからない」
「だって、粗野な男は嫌いだろう。」
「そうでもないんじゃないか。アランのことは気に入ってるみたいだし」
「でもできるだけ荒っぽいことはしたくないし嫌われたくない。可哀想だろう。逃げられないんだから」
アランがいうと、従兄弟はニヤニヤした。
「逃がす気ないんだな。前から夜会で遠くから見てたもんな」
「見るくらいは自由だろ」
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