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庭園

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庭園に入って、他の方から見えなくなってすぐに頭を下げた。

「アラン様、先程は申し訳ありませんでした」

「いえ。私こそ早く名乗ってあなたをエスコートしようと思ったのですが……ご存知だと思いますが、こういった場は苦手でして。あの場には従兄弟がいたのですが、そいつらの方が令嬢と話せるのです」

「ああ、いらっしゃいましたね。」

「……ミランダ嬢、もしあの二人がよければまだ婚約者が居ないのであなたの相手に」

「それは困ります。アラン様が私で問題ないと思われるのであれば、このまま進めていただきたいです」

「しかし、あいつらを知ったらもっと気が合うかもしれないし」

「先程と同じようなことをおっしゃいますのね。アラン様は結婚相手に求める条件などあれば教えてください。
可能ならば、努力したいと思います。ただ、私はシューゼル家の者としては学力が……」

「いえ、私はそんなことは気にしません。ただ、うちは武官で気性の荒い者も多いのでミランダ嬢が苦労なさるのでは、と。」

「なんだか謝ってばかりですね、私たち。」
花を見ながら話す

「……たとえば、美しい花をみて普通の令嬢ならば色や形を見て愛でると思います。
香りの好きな方や、刺繍の得意な方ならじっくり見るかもしれません。私や妹は、花の名前や属、特色など本で得た知識が先に浮かびます。色気がなくつまらないでしょう」

「そうですか?
特色ということは、毒とか、食用に向いているかという知識も持っているということだろうか」

「そうですね」

「素晴らしい。我々は野営をするので助かる。それに、子供にも知識を教えてくれれば命が助かります。領地でも年に何度かは子どもや若い兵士が野草を口にして重体になるし……」

ミランダは笑ってしまった。アランが真面目に言っているのがわかったから。

「私こそ、令嬢に気の利いたたことが何一つ言えない」

叱られた大型犬みたいだわ

「もし良かったらお手紙を書いても良いでしょうか」

そう言うとアランはブンブンと首をふった

「ご迷惑でしょうか」

「迷惑というのではなく、返事が。私は文章が上手くないし字も下手なので」

「構いません」

「でも、フランツ君の妹さんに文章を見せるなんて」

「兄をご存知なのですか?」

「直接話したことはないのですが……友人が大変お世話になり……」

ひ弱な兄がアラン様のお友だちの役にたつことがあるのかしら
良く聞いてみると、学園時代にラブレターや詩の代作やデートのセリフを考えていたらしい。
そういえば学園から帰省するたびに有名なお菓子を買ってきてくれたりしていた。
「いい小遣い稼ぎが見つかった」
と話していたけど……。
「兄がそんなことをしていたとは」

「俺の友人も体を鍛練することしか興味のない奴らだから、令嬢にどうアプローチしていいかわからなかったんだ。交際が始まってからは代作を打ち明けていたらしい。初めのきっかけを助けてもらった者が多い。」

「令嬢を騙していたのは許せませんが……。」

「武術の鍛練も初めは師匠の真似からだ。」

「そういうものですか……」

「それなのにフランツ君の妹さんに文を書くだなんて、いきなり師範代に稽古を頼むようなものだよ!おそれ多い」

「……それでは、アラン様は他の方で練習してから私に文をくださるのですか?上達された口説き文句を私が喜ぶと思っているのですか?採点でもするとおっしゃるの?」

「すまない、そうだな。下手でも、正直に返事を書くよう努力する」
「それに兄と比べられるのが嫌だということならアラン様は私がいいと思いますよ。世界で一番、兄からラブレターをもらう可能性がありません。」

そう言っていたずらっぽく笑うミランダに、アランは見とれた。

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