猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら

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アフターストーリー 1

小屋に触れたら新スキル発動!?

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 ダンジョンに繋がるあの小屋は、漁村の人がほとんど知らない放置された廃屋だ。昔誰かが農業で使っていた形跡はあったものの、放置されて何十年も経っている。

 しかも小屋の中から奥行きがあったと思ったら、地下へと繋がるダンジョンがあった。漁村の人も近づかない謎の小屋ではあるけど、そこを使って部屋にすればこっちの部屋ではのんびり過ごせるようになるかもしれない。

 廃屋だけど修復出来ないレベルでもないし、コムギさんが言うように直して使えば拠点として使うことは可能かも。

「第二の拠点か。魔導師の拠点みたいだね」
「どうかニャ~?」
「うん。いいかも! そうと決まれば――」
「――待つニャ! 今日はこのままゆっくり過ごしたいニャ。やるのは明日からでも全然問題ないニャ。クウもいなくなったことだし……」

 ……コムギさんが可愛いすぎる。

 コムギさんと一緒に暮らすようになってからも、彼女からの甘えはほとんどない。だけど、誰かと一緒に行動するとか一緒にいるようになったせいか、甘えてくる頻度が上がった気がする。

 クウは男の子だから心配ないとはいえ、猫としての甘えだと嫉妬するんだろうか。

 それにコムギさんは大きな穴というかダンジョンを見つけた時は嬉しそうにしていたけど、俺に危険が及びそうになったのを気にしてか、ダンジョンに行くことを急かさなくなった。

 俺を守るのが好きだと言いつつも、戦えない俺を守りながら動くのは限界があるだろうし、ダンジョンに出かけるのはあまり好きじゃないかもしれないな。

 でも小屋を拠点にすれば、たとえダンジョンに行かなくてもそこにいられる。その考えが俺の為だとしたら何ともコムギさんらしい理由だ。

「えっと、じゃあコムギさん。明日までのんびりしよう~」
「フニャゥゥ~」

 モフモフモフモフ……ううむ、至福の時間。

 まだ未鑑定の植木鉢の泥を落としてないけど、小屋を直してからでいいか。

「……ふわぁぁぁ。ん~……んん?」

 朝になり目覚めたので、思いきり腕を伸ばそうとすると腕が何かに引っ張られて全く動かない。

 その部分を見ると、そこには俺の腕にがっちりと掴んで動かないコムギさんがあった。俺に深い信頼とか愛情があるんだなぁと思うと嬉しくて泣きそうになる。

 とはいえ、ずっとその感触に浸ってるわけにはいかないしコムギさんを起こしてあげないと。

「コムギさん。コムギさん~?」
「ウウニャ……まだ眠いニャ」
「俺も眠いよ。でも、拠点を作りに行く日だよ」

 急ぐものでもないが、小屋の様子も気になるしコムギさんには起きてもらおう。

「ニャ……小屋まで一人で行けるニャ? 行けるならこのまま連れて行ってほしいニャ」

 そう言ってコムギさんは目を開けずにもにょりと口を動かしている。よほど俺の腕の寝心地がいいのか全く起きてくれないうえ離してくれそうにないとなるとまずは俺だけで小屋に向かうしかなさそう。

 クウもあれから帰ってきてないけど、まずは朝食を食べてそれからだ。

 岩山の家で暮らす俺の元には、宿屋の主人からの定期的な差し入れが届く。メルバ漁村に暮らすと決めた時、村の人からの提案で村で獲れる魚はコムギさんへの餌として与えられると聞かされ安堵したものだ。

 じゃあ人間の俺には何もないかというと、基本的に自分で何とかしろと言われるものだが、猫さんに付き従う俺を悪く言う人はいなかった。

 その代わり釣りか狩りで確保すればいいとだけ言われたが、弱そうな俺を見かねたのか、部屋を貸してくれた宿屋の主人が差し入れをくれるようになった。

 恩恵を受けられているのは、全てコムギさんを大事にしてるおかげかも。

 すっかり熟睡してるコムギさんを横目に差し入れのパンを食べた後、最低限の道具を持って森林奥にある小屋にたどり着いた。

 朝から見る小屋は相変わらずの朽ち果てっぷりで、朝日に照らされるといかに腐っているかがよく分かる。

 特に劣化の酷い扉付近の腐った板に触れると、まるで弱ったベニヤ板のように簡単に割れそうなので指先だけに留めることにした。

 中をやる前に外装からやった方がいいんだろうけど、でもどうやって直せばいいんだろうか。

 ……とにかく、コムギさんを起こしてからにしよう。

「コムギさん~?」

 俺の声に反応したのか、コムギさんが目を細めながらサイレントニャーをしている。

 どうやら気持ちよく眠れたみたいだ。

「小屋に着いたニャ?」
「そうだね。じゃあ、中に入ろうか」
「そうだニャ。ニャニャ!? トージ、小屋の扉が何だか光ってニャい?」
「え? 小屋の扉?」

 小屋の扉はダンジョンを見つけてから戸締りをするようにしている。鍵こそかけられないものの、開け閉めに多少の力加減が必要なので侵入されることもないと思っていた。

 しかし、扉が光るということは何かが侵入した、あるいは何者かが何かを仕掛けたという考えに至るが――

「――ニャニャニャニャ!? トージの手も光ってるニャ!!」

 コムギさんは驚いて、俺の腕から逃げるように飛び跳ねてしまった。

「へ? わわっ!? ほ、本当だ……え? 俺のせいなの!?」
「ふむむむむ~……そういえばトージ、トージのスキルはどうなったのかニャ?」
「俺のスキル? 亜空間スキルは使えるようになったよ。お皿は手にしてないけどね」

 俺を認識したあのお皿は、一応手提げ袋に入れて持ってきてある。しかしスキルを使うのにいちいちお皿を手にする必要はないと判断してそのままにしていた。

 コムギさんに何も言ってなかったので、お皿のことをすぐに教えた。

「ふんふん……グラール・プレートってお皿を手に入れたんだニャ~?」
「そうなんだよ。そのお皿から見えたスキルには亜空間スキルがあったんだけど、もう一つは空白で……もしかしてそれかもしれないね」

 俺の説明を聞いたコムギさんは、徐々に薄まっていく光の周辺を見つめている。だが、何かに気づいたのかすぐに俺の元に戻ってきた。

「コムギさん。何か分かった?」
「トージも見たら驚くニャ~!! あの壁は多分トージのスキルで変わったと思うからニャ~」
「え? 俺のスキル? 亜空間スキルで?」

 しかしコムギさんは首を振りながら、違うニャ違うニャと言っている。

 とにかく光っていたところに近づいて見ると、さっきまで腐りかけていた木板がまるで新築のような真新しい状態になっていた。

「えっ? なんだこれ……」
「フニゥ~。もしかしたら、トージの新スキルかもしれないニャ~」
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