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第四章 モントルビアの王宮
現状確認③
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「それで結局、リィカはどうなるの? 明日まで待ったら、ダメなんだよね?」
緩んだ雰囲気の中でも、強張った表情が解けていない暁斗が、話を元に戻した。
それに、全員が居住まいを正す。
「明日まで待てば、再会できるのは確かです。ですが、その時には王太子らに好き勝手に弄ばれた後でしょうね。逆に言えば、それを許容してしまえるのであれば、何も手を出さずにいていい、と言うことになりますが」
「いいわけないだろう」
ジェラードの言い分に、アレクが睨むように反発する。
ジェラードは素直に謝る。
「悪かった、アレクシス殿。とはいうものの、取れる手段はほとんどない。リィカ嬢がいるのが地下牢である以上、そのうち場所を移すだろう。犯すのも、暴力の一つだからね。
だから地下牢の出入り口を見張って、リィカ嬢が出てきたら、その後を付けて場所を突き止める。見張りが付くのかとかが分からないけれど、後は隙を見て助け出すしかない」
「……大丈夫か、それは?」
割と出たとこ勝負だ。
失敗すると後がない。
「不安がないわけではないけど、他に方法が思い浮かばない。――連れて行かれた場所が分かり次第、連絡するよ。助け出すならアレクシス殿たちの方が確実だろう。それまでは大人しくしていてくれよ」
「……努力はする」
アレクの返答は何とも微妙で、そして暁斗は、悔しそうに唇を噛みしめていた。
「昨晩は、リィカは間違いなく無事なんですね?」
泰基が確認する。
捕らえられて一晩が経っているのだ。そう考えれば、昨晩だって怪しいはずだ。
だが、ジェラードは頷いた。
「それは確かです。……なぜ、と考えれば、確かに不思議ですね」
さすがのジェラードも、完全に王太子の性癖を知っている訳ではなかった。
時間をおくのは、飲まず食わずで弱らせるためだと、想像できるはずもなかった。
「俺たちが留められているのは、要するに、王太子の目的のために国王が協力している、という考えでいいのでしょうか?」
犯すという言葉は使いたくない。
そう思って、目的という言葉に置き換えた泰基に、ジェラードは少し考える。
「大半はそうだと思います。後は、そうですね。おそらく、この後城に戻ったら、魔法師団の見学を勧められると思いますよ」
「…………は?」
突然の話題変換に、疑問しかない。
「我が国も魔王討伐に貢献した、という功績がほしいんでしょう。本来であれば、騎士団や教会も見学させられた所ですよ。ところが、騎士団長のご子息と、神官長のご子息という、我が国としても無視できない方々のご子息が、すでに一行に入っている。
であれば、残るは魔法師団だけです。多分、旅に加えろと言ってくると思います」
アルカトルでも似たような話があったよな、と泰基は思い出す。
「それこそリィカがいますしね。どう考えても必要ないですよ。リィカ以上の魔法の使い手など、いるはずがありません」
「例えリィカがいなくても、嫌だけどな。レイズクルスと仲の良い奴が取り仕切る魔法師団なんか、碌なものじゃない」
「うん、アレクシス殿。まさしくその通り。あんなのが旅に入ったら、マイナスになるだけだ」
うなずき合うアレクとジェラードだ。そんな二人を見て、暁斗は今さらの疑問が浮かぶ。
「アルカトルにいたときも、アレク、似たような事言ってたけど……、具体的に魔法師団の人って、どんな魔法を使うの?」
性格は悪いし、決して一緒に行きたいわけでもないが、具体的な実力のほどは実際の所知らない。
「……ああ、そうだな。何て言えばいいか……」
「魔法師団はね、とにかく上級魔法さえ使っていればいい、という考えの持ち主です」
悩むアレクに代わって、ユーリが説明を始めた。
「彼らの戦術は、自分たちが長々と上級魔法を唱えている間に、騎士団が敵を一ヶ所にまとめて、詠唱が終わった所でまとめられた敵に向かって魔法を放つ、というものです」
その説明に暁斗が首をかしげる。泰基も不思議そうにした。
「……有効な手だと思うけど」
「ああ。まあ状況次第でもあるだろうけど、別に悪い手じゃないよな?」
「ええ。その通りです、タイキさん。状況次第なんですよ、その手って。いつでもどこでも誰が相手でも使えるわけじゃない。だと言うのに、魔法師団はそれだけしかやらないんです」
吐き捨てるように話すユーリは、かなり珍しいな、と頭の隅で思いつつも、泰基は反問した。
「……………それだけしか、しない?」
「ええ。状況なんか関係なく、それしかしません」
暁斗が信じられない、という顔をする。
「何それ、おかしくない? だって、今までユーリもリィカも、ほとんど初級とか中級しか使ってないじゃん。それでフォローしてくれて、すごく助かったよ。上級魔法を使った方がいい場面って、あったっけ?」
「少なくとも、今までにはないですね」
「そうだよね!?」
勢い込む暁斗の脇で、泰基はなるほど、と思う。
「それじゃあ、連れて行きたくなんかないよな。下手したら、前衛が魔法に巻き込まれる事も、あるんじゃないか?」
「ああ、あるぞ。騎士団は、何人も魔法師団の放つ魔法に巻き込まれてる。文句を言っても、詠唱を終わるまでに下がっていない方が悪い、だしな。
それで、巻き込まれて大怪我した奴の治療よりも先に、かすり傷程度しか負ってないような魔法師団が、真っ先に神官に治療を要求するんだよ。神官長がそれを断ったら、嫌がらせされたこともあるようだし」
バルがチラッとユーリを見れば、「ふっふっふっふ」とやたら暗い笑みを浮かべていたので、バルは見なかったことにした。
緩んだ雰囲気の中でも、強張った表情が解けていない暁斗が、話を元に戻した。
それに、全員が居住まいを正す。
「明日まで待てば、再会できるのは確かです。ですが、その時には王太子らに好き勝手に弄ばれた後でしょうね。逆に言えば、それを許容してしまえるのであれば、何も手を出さずにいていい、と言うことになりますが」
「いいわけないだろう」
ジェラードの言い分に、アレクが睨むように反発する。
ジェラードは素直に謝る。
「悪かった、アレクシス殿。とはいうものの、取れる手段はほとんどない。リィカ嬢がいるのが地下牢である以上、そのうち場所を移すだろう。犯すのも、暴力の一つだからね。
だから地下牢の出入り口を見張って、リィカ嬢が出てきたら、その後を付けて場所を突き止める。見張りが付くのかとかが分からないけれど、後は隙を見て助け出すしかない」
「……大丈夫か、それは?」
割と出たとこ勝負だ。
失敗すると後がない。
「不安がないわけではないけど、他に方法が思い浮かばない。――連れて行かれた場所が分かり次第、連絡するよ。助け出すならアレクシス殿たちの方が確実だろう。それまでは大人しくしていてくれよ」
「……努力はする」
アレクの返答は何とも微妙で、そして暁斗は、悔しそうに唇を噛みしめていた。
「昨晩は、リィカは間違いなく無事なんですね?」
泰基が確認する。
捕らえられて一晩が経っているのだ。そう考えれば、昨晩だって怪しいはずだ。
だが、ジェラードは頷いた。
「それは確かです。……なぜ、と考えれば、確かに不思議ですね」
さすがのジェラードも、完全に王太子の性癖を知っている訳ではなかった。
時間をおくのは、飲まず食わずで弱らせるためだと、想像できるはずもなかった。
「俺たちが留められているのは、要するに、王太子の目的のために国王が協力している、という考えでいいのでしょうか?」
犯すという言葉は使いたくない。
そう思って、目的という言葉に置き換えた泰基に、ジェラードは少し考える。
「大半はそうだと思います。後は、そうですね。おそらく、この後城に戻ったら、魔法師団の見学を勧められると思いますよ」
「…………は?」
突然の話題変換に、疑問しかない。
「我が国も魔王討伐に貢献した、という功績がほしいんでしょう。本来であれば、騎士団や教会も見学させられた所ですよ。ところが、騎士団長のご子息と、神官長のご子息という、我が国としても無視できない方々のご子息が、すでに一行に入っている。
であれば、残るは魔法師団だけです。多分、旅に加えろと言ってくると思います」
アルカトルでも似たような話があったよな、と泰基は思い出す。
「それこそリィカがいますしね。どう考えても必要ないですよ。リィカ以上の魔法の使い手など、いるはずがありません」
「例えリィカがいなくても、嫌だけどな。レイズクルスと仲の良い奴が取り仕切る魔法師団なんか、碌なものじゃない」
「うん、アレクシス殿。まさしくその通り。あんなのが旅に入ったら、マイナスになるだけだ」
うなずき合うアレクとジェラードだ。そんな二人を見て、暁斗は今さらの疑問が浮かぶ。
「アルカトルにいたときも、アレク、似たような事言ってたけど……、具体的に魔法師団の人って、どんな魔法を使うの?」
性格は悪いし、決して一緒に行きたいわけでもないが、具体的な実力のほどは実際の所知らない。
「……ああ、そうだな。何て言えばいいか……」
「魔法師団はね、とにかく上級魔法さえ使っていればいい、という考えの持ち主です」
悩むアレクに代わって、ユーリが説明を始めた。
「彼らの戦術は、自分たちが長々と上級魔法を唱えている間に、騎士団が敵を一ヶ所にまとめて、詠唱が終わった所でまとめられた敵に向かって魔法を放つ、というものです」
その説明に暁斗が首をかしげる。泰基も不思議そうにした。
「……有効な手だと思うけど」
「ああ。まあ状況次第でもあるだろうけど、別に悪い手じゃないよな?」
「ええ。その通りです、タイキさん。状況次第なんですよ、その手って。いつでもどこでも誰が相手でも使えるわけじゃない。だと言うのに、魔法師団はそれだけしかやらないんです」
吐き捨てるように話すユーリは、かなり珍しいな、と頭の隅で思いつつも、泰基は反問した。
「……………それだけしか、しない?」
「ええ。状況なんか関係なく、それしかしません」
暁斗が信じられない、という顔をする。
「何それ、おかしくない? だって、今までユーリもリィカも、ほとんど初級とか中級しか使ってないじゃん。それでフォローしてくれて、すごく助かったよ。上級魔法を使った方がいい場面って、あったっけ?」
「少なくとも、今までにはないですね」
「そうだよね!?」
勢い込む暁斗の脇で、泰基はなるほど、と思う。
「それじゃあ、連れて行きたくなんかないよな。下手したら、前衛が魔法に巻き込まれる事も、あるんじゃないか?」
「ああ、あるぞ。騎士団は、何人も魔法師団の放つ魔法に巻き込まれてる。文句を言っても、詠唱を終わるまでに下がっていない方が悪い、だしな。
それで、巻き込まれて大怪我した奴の治療よりも先に、かすり傷程度しか負ってないような魔法師団が、真っ先に神官に治療を要求するんだよ。神官長がそれを断ったら、嫌がらせされたこともあるようだし」
バルがチラッとユーリを見れば、「ふっふっふっふ」とやたら暗い笑みを浮かべていたので、バルは見なかったことにした。
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