【第一章改稿中】転生したヒロインと、人と魔の物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~

田尾風香

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第十二章 帝都ルベニア

跪きなさい

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「姫様! ルシア姫様! 申し訳ございません!!」

皇女ルシアが、皇太子である兄ルードリックに勇者一行の様子を報告してから兄の部屋を辞すと、途端に駆け寄ってきたのは、自らの侍女だった。
そして、リィカにつけたはずの侍女。

相手は平民の女性だから、失敗のないように、つける人選はかなり慎重に行ったのだが。

「その、侍女長が、勇者様ご一行のお世話は自分がするべきだと仰り、追い出されまして……」
「なんですって!?」

その内容に、ルシアは叫んだ。
侍女長には任せられない。だからこそ何も言わなかったのだが、それが裏目に出た。

体を小さくして頭を下げている侍女を見て、無理矢理気持ちを落ち着かせる。

「……そう、分かったわ。わたしくしが侍女長へ直接……」
「姫様! 申し訳ございません! リィカ様が……!」

言いかけたルシアの声に被さってきた声は、目の前にいる侍女とは別の侍女。
リィカにつけたはずの、もう一人の侍女だ。

報告された内容に、ルシアは目の前が真っ暗になるのを感じた。


※ ※ ※


コンコンとアレクの部屋のノックがあった。

「失礼いたします。娘を連れて参りましたが、こちらの部屋でよろしいでしょうか?」

ドアの向こうからした声に、アレクは僅かに顔をしかめる。
入浴する前に、リィカについていた侍女二人の声どちらとも違う。
名前を言わず、「娘」と表現されたことにも違和感がある。

違和感があるからと言って、何も言わないわけにはいかないので、入ってもらうよう声をかけると、最初に見えた姿は、やはり最初にリィカについていた侍女とは違う。

そして、次に見えたリィカの、その格好に息を呑んだ。

ガタン、と椅子が音を立てた。
見れば、暁斗が背中を見せている。耳が真っ赤になっていた。

お子様め、と思うが、それがあるべき反応かもしれない。
凝視して目を離せない自分より、ずっと紳士的だ。

泣きそうになっているリィカの目が、アレクの目と合うと、ホッとしたように緩む。
が、最初に入ってきた侍女の、冷たい声が突き刺さった。

「何をしているのですか。さっさとガウンを脱いで挨拶なさい」
「……え?」

リィカの、心細げな一文字の疑問に、侍女の目がつり上がった。

「そんな事も知らないのですか。お相手の男性に自らの姿を見せ、跪いて挨拶するのが礼儀でしょう」

リィカの後ろから入ってきた侍女たちが、着ていたガウンを脱がせてしまう。
出てきた姿に、アレクはさらに息を呑んだ。

十五歳になる少し前に受けた、次世代に血を遺すための授業を思い出す。
リィカの格好は、ようするに、そのための行為をするときに女性が纏う衣装だ。

そこまで気付いて、アレクは一気に顔に血が集まるのを感じた。
暁斗を笑えない。
自分だって、十分お子様だ。

「さっさと跪きなさい」

だが、そこで聞こえた声に、我に返った。
リィカと目があって、アレクは一気に冷静になる。

「そんなこと、しなくていい」

リィカの腕を引き、抱き締める。
その一瞬で、リィカが裸足であることにも気付く。
もっと言えば、まだ日のある時間帯に、こんな格好で歩かせることがおかしい。

「どういうことだ?」

厳しく先頭にたっていた侍女を問い詰めたつもりだが、その侍女は何のことだと言いたげにしている。

「どうとおっしゃいましても。勇者様をお慰みするのに相応しい格好を、と思ったのですが」

その言葉に、腕の中のリィカが体を強張らせた。
その反応に、アレクはリィカを一人放置してしまった事を後悔する。

「リィカが靴を履いていないのは?」

靴というか、サンダルに近いものだが。
それでも、皆が履いている靴をリィカは履かずに裸足なのだ。

「平民がごくたまに皇城へ上がることがございますが、その時には裸足で、というのが決まりでございます」

チッ、とアレクは舌打ちを押さえられなかった。
何だその決まりは、とも思うが、その決まりを平然とリィカへも適用したことに腹が立って仕方がない。

「……今すぐ、俺たち全員の着ていた服を持ってこい」
「は?」

惚けた顔の侍女を見て、アレクは言った。

「今すぐこの皇城を出て行く。こんな所にはいられない。だから、さっさと持ってこい」

アレクのその宣言とほぼ同時に、バタバタと足音がした。

「――失礼致します、皆様方」

息せき切って部屋に入ってきたのは、皇女ルシアだった。


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