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64 火曜日
しおりを挟む火曜日の今日はノクトがくる。
昨日よりも少し遅い時間を指定されたからお昼は食べてくるらしい。もしかしたらメイヒアも連れてくるかもと思って庭に作ったゲートの鍵を開けておく。
コン コン コン
おぉ……いきなり開けられるかと思ったけれどちゃんとノックしている。
「はーい。どうぞ」
ドアを開けて、やはりメイヒアと一緒にやってきた。
何だかメイヒアの背中、荷物が多い……
昨日と同じ様にメイヒアには庭で自由に過ごしてもらって、ノクトには温室や家の中を案内する。
2階にも行きたがったけれどお断りした。
ノクトからは通貨のことと昨日のおさらいともう少し詳しい話を聞いた。
通貨は世界共通らしく、どこに行っても持っているお金をそのまま使えるらしい。
隣国との関係はと聞くと
「今は落ち着いているが、やはり我が国は魅力的だろう? 昔は常にどこかの国に狙われていたらしい。幸い他の三国が手を組むということはなかったようだからな。もし手を組んで我が国を落としてもその後は三国同士の争いになることは目に見えている。どこの国にもそんな体力も財力もないからな」
その後少しずつ輸出入が増えていき落ち着いてきたらしい。
「どこの国の王も自国を豊かにし、国民に幸せに暮らして欲しいと願うものだ。戦争をすれば民も土地も傷つく。さらに大きな争いに発展すると幸せを願っていたはずの民がいなくなる。三国ともそれがわかっていてできなかったのだろうな」
おぉ……ノクトが王子っぽい事を言っている。
それからノクトが持ってきた荷物をほどき始めた。
何を持ってきたのかな?
出てきたのはそれぞれの国の特産品で私にくれるらしい。
東のベゼドラ王国の小麦粉とお米。
西のレクラス王国の絹。
北のザイダイバ王国のジャガイモと枝豆みたいな豆。
小麦粉もお米も元の世界と変わらない。使いやすくていいね。
絹はやっぱり肌触りがいい。
広げてみるとガウンみたいな形……ジッとノクトをみると
「なんだ。湖ではもっと肌が出ていたぞ?」
そうだけど!
「ソウデスネ」
ジャガイモと枝豆……そういえばこの世界に来てからお酒飲んでいないなぁ……
「ノクトはお酒呑むの? ここにはどんなお酒があるの?」
「酒は呑むぞ。ビールにウイスキー、ワインに果実酒、蜂蜜酒なんかもあるな。あとはそれぞれの国で作っているものもある」
元の世界と変わらない。 ゴクリと喉がなる。
「私でも……その……買えたりするのかな」
「この国の成人は18才だ。トーカは成人しているのか?」
「うん」 とっくに。
「ならば街中でもどこでも買えるし呑めるが……酒には強いのか?」
「そんなに強くはないけれど呑むのは好き。ビールとか苦味があるものより甘味があるものの方が呑みやすいかな」
「そうか。ならば今度酒を持って来るから一緒に呑もう」
街で買えるなら今日にでも行って買ってみようかと思ったけれど……王子が持って来るお酒も何だか美味しそう。
持って来てくれるならそれまで楽しみにしておくのもいいかもしれない。
「それじゃぁ私はお酒に合いそうなおつまみを用意するね」
そう約束をして外の様子を見に行くと、熊さんが遊びに来ている。
「ノヴァルト兄上がここに来る頃には手続きも終え熊の子を連れてこられるだろう」
熊さんをみてノクトが教えてくれる。
それから熊さんにノクトを紹介したらなぜか本当に手合わせが始まった。
熊さんにいいの? と聞いたら、「ガゥ」と頷かれてしまった。
ノクトが練習用の木刀を取り出した。
「熊さんにケガをさせないでね」
「俺の心配はしてくれないのか? 大丈夫だ。本当に当てたりはしないから」
そう言って手合わせが始まる。
ノクトの剣はまるで踊っているように優雅でキレイだった。
ギリギリのところで熊さんをヒラリヒラリとかわして木刀もギリギリのところで止めている。
ノクトは本当に強いのだろう。それでいて優雅で女性にも人気があって……王妃様は心配していたけれど先輩メイドさんのいうように大丈夫なんだろうな。
そもそも三人の王子様は一体おいくつなのかな?
ノバルトは何か年上っぽい気がするけれどお兄さんっていうイメージがあるからかな?
ノクトは……子供っぽい気もするけれどなんか同級生感があるんだよなぁ。
ノシュカトは……うん。可愛い。完全に年下な気がする。
それから満足したノクトが熊さんに礼をして戻ってきた。こういうところ意外とちゃんとしているよね。
汗をかいていたのでクリーンをかけてあげると驚いていた。そういえば初めてだったかな。
ありがとうといつもの少し意地悪そうな笑顔ではなく無邪気な笑顔で言われたものだから、不覚にもキュンとしてしまった。
帰り間際
「教会に送った手紙は読んだか?」
そうだった。
「うん。あの手紙のお陰でノシュカトがノクトの弟さんだとわかったんだよ」
「そうか。まだ返事をもらっていないが」
え――――…………返事が出来る……というかいる内容だったかなぁ……
私が驚きで固まっていると笑われた。
「冗談だ。こうして会えるようになったのだからな」
サラリと私の髪に長い指を通す。
それから急に真顔で
「以前のように突然目の前から消えたりしないでくれよ」
でないと…………と黙り込み私の髪をすく。
私の鈍感な危険察知センサーがわずかに反応する。
ノクトさんもしかして気に入ったものに対する執着心…………強目ですか?
……気のせい……だよね……?
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