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しおりを挟むダンスが終るとノシュカトにノバルトの所までエスコートされた。
差し出されたノバルトの手に私の手を重ねる。
「トウカ……とても綺麗だよ」
真っ直ぐ見つめられてそう言われるとカッと顔が熱くなる。首元も開いているからきっと見えるところ全て赤くなっている。
ノバルトもとっても素敵なことを伝えたいのに恥ずかしくてうつ向いてしまう。
顔を上げられない私の頬にノバルトの手が触れる。
恥ずかしい。
ノバルトは真っ赤になった私を連れてソファーへ移動した。
「トウカ、ほらお茶を飲んでごらん。これはリラックス効果があるから」
ありがとうございます。と一口いただく。
ふぅ…………
「ノバルト、ありがとう。あの……ノバルトも素敵だよ」
ようやく言えた。
「ありがとう」
クスクスと笑いながらノバルトがいう。
「トウカ、貴族というものは思惑や感情を表に出さないものなのだよ。トウカのクルクルと変わる表情はとても魅力的で私は愛おしく思うのだけれど、いろいろとつけ入られそうで心配だよ」
そっと私の頬に手を添えて……ほら、と私の緊張を感じ取る。
そりゃぁこんな圧倒的王子様に至近距離でいろいろされたらご令嬢だってこうなるよね!? サラッと愛おしくとか言ったし! 聞き流そうとしたのに出来なかったっ!
そんなに顔に出しているつもりはないのになぁ。
…………出てるか………………
ノバルトは平気なのかな。そう思って立ち上がり同じようにそっとノバルトの頬に触れてみる。
おぉ、まったく表情が変わらない。
まぁ私に触れられてもね。人にもよるのかも。
髪の毛サラサラ。耳にかけてあげよう。
アレ? 耳が赤い……よう……な……
ノバルトが少し困ったような顔で微笑んでいる。
………………
「トウカ……それはずるいな」
……一旦ソファーに座り直しお茶を飲み落ち着きを取り戻……取り……戻せない! なに!? 今の!
あんな表情で見上げられたら…………む、胸が苦しぃっ!
ス――――ハ――――と深呼吸をしていると
「トウカ、私は……私達はトウカの味方だよ。辛いことや悲しい事があっても帰る場所があることを忘れないで」
フッと緊張がほぐれる。
「いつでも帰ってきなさい」
そう言ってくれた両親。
実家を出て初めて一人暮らしをする時の事を思い出した。
一人暮らしのワクワクと期待と住み慣れた家を出ていく不安。
私は勝手にもうここには戻れないと思っていたから、あ……帰って来ていいんだ、と安心した。
両親のこの一言にどれだけ救われたか。
帰る場所がある、迎えてくれる人がいるとわかっただけで気持ちが軽くなった。
お陰でほとんどの週末を実家で過ごしたりしたけれど、そういう時間があったから私は外で頑張る事が出来たんだと思う。
ここの人達は家族を思い出させる……
「これを。いつも着けていて欲しいけれど、仕事以外の時に嵌めてくれればいいよ」
そう言って琥珀色の宝石の付いた指輪を左手の小指に嵌めてくれた。
今日はよく物を頂く日だ……それも高そうな物ばかり……
それにしても……さっきノバルト仕事以外のときって言ったような……
「ありがとうノバルト、凄く綺麗……でもいいのかな……皆さんに頂いてばかりで、私何も用意していなかったのに」
コクリと頷き微笑まれ片手を差し出される。
踊って頂けますか、と。
ノバルトはダンスも完璧で本当に非の打ち所のない王子様。だから今日みたいな不意討ちがあると…………動揺してしまう。
貴族からみてわかりやすい私は弱味を握られやすいと教えてくれたんだよね。
気を付けなければ。
今までとは違う世界なのだから。王妃様の教えを、彼らが教えてくれたことを無駄にしないように。
そんなことを考えていると陛下と王妃様がお部屋に入ってきた。
ダンスが終わりノバルトのエスコートで両陛下の前へ。
「トーカさんダンスの上達が早いわ。ねぇ、あなた」
「そうだね。それにどちらのご令嬢かと思ったよ。とても綺麗だよ。君の見立てはいつも素晴らしいね」
ありがとうございます、皆さんの教え方が上手で……と言うと陛下と王妃様は微笑みあい、陛下のエスコートでお二人はお部屋の真ん中へいき、ダンスを始めた。
優雅で美しいのにとても自然で見つめ合う表情は優しい。
何だか目が離せなくてダンスが終るまでお二人を目で追っていた。
お二人がこちらへ歩いてきて王妃様が改めて皆さんから頂いたアクセサリーをジャラジャラとつけている私をみて満足げに頷く。
「トーカさん、これを渡しておくわ」
お手紙……? 宛名は無いけれど封蝋がしてある。
「もし、どこかでお仕事をする必要がでてきたらこのお手紙を渡すといいわ。紹介状のようなものよ」
ウフフッと可愛く微笑む王妃様。
私が怪しい者ではないと証明してくれているのかな。
ありがたい。大切にしまっておこう。
「ありがとうございます。皆さんに良くしていただいて感謝しています」
「あら、私達はあなたの事を娘だと思っているのよ。本当はここに一緒に住んで欲しいくらいよ。だからトーカさんも私達をこちらの世界の家族だと思ってくれると嬉しいわ」
「っ……ありがとうございます」
エヘヘと笑うと抱きしめられた。
「また来てくれるわね」
「はい。必ず」
危ないことはしないと約束をして、ゲートをくぐり山の家に帰った。
結局誰にも私がザイダイバ王国に行っていることを知っているのかはっきりとは聞けなかったけど……まぁいいか。
ヒールもかけたし疲れてもいないけれど今夜もお酒を持って温泉に向かった。
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