異世界転移の……説明なし!

サイカ

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 ノバルト達がザイダイバに到着して1週間ほどが経った。

その間に先王様ご夫妻がだいぶ回復されたということでしばらくはエイダさんが通常通りのお世話をすることになった。

もう少しだけまだ体調が悪いということにしたい先王のエリオット様とエライラ様はエイダさんにも彼女は信用できるからと事情を説明した。

エイダさんはお側にいながらお守りできなかったと泣いていた。
けれども再びやる気が湧いてきたようで、お二人が原因もわからず弱っていく姿を見るのが辛くてお仕えするのはもう難しいかと思っていたけれど、今度は今度こそは最後までお側にいさせて下さい、と言っていた。


そういう訳で、私は先王エリオット様とエライラ様のお世話係から外れ、先日帰ってきたセオドア殿下付きのメイドになることになった。

…………なんで!?

まぁいいか……情報交換しやすくなるし……


朝、セオドアを起こしにいく。

ドアをそっとノックして薄暗い寝室に入りカーテンと窓を開ける。
水差しの水をコップに注いでからセオドアを起こしにかかる。

いろいろなハプニングをあらかじめ避けるため、ベッドから距離を取りそっと呼び掛ける。

「朝ですよ――起きてくださ――い」

ダメか……セオドア寝起きはいいのかな? もう少し近づいてみる。

……王族というかこの世界の男性は上半身裸で寝るのが一般的なのかな…………下は履いているよね?

「朝だよ――起きて――」

起きない。

仕方がない、素肌に触れるのは躊躇われたから頭を撫でて起こしにかかる。触ってみたかったから……では決してない……

さわり心地がいい。

「セオドア、朝だよ」

頭を撫でながら根元まで見事なプラチナブロンドに向かって話していると、いつの間にかセオドアがこちらを見つめていた。

ビクッとして手を引こうとすると、捕まえられた。

頭を撫でていた私の手にセオドアの手を重ねてそのまま頬に滑らせおはよう、と微笑む。

これは……モテるわ。

必死に平静を装う。

「目が覚めたなら起きて下さい」

「ノアは色気がないなぁ」

「なくて結構です」

「起きるから着替えを手伝って?」

男性の服もドレスみたいに手伝ってもらえなきゃ着られないの? と一瞬考えてしまったけれど、そんな訳ないと思い直し、

「ご自分でどうぞ、朝食はどちらで取りますか?」 

話を無理矢理進める。

「部屋で取るからノアも一緒に食べよう」

それからちゃんと起きるからそろそろその話し方、今は2人なのだから……ね? と言われた。


2人分の朝食を持って来てテーブルにセットする。

いいのかなぁ? と思ったけれど、部屋には誰も入って来ないから大丈夫、と言われた。

「2日後に晩餐会があるよ。リアザイアの方々と貴族達とね」

まだ私は会えていないけれどみんな元気みたいで良かった。

私が先王様ご夫妻のお部屋を担当していた間にお茶会なんかもしていたみたい。

王族同士の食事会はしていたみたいだけれど、今回は貴族達も参加するらしい。

「シュゼットも参加するぞ。ノアも来るか?」

という事はティナ様も来るのかな? 私はセオドア付きのメイドとして後ろに控えていればいいから壁際にいればバレないかな?

「シュゼット様付きのメイドさんは私の顔を知っているけど大丈夫かな?」

「万が一気付かれたとしてもきちんと休みをもらってからここへ来ているのだろう? シュゼットが紹介状をだしているのだし、大丈夫だよ」

そっか、そうだよね。 

お話は出来ないと思うけれど、なかなか会えないリアザイアのみんなの顔もみれるし。
みんなは私のメイド姿をみたことがないし他のメイドさん達に紛れるから気付かないと思うけれど。

「本当に私も行っていいの?」

「あぁ。今回はそれなりの人数になるから少し大変かもしれないけれど、ノアが良ければおいで」

それじゃぁお願いします。

と言った2日後の夜、私は晩餐会のご馳走の目の前に貴族達と肩を並べて座っていた…………


………なんで!? 


やられたぁ! おかしいな!? 会話噛み合っていたよね!?

今までずっっと避けて通ってきたアレをされてしまった…………

朝起きてお風呂で身体を丸洗い……髪も丁寧に洗われて時間をかけてトリートメント。気持ちよくて寝ちゃった。

そして全身オイルマッサージ。気持ちよくて寝ちゃった。

顔のマッサージにパック。気持ちよくて寝ちゃった。

このまま今日は気持ちよく寝てしまいたい……と思っていたらマッサージが終わってしまった……

ドレス…………いつの間にかセオドアが用意してくれていたみたい。

すごく繊細なデザイン……レースが幾重にも重なっていてグリーンのグラデーションになっている。

ドレスには蝶や花や葉っぱの刺繍がされていて何て言うか……こう……山みたい…………

ごめんなさい……きっともっと素敵な例えがあるんだろうけれど思い付かなかった……本当に素敵なのに。

そしてドレスを着るお手伝いをしてくれるメイドさん達にやられました。

「いきますよ! せぇ――の!」

ギュゥゥゥッ

「無理無理っもう無理っ!」

「もう……少しっ」

私、ご飯は食べたいから緩めでお願いしますって言ったのに……

ギリギリまで締め上げられてドレスを着る。

なんか疲れた。

ぐったりとした私にお化粧を施して手際よくヘアセットをしていき、ウトウトしている私にドレスに合ったアクセサリーをつけていく。

姿見が用意されて、いかがですか? と言われてはっと目を覚ます。

鏡を見ると……すごい……別人……思わずお見事です、と深々とメイドさん達に頭を下げるとメイドさん達が戸惑ってしまった。

ドレスとアクセサリーとメイドさん達のお陰で誰も私だと気が付かないかもしれない。

コン コン コン

どうぞと言うとセオドアが入ってきた。

私を見て一瞬息を飲む。

「とても……綺麗だよ」

少し頬を染めてフワリと嬉しそうに微笑むセオドアは少しだけ幼く見えて可愛く思えてしまった。

これは……ノヴァルト殿に怒られてしまうかな……

何か呟いている。

「さて、お姫様、私にエスコートをさせていただけますか?」

「よろしくお願い致します」

差し出された手を取る。

廊下を歩きながらリアザイアから来たみなさんはいいとして、他の貴族には私の事は何と話すのだろう? と思い聞いてみた。

「他国からの留学生と言うことにしよう」

……もしかして考えていなかった?

「大丈夫! 名前はそうだな……ノーマ、ノーマ・クロエル嬢にしよう」

いろいろしてくれたメイドさん達にもそう言っているらしいからたった今思い付いた訳ではなさそうだけれども……名前は今考えたよね……

まぁそんなに目立つつもりはないから何でもいいけれど。


と、思っていたのに…………


晩餐会の会場の扉が開いてから気が付いた。


この男、セオドア殿下だった……一緒に入ったら目立つことこの上ない…………と。


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