170 / 251
170
しおりを挟む二人が帰った後、三毛猫さんにまだ使ったことのないリボンを見せながらお城でのパーティーの事を話してみる。
まだ着けたことのないリボンを見つめながらニャン、と返事をしてくれる三毛猫さん。ありがとう、来てくれるんだね。ナデナデ。
三毛猫さんが来てくれるとわかると私の気持ちにも余裕ができる。
とりあえず、パーティーはまだ先だと思うからダンストン伯爵家のお仕事に戻ろう。
それから……ルークには大丈夫、とは言ったけれどマーサのことも気になる。
心は……心の傷は時間が経てば癒えるものなのか……
それとも……私にできることはあるのかな……
三毛猫さんが私の手におでこをスリスリしてくる。
私の癒し……可愛すぎっ……抱き上げてギュッとする。
いつも側にいてくれてありがとう。
動物が側にいることで癒される人も多いと思う。もしかしたらマーサにもいい影響を与えられるのかもしれない。
宿屋でマーサの好きな動物を迎えることはできるだろうか……そんなことを考えながら眠りにつく……
それから数日後、ウィルがマーサにプロポーズをしたこと、マーサがウィルのプロポーズを受けたことを寮に届いたルークからの手紙で知ることとなる。
「ウィル!」
休日、ウィルに会いおめでとう、と伝えると
「ありがとう、ノア。もう後悔しないようにすると言っただろう?」
嬉しすぎる! ウィル……幸せそう……
それから一緒に鉄の鍵へ向かいマーサとルークにも会いに行く。
「マーサ、おめでとう」
幸せそうなマーサ……
「ありがとう、ノア。何だか恥ずかしいわね」
そう言いながらも可愛く微笑むマーサはキラキラしていて……
これは生きていてくれたからある未来だ……
「あら……ノア、泣いているの? もうっ、それうちの両親と同じ反応よ」
フフフッと笑い私を抱きしめてからマーサはウィルのところへ行き話し始めた。
ルークが私の側へやってくる。
「マーサは……ウィルに結婚を申し込まれてからうなされることが少なくなった。もう大丈夫なのだろう……」
呟くようにそう言ってからすまない、と
「ノアに……俺達の知らない何かを……知られたくない何かを背負わせているんじゃないか……?」
ルーク……意外と鋭い……
「俺は……それを聞く勇気がない」
無いんだ……と小さく呟く。
もとより話すつもりはない。だから
「そんなものはないよ。今のマーサを見てよ。すごく幸せそう。私はそれが嬉しい」
ルークもマーサを見る。
「そう……だな」
そう言って泣きそうな顔で笑う。
ルークはウィルがマーサにプロポーズをする前にこの漠然とした不安を伝えたらしい。
話さない方がいいに決まっているとわかっていても万が一マーサの身体に何かあったのならウィルは知っておかなければならないと……
そして夜、うなされるマーサの声を聞くたびに膨らむ不安を一人では抱えきれなくなったのだとも言っていた。
ルークも一人で悩んでいたのか……
ウィルはこの話を聞いても気持ちは変わらなかった。むしろマーサへの思いは強くなったと言っていたと……
マーサとルークの不安は俺が預かる。
「俺はマーサが不安に思う暇がないくらい愛して愛して大切にする」
俺に任せておけ、と……ウィルーーッ!!
なんていい男なんだっ……最初は軽い人だと思ってごめんなさい。マーサは男を見る目があるね……
「マーサの事はウィルに任せておけば大丈夫そうだね」
ルークにそう言って微笑むとあぁ、と微笑み返してくれた。
それからマーサにこっそりローズ様から今度三人でお茶会をしようと誘われた事を伝えた。
マーサも結婚式の日取りが決まったら二人にもお知らせするわね、と言ってくれた。
お姫様としてローズ様と会った後も変わらない付き合い方をするつもりのマーサ……ローズ様も嬉しいと思う……
それから、この日もみんなで楽しく食事をして私は寮へ戻った。
翌日、いつも通りクルクスさんを預りリアム様を見送る。
クルクスさんはだいぶ他の人にも馴れてメイドさん達にも可愛がられるようになっていた。
リアム様が学園から戻りクルクスさんをお渡しすると
「ノア……少し話がある」
とお部屋に呼ばれた。
かけてくれ、とソファーを勧められたのでリアム様がかけてから座る。
話って何だろう……?
「茶会で会ったローガンを覚えているか?」
「はい」
私がひっぱたいた男の子だ。何か言われたのかな……
「その兄のカイル様も覚えているか?」
「はい」
あの笑っているのにちょっと怖い感じがする……
「今日、ローガンがカイル様からだと手紙を渡してきたのだが……」
なんか言いにくそう……
「……帰りの馬車で手紙を読んだのだがノアをクレメン侯爵家の使用人としてしばらくの間雇いたい、と……」
……え?
「もちろん断るつもりだが……」
私がローガン様をビンタしたから断りにくいのか……
これは……自分で撒いた種だな……
「この話はローガンも知らないらしい……秘密のまま来て欲しいと書いてあった」
サプライズでもする気なのかな……喜ばないと思うけれど……どちらにしろ断る訳にはいかない。
「リアム様、そのお話お受けします」
仕方がない。
「しかし……」
「大丈夫ですよ、しばらくの間ですから」
しばらくってどれくらいだろう?
「ノア……すまない、兄上にも話してはいるのだが……」
家格が上だもの……そう簡単にはいかないだろう……私に非があるのだし……
こんな事で優しいお二人を煩わせてしまった。
私が行くと言えば済む話だ。
「大丈夫です。クルクスさんもだいぶ人に馴れてくれましたし、ちょっと行ってくるだけです」
そう言って微笑む私に悔しそうな顔をするリアム様。
「なるべく……早く戻れるようにするから……」
キュン……リアム様が可愛い……
「リアム様……そんなに私の事を……」
嬉しいですっ、と手を握ると
「っな……ちがっ!」
はぁ……とため息をつき
「おまえはすぐにふざける……」
そう言って呆れた後、辛いことがあったらすぐに知らせて欲しい、と言ってくれたのではいっ、と元気よく返事をした。
そんな訳で……やって参りました、クレメン侯爵家。
ダンストン伯爵家の寮のみんなは行く必要はない、俺達も抗議するぞ、と言ってくれた。嬉しい……
でもみんなの仕事が失くなったら大変だからね、しばらくの間だからまた戻ってくるよ、大丈夫だからと言って三毛猫さんと一緒に出てきた。
それにしても……カイル様からの手紙にはカイル様に会うまではなるべく人目につかないようにって書いてあった。
だからフード付きのローブに身をくるんでフードもちゃんとかぶっているのだけれど……なんで?
屋敷には使用人の入り口があるから指定した時間ぴったりに必ずそこに来ること、とも書いてあった。
時間は守るけれど何なんだろう?
お屋敷の造りはだいたい似たようなものだから使用人用の入り口もすぐにわかった。
勝手に入るわけにもいかないし見られる訳にもいかないしで私はドアの前に立ち尽くしている……ちょっと早かったかな……?
バンッ
突然ドアが開き
「ノアか?」
「はい」
って……えっ? カイル様? なんでこんなところに?
驚いているとバサッと布にくるまれて担がれてしまった……
「大人しくしていろ」
って……えぇー…………何なの…………?
6
あなたにおすすめの小説
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる