4 / 126
1-3
しおりを挟む
裏の物置からモップを取り出して、水で濡らして絞った。店内へ戻ろうとすると、歩道に待ち焦がれている人の姿を見つけた。桜木さんがいた。俺は急いで走ってそばに行った。
「桜木さん!あれ?」
彼のそばには、あのイケメン会社員が立っていた。この間のように、強引に話しかけている。桜木さんが顔を引きつらせていても、お構いなしだ。だんだん怒りが込み上げ、モップを持ち上げた。
(これで追い払ってやろう。当てなきゃ問題ないから……)
二人に近づいていくと、会話の内容が聞こえてきた。桜木さんにどこかに誘っているようだ。でも、桜木さんは嫌がっている。そして、イケメン会社員はそれを面白がっているようで、意地悪そうな顔をしていた。
「一緒に行こうよ」
「……行きません」
「いい席だよ」
「その日は予定があるんです。興味もありません」
「はっきり言うね」
「はっきり『NOと言え』と言ったのは、誰でしたか?」
「俺かもね。昼の電話って……」
「やめてください!」
桜木さんが声を荒げた。そして、店内に入ろうとする彼に、イケメン会社員がまとわりついていた。 見て見ぬふりは出来ない。さっそく二人の間に割って入った。
「失礼します!」
「……ん?」
「……悠人君?」
「俺の先輩です!しつこくしないで下さい」
「ああ……、誤解だよ」
「何がですか!?」
イケメン会社員を見据えていると、桜木さんから肩を叩かれた。俺は大丈夫だと言われた。でも、顔が引きつったままだ。桜木さんはいい人だ。我慢しているに違いない。
「悠人君。この人は悪い人じゃないよ」
「桜木さん……。だから……」
本当に彼は良い人だ。だからこそ、俺が悪者になろうと決めた。店の前で子供っぽいやり取りをしているから目立っている。歩道には沢山の人が行きかっているからだ。周りからの視線が注がれていて、早く桜木さんをイケメン会社員から引き離そうと思った。俺はイケメン会社員にモップを突き付けて、歩道の端へ進ませた。俺がやっていることに、イケメン会社員が驚いている。
「誤解だよ。桜木君とは同じ職場だ。知り合いだ」
「尚更悪いですよ!セクハラ、パワハラ!」
「違うよ」
「本人はそう言いますよね」
「はあ……」
「ため息を付きたいのは、こっちだよ!」
モップを突きつけたままで、イケメン会社員のことを見つめた。どこから見ても爽やかな人に見える。でも、やっていることは子供っぽい。人は見かけによらないという。まさかあの人がそんなことをするなんてという話を聞いたことがある。桜木さんに何かあったらいけないと思い、俺は騙されないぞと心の中でつぶやき、腹に力を込めて言った。
「この変質者!」
「……誤解だよ」
「本人が決めるもんじゃないから。この目で見たんだよ」
「……何もしていないよ」
「この間は、桜木さんのスマホを勝手に操作してただろ!?店の中から見ていたんだよ」
「悠人君。何でもないから」
「桜木さんは……っ。いい人過ぎます!」
桜木さんが俺のことを止めた。彼はいつも優しく笑っている。バンドのメンバーで食事に行った時、飲み物を倒した俺のことを慰めてくれた。彼が着ていたTシャツが濡れたのに、嫌な顔ひとつしなかった。今回は俺が助けると決めた。
イケメン会社員が困り果てた顔をしている。 もう一押しだと思い、さらにモップを突き付けると、俺達の間に入ってきた人がいた。暗いグレーのスーツ姿の人だ。そしてモップの柄を握ると、グイっと下げた。思いもよらず力が強くて、思わず声が出てしまった。しかしその人は笑っていた。爽やかな笑顔とは対照的な、いじめっ子のようだ。イケメン会社員とは、知り合いのようだ。
「早瀬。何があったんだ?」
「黒崎常務。じつは……」
「上司の人ですか?」
「そうだよ。話を聞かせてくれ」
グレーのスーツ姿の人は、イケメン会社員の上司だと分かった。さっそく、俺は理由を話した。
「この人が、桜木さんのことを追いかけているんです。スマホを奪い取られてたし、さっきは嫌がっているのに、しつこくしていたんです。俺は大学の後輩で、久田悠人と申します」
グレーのスーツ姿の人が俺の話を静かに聞いた後、肩を揺すって笑い出した。笑う話ではないだろう。失礼は承知の上で、非難がましい意見を言った。
「笑い事じゃないですよ?」
「……すまない。夏樹、こっちへ来い」
「え?夏樹?」
「悠人、どうしたんだよ?」
振り向くと、バンドメンバーの夏樹が立っていた。グレーのスーツ姿の人とは知り合い同士のようだ。この状況を見て、困っている顔をしている。そして、俺が突きつけているモップを見て、驚いている。彼を困らせたくない。こうなると、怒りを鎮めるしかない。ここでは話しづらいからと、みんなで店の裏へ移動した。
「桜木さん!あれ?」
彼のそばには、あのイケメン会社員が立っていた。この間のように、強引に話しかけている。桜木さんが顔を引きつらせていても、お構いなしだ。だんだん怒りが込み上げ、モップを持ち上げた。
(これで追い払ってやろう。当てなきゃ問題ないから……)
二人に近づいていくと、会話の内容が聞こえてきた。桜木さんにどこかに誘っているようだ。でも、桜木さんは嫌がっている。そして、イケメン会社員はそれを面白がっているようで、意地悪そうな顔をしていた。
「一緒に行こうよ」
「……行きません」
「いい席だよ」
「その日は予定があるんです。興味もありません」
「はっきり言うね」
「はっきり『NOと言え』と言ったのは、誰でしたか?」
「俺かもね。昼の電話って……」
「やめてください!」
桜木さんが声を荒げた。そして、店内に入ろうとする彼に、イケメン会社員がまとわりついていた。 見て見ぬふりは出来ない。さっそく二人の間に割って入った。
「失礼します!」
「……ん?」
「……悠人君?」
「俺の先輩です!しつこくしないで下さい」
「ああ……、誤解だよ」
「何がですか!?」
イケメン会社員を見据えていると、桜木さんから肩を叩かれた。俺は大丈夫だと言われた。でも、顔が引きつったままだ。桜木さんはいい人だ。我慢しているに違いない。
「悠人君。この人は悪い人じゃないよ」
「桜木さん……。だから……」
本当に彼は良い人だ。だからこそ、俺が悪者になろうと決めた。店の前で子供っぽいやり取りをしているから目立っている。歩道には沢山の人が行きかっているからだ。周りからの視線が注がれていて、早く桜木さんをイケメン会社員から引き離そうと思った。俺はイケメン会社員にモップを突き付けて、歩道の端へ進ませた。俺がやっていることに、イケメン会社員が驚いている。
「誤解だよ。桜木君とは同じ職場だ。知り合いだ」
「尚更悪いですよ!セクハラ、パワハラ!」
「違うよ」
「本人はそう言いますよね」
「はあ……」
「ため息を付きたいのは、こっちだよ!」
モップを突きつけたままで、イケメン会社員のことを見つめた。どこから見ても爽やかな人に見える。でも、やっていることは子供っぽい。人は見かけによらないという。まさかあの人がそんなことをするなんてという話を聞いたことがある。桜木さんに何かあったらいけないと思い、俺は騙されないぞと心の中でつぶやき、腹に力を込めて言った。
「この変質者!」
「……誤解だよ」
「本人が決めるもんじゃないから。この目で見たんだよ」
「……何もしていないよ」
「この間は、桜木さんのスマホを勝手に操作してただろ!?店の中から見ていたんだよ」
「悠人君。何でもないから」
「桜木さんは……っ。いい人過ぎます!」
桜木さんが俺のことを止めた。彼はいつも優しく笑っている。バンドのメンバーで食事に行った時、飲み物を倒した俺のことを慰めてくれた。彼が着ていたTシャツが濡れたのに、嫌な顔ひとつしなかった。今回は俺が助けると決めた。
イケメン会社員が困り果てた顔をしている。 もう一押しだと思い、さらにモップを突き付けると、俺達の間に入ってきた人がいた。暗いグレーのスーツ姿の人だ。そしてモップの柄を握ると、グイっと下げた。思いもよらず力が強くて、思わず声が出てしまった。しかしその人は笑っていた。爽やかな笑顔とは対照的な、いじめっ子のようだ。イケメン会社員とは、知り合いのようだ。
「早瀬。何があったんだ?」
「黒崎常務。じつは……」
「上司の人ですか?」
「そうだよ。話を聞かせてくれ」
グレーのスーツ姿の人は、イケメン会社員の上司だと分かった。さっそく、俺は理由を話した。
「この人が、桜木さんのことを追いかけているんです。スマホを奪い取られてたし、さっきは嫌がっているのに、しつこくしていたんです。俺は大学の後輩で、久田悠人と申します」
グレーのスーツ姿の人が俺の話を静かに聞いた後、肩を揺すって笑い出した。笑う話ではないだろう。失礼は承知の上で、非難がましい意見を言った。
「笑い事じゃないですよ?」
「……すまない。夏樹、こっちへ来い」
「え?夏樹?」
「悠人、どうしたんだよ?」
振り向くと、バンドメンバーの夏樹が立っていた。グレーのスーツ姿の人とは知り合い同士のようだ。この状況を見て、困っている顔をしている。そして、俺が突きつけているモップを見て、驚いている。彼を困らせたくない。こうなると、怒りを鎮めるしかない。ここでは話しづらいからと、みんなで店の裏へ移動した。
2
あなたにおすすめの小説
【完結】初恋は檸檬の味 ―後輩と臆病な僕の、恋の記録―
夢鴉
BL
写真部の三年・春(はる)は、入学式の帰りに目を瞠るほどのイケメンに呼び止められた。
「好きです、先輩。俺と付き合ってください」
春の目の前に立ちはだかったのは、新入生――甘利檸檬。
一年生にして陸上部エースと騒がれている彼は、見た目良し、運動神経良し。誰もが降り向くモテ男。
「は? ……嫌だけど」
春の言葉に、甘利は茫然とする。
しかし、甘利は諦めた様子はなく、雨の日も、夏休みも、文化祭も、春を追いかけた。
「先輩、可愛いですね」
「俺を置いて修学旅行に行くんですか!?」
「俺、春先輩が好きです」
甘利の真っすぐな想いに、やがて春も惹かれて――。
ドタバタ×青春ラブコメ!
勉強以外はハイスペックな執着系後輩×ツンデレで恋に臆病な先輩の初恋記録。
※ハートやお気に入り登録、ありがとうございます!本当に!すごく!励みになっています!!
感想等頂けましたら飛び上がって喜びます…!今後ともよろしくお願いいたします!
※すみません…!三十四話の順番がおかしくなっているのに今更気づきまして、9/30付けで修正を行いました…!読んでくださった方々、本当にすみません…!!
以前序話の下にいた三十四話と内容は同じですので、既に読んだよって方はそのままで大丈夫です! 飛んで読んでたよという方、本当に申し訳ございません…!
※お気に入り20超えありがとうございます……!
※お気に入り25超えありがとうございます!嬉しいです!
※完結まで応援、ありがとうございました!
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
雪解けを待つ森で ―スヴェル森の鎮魂歌(レクイエム)―
なの
BL
百年に一度、森の魔物へ生贄を捧げる村。
その年の供物に選ばれたのは、誰にも必要とされなかった孤児のアシェルだった。
死を覚悟して踏み入れた森の奥で、彼は古の守護者である獣人・ヴァルと出会う。
かつて人に裏切られ、心を閉ざしたヴァル。
そして、孤独だったアシェル。
凍てつく森での暮らしは、二人の運命を少しずつ溶かしていく。
だが、古い呪いは再び動き出し、燃え盛る炎が森と二人を飲み込もうとしていた。
生贄の少年と孤独な獣が紡ぐ、絶望の果てにある再生と愛のファンタジー
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
回転木馬の音楽少年~あの日のキミ
夏目奈緖
BL
包容力ドS×心優しい大学生。甘々な二人。包容力のある攻に優しく包み込まれる。海のそばの音楽少年~あの日のキミの続編です。
久田悠人は大学一年生。そそっかしくてネガティブな性格が前向きになれればと、アマチュアバンドでギタリストをしている。恋人の早瀬裕理(31)とは年の差カップル。指輪を交換して結婚生活を迎えた。悠人がコンテストでの入賞等で注目され、レコード会社からの所属契約オファーを受ける。そして、不安に思う悠人のことを、かつてバンド活動をしていた早瀬に優しく包み込まれる。友人の夏樹とプロとして活躍するギタリスト・佐久弥のサポートを受け、未来に向かって歩き始めた。ネガティブな悠人と、意地っ張りの早瀬の、甘々なカップルのストーリー。
<作品時系列>「眠れる森の星空少年~あの日のキミ」→「海のそばの音楽少年~あの日のキミ」→本作「回転木馬の音楽少年~あの日のキミ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる