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春に起きたことを思い出している間、741教室内は授業前でざわついていた。北添と山下、俺と夏樹の4人が無言で向かい合っている。
ここのクラスでは、生徒同士が険悪な雰囲気に気になるのは珍しい。授業や課題、試験などで忙しく、学生達は人のことに構っていられない状況だ。そして、だんだんと、定期試験や課題を乗り越えるために協力し合うようになる。そういう時期になったのに、今頃になって俺達に絡んできた。どうしてだろう。絡まれる理由が思い当たらない。2人を睨みつけると、山下が目をそらした。用があるのは北添の方だと察した。その北添が口を開いた。
「中山君。経済のレポート課題、三宮教授が『優』を出したんだったよね?さすがだね。パートナーさんの力添え?黒崎製菓の。他にもあるけど」
「他の用件は何?まとめて聞くよ」
「久田って思わせぶりだよなー」
「なにが?」
「だから、思わせぶりなんだってさー」
北添がスマホを押し付けてきた。画面には俺と早瀬の写真があった。奥村に送ったものだ。 北添達を睨みつけた。すると、夏樹の方を見て、2人の顔が強張った。さらに夏樹の冷たい声色が飛んできた。
夏樹の方へ振り向くと、彼の表情が大きく変わっていた。声色と同じく冷たい目をしていた。それに驚いたのか、山下が逃げるように出入り口の方を見ると、そこには奥村が立っていた。ここへ来たのは俺の関係だろう。
「早く用件を言えよ」
「え……」
「奥村さんが、久田の……」
「話がループになって始まらないよ」
「なんだよ!?」
「早く言え」
「……っ」
北添が顔を引きつらせながら立ち上がり、席を移動する素振りを見せた。それに追い打ちをかけるように、夏樹が冷たく笑った。
「山下君が居ないと、何も言えないんだ?」
「べつに……っ」
「早く言え。二度言わせるな」
北添が荷物を持って動こうとした進行方向の壁に、夏樹の右足が叩きつけられた。その音が教室内に響き渡り、さすがに周りの生徒から注目を浴びた。夏樹はそれに構うことなく、動けなくなっている北添のことを睨みつけた。
(いつもの夏樹じゃない。夏樹が怖がられて、クラスから浮くかも知れない。流れを変えよう……)
するとその時だ。切り返しを考えていた時に、背後に気配を感じた。森本が背後に立ち、夏樹の肩を引いた。いつも冷静なのに、焦った顔をしている。そして、山崎が俺達の間に立った。
「夏樹!」
「森本?」
夏樹の表情が戸惑いに変わった。あんなに怖い顔をしていた夏樹が肩の力を抜いたから、森本が彼を止める役割をしていたのだと分かった。そして、夏樹と森本の会話が始まり、その間に北添と山下が逃げ出そうとしたのを山崎が止めて、教室内が凍り付いた。
そこで、いいことを思いついた。 マフィンが手つかずだ。一口サイズだから、ちょうどいい。大袋の中からつかみ取り、北添達の口の中に放り込んでやった。
「んふーー!」
「はい!これもだよ!」
「わぐうう……っ」
「これでも食べて機嫌を直せよ!」
「げほっ」
「はい、俺の飲みかけだけど」
喉が詰まりかけた北添達に、ペットボトルを差し出した。彼らがそれを飲み干して落ち着いた後、仕上げをした。早瀬の真似をして、彼らの耳の下や頭を撫ででやった。
「良い子だね~?よしよし~」
「イヌじゃない!」
そんなやり取りが続いているうちに、教室内の空気が変わってきた。夏樹の苛立ちが治まり、笑い始めた。そして、教室内の生徒にも、一斉に笑いが起こった。
(良かった……)
この授業の後、北添と山下が夏樹に謝った。これからもよろしくと、言葉を返し合っていた。これで終わりだとは思えないものの、解決したから良かったと思った。俺達は残りのマフィンを食べながら、何もなかったかのように振舞った。夏樹がホッとして笑っていたことが印象的だった。
ここのクラスでは、生徒同士が険悪な雰囲気に気になるのは珍しい。授業や課題、試験などで忙しく、学生達は人のことに構っていられない状況だ。そして、だんだんと、定期試験や課題を乗り越えるために協力し合うようになる。そういう時期になったのに、今頃になって俺達に絡んできた。どうしてだろう。絡まれる理由が思い当たらない。2人を睨みつけると、山下が目をそらした。用があるのは北添の方だと察した。その北添が口を開いた。
「中山君。経済のレポート課題、三宮教授が『優』を出したんだったよね?さすがだね。パートナーさんの力添え?黒崎製菓の。他にもあるけど」
「他の用件は何?まとめて聞くよ」
「久田って思わせぶりだよなー」
「なにが?」
「だから、思わせぶりなんだってさー」
北添がスマホを押し付けてきた。画面には俺と早瀬の写真があった。奥村に送ったものだ。 北添達を睨みつけた。すると、夏樹の方を見て、2人の顔が強張った。さらに夏樹の冷たい声色が飛んできた。
夏樹の方へ振り向くと、彼の表情が大きく変わっていた。声色と同じく冷たい目をしていた。それに驚いたのか、山下が逃げるように出入り口の方を見ると、そこには奥村が立っていた。ここへ来たのは俺の関係だろう。
「早く用件を言えよ」
「え……」
「奥村さんが、久田の……」
「話がループになって始まらないよ」
「なんだよ!?」
「早く言え」
「……っ」
北添が顔を引きつらせながら立ち上がり、席を移動する素振りを見せた。それに追い打ちをかけるように、夏樹が冷たく笑った。
「山下君が居ないと、何も言えないんだ?」
「べつに……っ」
「早く言え。二度言わせるな」
北添が荷物を持って動こうとした進行方向の壁に、夏樹の右足が叩きつけられた。その音が教室内に響き渡り、さすがに周りの生徒から注目を浴びた。夏樹はそれに構うことなく、動けなくなっている北添のことを睨みつけた。
(いつもの夏樹じゃない。夏樹が怖がられて、クラスから浮くかも知れない。流れを変えよう……)
するとその時だ。切り返しを考えていた時に、背後に気配を感じた。森本が背後に立ち、夏樹の肩を引いた。いつも冷静なのに、焦った顔をしている。そして、山崎が俺達の間に立った。
「夏樹!」
「森本?」
夏樹の表情が戸惑いに変わった。あんなに怖い顔をしていた夏樹が肩の力を抜いたから、森本が彼を止める役割をしていたのだと分かった。そして、夏樹と森本の会話が始まり、その間に北添と山下が逃げ出そうとしたのを山崎が止めて、教室内が凍り付いた。
そこで、いいことを思いついた。 マフィンが手つかずだ。一口サイズだから、ちょうどいい。大袋の中からつかみ取り、北添達の口の中に放り込んでやった。
「んふーー!」
「はい!これもだよ!」
「わぐうう……っ」
「これでも食べて機嫌を直せよ!」
「げほっ」
「はい、俺の飲みかけだけど」
喉が詰まりかけた北添達に、ペットボトルを差し出した。彼らがそれを飲み干して落ち着いた後、仕上げをした。早瀬の真似をして、彼らの耳の下や頭を撫ででやった。
「良い子だね~?よしよし~」
「イヌじゃない!」
そんなやり取りが続いているうちに、教室内の空気が変わってきた。夏樹の苛立ちが治まり、笑い始めた。そして、教室内の生徒にも、一斉に笑いが起こった。
(良かった……)
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