恋人はメリーゴーランド少年だった~永遠の誓い編

夏目奈緖

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 黒崎は動物に好かれる人だと思う。一緒にコンビニに行く途中、散歩中の犬が何匹も寄ってきたことがあるからだ。猫も好きだと言っていた。俺も猫も好きだ。でも、犬なら一緒に歩きやすいから、犬にしたいと思った。

(そろそろ帰ってくる頃だ。喜ぶかな。はあ……)

 今日の夜食はサンドイッチを用意した。この間はおむすびだけで喜んでいたから、胸が痛くなった。子供の頃の遠足を思い出して楽しかったそうだ。家で食べるときはあっさりしたものがいいと黒崎が言っていた。そういう料理を作りたくて、たまにネットでレシピを検索している。

 お茶を淹れて飲んでいると、玄関から物音がした。黒崎が帰ってきた。迎えに行く前にキッチンへ入って来て、優しく抱き寄せられた。少しだけお酒の匂いがする。

「……黒崎さん。おかえり。サンドイッチだよー」
「……ただいま。帰って来るのが楽しい。昨日の学校はどうだった?……何も買っていないじゃないか」 
「欲しいものがないからだよー」
「そうか。別の店へ連れて行こうか」
「こらこらこら!」

 黒崎が冷蔵庫を開けた。今日は珍しく迎えが無くて、一人で帰ってきた。黒崎からコンビニでスイーツを買うために、黒崎から電子マネーを渡されてあった。でも、俺は使っていない。なるべく実家から渡された生活費の中から出したいからだ。俺のお小遣いも入っている。それに、黒崎からのお土産のスイーツがあるから、いつもお腹いっぱいだ。でも、黒崎は使って欲しいと言っている。スイーツがいらないのなら、他の物でも買うと良いと言た。

「買いに行く必要がないもん。お菓子も飲み物も持たされているから」 
「早瀬から聞いたが、くじ引きが出来るそうだな?景品で欲しい物があるんだろう?」 
「当たるまでやれって?いくらかかるか知ってる?」 
「ああ。気が済むまでやるといい。楽しめるのなら。どんな景品が欲しい?一緒に引きに行こう」 
「えーっとね、別にないよ」
「遠慮するな。言ってくれ。あのキャラクターがくじ引きになっているんじゃないのか?」
「何で知っているんだよ?」

 黒崎が俺が持っているペンケースに描かれているキャラクターの名前を言った。偶然にも、今くじ引きをしている時期だ。そのキャラクターの皿が欲しいと言うと、彼がホッとした顔で微笑んだ。やっと俺が欲しい物を口にしたからだ。本当に愛情の表し方が下手な人だと思い、少しだけ笑ってしまった。こういう面で俺は変化した。可愛いとまで思うようになったからだ。 

 すると今度は、外食する店のことを聞かれた。”今の時期から美味しい魚がある、鉄板焼きはどうだ?ホタテと野菜がメインだ。スープ仕立てのパスタが評判の店がある”と提案された。俺が好きな物を食べさせたいからだ。

 お前のことが最優先だ。大切にする。黒崎がそう言っていた。これが黒崎が俺にやりたいことだとだ。でも、それだから、行き過ぎた発想が生まれるのだと分かった。無理をして俺の相手をせずに、仕事の疲れを癒やして貰いたいと思っている。
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