121 / 259
11-5
しおりを挟む
チーム5人が、割り当てられたものを仕上げていった。ときどき枝川さんが訪れて様子を見てくれている。使っているフォーマットは、この会社が独自に開発したものだと聞いた。使いやすい。自分も欲しいと思った。大学の経済の授業の関連で、統計を扱うことがあるからだ。夏樹と一緒に既存のものを工夫して作っているところだから、この作業は勉強になった。
「これって……。どうやって組んだんだろー?」
「どうした?」
「すみません。独り言でした」
つい家の中にいる気分になった。手を止めて、そばに置いてあるペットボトルを取ろうとしたら、早瀬が取ってくれた。置き場所が決められていて、各自左側のホルダーに置くことになっている。水濡れ等の事故を防ぐためだ。
「ありがとうございます」
「届きづらいだろう?こっちへ移動させていいよ」
「はい」
「これならどう?」
「ちょうどいいです」
「そうか」
短いやり取りをして、やっている仕事に戻った。ふざけた会話がなくても、寂しいとは思わない。早瀬の仕事中の様子を見ていて、さっきから胸がドキドキしているからだ。想像以上に、カッコいいと思ってしまった。
すると、黒崎さんがそばに来て、早瀬と会話を始めた。ド迫力の黒崎さんと、爽やかな早瀬が対照的だ。二人が並ぶとマイルドになる気がする。珈琲とミルクのような関係だと思えた。
「今度の中期目標の……」
「あの会議で決定したのは……、常務、紹介します。今日からのメンバーです」
黒崎さんに俺達のことを紹介してくれた。黒崎さんはド迫力ながら、優しい笑顔を見せてくれた。早瀬はテキパキと紹介を進めていく。こういうところも対照的だ。いいコンビだと思った。
(裕理さんとこういう感じになりたいな。面倒をかけているもんな……)
べつに卑屈になっていない。年齢と経験の差が大きい分だけ、当然のことだと思っている。今は自分のやるべきことを、しっかりやることだ。
「これって……。どうやって組んだんだろー?」
「どうした?」
「すみません。独り言でした」
つい家の中にいる気分になった。手を止めて、そばに置いてあるペットボトルを取ろうとしたら、早瀬が取ってくれた。置き場所が決められていて、各自左側のホルダーに置くことになっている。水濡れ等の事故を防ぐためだ。
「ありがとうございます」
「届きづらいだろう?こっちへ移動させていいよ」
「はい」
「これならどう?」
「ちょうどいいです」
「そうか」
短いやり取りをして、やっている仕事に戻った。ふざけた会話がなくても、寂しいとは思わない。早瀬の仕事中の様子を見ていて、さっきから胸がドキドキしているからだ。想像以上に、カッコいいと思ってしまった。
すると、黒崎さんがそばに来て、早瀬と会話を始めた。ド迫力の黒崎さんと、爽やかな早瀬が対照的だ。二人が並ぶとマイルドになる気がする。珈琲とミルクのような関係だと思えた。
「今度の中期目標の……」
「あの会議で決定したのは……、常務、紹介します。今日からのメンバーです」
黒崎さんに俺達のことを紹介してくれた。黒崎さんはド迫力ながら、優しい笑顔を見せてくれた。早瀬はテキパキと紹介を進めていく。こういうところも対照的だ。いいコンビだと思った。
(裕理さんとこういう感じになりたいな。面倒をかけているもんな……)
べつに卑屈になっていない。年齢と経験の差が大きい分だけ、当然のことだと思っている。今は自分のやるべきことを、しっかりやることだ。
0
あなたにおすすめの小説
恋人はメリーゴーランド少年だった~永遠の誓い編
夏目奈緖
BL
「恋人はメリーゴーランド少年だった」続編です。溺愛ドS社長×高校生。恋人同士になった二人の同棲物語。束縛と独占欲。。夏樹と黒崎は恋人同士。夏樹は友人からストーカー行為を受け、車へ押し込まれようとした際に怪我を負った。夏樹のことを守れずに悔やんだ黒崎は、二度と傷つけさせないと決心し、夏樹と同棲を始める。その結果、束縛と独占欲を向けるようになった。黒崎家という古い体質の家に生まれ、愛情を感じずに育った黒崎。結びつきの強い家庭環境で育った夏樹。お互いの価値観のすれ違いを経験し、お互いのトラウマを解消するストーリー。
新緑の少年
東城
BL
大雨の中、車で帰宅中の主人公は道に倒れている少年を発見する。
家に連れて帰り事情を聞くと、少年は母親を刺したと言う。
警察に連絡し同伴で県警に行くが、少年の身の上話に同情し主人公は少年を一時的に引き取ることに。
悪い子ではなく複雑な家庭環境で追い詰められての犯行だった。
日々の生活の中で交流を深める二人だが、ちょっとしたトラブルに見舞われてしまう。
少年と関わるうちに恋心のような慈愛のような不思議な感情に戸惑う主人公。
少年は主人公に対して、保護者のような気持ちを抱いていた。
ハッピーエンドの物語。
握るのはおにぎりだけじゃない
箱月 透
BL
完結済みです。
芝崎康介は大学の入学試験のとき、落とした参考書を拾ってくれた男子生徒に一目惚れをした。想いを募らせつつ迎えた春休み、新居となるアパートに引っ越した康介が隣人を訪ねると、そこにいたのは一目惚れした彼だった。
彼こと高倉涼は「仲良くしてくれる?」と康介に言う。けれど涼はどこか訳アリな雰囲気で……。
少しずつ距離が縮まるたび、ふわりと膨れていく想い。こんなに知りたいと思うのは、近づきたいと思うのは、全部ぜんぶ────。
もどかしくてあたたかい、純粋な愛の物語。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
僕の恋人は、超イケメン!!
刃
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?
学校一のイケメンとひとつ屋根の下
おもちDX
BL
高校二年生の瑞は、母親の再婚で連れ子の同級生と家族になるらしい。顔合わせの時、そこにいたのはボソボソと喋る陰気な男の子。しかしよくよく名前を聞いてみれば、学校一のイケメンと名高い逢坂だった!
学校との激しいギャップに驚きつつも距離を縮めようとする瑞だが、逢坂からの印象は最悪なようで……?
キラキライケメンなのに家ではジメジメ!?なギャップ男子 × 地味グループ所属の能天気な男の子
立場の全く違う二人が家族となり、やがて特別な感情が芽生えるラブストーリー。
全年齢
回転木馬の音楽少年~あの日のキミ
夏目奈緖
BL
包容力ドS×心優しい大学生。甘々な二人。包容力のある攻に優しく包み込まれる。海のそばの音楽少年~あの日のキミの続編です。
久田悠人は大学一年生。そそっかしくてネガティブな性格が前向きになれればと、アマチュアバンドでギタリストをしている。恋人の早瀬裕理(31)とは年の差カップル。指輪を交換して結婚生活を迎えた。悠人がコンテストでの入賞等で注目され、レコード会社からの所属契約オファーを受ける。そして、不安に思う悠人のことを、かつてバンド活動をしていた早瀬に優しく包み込まれる。友人の夏樹とプロとして活躍するギタリスト・佐久弥のサポートを受け、未来に向かって歩き始めた。ネガティブな悠人と、意地っ張りの早瀬の、甘々なカップルのストーリー。
<作品時系列>「眠れる森の星空少年~あの日のキミ」→「海のそばの音楽少年~あの日のキミ」→本作「回転木馬の音楽少年~あの日のキミ」
【完結】少年王が望むは…
綾雅(りょうが)今年は7冊!
BL
シュミレ国―――北の山脈に背を守られ、南の海が恵みを運ぶ国。
15歳の少年王エリヤは即位したばかりだった。両親を暗殺された彼を支えるは、執政ウィリアム一人。他の誰も信頼しない少年王は、彼に心を寄せていく。
恋ほど薄情ではなく、愛と呼ぶには尊敬や崇拝の感情が強すぎる―――小さな我侭すら戸惑うエリヤを、ウィリアムは幸せに出来るのか?
【注意事項】BL、R15、キスシーンあり、性的描写なし
【重複投稿】エブリスタ、アルファポリス、小説家になろう、カクヨム
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる