姉と妹に血が繋がっていないことを知られてはいけない

マーラッシュ

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過去を乗り越えたから今の瑠璃がある後編

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瑠璃side

 あの後、異世界ハンターのアースドラゴン討伐を更に2戦ほど終えると先輩は自宅へと帰っていった。

「天城⋯⋯リウト先輩か」

 私は思わずこの部屋にいた恩人の名前を呟き、そして先程まで先輩が座っていたベッドに腰を下ろす。

「あの頃は本当に最悪だったなあ」

 例えるなら勇者として異世界に召喚されたけど、一般の人と変わらない能力で、期待はずれと迫害された気分です。
 クラスの女子三人から、いつまでも漫画やアニメのことを言っていて気持ち悪いと陰口を叩かれたことが始まりだ。次第に虐めがエスカレートしていき、教科書を破られたり、机に落書きをされたり、トイレに入っている時に上から水をかけられたりとテンプレ通りのことをされた。そして他のクラスメートは自分が虐めのターゲットになるのを恐れてか見てみぬふりで、先生に事情を話しても私の言うことを信じてもらえなかった。

 だけどそんな中、ユズユズだけは私の味方をしてくれた。
 もしあの時ユズユズが私を助けてくれなかったら、この世界に絶望して命を絶っていたかもしれない。

 そしてリウト先輩。
 私が私のままで良いと肯定してくれ、自分が表現できる配信者の道に導いてくれた。
 しかもいざ勇気を出してまた学校に行ったら、すでに私を虐めた三人はいなくなっていた。
 俺は何もしていないと言っているけど、たぶん先輩が私のためにあの三人を排除してくれたんだと思っている。

 さっきは照れ隠しでおみくじで大吉を引いた時くらい嬉しいと言ってしまったけど、本当は先輩に一生かけてもいい程感謝している。

 だって⋯⋯。

「先輩は私の勇者⋯⋯ううん、いつかは私の⋯⋯」

 瑠璃は自分の本当の気持ちを口にして顔を真っ赤にしており、リウトと過ごした日々を思い出しながら、幸せな気持ちのままベッドで眠りにつくのであった。

 リウトside

 翌日の日曜日

 リウトは学園が休みのため、いつも起きる時間になってもベッドから出ず、布団の中で惰眠を貪っていた。

 そして時間が午前8時になった頃、俺は一度目が覚める。だが時計を見るとまだ寝ていられる時間だと考え、また目を閉じる。

 何だか今日はいつもより布団が暖かいぞ。これは俺にもっと寝ろと言っているに違いない。
 だけどこの温もり⋯⋯最近どこかで感じたことがあるような気がする。
 あれはいつだったか⋯⋯そう、確か始業式の日⋯⋯まさか!

 俺は眠気が一気に吹き飛び、勢いよく身体を起こす。
 やはりこの暖かさは布団のせいじゃない! 明らかに人の温もりだ!

「また、コト姉が布団に潜り込んできたのか。やれやれ⋯⋯そろそろ弟離れをしてほしいものだ」

 ここまでブラコンだと将来結婚することが出来るのか心配になってくる。頼むから俺の彼女や奥さんをいびる小姑にはなってほしくないものだ。

 俺はこの温もりを与えているのがコト姉だと疑わず、ゆっくりと布団を剥がす。

「えっ!」

 だがそこには予想とは違う人物の姿があって、俺は思わず驚きの声を上げてしまうのであった。
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