姉と妹に血が繋がっていないことを知られてはいけない

マーラッシュ

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バカはお前だと一度は言ってみたい

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 ピー!

 審判のフエの音が鳴るとAクラスのボールで試合が始まった。
 Aクラスのスタメンはサッカー部を含めた男子13人と神奈さん、ちひろを加えた女子7人が先発だ。
 Aクラスの作戦としては先制点を狙っているため、前半に男子を多く設定している。見たところCクラスも男子がスタメンで14人いることから、Aクラスと同じ事を考えているのだろう。

「よし! 悟行くぜ!」
「おう!」

 センターサークル内で都筑がボールを悟に渡す。

 Aクラスの作戦はサッカー部4人で四角形のポジションを取ってボールを運んで行き、残りの15人はカウンターを食らわないように守備に勤める。
 対するCクラスは20人全員が自身の陣地に位置取り、Aクラスの攻撃を迎え撃つようだ。
 そしてルール通り、Aクラスのサッカー部の都筑、悟、柳、三浦とCクラスの井沢、田中は銀色のリングを下腿部分につけているが、動きは少し重い程度で、今の所プレイに大きな影響は無さそうだ。
 だが今はまだ普段と変わらぬ動きが出来るかもしれないが、体力がなくなっていく後半は動きが悪くなることが予測される。そして得点を決められ、もし10キロの重りをつけられたら、その選手はもう満足にプレイすることが出来なくなるだろう。

 都筑達は順調にパスを回してペナルティエリアの外まで迫る。するとAクラスの攻撃方法を悟ったのか、沢尻がCクラスに指示を出す。

「お前ら! プランAだ」

 沢尻が作戦名を伝えるとサッカー部四人に対して、Cクラスは二人ずつマークに付き始めた。

「けっ! 素人を二人マークに付けた所で俺達は止められねえぞ!」

 ボールをもった都筑は一人を右足のまたぎフェイントでかわし、もう一人を股の下にボールを通し抜き去る。

「雑魚が! これで一点もらったぜ!」

 都筑は二人抜いた所で気を良くしているが、これは相手の罠だ。

「甘いな都筑」

 股抜きでボールが少し離れたを狙って、井沢がスライディングタックルを放つ。
 すると都筑はあっさりとボールを奪われてしまい、今度はCクラスの反撃となる。

「くそっ! 井沢の奴、相変わらず抜け目のない!」

 どうやら同じサッカー部同士のため、都筑の手の内は読まれていたようだ。

 だが今のは上手くボールを奪ったな。
 実は今、サッカー部四人につけているマークとは別に、沢尻、井沢、田中、熊谷が少し距離を取った所で待ち構えていたのだ。おそらくマークしている二人をかわして少しボールが離れた所を奪う算段だったのだろう。
 だが上手くボールを奪ったからといってCクラスも簡単に攻撃できる訳ではない。
 Aクラスの15人は守備についているし、攻めるのに時間をかけているとサッカー部の四人も守りに戻ってくるからだ。
 そして俺の予想通りCクラスは15人の守備を崩せず、守りに戻ってきた悟の手によってボールを奪われていた。

「あれれ? 先輩はスタメンじゃないんですか?」
「お姉ちゃんはリウトちゃんのカッコいい所を見に来たのに」

 封鎖サッカーの試合を見ていると、背後から瑠璃とコト姉が現れた。
 今日は一年生と三年生はエクセプション試験の日程になっていないため、どうやら見学に来たみたいだ。

「切り札だからな。後でカッコいい所を見せるからもう少し待っていてくれ」

 本当は切り札と言われた訳ではないが、後輩に良い格好をしたいがために、俺はでかい口を叩く。

「本当ですか? お手本を見せてやる的なことを言って、敵の影に飲み込まれ、裸で救出されるカッコ悪い状況にならないで下さいね」
「学園でそんなことになったら人生終わるわ!」

 退学、警察沙汰は免れないし、親父に「お前は天城家の恥さらしだ! この家から出て行け!」と言われ、勘当されることは間違いないだろう。

「それで試合はどんな感じなのかな?」

 コト姉と瑠璃は改めてフィールドの方へと目を向ける。
 両チームとも少ない人数で攻め混み、多い人数で守っているから中々シュートまで行くことが出来ない。

「地味な戦いですね。もっとこう、人が吹き飛ぶような必殺シュートを見ることは出来ないんですか?」
「無茶言うな」

 どこぞのサッカー漫画じゃあるまいし。だが⋯⋯。

「だけどこの後、
「えっ? 先輩。それってどういうことですか⋯⋯」

 前半は既に20分が過ぎており、Cクラスはそろそろ前もって考えていた作戦を仕掛けてくるはずだ。

「こっちに寄越せ!」

 沢尻がボールを要求すると、井沢から沢尻にパスが渡る。

「越智! 織田! 行け!」

 都筑は沢尻の近くにいた越智と織田にボールを奪うように指示を出す。

「サッカーが素人のお前は二人をドリブルで抜くことは出来ねえだろ! 大人しくこっちにボールを渡しやがれ!」
「まあ確かにドリブルで突破するのは無理かもな。だがサッカーって奴はドリブルだけが相手を抜く手段じゃないんだぜ」

 この沢尻の言葉を聞いてクラスメート達はパスをすると考えただろう。
 だが越智がボールまで後2メートルの所まで接近した時、沢尻は右足を大きく振りかぶった。

「バカが! そんな所からシュートをして入るわけがねえだろうが! 野球みたいにボールを飛ばせばホームランで点が入ると思っているのか? 一度サッカーのルールを学んで来やがれ!」

 都筑の言うとおり、今はセンターサークルを越えた辺りで、キーパーも前に出ている訳ではないため、ここからシュートを決めるのはプロでも難しいだろう。

 しかし沢尻はそんな都筑の言葉にニヤリと笑みを浮かべ一言言葉を放つ。

「バカはてめえだろ!」

 そして沢尻は右足に力を込め、目の前にあるボールをおもいっきり蹴り出すのであった。
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