49 / 146
士気は戦いには重要だ
しおりを挟む
エクセプション試験当日
午前中の通常授業が終わり、午後はいよいよエクセプション試験である封鎖サッカーが始まる。
クラスの空気は負けたらスコアを失ってしまうという負の感情と、都筑の威圧による恐怖に支配されていた。
これは後でちひろに聞いた話だが、Cクラスとのスコア戦が決まってからの放課後の練習では、都筑の叱咤が飛び、運動が苦手な何人かは理由をつけて休んでいると言っていた。
ボロボロだな。
都筑は良かれと思って発破をかけているのかもしれないが、その気持ちはクラスメート達には全く届いていない。そしてその様子を見て、まとめ役として頑張っている神奈さんの表情も暗い。
残念だがこのまま試合をすれば負けるのは当然の結果だろう。
そして俺達は更衣室で体育着に着替えて校庭へと向かう。するとAクラスの様子を見て、こそこそと何かを話しているCクラスで野球部のエースの沢尻とキャッチャーの月野谷の姿を見かけた。
「一八見たか?」
「ああ。試合前なのに士気が全然上がってねえな。まるで死んだ魚の目だぜ」
「一八からAクラスにスコア戦を仕掛けるって言われた時は焦ったけど、これは俺達の勝利で決まったな」
「単純な都筑を挑発すれば簡単に乗ってくると思ったぜ」
二人の声は俺達の所まで聞こえている。
おそらくこちらを動揺させるために、わざと聞かせているのだろう。幸いと言っていいのかわからないが、頭に血が昇りやすい都筑や悟達はすで校庭へと向かっていたのでこの場にはいない。
「バカな奴等だぜ、あんな男をリーダーにするなんて」
「せいぜい自分達の無能さを呪うんだな」
そう言って二人は高笑いしてこの場を去る。
今の話を聞いて闘志が燃え上がればいいが、ここにいるクラスメート達はただ悔しそうな顔をするだけだった。
そして先に校庭へ向かっていたクラスメート達と合流すると、都筑が皆の前に出て口を開く。
「この封鎖サッカーの肝は先取点だ! 先取点を取れば優位な状況に立てる! 前半から飛ばしていくぞ!」
都筑の激にクラスメート達から声は上がるが、やはり覇気がない。
さすがの都筑もこの状況はまずいと感じ取っているのか、何とか先取点を取ってチームを鼓舞したいといった所だな。都筑の言葉通り、先取点を取れば相手のエースを封じ込めてその後の試合を有利にすることが出来るため、両チームに取ってどうしても欲しいものだ。
「これから試合を始めるのでセンターサークルまで集まって下さい」
そして三年の教師から声がかかり、前半に出場する選手達がセンターサークルに向かい整列する。
「では、これより2年Aクラス対2年Cクラスのエクセプション試験である封鎖サッカーを初める」
選手達は教師の言葉で互いに礼をしフィールドに散る。そして審判の笛が鳴り、封鎖サッカーの試合が始まるのであった。
午前中の通常授業が終わり、午後はいよいよエクセプション試験である封鎖サッカーが始まる。
クラスの空気は負けたらスコアを失ってしまうという負の感情と、都筑の威圧による恐怖に支配されていた。
これは後でちひろに聞いた話だが、Cクラスとのスコア戦が決まってからの放課後の練習では、都筑の叱咤が飛び、運動が苦手な何人かは理由をつけて休んでいると言っていた。
ボロボロだな。
都筑は良かれと思って発破をかけているのかもしれないが、その気持ちはクラスメート達には全く届いていない。そしてその様子を見て、まとめ役として頑張っている神奈さんの表情も暗い。
残念だがこのまま試合をすれば負けるのは当然の結果だろう。
そして俺達は更衣室で体育着に着替えて校庭へと向かう。するとAクラスの様子を見て、こそこそと何かを話しているCクラスで野球部のエースの沢尻とキャッチャーの月野谷の姿を見かけた。
「一八見たか?」
「ああ。試合前なのに士気が全然上がってねえな。まるで死んだ魚の目だぜ」
「一八からAクラスにスコア戦を仕掛けるって言われた時は焦ったけど、これは俺達の勝利で決まったな」
「単純な都筑を挑発すれば簡単に乗ってくると思ったぜ」
二人の声は俺達の所まで聞こえている。
おそらくこちらを動揺させるために、わざと聞かせているのだろう。幸いと言っていいのかわからないが、頭に血が昇りやすい都筑や悟達はすで校庭へと向かっていたのでこの場にはいない。
「バカな奴等だぜ、あんな男をリーダーにするなんて」
「せいぜい自分達の無能さを呪うんだな」
そう言って二人は高笑いしてこの場を去る。
今の話を聞いて闘志が燃え上がればいいが、ここにいるクラスメート達はただ悔しそうな顔をするだけだった。
そして先に校庭へ向かっていたクラスメート達と合流すると、都筑が皆の前に出て口を開く。
「この封鎖サッカーの肝は先取点だ! 先取点を取れば優位な状況に立てる! 前半から飛ばしていくぞ!」
都筑の激にクラスメート達から声は上がるが、やはり覇気がない。
さすがの都筑もこの状況はまずいと感じ取っているのか、何とか先取点を取ってチームを鼓舞したいといった所だな。都筑の言葉通り、先取点を取れば相手のエースを封じ込めてその後の試合を有利にすることが出来るため、両チームに取ってどうしても欲しいものだ。
「これから試合を始めるのでセンターサークルまで集まって下さい」
そして三年の教師から声がかかり、前半に出場する選手達がセンターサークルに向かい整列する。
「では、これより2年Aクラス対2年Cクラスのエクセプション試験である封鎖サッカーを初める」
選手達は教師の言葉で互いに礼をしフィールドに散る。そして審判の笛が鳴り、封鎖サッカーの試合が始まるのであった。
0
あなたにおすすめの小説
∞
桜庭かなめ
恋愛
高校1年生の逢坂玲人は入学時から髪を金色に染め、無愛想なため一匹狼として高校生活を送っている。
入学して間もないある日の放課後、玲人は2年生の生徒会長・如月沙奈にロープで拘束されてしまう。それを解く鍵は彼女を抱きしめると約束することだった。ただ、玲人は上手く言いくるめて彼女から逃げることに成功する。そんな中、銀髪の美少女のアリス・ユメミールと出会い、お互いに好きな猫のことなどを通じて彼女と交流を深めていく。
しかし、沙奈も一度の失敗で諦めるような女の子ではない。玲人は沙奈に追いかけられる日々が始まる。
抱きしめて。生徒会に入って。口づけして。ヤンデレな沙奈からの様々な我が儘を通して見えてくるものは何なのか。見えた先には何があるのか。沙奈の好意が非常に強くも温かい青春ラブストーリー。
※タイトルは「むげん」と読みます。
※完結しました!(2020.7.29)
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!
竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」
俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。
彼女の名前は下野ルカ。
幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。
俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。
だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている!
堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!
目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。
卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。
理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。
…と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。
全二話で完結します、予約投稿済み
学校で成績優秀生の完璧超人の義妹が俺に隠れて、VTuberとしてネトゲ配信してたんだが
沢田美
恋愛
京極涼香。俺の義妹であり、あらゆる物事をそつなく完璧にこなす、スポーツ万能・成績優秀、全てが完璧な美少女。
一方の俺は普通の成績と並以下の才能しか持っておらず、なぜか妹に嫌悪されている男だ。
しかし、そんな俺にも一つだけ特筆して好きなものがある――それは、とあるVTuberを推しているということだ。
配信者界隈に新星の如く現れた『さすまた』というVTuberは、圧倒的なカリスマで、俺を含めたネット民を熱狂させていた。
しかし、そんな『さすまた』の正体が義妹である京極涼香だということを、俺は知ることになる。
……そう、これは俺と兄嫌いの義妹による、破滅の物語――という名のラブコメである。
手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。
まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編6が完結しました!(2025.11.25)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる