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熊より恐ろしい者
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殺られる!
尻餅をついているこの体勢では熊の爪をかわすことは不可能だ。
だが木の枝で熊の攻撃を受け止められるか? いや、無理だ。攻撃を受け止めたら最後、木の枝ごと俺の腕は吹き飛ぶだろう。
「くっ! 残念だがここまでか」
ちくしょう。短い人生だったな。
俺が死んだらコト姉とユズは泣くかな? 泣くだろうな。
だが、紬ちゃんを逃がすという最低限の仕事は出来たから満足だ。
死の瞬間って走馬灯が見えるというけどそんなもの全く感じないし、こちらに向かってくる熊の爪がスローモーションに見えることもない。
これは後でわかったことだが、この時俺の中で走馬灯が起きなかったのはまだ死の瞬間が訪れていなかったからだった。
「リウトちゃんに! 何するのよぉぉぉ!」
突然辺りに殺気を含んだ声が木霊すると疾風の如く何かが森の中を駆け抜ける。
この声は⋯⋯だがハッキリと認識する前に親熊の爪が顔面に迫ってくる。
だが俺の思った通りの人の声ならこのまま黙って殺られる訳にはいかない。俺はダメ元で親熊の爪を防御するために木の枝を前方に構えるが、親熊の攻撃が俺に届くことはなかった。何故なら親熊の爪より先に、コト姉の右拳が親熊の顔面に突き刺さったからだ。
「ギャワァッ!」
親熊は声を上げながらゴミくずのようにゴロゴロと10メートル程転がっていく。
「リウトちゃん大丈夫!」
「コ、コト姉⋯⋯」
俺は親熊に殺される恐怖で身体が硬直していたが、何とか声を振り絞ってコト姉の名前を口にする。それにしても2メートル近くある熊が一撃で吹き飛ばされるなんて⋯⋯見た目は子供、頭脳は大人のアニメに出てくる幼なじみの少女もビックリだ。
「後はお姉ちゃんに任せて。リウトちゃんをいじめる熊の一匹や二匹、お姉ちゃんが倒しちゃうんだから」
コト姉は普段より真剣な表情で左手を前方に出し、右手は引いて握り拳を作る構えをする。
そう、コト姉は幼き頃から暴漢に襲われても返り討ちに出来るように空手を叩き込まれており、その腕前は既に師匠である親父を超えているらしい。ちなみにユズは昔合気道をやっていて、コト姉程ではないがかなりの実力者だ。そして俺は⋯⋯。
「ウゥ⋯⋯ヴゥ⋯⋯」
親熊は先程のコト姉の一撃が効いているのか、威嚇してきた時とは違い、弱々しい声を上げながら立ち上がる。
「まだやるの? 可哀想だけど次は本気でやるからね」
「えっ?」
俺はコト姉の言葉に対して間抜けな声を上げてしまう。
「さ、さっきの突きは本気じゃなかったの?」
「うん。さっきは熊からリウトちゃんを護るために、スピード重視の軽い突きだったから。次は一撃で仕留めるため、重い拳を打ち込むよ」
親熊を10メートル弱吹き飛ばした拳が本気じゃない⋯⋯だと⋯⋯。それなら本気で殴ったら親熊はどうなってしまうんだ!
とりあえず1つだけわかったことは、これからコト姉のことを怒らすのはやめよう⋯⋯殺されてしまう。
だがこの時コト姉の実力にびびっていたのは俺だけではなかった。
「グァ、グァォォッ⋯⋯」
親熊はコト姉を見て、自分が淘汰される側だと気づいたのか、唸り声にも力がない。
こうなると先程まで親熊が声を出す度に恐れをなしていたが、今は何だが哀れに見える。
そしてコト姉と親熊が視線を合わせて数秒が経つと親熊は背中を見せて子熊のいる方へと走っていく。だが何だか足取りがフラフラしていて、今にも躓きそうだった。
どうやら親熊はコト姉の一撃で足にきているようだ。
そして親熊は子熊の元にたどり着くとこちらを見向きもせず、森の中へと消えていった。
「た、助かったのか⋯⋯」
俺は3匹の熊が視界から消えるのを確認して、安堵のため息をつく。
親熊に襲われた時に死を覚悟していたがコト姉のお陰で助かった。これはもう一生頭が上がらないな。
「ありがとうコト姉」
「リウトちゃんのピンチを救うのはお姉ちゃんである私の役目だよ」
「正直死ぬかと思ったよ。それにしてもよくここがわかったね」
「それは⋯⋯」
コト姉が俺の問いに答えようとした時。
「兄さん、お姉ちゃーん」
「リウトお兄さん」
ユズが紬ちゃんの手を引いて茂みの奥から現れた。
「紬ちゃんからリウトちゃんが熊と一緒にいるって聞いて、お姉ちゃんだけ先に駆けつけて来たの」
「そうだったのか」
紬ちゃんを探して危険な目にあったけど紬ちゃんのお陰で助かったな。
「兄さん無茶し過ぎです」
「まあ無茶だったことは認めるけど仕方ない状況だったというか⋯⋯」
「それでもです! 1人で熊と戦おうなんて⋯⋯心配かけないで下さい」
ユズの目から光るものが見える。
泣かれてしまうともの凄く悪いことをした気分になってしまう。
「そんなだからお父さんに格闘技を教えてもらえないんですよ」
ユズの問いに返す言葉もない。
過去に二回、命を危険に晒すことがあったため、それまで親父から習っていた格闘技を教えてもらえなくなった。
理由は力を持ちすぎると余計危険なことに手を出すからだそうだ。
ちなみに過去にあった危険な出来事のうち1つは、川で溺れていた子を助けようとしたことでもう1つは⋯⋯。
「リウトお兄さんごめんなさい! 柚葉お姉さんから熊さんが危険なものだって教わりました」
紬ちゃんは泣きじゃくりながら、俺を危険な目に合わせてしまったことに対して頭を下げている。
「結果として俺も無事だったから。けど今度から1人でどこかに行っちゃだめだぞ」
「はい⋯⋯ごめんなさい」
それにしてもコト姉のお陰だけど紬ちゃんのことが護れて本当に良かった。もし何かあったらと思うと胸が張り裂けそうになる。
「お兄さん胸の所が⋯⋯」
「ああ、これ? 熊に引っ掻かれちゃったよ」
俺のTシャツの胸元は熊の爪によって無惨にも引き裂かれていた。
「大丈夫ですか!」
「大丈夫大丈夫。Tシャツが破れているだけで怪我をしている訳じゃないから」
俺はなるべく紬ちゃんに心配をかけまいと笑顔で話したが、紬ちゃんからより一層涙が溢れ出てしまった。
「本当に大丈夫だから! ほら見て! 何もなってないから」
俺は破れたTシャツを脱ぎ捨て上半身裸になり、無傷であることをアピールする。
「いや~ん、リウトちゃんのエッチ」
「兄さん! 公共の場で裸になるなんてハレンチです!」
コト姉は嬉しそうに、ユズは恥ずかしいのか両手で顔を隠している。だがユズはハレンチと言いつつ、指の隙間からこちらを見ていた。
言葉とは裏腹に男の身体に興味津々というわけか。意外にユズはむっつりなのかもしれない。
「う、うん⋯⋯確かにお兄さんの身体に傷はないね」
先程まで泣いていた紬ちゃんが俺の身体に傷がないのを見て顔を紅潮させていた⋯⋯紅潮させていた?
「リウトお兄さん⋯⋯不束者だけどこれからもよろしくね。私、リウトお兄さんのお嫁さんとしてがんばるね」
「「えっ!」」
俺が驚きの声を上げる前に、コト姉とユズが声を放つ。
「つ、紬ちゃん⋯⋯どういうことかな?」
俺は紬ちゃんの真意がわからず問い質す。
「だ、だって⋯⋯結婚する人にしか裸を見せちゃダメだってお姉ちゃんが言っていたよ。だから私、お兄さんの裸を見た責任をちゃんと取るよ」
紬ちゃんは恥ずかしいのか、頬を両手で押さえながら顔を赤くして嬉しそうに話す。
「それに10年経ったら付き合ってくれる約束もしているしね」
「た、確かにそれは言ったけど⋯⋯」
まさか冗談で言った言葉がフラグを立てることになるとは思いもしなかった。
「ちょっとリウトちゃん⋯⋯約束ってどういうことかな?」
「まさか兄さん、紬ちゃんをお嫁さんにするためにわざと脱いだの!」
コト姉とユズが殺気を振り撒きながら壮絶な勘違いをして俺を問い詰めてくる。
ひぃぃぃっ! 正直さっき会った2メートル級の熊より怖い。
「いや、だから⋯⋯その⋯⋯約束は冗談だったというか何というか⋯⋯」
「冗談だったの⋯⋯リウトお兄さんひどいです」
紬ちゃんは俺の言葉が嘘だったと気づいてシュンとなってしまう。
「お姉ちゃんは約束は護らないといけないと思うよ」
「そうですよ。幼気な女の子を騙すなんて兄さん最低です」
これは結局どっちに転んでも俺は問い詰められる未来しか待っていないということじゃないか。
何て答えればいい、何を答えてもバットエンドしか待っていない未来なんてあんまりだ。
だがその時、俺を助ける救いの声が聞こえてきた。
「つむぎー! つむぎー!」
「か、神奈さんだ! 紬ちゃんのことを心配しているから急いで知らせなくちゃ!」
俺は神奈さんの声を理由にこの場から逃げ出す。
「リウトちゃんどこに行くの!」
「逃げても無駄ですからね!」
「嘘をついた責任を取って私をお嫁さんにして下さい」
俺は後ろから何か聞こえてきたが聞こえない振りをして、一目散に駆け出すのであった。
―――――――――――――――
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尻餅をついているこの体勢では熊の爪をかわすことは不可能だ。
だが木の枝で熊の攻撃を受け止められるか? いや、無理だ。攻撃を受け止めたら最後、木の枝ごと俺の腕は吹き飛ぶだろう。
「くっ! 残念だがここまでか」
ちくしょう。短い人生だったな。
俺が死んだらコト姉とユズは泣くかな? 泣くだろうな。
だが、紬ちゃんを逃がすという最低限の仕事は出来たから満足だ。
死の瞬間って走馬灯が見えるというけどそんなもの全く感じないし、こちらに向かってくる熊の爪がスローモーションに見えることもない。
これは後でわかったことだが、この時俺の中で走馬灯が起きなかったのはまだ死の瞬間が訪れていなかったからだった。
「リウトちゃんに! 何するのよぉぉぉ!」
突然辺りに殺気を含んだ声が木霊すると疾風の如く何かが森の中を駆け抜ける。
この声は⋯⋯だがハッキリと認識する前に親熊の爪が顔面に迫ってくる。
だが俺の思った通りの人の声ならこのまま黙って殺られる訳にはいかない。俺はダメ元で親熊の爪を防御するために木の枝を前方に構えるが、親熊の攻撃が俺に届くことはなかった。何故なら親熊の爪より先に、コト姉の右拳が親熊の顔面に突き刺さったからだ。
「ギャワァッ!」
親熊は声を上げながらゴミくずのようにゴロゴロと10メートル程転がっていく。
「リウトちゃん大丈夫!」
「コ、コト姉⋯⋯」
俺は親熊に殺される恐怖で身体が硬直していたが、何とか声を振り絞ってコト姉の名前を口にする。それにしても2メートル近くある熊が一撃で吹き飛ばされるなんて⋯⋯見た目は子供、頭脳は大人のアニメに出てくる幼なじみの少女もビックリだ。
「後はお姉ちゃんに任せて。リウトちゃんをいじめる熊の一匹や二匹、お姉ちゃんが倒しちゃうんだから」
コト姉は普段より真剣な表情で左手を前方に出し、右手は引いて握り拳を作る構えをする。
そう、コト姉は幼き頃から暴漢に襲われても返り討ちに出来るように空手を叩き込まれており、その腕前は既に師匠である親父を超えているらしい。ちなみにユズは昔合気道をやっていて、コト姉程ではないがかなりの実力者だ。そして俺は⋯⋯。
「ウゥ⋯⋯ヴゥ⋯⋯」
親熊は先程のコト姉の一撃が効いているのか、威嚇してきた時とは違い、弱々しい声を上げながら立ち上がる。
「まだやるの? 可哀想だけど次は本気でやるからね」
「えっ?」
俺はコト姉の言葉に対して間抜けな声を上げてしまう。
「さ、さっきの突きは本気じゃなかったの?」
「うん。さっきは熊からリウトちゃんを護るために、スピード重視の軽い突きだったから。次は一撃で仕留めるため、重い拳を打ち込むよ」
親熊を10メートル弱吹き飛ばした拳が本気じゃない⋯⋯だと⋯⋯。それなら本気で殴ったら親熊はどうなってしまうんだ!
とりあえず1つだけわかったことは、これからコト姉のことを怒らすのはやめよう⋯⋯殺されてしまう。
だがこの時コト姉の実力にびびっていたのは俺だけではなかった。
「グァ、グァォォッ⋯⋯」
親熊はコト姉を見て、自分が淘汰される側だと気づいたのか、唸り声にも力がない。
こうなると先程まで親熊が声を出す度に恐れをなしていたが、今は何だが哀れに見える。
そしてコト姉と親熊が視線を合わせて数秒が経つと親熊は背中を見せて子熊のいる方へと走っていく。だが何だか足取りがフラフラしていて、今にも躓きそうだった。
どうやら親熊はコト姉の一撃で足にきているようだ。
そして親熊は子熊の元にたどり着くとこちらを見向きもせず、森の中へと消えていった。
「た、助かったのか⋯⋯」
俺は3匹の熊が視界から消えるのを確認して、安堵のため息をつく。
親熊に襲われた時に死を覚悟していたがコト姉のお陰で助かった。これはもう一生頭が上がらないな。
「ありがとうコト姉」
「リウトちゃんのピンチを救うのはお姉ちゃんである私の役目だよ」
「正直死ぬかと思ったよ。それにしてもよくここがわかったね」
「それは⋯⋯」
コト姉が俺の問いに答えようとした時。
「兄さん、お姉ちゃーん」
「リウトお兄さん」
ユズが紬ちゃんの手を引いて茂みの奥から現れた。
「紬ちゃんからリウトちゃんが熊と一緒にいるって聞いて、お姉ちゃんだけ先に駆けつけて来たの」
「そうだったのか」
紬ちゃんを探して危険な目にあったけど紬ちゃんのお陰で助かったな。
「兄さん無茶し過ぎです」
「まあ無茶だったことは認めるけど仕方ない状況だったというか⋯⋯」
「それでもです! 1人で熊と戦おうなんて⋯⋯心配かけないで下さい」
ユズの目から光るものが見える。
泣かれてしまうともの凄く悪いことをした気分になってしまう。
「そんなだからお父さんに格闘技を教えてもらえないんですよ」
ユズの問いに返す言葉もない。
過去に二回、命を危険に晒すことがあったため、それまで親父から習っていた格闘技を教えてもらえなくなった。
理由は力を持ちすぎると余計危険なことに手を出すからだそうだ。
ちなみに過去にあった危険な出来事のうち1つは、川で溺れていた子を助けようとしたことでもう1つは⋯⋯。
「リウトお兄さんごめんなさい! 柚葉お姉さんから熊さんが危険なものだって教わりました」
紬ちゃんは泣きじゃくりながら、俺を危険な目に合わせてしまったことに対して頭を下げている。
「結果として俺も無事だったから。けど今度から1人でどこかに行っちゃだめだぞ」
「はい⋯⋯ごめんなさい」
それにしてもコト姉のお陰だけど紬ちゃんのことが護れて本当に良かった。もし何かあったらと思うと胸が張り裂けそうになる。
「お兄さん胸の所が⋯⋯」
「ああ、これ? 熊に引っ掻かれちゃったよ」
俺のTシャツの胸元は熊の爪によって無惨にも引き裂かれていた。
「大丈夫ですか!」
「大丈夫大丈夫。Tシャツが破れているだけで怪我をしている訳じゃないから」
俺はなるべく紬ちゃんに心配をかけまいと笑顔で話したが、紬ちゃんからより一層涙が溢れ出てしまった。
「本当に大丈夫だから! ほら見て! 何もなってないから」
俺は破れたTシャツを脱ぎ捨て上半身裸になり、無傷であることをアピールする。
「いや~ん、リウトちゃんのエッチ」
「兄さん! 公共の場で裸になるなんてハレンチです!」
コト姉は嬉しそうに、ユズは恥ずかしいのか両手で顔を隠している。だがユズはハレンチと言いつつ、指の隙間からこちらを見ていた。
言葉とは裏腹に男の身体に興味津々というわけか。意外にユズはむっつりなのかもしれない。
「う、うん⋯⋯確かにお兄さんの身体に傷はないね」
先程まで泣いていた紬ちゃんが俺の身体に傷がないのを見て顔を紅潮させていた⋯⋯紅潮させていた?
「リウトお兄さん⋯⋯不束者だけどこれからもよろしくね。私、リウトお兄さんのお嫁さんとしてがんばるね」
「「えっ!」」
俺が驚きの声を上げる前に、コト姉とユズが声を放つ。
「つ、紬ちゃん⋯⋯どういうことかな?」
俺は紬ちゃんの真意がわからず問い質す。
「だ、だって⋯⋯結婚する人にしか裸を見せちゃダメだってお姉ちゃんが言っていたよ。だから私、お兄さんの裸を見た責任をちゃんと取るよ」
紬ちゃんは恥ずかしいのか、頬を両手で押さえながら顔を赤くして嬉しそうに話す。
「それに10年経ったら付き合ってくれる約束もしているしね」
「た、確かにそれは言ったけど⋯⋯」
まさか冗談で言った言葉がフラグを立てることになるとは思いもしなかった。
「ちょっとリウトちゃん⋯⋯約束ってどういうことかな?」
「まさか兄さん、紬ちゃんをお嫁さんにするためにわざと脱いだの!」
コト姉とユズが殺気を振り撒きながら壮絶な勘違いをして俺を問い詰めてくる。
ひぃぃぃっ! 正直さっき会った2メートル級の熊より怖い。
「いや、だから⋯⋯その⋯⋯約束は冗談だったというか何というか⋯⋯」
「冗談だったの⋯⋯リウトお兄さんひどいです」
紬ちゃんは俺の言葉が嘘だったと気づいてシュンとなってしまう。
「お姉ちゃんは約束は護らないといけないと思うよ」
「そうですよ。幼気な女の子を騙すなんて兄さん最低です」
これは結局どっちに転んでも俺は問い詰められる未来しか待っていないということじゃないか。
何て答えればいい、何を答えてもバットエンドしか待っていない未来なんてあんまりだ。
だがその時、俺を助ける救いの声が聞こえてきた。
「つむぎー! つむぎー!」
「か、神奈さんだ! 紬ちゃんのことを心配しているから急いで知らせなくちゃ!」
俺は神奈さんの声を理由にこの場から逃げ出す。
「リウトちゃんどこに行くの!」
「逃げても無駄ですからね!」
「嘘をついた責任を取って私をお嫁さんにして下さい」
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