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無自覚モード
閑話 迷い込んだ少年
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(鹿波視点)
私は九空財閥の一人娘。
父は国内の企業を牛耳る経営者。
母は私立九空学園という日本で最も有名な学園を運営している。
その娘に相応しいよう、小さい頃から複数習い事をさせられたり、家庭教師が何人も付いて勉強を教え込まれた。
そして私は、なんでも完璧にこなせる優等生となった。
九空家と関係がある周りの名家は、『鹿波がいれば、これからも九空家はこれからも安泰』などと、誇らしげに言う。
……正直、家のことなんてどうでもいい。
地位も名誉もどうでもいい。
つまらない日常が彩れば私は満足。
……誰か、私を楽しませてくれる人はいないのかしら。
私はその日、夜風に当たりたいと1人、家の周辺を歩いていた。
「ふぅ……」
浅いため息をつく。
面談や会食、接待。
いくら付き合いだからと言っても、優等生を演じるのも疲れる。
しばらく歩き、公園を横切ろうとした時、ベンチに誰か座っていることに気づいた。
公園内は薄暗く、染み入る太陽の光は滲んでいる。
「へくしゅん!」
そんな中、ベンチに座る——少年。
「どうしてこんなところに男が……」
黒髪黒目。
見た目は凡人。
良く言えば、可愛らしい顔寄りと言ったところだ。
この世界は男の数が極端に少ない。
ましてや、1人で出歩くなんて危険行為。
彼は、何やらキョロキョロ周りを見渡し、落ち着きがない。
まるで、初めてきた土地のような反応。
「ねぇ貴方、こんなところに1人でいると危ないわよ」
彼の前に立つと、さも嬉しそうに「パァァァ」と笑った。
――なんか犬みたい。
「お姉さん、ここはどこですか?」
「ここ? ここは日本よ」
記憶喪失なのだろうか?
私が答えると、彼は何やら「なるほど。異世界転生はできなかったのか……」と呟いた。
と、思えば何かを思い出したように声を上げる。
「っ! この世界の男女比の割合って分かりますか!」
「男女比? 男女比は1:10だけど……」
こんな常識、わざわざ教える必要あるか、と疑問に思う。
すると、彼は……
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「っ!?」
……びっくりした、急に大声を出すなんて……。
ガッツポーズをして何やら凄く喜んでいる。
だが、それも一瞬。
彼はすぐに我に帰ったように落ち着きを戻した。
「って、ここに一人ぼっちってことは、家族もいないし、家もないってことじゃん!? JKみたいな母親は! 独占欲が強い妹は! ハーレムどころじゃなーい!!」
と、慌てふためいた。
勉強やスポーツはマニュアル通りこなしていれば大体、攻略できる。
けれど……人間は予測不能。
1人1人個性が違えば、同じものは存在しない。
「……」
私は彼を目の前に考える。
彼には家族もいない。
家もない。
もはやホームレス状態。
このままだと、痴女に喰われて女性恐怖症になって可哀想。
それなら、恩を売って……。
……決めた。彼を私のものにしよう。
「ねぇ、貴方」
「ん?」
不思議そうな瞳をする彼に告げる。
「良かったら、うちに来る?」
*****
「早く帰れるよう頑張らないと」
大晴と通話した後、LIMEに内容を書き送信。
「私を楽しませてね、大晴」
ターゲット:七崎立夏
攻略期間:5日
作戦—————
私は九空財閥の一人娘。
父は国内の企業を牛耳る経営者。
母は私立九空学園という日本で最も有名な学園を運営している。
その娘に相応しいよう、小さい頃から複数習い事をさせられたり、家庭教師が何人も付いて勉強を教え込まれた。
そして私は、なんでも完璧にこなせる優等生となった。
九空家と関係がある周りの名家は、『鹿波がいれば、これからも九空家はこれからも安泰』などと、誇らしげに言う。
……正直、家のことなんてどうでもいい。
地位も名誉もどうでもいい。
つまらない日常が彩れば私は満足。
……誰か、私を楽しませてくれる人はいないのかしら。
私はその日、夜風に当たりたいと1人、家の周辺を歩いていた。
「ふぅ……」
浅いため息をつく。
面談や会食、接待。
いくら付き合いだからと言っても、優等生を演じるのも疲れる。
しばらく歩き、公園を横切ろうとした時、ベンチに誰か座っていることに気づいた。
公園内は薄暗く、染み入る太陽の光は滲んでいる。
「へくしゅん!」
そんな中、ベンチに座る——少年。
「どうしてこんなところに男が……」
黒髪黒目。
見た目は凡人。
良く言えば、可愛らしい顔寄りと言ったところだ。
この世界は男の数が極端に少ない。
ましてや、1人で出歩くなんて危険行為。
彼は、何やらキョロキョロ周りを見渡し、落ち着きがない。
まるで、初めてきた土地のような反応。
「ねぇ貴方、こんなところに1人でいると危ないわよ」
彼の前に立つと、さも嬉しそうに「パァァァ」と笑った。
――なんか犬みたい。
「お姉さん、ここはどこですか?」
「ここ? ここは日本よ」
記憶喪失なのだろうか?
私が答えると、彼は何やら「なるほど。異世界転生はできなかったのか……」と呟いた。
と、思えば何かを思い出したように声を上げる。
「っ! この世界の男女比の割合って分かりますか!」
「男女比? 男女比は1:10だけど……」
こんな常識、わざわざ教える必要あるか、と疑問に思う。
すると、彼は……
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「っ!?」
……びっくりした、急に大声を出すなんて……。
ガッツポーズをして何やら凄く喜んでいる。
だが、それも一瞬。
彼はすぐに我に帰ったように落ち着きを戻した。
「って、ここに一人ぼっちってことは、家族もいないし、家もないってことじゃん!? JKみたいな母親は! 独占欲が強い妹は! ハーレムどころじゃなーい!!」
と、慌てふためいた。
勉強やスポーツはマニュアル通りこなしていれば大体、攻略できる。
けれど……人間は予測不能。
1人1人個性が違えば、同じものは存在しない。
「……」
私は彼を目の前に考える。
彼には家族もいない。
家もない。
もはやホームレス状態。
このままだと、痴女に喰われて女性恐怖症になって可哀想。
それなら、恩を売って……。
……決めた。彼を私のものにしよう。
「ねぇ、貴方」
「ん?」
不思議そうな瞳をする彼に告げる。
「良かったら、うちに来る?」
*****
「早く帰れるよう頑張らないと」
大晴と通話した後、LIMEに内容を書き送信。
「私を楽しませてね、大晴」
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攻略期間:5日
作戦—————
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