真実の愛のおつりたち

毒島醜女

文字の大きさ
15 / 25

マルス神父

しおりを挟む

真夏でもないのに脂汗が止まらない。
教皇様からのお手紙越しに叱責を受け、手が震える。

私はブリジット公爵令嬢との婚約破棄を認め、ギルバート公子とチェルシー嬢との結婚を認めた。
それが公国の総意だと思ったからだ。
現に大公様に頭を下げられたのだ。受け入れるしかなかろう。

こんな結果になると知っていたら、私だって安請け合いなどしなかった。
まさか大公様が不貞行為をするとは。しかも未婚女性ならいざ知らず、名のある学者である男爵の妻というではないか!

机に突っ伏し、何度目か分からない溜め息を吐く。

公国の立場は更に危うくなっている。
宗主国である王国の血を継ぐジブリール公爵令嬢を蔑ろしただけでなく、正妃までも手酷い扱いをして王国へ帰したのだ。

我が国の外交は悲惨そのもので、ほとんどの港が封鎖状態である。

――だからって、私一人に責任があるわけではないだろう。そもそも、肉の業に翻弄された当人のせいでは?

そう自分に言い聞かせ、ハンカチで自分の手汗を拭く。
私は政治家ではない。あとこの事はもう、成り行きに任せるしかないだろう。

結論を出したところで、修道士が慌てた様子でやって来た。

「どうしたのだ」
「申し上げます、ウィメンズランドについて、ご報告が」

ウィメンズランド。
確か次期公子妃のお母上が計画している、女性だけの共同体であったか。

「ウィメンズランドにて、殺人事件が起きました」

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

嘘はあなたから教わりました

菜花
ファンタジー
公爵令嬢オリガは王太子ネストルの婚約者だった。だがノンナという令嬢が現れてから全てが変わった。平気で嘘をつかれ、約束を破られ、オリガは恋心を失った。カクヨム様でも公開中。

運命に勝てない当て馬令嬢の幕引き。

ぽんぽこ狸
恋愛
 気高き公爵家令嬢オリヴィアの護衛騎士であるテオは、ある日、主に天啓を受けたと打ち明けられた。  その内容は運命の女神の聖女として召喚されたマイという少女と、オリヴィアの婚約者であるカルステンをめぐって死闘を繰り広げ命を失うというものだったらしい。  だからこそ、オリヴィアはもう何も望まない。テオは立場を失うオリヴィアの事は忘れて、自らの道を歩むようにと言われてしまう。  しかし、そんなことは出来るはずもなく、テオも将来の王妃をめぐる運命の争いの中に巻き込まれていくのだった。  五万文字いかない程度のお話です。さくっと終わりますので読者様の暇つぶしになればと思います。

ヒロインは修道院に行った

菜花
ファンタジー
乙女ゲームに転生した。でも他の転生者が既に攻略キャラを攻略済みのようだった……。カクヨム様でも投稿中。

悪役令嬢は処刑されました

菜花
ファンタジー
王家の命で王太子と婚約したペネロペ。しかしそれは不幸な婚約と言う他なく、最終的にペネロペは冤罪で処刑される。彼女の処刑後の話と、転生後の話。カクヨム様でも投稿しています。

どうぞお好きに

音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。 王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。

悲恋を気取った侯爵夫人の末路

三木谷夜宵
ファンタジー
侯爵夫人のプリシアは、貴族令嬢と騎士の悲恋を描いた有名なロマンス小説のモデルとして持て囃されていた。 順風満帆だった彼女の人生は、ある日突然に終わりを告げる。 悲恋のヒロインを気取っていた彼女が犯した過ちとは──? カクヨムにも公開してます。

その支払い、どこから出ていると思ってまして?

ばぅ
恋愛
「真実の愛を見つけた!婚約破棄だ!」と騒ぐ王太子。 でもその真実の愛の相手に贈ったドレスも宝石も、出所は全部うちの金なんですけど!? 国の財政の半分を支える公爵家の娘であるセレスティアに見限られた途端、 王家に課せられた融資は 即時全額返済へと切り替わる。 「愛で国は救えませんわ。 救えるのは――責任と実務能力です。」 金の力で国を支える公爵令嬢の、 爽快ザマァ逆転ストーリー! ⚫︎カクヨム、なろうにも投稿中

処理中です...