123 / 123
もうすです!4
しおりを挟む
出産して次の日から沙羅の病室にはベビーベッドが運び込まれ、親子同室になった。
赤ちゃんの泣き声は、まるで子猫のようだ。
「ほぎゃぁ、ほぎゃぁ」
「はい、はい、先にオムツ交換しましょうね」
沙羅は、2回目の子育てと言っても、前回からかなり間が空いている。
なにせ、美幸は現在中学2年生の14歳なのだ。
久しぶりの子育てに沙羅は、おぼつかない手つきで、オムツを交換する。
最近のオムツは、随分薄くなったなぁっと関心したり、授乳用のクッションもなかなか便利で、子育ての情報も上書きが必要だった。
オムツを外したところで、沙羅はちょっと、にやついてしまう。
「足も小っちゃいくて、可愛い。ふふっ、男の子」
無事にオムツを替え、手を洗いと消毒をして、おっぱいをあげ始めた。
この時期、母乳は濃度が高く栄養たっぷりで、赤ちゃんの免疫力を高める働きがある。
赤ちゃんは、小さな口でやっと吸いついている。まだ、上手に吸えずに、必死の様子だ。その姿に母性本能を刺激される。
「ホント、何をしていても可愛いわね」
コンコンとノックをして、美幸が顔を出した。その後に慶太も続く。
「お母さん、プリン買って来たよ。あっ、赤ちゃんがいる」
「沙羅、会いに来たよ」
「ふたりとも、ありがとう。でも、まずは、手洗いうがいをお願いします」
「はぁい」と美幸はさっそく洗面台で、手洗いうがいを始めた。
子供を抱き母乳を与えている沙羅の姿が尊く見えて、慶太は思わず見とれてしまう。
「沙羅、ありがとう。そして、おつかれさまでした」
「うん、心配かけてごめんね」
「いや、沙羅こそ大変だったね。ふたりとも無事で良かった」
お腹がいっぱいになったのか、おっぱいから口を離し、ムニャムニャとおとなしくなった。
沙羅は赤ちゃんを縦抱っこにして、背中をポンポンと擦り、ゲップをさせる。
「慶太パパも抱っこしてみる?」
「そうだな。抱かせてもらおうかな」
「わ~、いいな。次は、わたしも抱っこする」
慶太はベッドに腰掛け、おっかなびっくりで赤ちゃん待ちの体制だ。
「上手く抱けるかな?」
広げた手の中に、沙羅がそっと赤ちゃんを受け渡す。
「大丈夫よ、頑張って新米パパさん。まだ、首が座っていないから、首の後ろを肘で支えるように、そうそう、で、右手をおしりに、うん。上手よ」
初めて抱く我が子は、小さくて、フニャフニャで、温かい。まだ、目は良く見えていないはずなのに、好奇心旺盛に瞳を動かしている。
「可愛いな」
「うん、世界で一番可愛いでしょう」
沙羅はエッヘンと胸を張る。
親バカになって良いのだ。子供に無限の愛情を注げるのは、親の特権なのだから。
「沙羅に似ている」
「あら、私は慶太に似ていると思う。赤ちゃんのわりに目鼻立ちがはっきりして、将来モテモテになるわね」
神様は器用なもので、慶太と沙羅、ふたりのいろんな部分を赤ちゃんに組み込んでいた。
「ねえ、赤ちゃんをなんて呼んであげたら良いの? 名前は? 」
美幸が、慶太に抱かれた赤ちゃんを覗き込みながら、首を傾げた。
「名前はね。慶太と相談していた名前の候補がいくつかあったでしょう」
「ああ、どの名前にしたんだ?」
「さんずいに奏でるの湊に、慶太から太の文字を一字もらって、『湊太』が、良いかなって。湊には人が集まるって意味もあるんですって、この子にはたくさんの人に囲まれて、楽しく暮らしてもらえたらと思っているの」
「うん、俺は、その名前良いと思う。湊太、パパだよ」
「湊太。そうちゃんかー。そうちゃん、お姉ちゃんだよー」
美幸の声掛けで反応したように、湊太が顔を向けた。
「いま呼んだら、わたしの事見てくれた!あっ、紀美子さんに赤ちゃん産まれたって言ったら、すごい喜んでいたよ。名前が決まったのも教えてあげようっと」
美幸は、パシャッと湊太の写真を撮って、さっそくメッセージを送る。
すると、直ぐに返信があった。
「紀美子さん、出産直後は疲れているだろうから、退院の時にお迎えに来てくれるって、おめでとう湊太君に会えるの楽しみにしてます。だって」
「萌咲も赤ちゃん見たいから、沙羅の体調が戻る頃に連絡入れるって言っていたのを伝えておくよ」
「みんなに祝福されて、幸せだわ」
ふわりと沙羅が微笑む。
慶太も湊太を抱き、目を細めながら笑う。
「ああ、幸せだな。新しい家族をみんなが祝福してくれている」
「うん」とうなずいていると横で美幸がスマホを持って張り切っている。
「4人で記念写真撮ろうよ。タイマー10秒でセットするね」
「えー、私すっぴんなのに……」
「いいじゃん!ほら、タイマー進んでる。ハナ、トゥル、セッ、はーと」
パシャッと笑顔が写真におさまった。
この幸せを笑顔をいつまでも忘れずに居よう。
私たちは信頼で結ばれた家族だ。
【終わり】
赤ちゃんの泣き声は、まるで子猫のようだ。
「ほぎゃぁ、ほぎゃぁ」
「はい、はい、先にオムツ交換しましょうね」
沙羅は、2回目の子育てと言っても、前回からかなり間が空いている。
なにせ、美幸は現在中学2年生の14歳なのだ。
久しぶりの子育てに沙羅は、おぼつかない手つきで、オムツを交換する。
最近のオムツは、随分薄くなったなぁっと関心したり、授乳用のクッションもなかなか便利で、子育ての情報も上書きが必要だった。
オムツを外したところで、沙羅はちょっと、にやついてしまう。
「足も小っちゃいくて、可愛い。ふふっ、男の子」
無事にオムツを替え、手を洗いと消毒をして、おっぱいをあげ始めた。
この時期、母乳は濃度が高く栄養たっぷりで、赤ちゃんの免疫力を高める働きがある。
赤ちゃんは、小さな口でやっと吸いついている。まだ、上手に吸えずに、必死の様子だ。その姿に母性本能を刺激される。
「ホント、何をしていても可愛いわね」
コンコンとノックをして、美幸が顔を出した。その後に慶太も続く。
「お母さん、プリン買って来たよ。あっ、赤ちゃんがいる」
「沙羅、会いに来たよ」
「ふたりとも、ありがとう。でも、まずは、手洗いうがいをお願いします」
「はぁい」と美幸はさっそく洗面台で、手洗いうがいを始めた。
子供を抱き母乳を与えている沙羅の姿が尊く見えて、慶太は思わず見とれてしまう。
「沙羅、ありがとう。そして、おつかれさまでした」
「うん、心配かけてごめんね」
「いや、沙羅こそ大変だったね。ふたりとも無事で良かった」
お腹がいっぱいになったのか、おっぱいから口を離し、ムニャムニャとおとなしくなった。
沙羅は赤ちゃんを縦抱っこにして、背中をポンポンと擦り、ゲップをさせる。
「慶太パパも抱っこしてみる?」
「そうだな。抱かせてもらおうかな」
「わ~、いいな。次は、わたしも抱っこする」
慶太はベッドに腰掛け、おっかなびっくりで赤ちゃん待ちの体制だ。
「上手く抱けるかな?」
広げた手の中に、沙羅がそっと赤ちゃんを受け渡す。
「大丈夫よ、頑張って新米パパさん。まだ、首が座っていないから、首の後ろを肘で支えるように、そうそう、で、右手をおしりに、うん。上手よ」
初めて抱く我が子は、小さくて、フニャフニャで、温かい。まだ、目は良く見えていないはずなのに、好奇心旺盛に瞳を動かしている。
「可愛いな」
「うん、世界で一番可愛いでしょう」
沙羅はエッヘンと胸を張る。
親バカになって良いのだ。子供に無限の愛情を注げるのは、親の特権なのだから。
「沙羅に似ている」
「あら、私は慶太に似ていると思う。赤ちゃんのわりに目鼻立ちがはっきりして、将来モテモテになるわね」
神様は器用なもので、慶太と沙羅、ふたりのいろんな部分を赤ちゃんに組み込んでいた。
「ねえ、赤ちゃんをなんて呼んであげたら良いの? 名前は? 」
美幸が、慶太に抱かれた赤ちゃんを覗き込みながら、首を傾げた。
「名前はね。慶太と相談していた名前の候補がいくつかあったでしょう」
「ああ、どの名前にしたんだ?」
「さんずいに奏でるの湊に、慶太から太の文字を一字もらって、『湊太』が、良いかなって。湊には人が集まるって意味もあるんですって、この子にはたくさんの人に囲まれて、楽しく暮らしてもらえたらと思っているの」
「うん、俺は、その名前良いと思う。湊太、パパだよ」
「湊太。そうちゃんかー。そうちゃん、お姉ちゃんだよー」
美幸の声掛けで反応したように、湊太が顔を向けた。
「いま呼んだら、わたしの事見てくれた!あっ、紀美子さんに赤ちゃん産まれたって言ったら、すごい喜んでいたよ。名前が決まったのも教えてあげようっと」
美幸は、パシャッと湊太の写真を撮って、さっそくメッセージを送る。
すると、直ぐに返信があった。
「紀美子さん、出産直後は疲れているだろうから、退院の時にお迎えに来てくれるって、おめでとう湊太君に会えるの楽しみにしてます。だって」
「萌咲も赤ちゃん見たいから、沙羅の体調が戻る頃に連絡入れるって言っていたのを伝えておくよ」
「みんなに祝福されて、幸せだわ」
ふわりと沙羅が微笑む。
慶太も湊太を抱き、目を細めながら笑う。
「ああ、幸せだな。新しい家族をみんなが祝福してくれている」
「うん」とうなずいていると横で美幸がスマホを持って張り切っている。
「4人で記念写真撮ろうよ。タイマー10秒でセットするね」
「えー、私すっぴんなのに……」
「いいじゃん!ほら、タイマー進んでる。ハナ、トゥル、セッ、はーと」
パシャッと笑顔が写真におさまった。
この幸せを笑顔をいつまでも忘れずに居よう。
私たちは信頼で結ばれた家族だ。
【終わり】
53
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(4件)
あなたにおすすめの小説
会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)
久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。
しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。
「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」
――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。
なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……?
溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。
王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ!
*全28話完結
*辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。
*他誌にも掲載中です。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
アラフォー×バツ1×IT社長と週末婚
日下奈緒
恋愛
仕事の契約を打ち切られ、年末をあと1か月残して就職活動に入ったつむぎ。ある日街で車に轢かれそうになるところを助けて貰ったのだが、突然週末婚を持ち出され……
Melty romance 〜甘S彼氏の執着愛〜
yuzu
恋愛
人数合わせで強引に参加させられた合コンに現れたのは、高校生の頃に少しだけ付き合って別れた元カレの佐野充希。適当にその場をやり過ごして帰るつもりだった堀沢真乃は充希に捕まりキスされて……
「オレを好きになるまで離してやんない。」
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
承認不要です。
47話タイトル、お母さんと悲しませる〜 → お母さんを
現代で子持ちヒロインのお話、アルファポリスではあまりないので毎日楽しみにしています。
慶太の再登場が遠そうで辛かったですが、急展開で続きが楽しみです。
感想コメントありがとうございます。
承認不要と言う事でしたが、お礼をさせて頂きたく思い承認させて頂きました。
誤字報告ありがとうございます。
「と・を」の打ち間違いが多いので😵💫助かりました。
ましてやタイトルのミス💦
恋慕情をお読み頂きありがとうございます。
大人の恋のお話をお楽しみ頂けて、嬉しく思います。
20万文字ぐらいのお話です。よろしければ、最後までお付き合いください。
ありがとうございました。
海月三五
はじめまして!投票しようと思ったら無いのですね。まだ途中ですが一気に引き込まれて仕事放棄して読ませていただきました。
不倫が発覚して、沙羅の気持ち分かる…と思いながら読んでます。特に娘に対して。
娘の希望に添っちゃう分かる。
でも泣き寝入りせず毅然と対処したのはとてもいいですね。こうありたい。
片桐さんは同時進行いるのかなぁ?
興信所の結果が楽しみ(≖ᴗ≖ )
慶太は沙羅が忘れられなかったのかなぁ?
今度は絶対逃したくないってのが分かりますね。これからも更新を楽しみにお待ちしていますね。
凛蓮月さん
はじめまして、感想コメントありがとうございます。
主人公・沙羅の生き方や考え方にスポットを当てたお話しに共感して頂けて、うれしく思います。
夫の政志は、どこにでもいるタイプですよね。家庭が平和でちょっと外に刺激を求めてしまう男性。でも、世の女性は、「男の甲斐性」などという戯言はゆるせないんですよ。
悩みながら、前へ進んで行く沙羅を応援してください。
それと、沙羅や慶太の故郷である金沢の魅力をお読み頂いた方に伝えて行ければと思っています。
コメントありがとうございました。
そうなんですよねぇ。
そういう傲慢男が多いのって未だ蔓延る家父長制が大きいと思うんですよね、さっさと廃れて選択制夫婦別姓も認められてほしい今日この頃。
そういうのもあって、この話の傲慢男の後悔と転落が見たい気持ちか強くってw
繰り返しになるけど 、帰る家が無いって馬鹿にしたの本当に許せない。
お前が帰る場所にならないといけなかっただろうがと( 'д'⊂ 彡☆))Д´) パーン
一番は主人公の幸せだけど、デリケートな時期の娘が出来るだけ傷つかないと良いなぁ。
この先、主人公とギクシャクしてほしくないけど、主人公もひよってほしくないしで……
いろいろこうだと良いなぁ〜はあるけど、これ以降は見守ります。
こんにちは。
感想コメントありがとうございます。
パーンって、絵文字が可愛くって、ほっこりしました(*^^*)
政志は、沙羅に後ろ盾が無い事をいいことに、やりたい放題ですよね。
政志は、優しいけど流されて易く、事なかれ主義。(大事をやらかしていますがww)
不倫さえしなければ、欠点はあるものの。そこそこ良い旦那さんだったんですよね。
娘の美幸ちゃんは、お母さん優しい譲りの性格に、お母さんから愛されているという自信があるので、芯の強い子です。
20万文字ぐらいのお話です。最後まで温かい目で見守ってくださるとうれしく思います。
今後ともよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。