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アニエス、フラれる
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プチ・エトワールは営業停止になった。
店の前に大きな『穴』が出来たせいだ。
店の前には人が立ち入らないよう魔力の
込められたロープが張られて数人の騎士が
見張りに立っている。
それにしても大きな『穴』だ。
今までで一番大きい。
「やっぱり営業停止になっちゃいましたね」
「それはそうでしょう。そうだ、店の者に
聞いたところ支店でも数に限りはあるが
本店のオリジナルレシピを扱っているそう
ですよ。良かったですね」
「わざわざ聞いて下さったのですか?
ありがとうございます」
やったー良かった。よし、手にいれるぞ!
姫様もあれが一番お好きなのだ。
数に限りがあるなら今日はもう無理だな。
日を改めて朝イチで並ぼう。
ああ~でも、明日はグレン様を待ち伏せ
しなきゃいけないんだった。
体が二つ欲しい。
しくしく。
「ふふ、アニエス嬢は表情豊かですね。
さっきから百面相になってますよ。本当に
面白い方だ」
えっ?顔に出てました?恥ずかしい。
「おや、今度は赤くなった。ふふ、可愛い
方だ。アニエス嬢。よろしかったら今度、
一緒にお茶でもいかがですか。実はシフォ
ンケーキのおいしい店がありまして、そこ
のケーキにかけるチョコレートソースが
絶品なのです。きっと気に入ると思います。
どうです?一緒に食べに行きませんか?」
マクドネル卿に誘われる。
シフォンケーキにチョコレートソース……。
おいしいそう。それはぜひ、ご一緒したい。
そう返事をしようとして止まる。
グレン様がいた。
公園の入り口付近。
少し遠いが間違いない。よし、捕まえるぞ。
と、走りだそうとしてグレン様の隣に女性
がいるのが目に入る。
綺麗な女の人。その距離の近さにドキリと
する。
顔を近づけ笑い合う。その親密さに胸が締
め付けられる気がした。
何、あれ。いやそりゃグレン様も成人男性
なんだから親しい女性の
一人や二人いても、おかしくはないが。
物凄くモヤモヤする。
なんだか、割りきれない気持ちで二人を見
ていると、やがて二人は抱き合った。
見たくないのに目が離せない。
ああ、そうかグレン様には他に好きな人が
いるのか。あれ?私……がっかりしてる?
なんだ。
そうか。
グレン様の方から近づいてきたから勘違い
してた。贈られる花。誘われる食事。
ドレスと指輪を贈られ、舞踏会で踊った。
てっきり好かれているのかと思ってしまっ
た。単なる社交辞令だった……恥ずかしい。
それともずっと私が
逃げ回っていたから嫌われた?
自分でもびっくりするぐらいショック。
グレン様に避けられるようになってから、
うすうす分かってはいたけど。
そうか、私はグレン様が好きなのか。
最悪だな。自覚した途端に失恋かぁ。
しかも恋人と抱き合っているところを
見るはめになるなんて。
なかなかのツイてなさにびっくりだ。
なるほど避けられてた原因はこれか。
他に好きな人がいるなら、そりゃ誤解され
たくないから距離を置くよね。
ふう。ため息をする。
「アニエス嬢、どうかしましたか?」
急に黙り込んだ私にマクドネル卿が声をか
ける。返事をしようとするけど、口が乾い
て声が出ない。
「おや?あれはグレン様。珍しいな女性と
一緒にいるなんて。あれはある程度親密な
関係ですね。気になります?アニエス嬢」
マクドネル卿はにっこり笑うと何故か私の
腰に手をまわし自分の方に引き寄せる。
えーと、……これ、どういう状況?
マクドネル卿に腰を抱かれ、密着している
「あの、マクドネル卿?」
「いきなり触れてしまい、すみません。
でも今、グレン様と目が合ったのでね。
ふふ、これですぐにこちらへ飛んで来る
はずです」
「え?」
あっ、本当だ。
険しい顔のグレン様がずんずん歩いて
こちらに来る。
ずっと避けられていたので会うのは久し
ぶりだ。少し痩せた?顔色も悪い。
目の下には隈ができている。
忙しくて睡眠不足なのかな。
甘い匂いがする。久しぶりに嗅ぐグレン様
の匂いだ。なんだか切ない。
少し胸が痛いけど、何とか二人で
話しをしなければ。
白竜の事を伝えなきゃ。
「ごきげんよう。グレン様」
「ごきげんに見えるか?」
見えませんね。むしろとても機嫌が悪い。
何よう。さっきまで美女相手に微笑んで
たクセに。
それに何でそんな遠くにいるの
話し難いんですけど。
しかも何で片手で鼻を押さえているのだろう。
「マクドネル、アニエスから離れろ」
地を這うような低い声だ。グレン様は金色
の瞳をギラつかせマクドネル卿を睨む。
でも睨まれたマクドネル卿は涼しい顔だ。
「グレン様、お忙しい中、女性と密会とは
なかなか隅に置けないですね。お互い邪魔
はよしましょう?」
「二度言わせる気か?マクドネル」
寒!何?私達の足元の地面が凍ってますけど。
いや、いや、グレン様
街中で魔力だだ漏らすのやめて下さい。
「グレン、どうしたの?」
あっ、さっきの美女がグレン様を追って来た。
慌てて走ったせいで乱れた金色のほつれ髪を
押さえる仕草が色っぽい。
うわ~立派なお胸だ。思わず自分の胸を見る。
ため息しかでない。
「すまない、カタリナ。少し向こうで待っ
ていてくれないか」
優しい声でグレン様はカタリナさん?に
声をかける。
何よう。こっちは凍らせたクセに。
「はい、はい。冗談ですよ。あなたが女性
の顔を曇らせるからお仕置きしただけです」
マクドネル卿は両手を挙げて私から離れた。
女性と密会ね。
そんな暇があるなら、私の話しを聞く時間
ぐらいあるよね?
「グレン様、内密にお話しがあります」
私はそう声をかけてグレン様に近寄る。
すると慌てたように、グレン様が
また鼻を押さえて後ずさる。
何よう。どういう事?
「すまない、アニエス近づかないでくれ!」
「は?何でですか」
どういう事よ。ええい。もっと近づいてやる。
更に接近すると堪らずグレン様が叫ぶ。
「頼むから近づくな!」
むか、むか、むか、むかむかする。
だからどういう事よ。
「何でですか!近づくなって。近くに寄ら
なきゃ話せないでしょう」
「駄目なんだ」
「何がです?」
「君のその匂いが駄目なんだ!」
「「「は?」」」
私、マクドネル卿、カタリナさんの声が重
なる。この人、今なんて言った?
匂い?匂いって何、私臭いの?
えっ、残念ピンクみたいに香水がじゃない
よね。だって私、香水つけてません。
私の体臭が駄目ってこと……。
知らなかった。私、臭いんだ。
ショックだ。恋を自覚した途端失恋した。
その相手から臭いと言われる。
初恋の相手からは背が高いと言ってフラれ、
二度目の相手から臭いとフラれる女。
それが私だ。
駄目だ泣きそう。視界が滲んできた。
「あー、グレン様?あんた一体、何を言い
出したんだ。女性に失礼でしょうが」
「そうよ?グレン、あなたどうしたの。
アニエスさん?大丈夫ですか」
う、ムリ。
ボロボロと涙が溢れる。
「えっ、アニエス?!いや、いや違うんだ。
いや、臭いとか言う意味じゃない。
いや、言葉が足りなかった。
──す、すまない!頼むから泣くな!!」
グレン様が慌てて何か言っているが、もう
耳に入らない。
踵を返し走り出す。もう、ここにはいられ
ない。
「ま、待てアニエス!」
「アニエス嬢、待って下さい!」
グレン様とマクドネル卿の制止する声が
聞こえるが知るもんか!
グレン様の馬鹿、馬鹿。ひどいよ。
涙が止まらない。
「グレン様の馬鹿、グレンの馬鹿」
泣きながら身体強化で走る。
一刻でもいいから逃げたかった。
今日、失恋しました。
相手から臭いと言われてフラれました。
店の前に大きな『穴』が出来たせいだ。
店の前には人が立ち入らないよう魔力の
込められたロープが張られて数人の騎士が
見張りに立っている。
それにしても大きな『穴』だ。
今までで一番大きい。
「やっぱり営業停止になっちゃいましたね」
「それはそうでしょう。そうだ、店の者に
聞いたところ支店でも数に限りはあるが
本店のオリジナルレシピを扱っているそう
ですよ。良かったですね」
「わざわざ聞いて下さったのですか?
ありがとうございます」
やったー良かった。よし、手にいれるぞ!
姫様もあれが一番お好きなのだ。
数に限りがあるなら今日はもう無理だな。
日を改めて朝イチで並ぼう。
ああ~でも、明日はグレン様を待ち伏せ
しなきゃいけないんだった。
体が二つ欲しい。
しくしく。
「ふふ、アニエス嬢は表情豊かですね。
さっきから百面相になってますよ。本当に
面白い方だ」
えっ?顔に出てました?恥ずかしい。
「おや、今度は赤くなった。ふふ、可愛い
方だ。アニエス嬢。よろしかったら今度、
一緒にお茶でもいかがですか。実はシフォ
ンケーキのおいしい店がありまして、そこ
のケーキにかけるチョコレートソースが
絶品なのです。きっと気に入ると思います。
どうです?一緒に食べに行きませんか?」
マクドネル卿に誘われる。
シフォンケーキにチョコレートソース……。
おいしいそう。それはぜひ、ご一緒したい。
そう返事をしようとして止まる。
グレン様がいた。
公園の入り口付近。
少し遠いが間違いない。よし、捕まえるぞ。
と、走りだそうとしてグレン様の隣に女性
がいるのが目に入る。
綺麗な女の人。その距離の近さにドキリと
する。
顔を近づけ笑い合う。その親密さに胸が締
め付けられる気がした。
何、あれ。いやそりゃグレン様も成人男性
なんだから親しい女性の
一人や二人いても、おかしくはないが。
物凄くモヤモヤする。
なんだか、割りきれない気持ちで二人を見
ていると、やがて二人は抱き合った。
見たくないのに目が離せない。
ああ、そうかグレン様には他に好きな人が
いるのか。あれ?私……がっかりしてる?
なんだ。
そうか。
グレン様の方から近づいてきたから勘違い
してた。贈られる花。誘われる食事。
ドレスと指輪を贈られ、舞踏会で踊った。
てっきり好かれているのかと思ってしまっ
た。単なる社交辞令だった……恥ずかしい。
それともずっと私が
逃げ回っていたから嫌われた?
自分でもびっくりするぐらいショック。
グレン様に避けられるようになってから、
うすうす分かってはいたけど。
そうか、私はグレン様が好きなのか。
最悪だな。自覚した途端に失恋かぁ。
しかも恋人と抱き合っているところを
見るはめになるなんて。
なかなかのツイてなさにびっくりだ。
なるほど避けられてた原因はこれか。
他に好きな人がいるなら、そりゃ誤解され
たくないから距離を置くよね。
ふう。ため息をする。
「アニエス嬢、どうかしましたか?」
急に黙り込んだ私にマクドネル卿が声をか
ける。返事をしようとするけど、口が乾い
て声が出ない。
「おや?あれはグレン様。珍しいな女性と
一緒にいるなんて。あれはある程度親密な
関係ですね。気になります?アニエス嬢」
マクドネル卿はにっこり笑うと何故か私の
腰に手をまわし自分の方に引き寄せる。
えーと、……これ、どういう状況?
マクドネル卿に腰を抱かれ、密着している
「あの、マクドネル卿?」
「いきなり触れてしまい、すみません。
でも今、グレン様と目が合ったのでね。
ふふ、これですぐにこちらへ飛んで来る
はずです」
「え?」
あっ、本当だ。
険しい顔のグレン様がずんずん歩いて
こちらに来る。
ずっと避けられていたので会うのは久し
ぶりだ。少し痩せた?顔色も悪い。
目の下には隈ができている。
忙しくて睡眠不足なのかな。
甘い匂いがする。久しぶりに嗅ぐグレン様
の匂いだ。なんだか切ない。
少し胸が痛いけど、何とか二人で
話しをしなければ。
白竜の事を伝えなきゃ。
「ごきげんよう。グレン様」
「ごきげんに見えるか?」
見えませんね。むしろとても機嫌が悪い。
何よう。さっきまで美女相手に微笑んで
たクセに。
それに何でそんな遠くにいるの
話し難いんですけど。
しかも何で片手で鼻を押さえているのだろう。
「マクドネル、アニエスから離れろ」
地を這うような低い声だ。グレン様は金色
の瞳をギラつかせマクドネル卿を睨む。
でも睨まれたマクドネル卿は涼しい顔だ。
「グレン様、お忙しい中、女性と密会とは
なかなか隅に置けないですね。お互い邪魔
はよしましょう?」
「二度言わせる気か?マクドネル」
寒!何?私達の足元の地面が凍ってますけど。
いや、いや、グレン様
街中で魔力だだ漏らすのやめて下さい。
「グレン、どうしたの?」
あっ、さっきの美女がグレン様を追って来た。
慌てて走ったせいで乱れた金色のほつれ髪を
押さえる仕草が色っぽい。
うわ~立派なお胸だ。思わず自分の胸を見る。
ため息しかでない。
「すまない、カタリナ。少し向こうで待っ
ていてくれないか」
優しい声でグレン様はカタリナさん?に
声をかける。
何よう。こっちは凍らせたクセに。
「はい、はい。冗談ですよ。あなたが女性
の顔を曇らせるからお仕置きしただけです」
マクドネル卿は両手を挙げて私から離れた。
女性と密会ね。
そんな暇があるなら、私の話しを聞く時間
ぐらいあるよね?
「グレン様、内密にお話しがあります」
私はそう声をかけてグレン様に近寄る。
すると慌てたように、グレン様が
また鼻を押さえて後ずさる。
何よう。どういう事?
「すまない、アニエス近づかないでくれ!」
「は?何でですか」
どういう事よ。ええい。もっと近づいてやる。
更に接近すると堪らずグレン様が叫ぶ。
「頼むから近づくな!」
むか、むか、むか、むかむかする。
だからどういう事よ。
「何でですか!近づくなって。近くに寄ら
なきゃ話せないでしょう」
「駄目なんだ」
「何がです?」
「君のその匂いが駄目なんだ!」
「「「は?」」」
私、マクドネル卿、カタリナさんの声が重
なる。この人、今なんて言った?
匂い?匂いって何、私臭いの?
えっ、残念ピンクみたいに香水がじゃない
よね。だって私、香水つけてません。
私の体臭が駄目ってこと……。
知らなかった。私、臭いんだ。
ショックだ。恋を自覚した途端失恋した。
その相手から臭いと言われる。
初恋の相手からは背が高いと言ってフラれ、
二度目の相手から臭いとフラれる女。
それが私だ。
駄目だ泣きそう。視界が滲んできた。
「あー、グレン様?あんた一体、何を言い
出したんだ。女性に失礼でしょうが」
「そうよ?グレン、あなたどうしたの。
アニエスさん?大丈夫ですか」
う、ムリ。
ボロボロと涙が溢れる。
「えっ、アニエス?!いや、いや違うんだ。
いや、臭いとか言う意味じゃない。
いや、言葉が足りなかった。
──す、すまない!頼むから泣くな!!」
グレン様が慌てて何か言っているが、もう
耳に入らない。
踵を返し走り出す。もう、ここにはいられ
ない。
「ま、待てアニエス!」
「アニエス嬢、待って下さい!」
グレン様とマクドネル卿の制止する声が
聞こえるが知るもんか!
グレン様の馬鹿、馬鹿。ひどいよ。
涙が止まらない。
「グレン様の馬鹿、グレンの馬鹿」
泣きながら身体強化で走る。
一刻でもいいから逃げたかった。
今日、失恋しました。
相手から臭いと言われてフラれました。
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