王宮侍女は穴に落ちる

斑猫

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アルバート 王位簒奪

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帝国からの宣戦布告なしの攻撃。
侵略行為から一夜明けた。
対応は後手後手に回った。

今頃御前会議だと?
宰相の首をすげ替えるか?

「父上が開戦に消極的で軍部との間で
調整がつかないらしいですね。
予定調和の会議などしている場合では
ないのに。どうします?兄上」

アーサーがのんびり聞いてくる。
首をすげ替えるのは宰相じゃなく国王か。
平和ボケにも程がある。

「お前は会議に出なくていい。それより
予定通り出立しろ。頼んだぞ。アーサー」

「はい、はい。人使いが荒いですね。
エリザベート姉上からの書状を隣国の国王
に渡せばいいんだよね。
そういえば、姉上は手紙で
油をかけて焼いちゃえと言ってたよ。
グレンの件で怒り心頭って感じ。
私が戻って来るまでには片して置いて
下さいね兄上」

アーサー。コイツもさらっと言うな。
案外、喰えない奴だよな。
昔はあんなに可愛いかったのに。

「しかし、エリザベートの奴。焼いちゃえ
って……相変わらずだなアイツ」

「使えないのを飾って置いてもね?」

「お前ら情はないのか。情は」

「情?あるよ。だから、歴史に残る愚王に
したくない。違う?」

「違わんな。帝国から妨害が入るかも
しれん。気を付けて行けよアーサー」

「分かりました。行ってきます。

アーサーは隣国へと出立した。それと
入れ違いでグレンとオーウェンが
やって来る。

なんだ?上機嫌なグレンに不機嫌な
オーウェン。

「それで?病気療養で、離宮に押し込めか?
それとも表向き病死扱いにしての、幽閉か?
どちらにするんだ」

そう、切り出したのはグレンだ。
コイツが一番優しいのが笑える。

「命を取るとは言わないんだな?恨みは
ないのか。生贄にされかけたクセに」

「お前達の父親だしな。
平時に於いては善い王だったと思うぞ?
だだし、乱世に於いては愚王だが。
人には向き不向きがある。向いていない
だけだ。命を取る程ではないだろう」

脚を組んで優雅にお茶を飲むグレンは
本当に上機嫌だ。

「ご機嫌だな?ゴドフリーが助かったのが
そんなに嬉しいか?
しかし良く助かったものだな。
辺境の知恵は侮れない。地方と中央の
パイプをもっと太くする必要があるな」

「ああ、奴が助かったのは奇跡に等しいな。
まあ、それも嬉しいがな。
アニエスに『行ってらっしゃい』のキスを
もらった。いいだろう?」

……成る程。それでグレンの機嫌が良くて、
オーウェンの機嫌が悪いのか。
すごい存在だよな、子リスちゃん。

「元婚約者に色々暴露されたらしいな?」

途端に機嫌が急下降するグレンに笑う。

「泣いたな。急に色々知ったために混乱して
いた。もう少し早くショックのないように
教えてやれば良かったのに。
オーウェン、そんなに嫌われたくないか?」

「……五年間、虐待されているのを知って
いながら餌として放置していたなんて
言えますか?お陰で帝国に通じる逆賊は
一網打尽できましたが。
あの時は……こんなに可愛い存在になる
なんて思ってもいませんでした。
私は嫌われましたかね?」

落ち込むオーウェン。
娘って言うのはそんなに可愛いもんなの
かね。俺には分からん。

「帝国と早々に、和平に持ち込むという
のはあまりにも愚策だ。昨日の急襲で一体、
どれだけの犠牲が出たと思っているんだ。
国民が納得せんだろう。しかも和平会談を
この王都でするだと。話にならん。
みすみす、敵を招き入れるつもりか。
これだけは絶対に阻止する」

「王都に魔物の侵入。それだけで怖じ気付く
あたりが救えないな。大人しく余生を
過ごしていただこう」

グレンが穏やかに言う。
生贄のために引き取られたグレン。
お前が良くても、俺達が許せない。
でも、グレンが生かせというなら
従おう。

「軍部はすでに、掌握済みです。宰相始め
大臣達も賛同しています。お好きどうぞ」

オーウェンが、そう告げる。
王家の影に見限られる王か。
確かにそれは飾りにしても使えない。

王位など面倒でしかないが仕方ない。
俺が王になった方が話が早い。

父の名の元召集された御前会議。
その席で父王は離宮での
療養となった。その後すぐに
誰も何も言わなかった。

俺は慌ただしく王位を継いで国王になった。
真っ先にした事は神殿の粛清と魔術師塔の
改革だ。

「今すぐ総ての情報を出せ。このままなら
この国は滅ぶ。
お前達が数百年、囲い込んだためにこの
ザマだ。責任は取ってもらうぞ」

神殿の大神官、幹部クラスの神官達を拘束
した。長き渡って生贄を捧げてきた奴等。
両手を後ろ手に縛られ跪かされている。

「何て事を!私達は国を思って秘密を
守ってきました。それを陽の目に晒すなど。
気は確かですか!」

「確かだからこそ、お前達を裁いている。
白竜はどこにいる?どこに封じ込められて
いるんだ。さっさと話せ。
いや、面倒だな?アルフォンス。やれ」

アルフォンスは人の記憶を弄れる。
口に聞くより頭に聞く方が早いし嘘がない。

「人使いが、荒いな国王様」

アルフォンスの軽口はご愛敬だ。

「やらないのか?」

にんまり笑って返す。

「やる、やる喜んでやる。じゃあ、ちょっと
失礼して頭の中身いじるよぅ」

にんまり笑って大神官を弄くった。



「予想はしてたけどまさかね」

「ああ、問題はどうやって白竜と接触するか
だな?神殿から第二王女宮の地下に繋がる
『穴』があるというが……行ったはいいが
帰って来れるのか?生贄は片道道中だしな。
数百年で行って戻って来たのは
アニエスだけだろう?」

「とりあえず、神殿の生贄の間を調べて
みるよ。魔術師塔の長老にも協力させる。
アルバートは王家の記録を調べてくれる?
王様だからもう色々調べられるでしょう?」

「そうだな。禁書の類いが読み放題だ」

「それはいいな」

「お前も見るか?」

「軽い王様だね。それでいいの?」

「一人で抱え込んでどうにもならないより
はいいだろう?」

「いいね。アルバート、いい王様になるよ。
きっとね」

こうして軽口を言える友がいる。
俺の財産だな。
友の期待は裏切りたくはない。

──白竜は第二王女宮の地下に封じ込め
られている。エリザベートは白竜の上で
寝起きしていた訳だ。
問題解決の糸口は見えない。
まだ、入り口に立っただけだ。

だが俺は、最善を尽くす。

そう誓った。









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