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アニエス、グレンとデートする 2
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馬車が規制線のある箇所を通る。
見張りに第三騎士団の騎士様が立っている。
この辺りから被害がひどいのかな?
プチ・エトワールの本店の辺りは、ほぼ壊滅
だそうだから。
あの『穴』はまだあそこにあるので、
いつまた、あそこから魔物や帝国兵が侵入
して来るか分からない。
──怖い。
気が付いたら、グレン様の服の裾を強く握り
しめていた。いけないシワになる。
慌てて離した。
ぐいっと腰に回されていたグレン様の手が、
更に私を引き寄せ、グレン様の胸に体が収
まる。無言だ。
大丈夫とは言ってはくれない。
それだけ状況は悪いのだろう。
グレン様の胸に頬を寄せ、魔道具屋さんに
着くまでずっと抱きしめていてもらった。
いい匂い。特に左胸の辺りが甘い。
不安を忘れグレン様の匂いに包まれて
うっとりする。酔いそう……。
グレン様が私の匂いで酔いそうと言って
いたけどこんな感じなのかな?
馬車が止まった。
従者の方が馬車の扉をノックする。
「到着しました。開けても大丈夫ですかぁ。
グレン様?」
あれ?なんか軽。
従者さんだよね?
「うるさい、さっさと開けろ」
グレン様が眉間にしわを寄せて返事をする。
馬車の扉が開けられる。
オレンジ色の短髪をツンツン立てた髪型、
瞳は黒。グレン様とはまた違うギラギラ系。
何だかとても目立つ容姿の騎士様がいた。
第一騎士団の黒い制服。なんか、無遠慮に
眺められている気がする。
第一騎士団副団長アドルフ・カーマイン様。
こうして間近でお目にかかるのは初めてだ。
「おや、とあえず人目に晒されても大丈夫
な格好ですね。ああ、良かった。てっきり、
先日のような所有印をベタベタつけている
かと思わず身構えましたよ」
……所有印ってキスマーク のこと?
アルマさんに教えてもらった。
それにしても、よく知らない人に言われる
の恥ずかしい。破壊力あるなぁ。
まぁ、知ってる人から言われるのも恥ずか
しいのだけれど。
それもこれも、グレン様め。
グレン様の馬鹿。グレン様の馬鹿、
グレン様の馬鹿。馬鹿ったら馬鹿。
私は真っ赤になってグレン様を睨む。
「なぜ、ここにいる。なんの用だ」
「っ、痛てぇ!何だあんた。人の足元凍ら
せんなよ!」
──ああ、グレン様がお怒りです。
怒こると魔力をだだ漏らすの。
カーマイン卿、私も足元凍らされた事、
ありますよ。一緒、一緒。
「じろじろ見るな。消えろ」
「あんたがなかなか会わせてくれないから、
ワザワザ顔を見に来てやったんだ。
ふん、少しは顔が可愛いかもしれんが、
大したことないな」
「そういう口をきくのが、分かっているから
会わせられないんだろ」
あれ?もしやこれは。私、嫌われてます?
初対面ですよね。何かしました私?
グレン様の副官様に嫌われる。
地味にショック。
「大体、この非常時に呑気にデート?
非常識だろ!あんた、いつからそんな
腑抜けになったんだよ」
「俺が腑抜けで国が滅ぶか?」
「滅ぶだろう!!とにかく俺はこんな女、
認めないからな」
でた!グレン様の謎の国が滅ぶ逆ギレ。
毎回謎だよね。あの切り返し。
──こんな女認めないかぁ。
すみませんね。こんな女で。
何か色々グレン様と言い合いをしている。
グレン様がピリピリしてる。
……残念だな。さっきまでは甘い雰囲気
だったのに。
確かに今は非常時だけどね。
でも、グレン様は腑抜けじゃないよ。
本当に失礼な人だな。
今日はグレン様と初めてのデート。
姫様達に、綺麗にしてもらって、とても
楽しみにしていたのに。
カーマイン卿のせいで台無しだ。
それでなくとも、皮膚がチリチリするの。
なんだろう。不安になる。
──なんか悲しくなってきた。
「……人の店の前で大騒ぎしたうえ、女を
泣かせるとはガキども、どういう了見だ?」
地を這うような低い声が聞こえる。
魔道具屋さんから体格のやたらいい御老人が
出てきた。
「悪いなモール」
グレン様が御老人に謝りながら私を
抱き寄せて顔をのぞき込む。
「泣くな。そんな顔を見るために連れ出した
訳じゃない。
あれは処分するから気にするな」
え?処分。しなくていいよ。そんな事。
大体、泣いてないから。
「泣いてません」
グレン様が渋い顔で私の目尻を親指で拭う。
あれ?もしや、涙出てました?
最近、涙腺が脆いなぁ。
涙腺って鍛えられるのかな?
涙腺に身体強化って掛けられるかなぁ。
「とりあえず店に入れ。いつまで女を立た
せておく気だ。気の利かない。
それからそこのオレンジ頭!
出禁だ。二度とうちの店の周りをうろちょろ
するなよ」
「え?!爺さんそりゃないぜ」
「うるせぇ!とっとと失せろ!!」
斧が二本、カーマイン卿目掛けて飛ん
でいく。
え?御老人、今どこから斧を出しました?
アルマさんと同じだ。
手品みたいに武器が出てくるの。
「危ねぇな!クソ、覚えてろよ」
カーマイン卿は典型的な、捨て台詞を吐いて
去って行った。
一体、彼に何をしたのでしょうか私は。
そして彼は何をしに来たのでしょうか。
何であんなに嫌われているのでしょう。
……解せぬ。
「すまない、アニエス。あれの事は気に
するな。アニエスだけじゃない。
あれは……女が嫌いなんだ。女とみれば、
ああやって突っ掛かる困った奴なんだ」
「はい?」
──女嫌い。何それ、私ぜんぜん悪くない。
な~んだ。ただの変わり者かぁ。
それにしても、こんな女認めないとか……。
ひょっとしたら彼はグレン様の事が好きな
のかしら?
この間のキスマークの件以来、アルマさんが
ちょっとは本を読んで、勉強しろと色々、
恋愛小説や閨事の本を貸してくれた。
その中に男性同士のものもあったよね。
……そうか、人生色々だな。
きっと嫉妬なのね。うん、許せる気がする。
うん、うん。……ムフフ、フフフ。
「何を想像したのか分かる気がする。寒い。
それ、違うからな?絶対に違うから」
「はい?」
なんかグレン様が否定しているけど、
もうすでに私の頭の中ではカーマイン卿は
ムフフなオレンジ頭として、定着しました。
ムフフなオレンジ、ムフフオレンジ。
命名しました。
「……楽しそうだから、まあ、いいか」
なんか、グレン様が諦めたぞ。
「機嫌がなおって良かったな。ほれ、お茶が
冷める。早く座りなさい」
モールさん?が椅子を勧めてくれる。
それにしても立派な体格だなぁ。
背は高いし、とにかく筋肉がご立派。
ムキムキだ。お歳はいくつなのでしょう。
「ところでお嬢さん。アルマは元気で
いるかな?」
「え?アルマさんですか。お元気ですよ。
アルマさんのお知り合いの方ですか?」
「孫みたいなものだな。アルマと、
アルフォンスを育てたのはワシだよ」
なんと?育ての親御さんでした!
じゃあ、ひょっとしたらアルマさんのあの、
どこからともなく武器を繰り出す特技は……。
「ひょっとして、アルマさんの武術の
お師匠様ですか?あの手品みたいに武器が
出てくるやつです」
「あああれな。そうだワシが教えたものだ」
オオ!!すごい人に、会えた!
あれ、すごいよね。アルマさん格好いいの。
アルマさんのお師匠様。すごい、すごい!
「……ああ、そんな尊敬に満ち溢れた目で
見られると、照れるな。グレン、この子
可愛いな。うん、いい靴を作ってやるか」
「モールなら気にいると思った。彼女は
かなり強い身体強化の遣い手だ。
足に負担がかかっていて、困っている。
よろしく頼むよ」
「とりあえず、お茶を飲み終わったら
フィッティングだな。お嬢さん、この菓子も
食べなさい。アルマの好物だ」
おいしい焼き菓子を食べて、アルマさんの
子供の頃の話しを色々聞いた。
お師匠様にアルフォンス様、アルマさんの
三人は帝国の没落貴族。奴隷として売られ
使役されていたところをグレン様に助けら
れて、このアルトリア王国に来たのだそう。
アルフォンス様が私の腕輪にとてもお怒り
だったのは、背景にそんな事があったから
なのかもしれない。
「ところでお嬢さんは魔力測定と属性検査
を受けていないらしいな?ちょうど検査用
の水晶がある。試しに測ってみるかね?」
ああ、それを受けなくて実家はお咎めを
受けたのだった。
オーウェン様にはまだ話を聞けていない。
「やめておけ。どうせ砕けるに決まって
いるから水晶の無駄だ。属性についても
多属性なのは分かっている」
グレン様が止めに入る。
砕けるって……。
「グレンと同じか?そりゃ気合いを入れて
靴を作らないといかんな」
モールさんがそう言うとお茶を飲んでいた
部屋から騎士団の演習場のような所に
一瞬で移動する。
椅子もテーブルもそのまま。私はまだ、
手にティーカップを持ったままだ。
「え?転移魔法?」
「空間魔法だ。魔道具屋の中にいくつかの
空間が重ねて存在しているんだ。
それを切り替えただけだ。面白いだろう」
グレン様が説明してくれる。
「アルマさんがいろんな所から武器を
出して来るのは同じ原理ですか?」
「そうだ。アルマは幼い頃に魔力を枯渇
している。だから今はほぼ魔力がない。
でも、武器を隠すぐらいの小さい
空間の重ね魔法はまだ使えているんだよ」
モールさんがいくつか靴を用意している。
「魔力の枯渇。枯渇したまま魔力が
戻らなかったのですか?」
「まあ、普通の魔力枯渇ではなかったから
戻らなかったのかも知れんな。命が助かっ
ただけでも、ありがたい事だった」
「普通の魔力枯渇じゃない?」
なんだかものすごく気になる。モールさん
に尋ねてみる。なんだろうドキドキする。
モールさんはグレン様の方を見る。
グレン様が頷くのを確認すると静かに
話し始めた。
「……アルマは竜に魔力を喰われたんだよ」
え?竜に魔力を喰われた。
どういう事?
グレン様を見ると優雅にお茶を飲んでいる。
グレン様は事情を知っている?
グレン様は、最初からこの話しを聞かせる
つもりでここに連れてきてくれたんだ。
椅子の上に置いた私の左手にグレン様が
そっと手を重ねる。
顔は正面を向いたまま。
一緒にいてくれる。
私はモールさんに、向き直り彼が話し
始めるのを静かに待った。
見張りに第三騎士団の騎士様が立っている。
この辺りから被害がひどいのかな?
プチ・エトワールの本店の辺りは、ほぼ壊滅
だそうだから。
あの『穴』はまだあそこにあるので、
いつまた、あそこから魔物や帝国兵が侵入
して来るか分からない。
──怖い。
気が付いたら、グレン様の服の裾を強く握り
しめていた。いけないシワになる。
慌てて離した。
ぐいっと腰に回されていたグレン様の手が、
更に私を引き寄せ、グレン様の胸に体が収
まる。無言だ。
大丈夫とは言ってはくれない。
それだけ状況は悪いのだろう。
グレン様の胸に頬を寄せ、魔道具屋さんに
着くまでずっと抱きしめていてもらった。
いい匂い。特に左胸の辺りが甘い。
不安を忘れグレン様の匂いに包まれて
うっとりする。酔いそう……。
グレン様が私の匂いで酔いそうと言って
いたけどこんな感じなのかな?
馬車が止まった。
従者の方が馬車の扉をノックする。
「到着しました。開けても大丈夫ですかぁ。
グレン様?」
あれ?なんか軽。
従者さんだよね?
「うるさい、さっさと開けろ」
グレン様が眉間にしわを寄せて返事をする。
馬車の扉が開けられる。
オレンジ色の短髪をツンツン立てた髪型、
瞳は黒。グレン様とはまた違うギラギラ系。
何だかとても目立つ容姿の騎士様がいた。
第一騎士団の黒い制服。なんか、無遠慮に
眺められている気がする。
第一騎士団副団長アドルフ・カーマイン様。
こうして間近でお目にかかるのは初めてだ。
「おや、とあえず人目に晒されても大丈夫
な格好ですね。ああ、良かった。てっきり、
先日のような所有印をベタベタつけている
かと思わず身構えましたよ」
……所有印ってキスマーク のこと?
アルマさんに教えてもらった。
それにしても、よく知らない人に言われる
の恥ずかしい。破壊力あるなぁ。
まぁ、知ってる人から言われるのも恥ずか
しいのだけれど。
それもこれも、グレン様め。
グレン様の馬鹿。グレン様の馬鹿、
グレン様の馬鹿。馬鹿ったら馬鹿。
私は真っ赤になってグレン様を睨む。
「なぜ、ここにいる。なんの用だ」
「っ、痛てぇ!何だあんた。人の足元凍ら
せんなよ!」
──ああ、グレン様がお怒りです。
怒こると魔力をだだ漏らすの。
カーマイン卿、私も足元凍らされた事、
ありますよ。一緒、一緒。
「じろじろ見るな。消えろ」
「あんたがなかなか会わせてくれないから、
ワザワザ顔を見に来てやったんだ。
ふん、少しは顔が可愛いかもしれんが、
大したことないな」
「そういう口をきくのが、分かっているから
会わせられないんだろ」
あれ?もしやこれは。私、嫌われてます?
初対面ですよね。何かしました私?
グレン様の副官様に嫌われる。
地味にショック。
「大体、この非常時に呑気にデート?
非常識だろ!あんた、いつからそんな
腑抜けになったんだよ」
「俺が腑抜けで国が滅ぶか?」
「滅ぶだろう!!とにかく俺はこんな女、
認めないからな」
でた!グレン様の謎の国が滅ぶ逆ギレ。
毎回謎だよね。あの切り返し。
──こんな女認めないかぁ。
すみませんね。こんな女で。
何か色々グレン様と言い合いをしている。
グレン様がピリピリしてる。
……残念だな。さっきまでは甘い雰囲気
だったのに。
確かに今は非常時だけどね。
でも、グレン様は腑抜けじゃないよ。
本当に失礼な人だな。
今日はグレン様と初めてのデート。
姫様達に、綺麗にしてもらって、とても
楽しみにしていたのに。
カーマイン卿のせいで台無しだ。
それでなくとも、皮膚がチリチリするの。
なんだろう。不安になる。
──なんか悲しくなってきた。
「……人の店の前で大騒ぎしたうえ、女を
泣かせるとはガキども、どういう了見だ?」
地を這うような低い声が聞こえる。
魔道具屋さんから体格のやたらいい御老人が
出てきた。
「悪いなモール」
グレン様が御老人に謝りながら私を
抱き寄せて顔をのぞき込む。
「泣くな。そんな顔を見るために連れ出した
訳じゃない。
あれは処分するから気にするな」
え?処分。しなくていいよ。そんな事。
大体、泣いてないから。
「泣いてません」
グレン様が渋い顔で私の目尻を親指で拭う。
あれ?もしや、涙出てました?
最近、涙腺が脆いなぁ。
涙腺って鍛えられるのかな?
涙腺に身体強化って掛けられるかなぁ。
「とりあえず店に入れ。いつまで女を立た
せておく気だ。気の利かない。
それからそこのオレンジ頭!
出禁だ。二度とうちの店の周りをうろちょろ
するなよ」
「え?!爺さんそりゃないぜ」
「うるせぇ!とっとと失せろ!!」
斧が二本、カーマイン卿目掛けて飛ん
でいく。
え?御老人、今どこから斧を出しました?
アルマさんと同じだ。
手品みたいに武器が出てくるの。
「危ねぇな!クソ、覚えてろよ」
カーマイン卿は典型的な、捨て台詞を吐いて
去って行った。
一体、彼に何をしたのでしょうか私は。
そして彼は何をしに来たのでしょうか。
何であんなに嫌われているのでしょう。
……解せぬ。
「すまない、アニエス。あれの事は気に
するな。アニエスだけじゃない。
あれは……女が嫌いなんだ。女とみれば、
ああやって突っ掛かる困った奴なんだ」
「はい?」
──女嫌い。何それ、私ぜんぜん悪くない。
な~んだ。ただの変わり者かぁ。
それにしても、こんな女認めないとか……。
ひょっとしたら彼はグレン様の事が好きな
のかしら?
この間のキスマークの件以来、アルマさんが
ちょっとは本を読んで、勉強しろと色々、
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その中に男性同士のものもあったよね。
……そうか、人生色々だな。
きっと嫉妬なのね。うん、許せる気がする。
うん、うん。……ムフフ、フフフ。
「何を想像したのか分かる気がする。寒い。
それ、違うからな?絶対に違うから」
「はい?」
なんかグレン様が否定しているけど、
もうすでに私の頭の中ではカーマイン卿は
ムフフなオレンジ頭として、定着しました。
ムフフなオレンジ、ムフフオレンジ。
命名しました。
「……楽しそうだから、まあ、いいか」
なんか、グレン様が諦めたぞ。
「機嫌がなおって良かったな。ほれ、お茶が
冷める。早く座りなさい」
モールさん?が椅子を勧めてくれる。
それにしても立派な体格だなぁ。
背は高いし、とにかく筋肉がご立派。
ムキムキだ。お歳はいくつなのでしょう。
「ところでお嬢さん。アルマは元気で
いるかな?」
「え?アルマさんですか。お元気ですよ。
アルマさんのお知り合いの方ですか?」
「孫みたいなものだな。アルマと、
アルフォンスを育てたのはワシだよ」
なんと?育ての親御さんでした!
じゃあ、ひょっとしたらアルマさんのあの、
どこからともなく武器を繰り出す特技は……。
「ひょっとして、アルマさんの武術の
お師匠様ですか?あの手品みたいに武器が
出てくるやつです」
「あああれな。そうだワシが教えたものだ」
オオ!!すごい人に、会えた!
あれ、すごいよね。アルマさん格好いいの。
アルマさんのお師匠様。すごい、すごい!
「……ああ、そんな尊敬に満ち溢れた目で
見られると、照れるな。グレン、この子
可愛いな。うん、いい靴を作ってやるか」
「モールなら気にいると思った。彼女は
かなり強い身体強化の遣い手だ。
足に負担がかかっていて、困っている。
よろしく頼むよ」
「とりあえず、お茶を飲み終わったら
フィッティングだな。お嬢さん、この菓子も
食べなさい。アルマの好物だ」
おいしい焼き菓子を食べて、アルマさんの
子供の頃の話しを色々聞いた。
お師匠様にアルフォンス様、アルマさんの
三人は帝国の没落貴族。奴隷として売られ
使役されていたところをグレン様に助けら
れて、このアルトリア王国に来たのだそう。
アルフォンス様が私の腕輪にとてもお怒り
だったのは、背景にそんな事があったから
なのかもしれない。
「ところでお嬢さんは魔力測定と属性検査
を受けていないらしいな?ちょうど検査用
の水晶がある。試しに測ってみるかね?」
ああ、それを受けなくて実家はお咎めを
受けたのだった。
オーウェン様にはまだ話を聞けていない。
「やめておけ。どうせ砕けるに決まって
いるから水晶の無駄だ。属性についても
多属性なのは分かっている」
グレン様が止めに入る。
砕けるって……。
「グレンと同じか?そりゃ気合いを入れて
靴を作らないといかんな」
モールさんがそう言うとお茶を飲んでいた
部屋から騎士団の演習場のような所に
一瞬で移動する。
椅子もテーブルもそのまま。私はまだ、
手にティーカップを持ったままだ。
「え?転移魔法?」
「空間魔法だ。魔道具屋の中にいくつかの
空間が重ねて存在しているんだ。
それを切り替えただけだ。面白いだろう」
グレン様が説明してくれる。
「アルマさんがいろんな所から武器を
出して来るのは同じ原理ですか?」
「そうだ。アルマは幼い頃に魔力を枯渇
している。だから今はほぼ魔力がない。
でも、武器を隠すぐらいの小さい
空間の重ね魔法はまだ使えているんだよ」
モールさんがいくつか靴を用意している。
「魔力の枯渇。枯渇したまま魔力が
戻らなかったのですか?」
「まあ、普通の魔力枯渇ではなかったから
戻らなかったのかも知れんな。命が助かっ
ただけでも、ありがたい事だった」
「普通の魔力枯渇じゃない?」
なんだかものすごく気になる。モールさん
に尋ねてみる。なんだろうドキドキする。
モールさんはグレン様の方を見る。
グレン様が頷くのを確認すると静かに
話し始めた。
「……アルマは竜に魔力を喰われたんだよ」
え?竜に魔力を喰われた。
どういう事?
グレン様を見ると優雅にお茶を飲んでいる。
グレン様は事情を知っている?
グレン様は、最初からこの話しを聞かせる
つもりでここに連れてきてくれたんだ。
椅子の上に置いた私の左手にグレン様が
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