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プリシラ、辺境にて
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王太子の命で、辺境に嫁いで早二年。
今日も使用人に地味に嫌がらせを
されている。
持ってこさせた資料が地味に糊づけされて
いて読めない。
子供じみた嫌がらせ。
はぁ、私はため息をつくと資料につけら
れた糊を粉にまで魔法で乾燥させて
ボロボロにしてから、難なく資料を読み始
める。私にこんな嫌がらせが効くわけない
でしょ。アホか。
辺境では王族や王都の者は嫌われている。
私の悪評や、王家、私の前の婚約者である
グレンの悪口。
……色々耳に入って来る。
元々決まっていた婚約を王家が無理やり
破棄させて、私が妻に収まった。
元の婚約者に同情的な使用人達は
私の事を心底嫌っている。(笑)
辺境の男は馬鹿だと聞いてきたけれど
うん。男どころかみんな馬鹿だ。
その筆頭が私の夫だ。
辺境伯、アイザック・ハーランド。
王命である私との婚姻がお気に召さない
彼は、初夜の床で
『君を愛する事はできない。私にはすでに
心に決めた人がいる。すまない』
と宣った。アホだ。
王命の意味も、自分達が今、置かれている
状況も全く理解していない。
私との婚姻で首の皮が繋がっているのにね。
まあ、元婚約者に心を残しているのは
分かるけど。
貴族だろ?わきまえろよ。アホが。
おかげで婚姻して二年、白い結婚だ。
「プリシラ様、小鼻が広がってますよ。
か弱い演技はまだ、続けて下さいね」
ザルツコードの次男、マリオンだ。
王家の影。実働部隊の長。
三男のマークともに王都から私に付いて
来てくれた。
しかし、いつ見てもオーウェンにそっくり。
ここの兄弟、みんな顔が一緒なので笑える。
「そろそろ、飽きちゃった。もう、そろそろ
いいんじゃない?もう大分、選別はついた
でしょう?」
私が馬鹿で弱い女のフリで餌をばら蒔き、
マリオン達が間諜を炙り出し排除する。
今のところは順調だ。
でも、もう、飽きた。
このところアイザックの私を見る瞳が揺れ
ている。
──どうする気だろう?
彼の思い人……元の婚約者である彼女は、
その親の子爵を含め帝国の間諜である事は
ほぼ間違いない。
アイザックも、そろそろ気づいている。
ただ、人の良い彼の事だ。
不味い選択をしなければ良いのだけれど。
そう実は私はアイザックを気に入っている。
少し残念でお人好しでお馬鹿さんだけれど
とても強い。
彼の魔物の討伐での戦いように思わず
見惚れた。
彼だけじゃない。
辺境の人は、女も男も子供もみんな強い。
皆、人が善く勤勉だ。
だからこそ、勿体ない。
間諜に踊らされて王家に反感を持つなんて。
確かに前の国王はイマイチだったけれど。
今の国王はアルバートだ。
絶対に分かりあえる。
──私は、中央と辺境を取り持つために
嫁いだ。この二年、きちんと妻としての
役割は果たしてきた。
彼に誠意を見せている。
認めてくれる人も増えた。
嫌悪感を顕にする人、嫌がらせをする人は
減った。
まぁ、まだいるけれど。どこにでも血の
巡りの悪い人間はいる。
ま、許そう。
問題は、アイザック。
夫はどうするつもりなのだろう?
彼女をとるの?
私をとるの?
白い結婚……あと一年で離婚できるけれど?
どうするつもりなのかしら。
──私の初恋はグレンだった。
澄ました顔をしているけれど、子供の頃から
沢山傷ついてきたのを知っている。
彼の婚約者になった時、誓った。
グレンを絶対に幸せにする。
そう、思っていたのに……。
十二の歳に初潮を迎えた。
わりと遅い大人の印。
その日、グレンに触れて衝撃を受けた。
──駄目。怖い、怖い、怖い、怖い。無理!
絡み付くグレンの魔力にとり殺されそう。
気持ち悪い。思わず、えずいた。
今まで平気だったのに……。
魔力封じの腕輪をしていないグレンに
どうしようもない嫌悪感がはしる。
──グレンと私が添い遂げるのは無理。
そう、悟ったあの日を忘れない。
グレンは少し悲しいそうに笑うと腕輪を
つけて、私から離れた。
あの顔が忘れられない。
……私じゃ駄目だった。
誰かグレンの側にいて?
グレンに家族を作ってあげて……。
私はその日、自分で自分の初恋に
幕を下ろした。
そして、二度目の恋はアイザック。
政略結婚した夫。
まだ、私の本性は見せていないし。
大きな猫を被ったままで接している。
どう、転ぶか分からない私の恋。
勝算は薄いかな?
ま、とりあえず、自分の仕事を優先しよう。
「そういえば、あなた達はグレンのお相手に
会って来たのよね?どうだった義妹さん」
「……めちゃくちゃ可愛いかったですよ。
グレン様と仲良くやってますが、うちの
父が邪魔して婚約できずにいますね」
「は?なんでオーウェンが邪魔するの?
グレンの相手にと養女にしたくせに」
「なんか情が移って嫁にやりたく無くなった
らしいです。あの父が……面白い事になって
ますよ。養女でも念願の可愛い娘ですから。
エリザベート様から、とても可愛いがられて
いますしね。裏表のない面白い娘ですよ」
「そうそれは良かった。会ってみたいなぁ。
辺境でもみんなから可愛いがられていた
みたいだし、お友達になりたいなぁ」
「あ~プリシラ様とは気が合いそうですよ。
あれで意外と気が強いみたいです。
マックスから色々聞いてます。
笑えますから、今度お話ししますね」
「うん。楽しみにしてる」
マリオンとおしゃべりをしていると、
部屋のドアがいきなりバタンと大きな音を
たてて開かれる。
ノックもなしに誰だよ。
「プリシラ様!黒い森の国境が破られ
ました。帝国の進軍です!!」
あ、マークだった。
慌ててるなぁ。駄目じゃん。王家の影の
クセに狼狽えたら。
「あ~とうとう来たかぁ。
よし、もういいよね?マリオン?」
「そうですね。こうなったらお好きに
どうぞ?マーク、王都に急使をたてろ。
忙しくなるぞ?」
「なんであなた達は落ち着いているん
ですかね?これから戦になるのに……」
マークがぼやく。
私とマリオンは視線を合わせお互い笑う。
ゴドフリー・カルヴァンが負傷。
戦列には加われない。
最初に聞いた時は覚悟を決めた。
でも……。
「ねえ、ゴドフリーが来れなければ誰が
代わりにくると思う?」
「……成る程。グレン様か。はは!
それはいい。帝国も気の毒に……」
「でしょ!さて、私は自分の仕事をするか」
右往左往する館をゆっくり移動する。
戦支度に気のたった騎士達が私を見ると
イラついた顔をする。
丸っとシカトし、夫を探す。
──いた。
元婚約者の子爵令嬢が腕にぶら下がって
戦支度の邪魔をしている。
ま、大方、『私を置いて行かないでぇ!』
とか、言ってんだろ。アホか。
男の仕事の邪魔すんじゃねえ。
私に気づいたアイザックが慌てて彼女を
引き剥がす。
遅いんだよ。ボケ。
「プリシラ!戦になる。ここは危ない。
自分の部屋から出てはいけないよ。
大丈夫、必ずこの砦は守り抜く。
気を確かに持つんだ!」
アイザックが気遣わしそうに私に声を
かける。
それが気に入らない騎士達がざわざわする。
「役に立たない女がうろうろするな!
こっちは戦支度で、忙しいんだ。
邪魔になる。とっと部屋へ戻れ!」
一人の騎士が私に食ってかかる。
騎士のクセに教育のなってない野郎だな。
女性に対する態度がなっていない。
私は、おもむろに無言でそいつの顎を拳で
下から殴る。
天井に突き刺さる騎士。
静まり返る場。
呆然とする騎士の中に私に以前、
『力のない者はいらん。王都に帰れ』
と言った家臣がいる。
そいつに向けて笑いかける。
「おい、そこの年寄り!
力のない者はいらんと言ったな?見せて
やろうじゃないか。力とやらを」
「は?こんな時に何を……」
「今から防衛結界を張る。王都からの援軍が
来るまで籠城だ。領民を砦に避難させろ」
「何を勝手な事を防衛結界だと?
大法螺をふくな!」
「おい。女に向かって態度悪いぞ。
確かめる前に嘘つき呼ばわりするなアホ!」
隣にいた熊顔の騎士が止めに入る。
お、コイツ見込みがあるじゃん。
と、思ったらこの熊はグレンのお相手
の父親のアシェンティ子爵だ。
へえ、馬鹿だと思ったけど、そうでもない。
それにこの熊、相当強い。
頭は微妙だけど。
ま、人の善い熊だ。
「はっ!女?ただの売女だろ!王都で
婚約者に捨てられて王命のごり押しで
お館様の妻に収まりやがって。
どんな放蕩すれば婚約破棄なんてされ
るんだ!この淫乱が!」
おお、辺境で流された私の噂丸っと信じて
いるのが笑える。
にっこり笑って蹴りを入れる。
吹き飛んで壁に埋まるジジイ。
「阿保ども!よく聞け。筆頭公爵家が長女
プリシラ。王命での婚姻に際し、国王から
の密命である。
今、この砦の責任者は私だ。
私に従えない者は逆賊である!
よって今すぐにここで死ね」
何人か掴みかかってきたがすべて床に
沈める。
「重ねて言う。王命である。控えろ!」
渋々だがその場の全員が私に膝を折る。
「マーク、馬鹿どもに治癒魔法かけとけ!
こんな奴等でも戦力は戦力だ」
「そう思うなら少しは加減してくださいよ」
マークのぼやきがうるさい。
「プ、プリシラ?」
アイザックがドン引きしながら私に
声をかける。
後ろで元婚約者の子爵令嬢が青い顔で
震えている。
ふふふ、二年、猫を被ったの。
ああ、疲れた。
ごめんね。あなたに陥れられるほど
私、弱くないの。
色々噂を流してくれたわね?
色々嫌がらせしてくれたわね?
色々刺客を送ってくれたわね?
ご苦労様。
「さて、アイザック。隣のお嬢さんを
拘束してくれるかしら?なぜかは言わなく
ても分かっているわよね?
さあ、私達。話合いましょう?」
アイザックは、青い顔でコクコクと頷く。
ああ、今回の恋も駄目だな。
完全にビビらせたわ。
ちえ。失恋かぁ。
ま、いいか。
次に行こう。次に。
私は防衛結界を張る。
十日はもつはず。
──グレン、待っているわ。
開戦当日の辺境の砦の館にて、
プリシラ。
今日も使用人に地味に嫌がらせを
されている。
持ってこさせた資料が地味に糊づけされて
いて読めない。
子供じみた嫌がらせ。
はぁ、私はため息をつくと資料につけら
れた糊を粉にまで魔法で乾燥させて
ボロボロにしてから、難なく資料を読み始
める。私にこんな嫌がらせが効くわけない
でしょ。アホか。
辺境では王族や王都の者は嫌われている。
私の悪評や、王家、私の前の婚約者である
グレンの悪口。
……色々耳に入って来る。
元々決まっていた婚約を王家が無理やり
破棄させて、私が妻に収まった。
元の婚約者に同情的な使用人達は
私の事を心底嫌っている。(笑)
辺境の男は馬鹿だと聞いてきたけれど
うん。男どころかみんな馬鹿だ。
その筆頭が私の夫だ。
辺境伯、アイザック・ハーランド。
王命である私との婚姻がお気に召さない
彼は、初夜の床で
『君を愛する事はできない。私にはすでに
心に決めた人がいる。すまない』
と宣った。アホだ。
王命の意味も、自分達が今、置かれている
状況も全く理解していない。
私との婚姻で首の皮が繋がっているのにね。
まあ、元婚約者に心を残しているのは
分かるけど。
貴族だろ?わきまえろよ。アホが。
おかげで婚姻して二年、白い結婚だ。
「プリシラ様、小鼻が広がってますよ。
か弱い演技はまだ、続けて下さいね」
ザルツコードの次男、マリオンだ。
王家の影。実働部隊の長。
三男のマークともに王都から私に付いて
来てくれた。
しかし、いつ見てもオーウェンにそっくり。
ここの兄弟、みんな顔が一緒なので笑える。
「そろそろ、飽きちゃった。もう、そろそろ
いいんじゃない?もう大分、選別はついた
でしょう?」
私が馬鹿で弱い女のフリで餌をばら蒔き、
マリオン達が間諜を炙り出し排除する。
今のところは順調だ。
でも、もう、飽きた。
このところアイザックの私を見る瞳が揺れ
ている。
──どうする気だろう?
彼の思い人……元の婚約者である彼女は、
その親の子爵を含め帝国の間諜である事は
ほぼ間違いない。
アイザックも、そろそろ気づいている。
ただ、人の良い彼の事だ。
不味い選択をしなければ良いのだけれど。
そう実は私はアイザックを気に入っている。
少し残念でお人好しでお馬鹿さんだけれど
とても強い。
彼の魔物の討伐での戦いように思わず
見惚れた。
彼だけじゃない。
辺境の人は、女も男も子供もみんな強い。
皆、人が善く勤勉だ。
だからこそ、勿体ない。
間諜に踊らされて王家に反感を持つなんて。
確かに前の国王はイマイチだったけれど。
今の国王はアルバートだ。
絶対に分かりあえる。
──私は、中央と辺境を取り持つために
嫁いだ。この二年、きちんと妻としての
役割は果たしてきた。
彼に誠意を見せている。
認めてくれる人も増えた。
嫌悪感を顕にする人、嫌がらせをする人は
減った。
まぁ、まだいるけれど。どこにでも血の
巡りの悪い人間はいる。
ま、許そう。
問題は、アイザック。
夫はどうするつもりなのだろう?
彼女をとるの?
私をとるの?
白い結婚……あと一年で離婚できるけれど?
どうするつもりなのかしら。
──私の初恋はグレンだった。
澄ました顔をしているけれど、子供の頃から
沢山傷ついてきたのを知っている。
彼の婚約者になった時、誓った。
グレンを絶対に幸せにする。
そう、思っていたのに……。
十二の歳に初潮を迎えた。
わりと遅い大人の印。
その日、グレンに触れて衝撃を受けた。
──駄目。怖い、怖い、怖い、怖い。無理!
絡み付くグレンの魔力にとり殺されそう。
気持ち悪い。思わず、えずいた。
今まで平気だったのに……。
魔力封じの腕輪をしていないグレンに
どうしようもない嫌悪感がはしる。
──グレンと私が添い遂げるのは無理。
そう、悟ったあの日を忘れない。
グレンは少し悲しいそうに笑うと腕輪を
つけて、私から離れた。
あの顔が忘れられない。
……私じゃ駄目だった。
誰かグレンの側にいて?
グレンに家族を作ってあげて……。
私はその日、自分で自分の初恋に
幕を下ろした。
そして、二度目の恋はアイザック。
政略結婚した夫。
まだ、私の本性は見せていないし。
大きな猫を被ったままで接している。
どう、転ぶか分からない私の恋。
勝算は薄いかな?
ま、とりあえず、自分の仕事を優先しよう。
「そういえば、あなた達はグレンのお相手に
会って来たのよね?どうだった義妹さん」
「……めちゃくちゃ可愛いかったですよ。
グレン様と仲良くやってますが、うちの
父が邪魔して婚約できずにいますね」
「は?なんでオーウェンが邪魔するの?
グレンの相手にと養女にしたくせに」
「なんか情が移って嫁にやりたく無くなった
らしいです。あの父が……面白い事になって
ますよ。養女でも念願の可愛い娘ですから。
エリザベート様から、とても可愛いがられて
いますしね。裏表のない面白い娘ですよ」
「そうそれは良かった。会ってみたいなぁ。
辺境でもみんなから可愛いがられていた
みたいだし、お友達になりたいなぁ」
「あ~プリシラ様とは気が合いそうですよ。
あれで意外と気が強いみたいです。
マックスから色々聞いてます。
笑えますから、今度お話ししますね」
「うん。楽しみにしてる」
マリオンとおしゃべりをしていると、
部屋のドアがいきなりバタンと大きな音を
たてて開かれる。
ノックもなしに誰だよ。
「プリシラ様!黒い森の国境が破られ
ました。帝国の進軍です!!」
あ、マークだった。
慌ててるなぁ。駄目じゃん。王家の影の
クセに狼狽えたら。
「あ~とうとう来たかぁ。
よし、もういいよね?マリオン?」
「そうですね。こうなったらお好きに
どうぞ?マーク、王都に急使をたてろ。
忙しくなるぞ?」
「なんであなた達は落ち着いているん
ですかね?これから戦になるのに……」
マークがぼやく。
私とマリオンは視線を合わせお互い笑う。
ゴドフリー・カルヴァンが負傷。
戦列には加われない。
最初に聞いた時は覚悟を決めた。
でも……。
「ねえ、ゴドフリーが来れなければ誰が
代わりにくると思う?」
「……成る程。グレン様か。はは!
それはいい。帝国も気の毒に……」
「でしょ!さて、私は自分の仕事をするか」
右往左往する館をゆっくり移動する。
戦支度に気のたった騎士達が私を見ると
イラついた顔をする。
丸っとシカトし、夫を探す。
──いた。
元婚約者の子爵令嬢が腕にぶら下がって
戦支度の邪魔をしている。
ま、大方、『私を置いて行かないでぇ!』
とか、言ってんだろ。アホか。
男の仕事の邪魔すんじゃねえ。
私に気づいたアイザックが慌てて彼女を
引き剥がす。
遅いんだよ。ボケ。
「プリシラ!戦になる。ここは危ない。
自分の部屋から出てはいけないよ。
大丈夫、必ずこの砦は守り抜く。
気を確かに持つんだ!」
アイザックが気遣わしそうに私に声を
かける。
それが気に入らない騎士達がざわざわする。
「役に立たない女がうろうろするな!
こっちは戦支度で、忙しいんだ。
邪魔になる。とっと部屋へ戻れ!」
一人の騎士が私に食ってかかる。
騎士のクセに教育のなってない野郎だな。
女性に対する態度がなっていない。
私は、おもむろに無言でそいつの顎を拳で
下から殴る。
天井に突き刺さる騎士。
静まり返る場。
呆然とする騎士の中に私に以前、
『力のない者はいらん。王都に帰れ』
と言った家臣がいる。
そいつに向けて笑いかける。
「おい、そこの年寄り!
力のない者はいらんと言ったな?見せて
やろうじゃないか。力とやらを」
「は?こんな時に何を……」
「今から防衛結界を張る。王都からの援軍が
来るまで籠城だ。領民を砦に避難させろ」
「何を勝手な事を防衛結界だと?
大法螺をふくな!」
「おい。女に向かって態度悪いぞ。
確かめる前に嘘つき呼ばわりするなアホ!」
隣にいた熊顔の騎士が止めに入る。
お、コイツ見込みがあるじゃん。
と、思ったらこの熊はグレンのお相手
の父親のアシェンティ子爵だ。
へえ、馬鹿だと思ったけど、そうでもない。
それにこの熊、相当強い。
頭は微妙だけど。
ま、人の善い熊だ。
「はっ!女?ただの売女だろ!王都で
婚約者に捨てられて王命のごり押しで
お館様の妻に収まりやがって。
どんな放蕩すれば婚約破棄なんてされ
るんだ!この淫乱が!」
おお、辺境で流された私の噂丸っと信じて
いるのが笑える。
にっこり笑って蹴りを入れる。
吹き飛んで壁に埋まるジジイ。
「阿保ども!よく聞け。筆頭公爵家が長女
プリシラ。王命での婚姻に際し、国王から
の密命である。
今、この砦の責任者は私だ。
私に従えない者は逆賊である!
よって今すぐにここで死ね」
何人か掴みかかってきたがすべて床に
沈める。
「重ねて言う。王命である。控えろ!」
渋々だがその場の全員が私に膝を折る。
「マーク、馬鹿どもに治癒魔法かけとけ!
こんな奴等でも戦力は戦力だ」
「そう思うなら少しは加減してくださいよ」
マークのぼやきがうるさい。
「プ、プリシラ?」
アイザックがドン引きしながら私に
声をかける。
後ろで元婚約者の子爵令嬢が青い顔で
震えている。
ふふふ、二年、猫を被ったの。
ああ、疲れた。
ごめんね。あなたに陥れられるほど
私、弱くないの。
色々噂を流してくれたわね?
色々嫌がらせしてくれたわね?
色々刺客を送ってくれたわね?
ご苦労様。
「さて、アイザック。隣のお嬢さんを
拘束してくれるかしら?なぜかは言わなく
ても分かっているわよね?
さあ、私達。話合いましょう?」
アイザックは、青い顔でコクコクと頷く。
ああ、今回の恋も駄目だな。
完全にビビらせたわ。
ちえ。失恋かぁ。
ま、いいか。
次に行こう。次に。
私は防衛結界を張る。
十日はもつはず。
──グレン、待っているわ。
開戦当日の辺境の砦の館にて、
プリシラ。
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王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…
ましろ
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