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大きな木の下で
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──落ちる。
ざざざ、ざざ、ばさ、ばき。
葉が擦れ、枝の折れる音。
いや、落ちてる。枝や葉が手足にあたる。
かろうじて、手にあたった枝を掴み
ぶら下がる。
は、危なかった。
片手で木の枝にぶら下がり、息を吐く。
……また、『穴』に落ちちゃった。
近くに街道が見える。
ここは王都郊外の森だ。
……また、この木?
グレン様と初めて会った時に私が
ぶら下がっていた木?
他の木と比べてもひときわ大きな木。
間違いない。
なんでいつもこの木にぶら下がるの。
木の真下を見る。
人がいる。一人は木の根元に跪き
地面に手を当て、青く輝く大きな魔法陣が
その周りに広がっている。
何?あれ?
その後ろに金髪の男がもう一人!!
目が合った瞬間、風の槍が飛んでくる。
げ!何、いきなり攻撃が来る?
辛うじて避け別の枝に飛び移る。
さっきまで掴まっていた枝が粉々になる。
何本も、繰り出される槍を掻い潜り
何とか地上に飛び降りる。
地上の男達と対峙する。
地面に手を当て青い魔法陣を展開する男は
依然としてそのまま魔法陣に魔力を
流し込んでいる。
もう一人の私に攻撃してきた男は、じっと
私を観察している。
背中に嫌な汗が伝う。
ヤバい。こいつ強い。
ああ、なんで武器を持ってないの私。
「こんな所に侍女?怪しいね。しかもその
身のこなし。ますます怪しい」
男が言う。
いや、こんな所で魔法陣展開してる奴らの
方が怪しいでしょう!
私は無言で相手を観察する。
二人とも、こんな所にいるのが場違いな
美貌の持ち主だ。
魔法陣を展開している男は長い青い髪。
フードで顔はよく見えないが口元だけでも
整った顔立ちなのが分かる。
黒いローブ姿。怪しさ満点だ。
あれ?でもなんだろう。
既視感があるのは……。
なんだろう?
あの青い髪。
どこかで見た気がする。
青色なんて珍しい髪色、どこで見たのか
思い出せない自分の残念な頭に
がっかりする。
私に攻撃してきた男は長い金髪を後ろで
一つにまとめ、白い外套を羽織っている。
身なりの良い高位貴族に見える。
深い青色の瞳。うわ、この人綺麗だ。
口元に笑みを浮かべ姿勢よく立っている。
優しげな表情。
うっかり、見惚れそうな美貌だ。
でも、目に殺気がある。
「ふぅん。可愛い娘だな。殺すのは勿体ない
けれどやっぱり殺しとくか。
その方が憂いがないだろう」
ゆっくり剣を抜き、こちらに歩いて来る。
やだ。こいつ怖い!
来ないで!
皮膚がチリチリする。
──来た!細身の体から繰り出される剣。
速い。軌道が見えない。紙一重で避けるが、
次々攻撃が来る。
逃げ惑いながらも私は男の頭上に雷撃、
正面からファイアトルネードをぶつける。
効く気がしない。
あ、不味い。間合いを詰められた。
斬られる!
無意識に転移魔法を使いかわす。
背後に回りこみ渾身の蹴りを入れる。
吹っ飛ぶ男。
すかさず水刃、雷撃、火炎弾、足元から
氷槍もぶち込んでやる。
よし、効いた!逃げるぞ!
転移魔法を連発して距離を稼ぐ。
あ~!辺境じゃもっと楽に跳べるのに!
王都じゃ上手く跳べない~!!
なんだあいつ!
無茶苦茶強いよ。
グレン様と戦っているみたい。
いや~~!!
必死に逃げた。
身体強化で爆走。転移魔法で距離稼ぎ。
あ、もうすぐ王都の中央門だ!やった!!
……やってない。
中央門の手前で男が二人、優雅に手を振って
いた。先回りされている。なんで?
両方ともニヤニヤしているのが気持ち悪い。
「やあ。すごい逃げ足だね。でも、簡単に
分かる道を逃げたら駄目でしょう?
はは!強いのに頭が残念な娘だね。
はい、ご苦労様」
金髪の男がにっこり笑う。
一瞬で目の前に立たれる。
あ、駄目。殺られる。
へえ、あんなに速く見えない剣の軌道
だったのに……。
斬られる時はゆっくり見えるんだね。
振り下ろされる剣先をただ見ていた。
──グレン様、ごめんね。
覚悟したその時、閃光が走り
爆風と共に男が吹き飛ばされる。
「……………あれ?」
何が起こったの。
私、まだ生きてる。
左手を見るとグレン様から貰った指輪。
嵌め込まれた黒い石が割れている。
あ、防御魔法の魔道具。
……守ってくれたんだ。
側にいないのに……グレン様。
あ、また涙が。
ぼろぼろ溢れる。駄目。
まだ、泣いてる場合じゃない。
逃げなきゃ!
走りだすが、すぐに捕まる。
こいつらも転移魔法を使ってる。
何者なの?
金髪の男が
血を吐きながら笑う。
怖い。怖い。怖いよ。
「あはははは!!防御魔法の魔道具ね?
込められた魔力がグレンとアルフォンスの
だったね!あははは!!」
……今、こいつ。
グレン様とアルフォンス様の名前を呼んだ?
「成る程キャラメル色のその髪!
君が子リスちゃんか。いつもエリザベートが
世話になっているね。
アニエス・ザルツコード侯爵令嬢?」
「……あなたは一体、誰ですか?」
怪我した体に自分で治癒魔法をかけながら
笑う金髪の男。
げ!完璧な治癒魔法。
こいつ不死身なのでは……。
だらだらと私は冷や汗をかく。
「ふふふ。はじめまして?
ロイシュタール・クラレンス・キルバン
隣国、キルバンの国王。
エリザベートの婚約者だよ」
嘘でしょ?…………姫様。
不敬罪覚悟で申し上げます。
──男の趣味が悪いです!
「あれ?何か男の趣味が悪いとか思ってる?
本当だ。思っている事がモロ分かりだ!
ははは、面白いねえ。君。ふふふ。
いやしかし、危なかったなぁ。
もう少しで殺っちゃうところだった。
その指輪に感謝だね。
うっかり、殺したらエリザベートに
口をきいてもらえなくなるところだった。
ついでにグレンに殺されるな」
何、こいつ。
国王だかなんだか知らないがキライだ。
ふらりとする。
あ、不味い。限界だ。
眩暈がする。
「おや、顔色が悪いね?大丈夫かい」
──嫌だ。
こんな奴の前で意識をなくしたくない。
気力を振り絞り踏ん張る。
クラクラする。クラクラ。
と思ったらふわりと何かにくるまれる。
あれ?
外套でくるまれて抱き上げられている。
抱き上げる人の顔を見て私は
息を吐いた。
涙が頬を伝う。
ああ、お迎えだ。
「………マックス義兄様」
マックス義兄様が固い表情で私を見下ろす。
「今は話さなくていいよ?アニエス。
無理したね?もう寝てもいいよ。
遅くなってごめんね。迎えに来たよ」
「うん。義兄様ありがとう。私、もう無理」
マックス義兄様を見て安心したとたん
私は意識を手放した。
ざざざ、ざざ、ばさ、ばき。
葉が擦れ、枝の折れる音。
いや、落ちてる。枝や葉が手足にあたる。
かろうじて、手にあたった枝を掴み
ぶら下がる。
は、危なかった。
片手で木の枝にぶら下がり、息を吐く。
……また、『穴』に落ちちゃった。
近くに街道が見える。
ここは王都郊外の森だ。
……また、この木?
グレン様と初めて会った時に私が
ぶら下がっていた木?
他の木と比べてもひときわ大きな木。
間違いない。
なんでいつもこの木にぶら下がるの。
木の真下を見る。
人がいる。一人は木の根元に跪き
地面に手を当て、青く輝く大きな魔法陣が
その周りに広がっている。
何?あれ?
その後ろに金髪の男がもう一人!!
目が合った瞬間、風の槍が飛んでくる。
げ!何、いきなり攻撃が来る?
辛うじて避け別の枝に飛び移る。
さっきまで掴まっていた枝が粉々になる。
何本も、繰り出される槍を掻い潜り
何とか地上に飛び降りる。
地上の男達と対峙する。
地面に手を当て青い魔法陣を展開する男は
依然としてそのまま魔法陣に魔力を
流し込んでいる。
もう一人の私に攻撃してきた男は、じっと
私を観察している。
背中に嫌な汗が伝う。
ヤバい。こいつ強い。
ああ、なんで武器を持ってないの私。
「こんな所に侍女?怪しいね。しかもその
身のこなし。ますます怪しい」
男が言う。
いや、こんな所で魔法陣展開してる奴らの
方が怪しいでしょう!
私は無言で相手を観察する。
二人とも、こんな所にいるのが場違いな
美貌の持ち主だ。
魔法陣を展開している男は長い青い髪。
フードで顔はよく見えないが口元だけでも
整った顔立ちなのが分かる。
黒いローブ姿。怪しさ満点だ。
あれ?でもなんだろう。
既視感があるのは……。
なんだろう?
あの青い髪。
どこかで見た気がする。
青色なんて珍しい髪色、どこで見たのか
思い出せない自分の残念な頭に
がっかりする。
私に攻撃してきた男は長い金髪を後ろで
一つにまとめ、白い外套を羽織っている。
身なりの良い高位貴族に見える。
深い青色の瞳。うわ、この人綺麗だ。
口元に笑みを浮かべ姿勢よく立っている。
優しげな表情。
うっかり、見惚れそうな美貌だ。
でも、目に殺気がある。
「ふぅん。可愛い娘だな。殺すのは勿体ない
けれどやっぱり殺しとくか。
その方が憂いがないだろう」
ゆっくり剣を抜き、こちらに歩いて来る。
やだ。こいつ怖い!
来ないで!
皮膚がチリチリする。
──来た!細身の体から繰り出される剣。
速い。軌道が見えない。紙一重で避けるが、
次々攻撃が来る。
逃げ惑いながらも私は男の頭上に雷撃、
正面からファイアトルネードをぶつける。
効く気がしない。
あ、不味い。間合いを詰められた。
斬られる!
無意識に転移魔法を使いかわす。
背後に回りこみ渾身の蹴りを入れる。
吹っ飛ぶ男。
すかさず水刃、雷撃、火炎弾、足元から
氷槍もぶち込んでやる。
よし、効いた!逃げるぞ!
転移魔法を連発して距離を稼ぐ。
あ~!辺境じゃもっと楽に跳べるのに!
王都じゃ上手く跳べない~!!
なんだあいつ!
無茶苦茶強いよ。
グレン様と戦っているみたい。
いや~~!!
必死に逃げた。
身体強化で爆走。転移魔法で距離稼ぎ。
あ、もうすぐ王都の中央門だ!やった!!
……やってない。
中央門の手前で男が二人、優雅に手を振って
いた。先回りされている。なんで?
両方ともニヤニヤしているのが気持ち悪い。
「やあ。すごい逃げ足だね。でも、簡単に
分かる道を逃げたら駄目でしょう?
はは!強いのに頭が残念な娘だね。
はい、ご苦労様」
金髪の男がにっこり笑う。
一瞬で目の前に立たれる。
あ、駄目。殺られる。
へえ、あんなに速く見えない剣の軌道
だったのに……。
斬られる時はゆっくり見えるんだね。
振り下ろされる剣先をただ見ていた。
──グレン様、ごめんね。
覚悟したその時、閃光が走り
爆風と共に男が吹き飛ばされる。
「……………あれ?」
何が起こったの。
私、まだ生きてる。
左手を見るとグレン様から貰った指輪。
嵌め込まれた黒い石が割れている。
あ、防御魔法の魔道具。
……守ってくれたんだ。
側にいないのに……グレン様。
あ、また涙が。
ぼろぼろ溢れる。駄目。
まだ、泣いてる場合じゃない。
逃げなきゃ!
走りだすが、すぐに捕まる。
こいつらも転移魔法を使ってる。
何者なの?
金髪の男が
血を吐きながら笑う。
怖い。怖い。怖いよ。
「あはははは!!防御魔法の魔道具ね?
込められた魔力がグレンとアルフォンスの
だったね!あははは!!」
……今、こいつ。
グレン様とアルフォンス様の名前を呼んだ?
「成る程キャラメル色のその髪!
君が子リスちゃんか。いつもエリザベートが
世話になっているね。
アニエス・ザルツコード侯爵令嬢?」
「……あなたは一体、誰ですか?」
怪我した体に自分で治癒魔法をかけながら
笑う金髪の男。
げ!完璧な治癒魔法。
こいつ不死身なのでは……。
だらだらと私は冷や汗をかく。
「ふふふ。はじめまして?
ロイシュタール・クラレンス・キルバン
隣国、キルバンの国王。
エリザベートの婚約者だよ」
嘘でしょ?…………姫様。
不敬罪覚悟で申し上げます。
──男の趣味が悪いです!
「あれ?何か男の趣味が悪いとか思ってる?
本当だ。思っている事がモロ分かりだ!
ははは、面白いねえ。君。ふふふ。
いやしかし、危なかったなぁ。
もう少しで殺っちゃうところだった。
その指輪に感謝だね。
うっかり、殺したらエリザベートに
口をきいてもらえなくなるところだった。
ついでにグレンに殺されるな」
何、こいつ。
国王だかなんだか知らないがキライだ。
ふらりとする。
あ、不味い。限界だ。
眩暈がする。
「おや、顔色が悪いね?大丈夫かい」
──嫌だ。
こんな奴の前で意識をなくしたくない。
気力を振り絞り踏ん張る。
クラクラする。クラクラ。
と思ったらふわりと何かにくるまれる。
あれ?
外套でくるまれて抱き上げられている。
抱き上げる人の顔を見て私は
息を吐いた。
涙が頬を伝う。
ああ、お迎えだ。
「………マックス義兄様」
マックス義兄様が固い表情で私を見下ろす。
「今は話さなくていいよ?アニエス。
無理したね?もう寝てもいいよ。
遅くなってごめんね。迎えに来たよ」
「うん。義兄様ありがとう。私、もう無理」
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