王宮侍女は穴に落ちる

斑猫

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プリシラ、辺境にて 2

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帝国と開戦してはや、八日。
砦に領民を避難させ籠城。帝国は躍起に
なって砦を攻撃しているが、私の防衛結界で
今のところ全て防いでいる。
ただ、帝国兵だけでなく魔物も一緒に攻撃
してくるのはなぜ?帝国は魔物を使役して
いる。

どうなっているの?

強い者好きの辺境。
私を見る砦の者達の目が変わった。

当たり前だ。
私はこの日のために辺境へ嫁いだのだから。

王都からの援軍が到着するまで、
一人の犠牲も出さない。
そのために強い防衛結界を張れる私が、
辺境にいる大義が必要だった。
そのための婚姻。
国防の要である辺境。
国王アルバートがどれだけ大切に思っているか声を大にして言いたい。

アルバートからの私への宿題。
帝国の間諜の排除は順調。王都との仲介は
微妙かな。後は魔力の強い子供を産むのは
完全にアウト。
アルバート、宿題が多いよ。

「プリシラ様、帝国の軍勢がどこからか
攻撃されています。て、敵が凍っています。
どうなっているんだ!」

ん!報告が来た。
氷結魔法!──氷結のグレン。
来た!待ちに待った援軍だ。

「合図の後、防衛結界、一時解除。
我々も応戦する。兵を出せ!」

私は側にいた騎士に命じ、夫を見る。

「プリシラ、君のお陰で援軍が来るまで
一人の犠牲も出ていない。礼を言う。
そして、改めて謝罪を。すまなかった。
俺も出陣する。この戦が終わったら
もう一度、話し合いたい。頼む!」

夫のアイザックが私に頭を下げる。
私に完全にびびったかと思ったら割りと
根性が据わっていた。一気に歩み寄ってきた。
うん。私も話したい。
だから、無事に帰って来てね。

「ご武運を。無事のお戻りをお待ちして
います。ふふ、頑張ってね。アイザック」

笑顔で夫を見送る。
アイザックも笑顔だ。
ふふ、可笑しいの。あんなに手を振って。

「へえ。白い結婚ニ年で関係改善ですか。
なんだ、離縁したら、あなたを貰おうと
思ったのに残念ですね」

私達の様子を見ていたマリオンがぼそりと
言う。うん。私もちょっとだけ考えたわ。
でも……。

「あなたとの間に子供ができたら、絶対に
オーウェンと同じ顔で生まれてくるでしょ。
それ、ヤダからね」

「う、否定出来ない。まさかの振られ理由。
俺、結婚出来るかな?」

また、冗談言っちゃって。
モテるの知っているわよ。

「予想通りグレン様が来ましたね」

「うん。ただ……なんか変な感じ。
帝国のやる気がイマイチというか。
籠城で気を削がれただけ、ならいいけれど」

「何か引っ掛かります?そういう勘は大事
にした方がいい。警戒しますね」

「うん。そうしてくれる?」


グレンが率いる国軍は強かった。
あっという間に帝国軍と魔物を蹴散らし。
砦前に陣営を張った。

グレンが砦に来た。
お供は……あれ?あのオレンジ頭は……。
カーマインだ。
なんでマクドネルじゃないんだろう。
カーマインは強いけれど面倒臭いのが難点。
極度の女嫌いなので私への態度が悪い。
さらに協調性に欠けるので辺境伯領の連中
との間で問題を起こしそう。

もう一人はラケット将軍。
オーウェンやカルヴァンと
同世代の長い顎髭の頑固ジジイだ。

氷結のグレンと雷神ラケット。
化物クラスが二人来た。

ニ年ぶりに会うグレン。
なんか柔らかくなったじゃない?

「グレン!」

グレンに抱きつく。
うん。戦場だから当然腕輪をしていない。
とりあえず気が済むまで抱きしめて、
そして吐く。

相変わらず酷い魔力だ!
ゲーゲー吐く。
マリオンが私が吐く前に桶を用意して
差し出してくれたのでそれに吐く。
砦の騎士達がおめでたか?と騒ぐが
白い結婚で子供は出来ないから!

「……プリシラ、相変わらずだな。
そんなに吐くほど辛いなら俺に触るなよ。
全く、困った奴だな」

柔らかく微笑むグレン。
やっぱり少し変わった。こんな柔らかい
笑顔、見た事がない。
うん。うん。彼女と上手くいってるのね。
ふふふ。

「久しぶり!元気だった?ふふ、可愛い
彼女とは少しの間、離れ離れね?
ちゃんと別れを惜しんで来た?」

「ああ、泣くは気を失うわ大変だったな。
婚約してきた。マリオン、来年には俺は
お前達の義弟だ。お義兄様と呼ぼうか?」

「やめて下さい。なんの嫌がらせですか。
でも、婚約おめでとうございます。
父がよく許しましたね」

「アルバートに王命を出させた。さすがに
オーウェンでも逆らえないだろ」

「婚約するのに国王に王命を出させる臣下。
さすがグレン、無茶苦茶ね!」

三人で笑い合った。

グレンの視線がアイザックにいく。
そして、私を見る。
うん。大丈夫。只今関係修復中です。
だから、イジメないでね?
私は頷いた。

「グレン・リード・エルドバルド。
国軍総大将として北方砦に着任した。
よろしく頼む」

「アイザック・八ーランド辺境伯です。
援軍を感謝します。
よろしくお願いいたします」

握手する二人。

うん。ここまではいい。
ただ、辺境でのグレンの評判は悪い。
氷結のグレンと言われるほどの魔力持ちの
クセに最前線には出ない臆病者。
辺境で例の子爵令嬢がばらまいた噂。
辺境の男はアホだから、丸っと信じて
いる可能性が高い。
上手く連携出来るか心配だ。

最前線、出たくても出れなかったんだって!
前の国王が禁じていた。
生贄に死なれたら困るから。
──生贄の話を聞いた時は怒りに震えた。
そんな重荷を背負っていたの。
知らなくてごめんね。

偶然とはいえ、白竜に自分の魔力と血を与え
当代の生贄の件を吹き飛ばしてくれた
グレンの彼女。

本当に感謝している。

でも、次代のためには何とかしないと。

私は窓の外、北の鉛色の空を仰ぎ見た。
気の早い冬の知らせ。

ちら、ちらと雪が舞っていた。






























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