王宮侍女は穴に落ちる

斑猫

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アニエス、辺境へ発つ

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──王女宮の廊下。
よし、成功!転移できたわ。
姫様の部屋へと急ぐ。
姫様のお部屋の前。私はドアを慌ただしく
ノックする。

「え、誰?アルフォンス?駄目よ。
入って来ないで!」

え?拒否られました。ドアの前で中に声を
かける。

「姫様、アニエスです。入れて下さい」

「あ、アニエス?あなた一人なの?
アルフォンスは一緒じゃないのかしら?」

「はい。私、一人です」

バンとドアが開き姫様が、私に飛びつき
ぎゅっと抱きしめる。

「アニエス、戻って来たのね。もう、
会えないかと思った」

私の頬に自分の頬をすりすりする姫様。
……いや、なんでそんな格好?
ハーフアップに結い上げ、少し崩した
艶っぽい髪型。それはいい。
でも……赤いエロエロスケスケな短い夜着に
黒いタイツに赤いガーターベルト。
おまけに右手に鞭が……。

「お~アニエス!おかえり~よく戻って
来れたわね。すごい、すごい」

アルマさんだ。……アルマさん、なぜ?
黒いエロエロスケスケな短い夜着。
首に赤と黒のチョーカー。
生足に赤いハイヒールが色っぽい。

「あ~アニエスだ!おかえり~!
アニエスも着る?今、誰が一番色っぽい
でショーを開催中なの!ねえ、誰が一番
色っぽい?
とうとうアルが宮に来れなくなったから、
完全な男子禁制。もうどんな格好してても
へっちゃらです!」

そういうアイリスさんは、胸を強調した
青い紐の編み込みのあるスケスケな白い
短い夜着。裾がふりふりのレース。
首に青いチョーカー。
髪を一つに束ねて前に垂らしている。
色っぽい。
手には孔雀羽根の扇子。


──誰が一番、色っぽいでショーって何?
王宮中が心配する中、
この人達、一体、何をしているのでしょう?
膝から崩れる私。

「ア~ニ~エ~ス~?ふふふ、ジャン!」

若草色のエロエロスケスケな短い夜着を手に
姫様が笑う。

「うふふふ。アニエスも参加するわよね?」

櫛を手に笑うアルマさん。

「当然、強制参加よ。うふふふふっ!」

黒いタイツに緑のリボンの付いたガーター
ベルトを手に笑うアイリスさん。

何、何、なんなの。あ~ああ~!

──三人がかりで着せられました。
若草色のエロエロスケスケな短い夜着。
髪に緑色のリボンを編み込みされ華やか。

「うわ、アニエス。エロ可愛い!」

姫様がご満悦だ。その右手の鞭はどこかへ
しまって下さい。

「やっぱり若いから?お肌がモチモチ。
ぜんぜん手入れしてないクセに許せない!
あ~うん。アニエスの勝利かな?」

アイリスさん。なんの勝負ですか。

「それにしても綺麗な足よね。
これか!グレン様を悩殺した足は!
うん。納得のエロさ……うん。うん」

アルマさん何を納得してるの。
いけない。この人達のペースに乗せら
れたら話しが進まない!

「姫様、実は私はロイシュタール様に
お会いしました」

「え?」

格好はなんだが一瞬で真顔になる姫様。
やっぱりあのイヤな奴がお好きなのだ。

ま、色恋は当人同士の問題だ。
他人には分かるまい。いくら私があいつを
嫌いでも姫様の想い人だ。
敬意は払おう。

とりあえず女神像の庭の『穴』に落ちた事。
ロイシュタール様に殺されかけた事。
青竜の事。
グレン様の訃報の事を報告した。
あと、アルフォンス様、マクドネル卿の
伝言をアイリスさん、アルマさんに伝える。

「ロイに手紙を書いたから王宮経由で
キルバンに送ってくれる?それでアニエスは
辺境にグレンを探しに行くのね?」

姫様のお顔の表情は固い。
無理ないよね。
ロイシュタール様、怪し過ぎる。
しかも青竜を従えている。

「はい、しばらくお側を離れます。
お許し下さいますか?」

私も真面目な口調だが、格好がエロエロ
スケスケだから。
格好つかない。早く着替えたい。

「許すも何も私からもお願い。グレンを
必ず見つけて。でも、無理はしないで。
アニエス、また戻って来てね」

「はい。必ず」

姫様のお許しが出た。
辺境に行こう。

「あ、アイリスさん生鮮食品を持って
来ました。氷結庫に入れて置きますね。
あと、保存のきく食料も追加しておきます」

「うん。助かる。ありがとう」

あ、そうだ。あれを聞かなきゃ。

「アルマさん。マクドネル卿と婚約して
いる事、なんで私に教えてくれなかったん
ですか?知らなくて恥をかきました!」

恨みがましく言う私。

「あはは、ははは!!言えないわよね~!
アニエス、ウブいもの!あはは、ははは!」

大笑いな姫様。
はい?なんでウブいと言えないの?
顔を両手で隠し真っ赤になって
俯くアルマさん。
その格好だとやたらエロいです。

「うふふっ!アルマ、酔った勢いで
朝チュンなのよね。ミュラーとあはは!」

楽しそうなアイリスさん。
朝チュンって何?

「体中にキスマークつけて帰って来てね。
王女宮に恥ずかしくて籠っていたら、
マクドネルがアルフォンスにアルマとの
婚約願いを出して完全に外堀が埋まっちゃ
ったのよ。
ま、マクドネルの奴、アルフォンスに散々
殴られたらしいけれど。
あと、モールからも半殺しにされたみたい」

姫様が説明してくれる。
体中にキスマーク!それは恥ずかしい。
背中や足でも恥ずかしいのに。
全身!

ああ、そうか。マクドネル卿とアルマさん。
そんな感じなんだ。
へえ。ヘ~え。ふふ。うふふふ。

「妹分には話し辛いよね。アルマ、アニエス
にはお姉さんぶってるから!あはははは」

大笑いなアイリスさん。

「所々覚えているのが余計恥ずかしいの。
何であんな事……。
ああ、自分が今でも信じられない!」

真っ赤になってのたうち回るアルマさん。
可愛いわ。あれ?でも……。

「それって、最近の事じゃないですか?
アルマさん、やたら長袖に高い襟の服を
着てましたよね?」

「お、子リスが鋭いぞ!」

姫様が笑う。

「じゃあ、あの時、服の下には……」

「やめてぇ~!そっとしといてぇ!」

……ぷぷ。成る程、人をからかうのは
楽しいものだ。いつも、からかわれる方だ
から気がつかなかったわ。
アルマさんが可愛い。

「アイリスさん。アルマさん。姫様を
お願いしますね」

「当たり前でしょう。アニエスは無事に
戻って来る事だけを考えなさい」

「うん。怪我とかしないで元気でね」

「あ~もう、湿っぽい!どうせなら
楽しく生きないと!アニエス、旅を楽しみ
なさいな。故郷に里帰りでしょう?
グレンは絶対、無事よ」

女、四人でエロエロスケスケな夜着姿で
抱き合った。


元着ていた服に着替え、姫様達に別れを
告げる。

「あ、これ義母から預かったお菓子です。
みなさんで召し上がって下さい」

マリーナ義母様から預かったお菓子を渡す。

「あ、マリーナ特製ジャムクッキー!
美味しいのよね。これ!
あ、でも地獄を思い出すわ」

ああ、あれか。確かに美味しい。
ザルツコードでお茶受けに食べたわ。
あれ?姫様もキャンプ参加者?

「ああ、地獄のキャンプの後で食べたよね。
懐かし~い!」

「ああ、うん。生きて帰って来たって
実感させてくれるクッキーだよね」

……あ、王女宮、私以外みんな参加者?

確か、グレン様のグループ。
アイリスさんが怪我で抜けて、
アルフォンス様とアルマさんが加入
したって言っていた。

「あれ?姫様もキャンプに参加されたん
ですか?グレン様達と同期?」

「ううん。私、子供の頃体が弱くてグレンと
同じ頃の参加は無理だったから。数期後よ。
私の同期はグレンの元婚約者のプリシラ」

……あ、うん。
聞いた事がある。
グレン様の元婚約者で今は辺境伯夫人。
お館様の奥様か……。

「あ、プリシラによろしくね。
あの子も面白いわよ。あ、元婚約者って
いうのは気にしなくてもぜんぜん平気よ」

……そう、言われても気になりますって。
それに幼馴染みの奥様だしね。
お館様……モニカとは婚約解消に
なったんだな。
モニカ……元のお館様の婚約者。
私のもう一人の幼馴染みの子爵令嬢。
……うん。私、あの子苦手だったんだよね。
彼女、今はどうしているのだろう。
幼い頃からの婚約解消。
ちょっと気の毒。

「では、しばしのお別れを。お元気で」

姫様達は笑顔で見送ってくれた。
転移魔法で王宮の庭にもどる。
あ、アルフォンス様もマクドネル卿も
マックス義兄様もまだ、待っていてくれた。

「三人ともお元気でした。追加の食料補充
をしてお二人の伝言をお伝えしました」

「無事に転移出来たんだ。朗報だな」

アルフォンス様が笑顔になる。
マクドネル卿もほっとした顔だ。

「それで、私。これから北の辺境へ行こうと
思います」

私がそう宣言するとみんな笑う。

「言うと思った。もう、支度済みだよ。
早駆けするからその格好じゃ無理だ。
王宮の侍女に頼んである。着替えておいで。
僕とアルフォンスが同行するよ」

マックス義兄様、また付いて来てくれるの。
アルフォンス様も。
心強い。
もう、二人とも旅支度だ。
私は急いで支度し、用意された馬に乗る。
騎士服……なんか変な感じ。
第ニ騎士団の制服。
アルフォンス様も、マックス義兄様も同じ
濃紺の制服だ。

第二騎士団からも沢山の騎士が派遣されて
いるから目立たない配慮かな?

「お気をつけて。私は王都を守ります。
グレン様をよろしくお願いします」

マクドネル卿に見送られ王都を発つ。
辺境へ向けて。
グレン様の元へ。

私は馬で駆け出した。


































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