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アニエス、キルバンにて
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「お!匂いが落ち着いたな。
やれやれだ。あの匂い は勘弁して欲しい。
なあ?クロ、迷惑過ぎるよな」
青竜だ。
なんなのこいつ。
失礼な。
「……確かに臭い。あれは不味い。思わず
アーサーに押しつけたくなるほどだった」
ロイシュタール様だ。
何?こいつ。せっかく好感度を上方修正した
けれど、下方修正するわよ。
臭いって?私?また、臭い疑惑なの?
以前、グレン様にも言われた事がある。
……やだ、本当に私って臭いの?
「……馬鹿。お前ら言い方を考えろ。
見ろ。お嬢さん達のあの冷たい視線を!」
黒竜だ。
よし。黒竜、ちゃんと空気を読める大人だ。
それに比べてこいつらは……。
思わず青竜とロイシュタール様を睨む。
王女宮にロイシュタール様、アーサ ー様。
黒竜に青竜が訪ねて来た。
私を見た瞬間、青竜が言い始めた。
「……ちょっと?そこの青蜥蜴!あなた、
アニエスに許してもらいたいのではないの?
それなのに何?まるでアニエスが臭い
みたいな事を言って!油をかけて焼くわよ?
ロイ!あなたも……何て失礼なの。
もう、一発、食らいたいらしいわね?」
「そこの人外の青蜥蜴は最初から女性を襲う
ような馬鹿で無礼者でしたけれど……。
しばらくお会いしないうちにずいぶん
失礼な方になりましたねロイシュタール様」
「女性に対する発言じゃありませんよね。
最低……姫様、やめます?結婚」
姫様、アイリスさん、アルマさんも
お怒りだ。もちろん私もお怒りだ。
「ロイ義兄様……知りませんよ?
グレンの耳に入ったら、今度は魔石を全面
的に出荷停止にされますよ。
大体、女性に対して本当に失礼です。
アニエス、君、臭くないからね?」
アーサー様~ありがとうございます。
青竜の『穴』でキルバンに転移した後、
気を失った私を誰が運ぶか揉めたらしい。
黒竜、青竜、ロイシュタール様で押しつけ
あって結局、アーサー様が王女宮に運んで
下さったそう。
アーサー様、優しい!それに比べて……。
私って本当に臭いの?
「あ~!違う。臭いってそういう意味じゃ
ないんだ。何て説明すればいいんだ?
すまないアニエス嬢。君の臭いを嗅ぐと
変な気分になると言うか……。
今はそうでもないけれど、君達がキルバン
に来た時は臭いが酷くて困ったんだ。
……アルマ、変な事言い出すなよ。
結婚はやめないよね?エリザ?」
ロイシュタール様が慌てる。
ホントに姫様。結婚、考えた方がいいかも。
それ、やっぱり臭いと言っているのと
変わらない。
この人、やっぱりキライだ。
「……竜にしか感じない臭いだ。
竜の雌の発情臭。ロイシュタールは青竜の
血の契約者だから感じるんだろう。
催淫効果のある臭いだ。
まあ、強烈だったのは確かだな。
チビすけ、お前、小僧と発情するような事を
したろう?」
こ、黒竜!何を言い始めるの!
発情するようなって……キスしただけだよ?
やめて~~黒竜が変な事を言うから
みんなが生暖かい目で見る~~!!
「普通は婚姻鱗を交換して雌は発情する。
三ヶ月程で落ち着くんだけどな。
臭いの強い間は番と一緒に巣籠もりして
やり過ごす。でもお前は普段は全く無臭で
相手との接触で発情して臭いを出す。
変に人なんだなぁ。難儀な事だ」
「小僧もよくあの臭いを嗅いで平気だよな?
番の強い発情臭。普通欲情するだろうに。
鼻が悪いのか?いや、下の方が悪いのか?
あいつ、やっぱり不能……いや俺の婚姻鱗が
生えてきたという事は俺達の失恋が確定し
たはず。お前らやる事はやったんだよな?」
や、やるって?ちょっと何を言い始めた?
いや、グレン様は不能じゃないです。
いや、いや、いや何の話?!
「……黒竜、君の方が酷い。女性が夜の生活
をバラされるのは恥ずかしいだろ?」
ロイシュタール様が額に手を当て呻く
ように言う。
「いや、マジで危ない。俺達でも誘われる。
お前もヤバかったんだろう?慌ててた。
もう、この大陸には色つきの竜は俺達しか
いないとは思うが……。他の大陸から飛来
して来ていない保障はない。
それにアッシュドラゴンも寄ってくるし、
帝国のオズワルドも血の契約者だ。
奴にアニエスの居場所を教える事にもなる」
物凄く居たたまれないんだけど!
ほら、ほら!みんなの私を見る目が不憫な
子を見る目になっている。
もう、泣くから!
「という事でやるなら結界を張ってやれよ?
あと、発情臭が治まるまでしっかりやれ!」
私は一体何のアドバイスを受けているの?
黒竜、何で胸を張る?
……ひょっとして、いいアドバイスをしたと
思っている?アホかもしれない。黒竜。
「分かりました。グレン様に伝えます」
凛々しく応じるアイリスさん。
何を請け負っているんですかアイリスさん。
「……お嬢さんはアニエスと一旦、辺境へ
行くんだったな?手を出してもらえるか?
おい、アオ、髪をよこせ」
黒竜の言葉に青竜が鋭く爪を伸ばす。
自分の髪をほんの少し切ると黒竜に渡した。
黒竜は自分の髪も切り、合わせてそれを
アイリスさんの手のひらに乗せる。
黒竜は人差し指指でアイリスさんの
手のひらをちょんと触れた。
するとアイリスさんの手のひらが光り
文字のような黒い印が刻まれる。
「一度きりだが、俺と青竜の道を使える。
辺境に行くのは早い方がいいだろう?」
アイリスさんは辺境経由で帝国に行く。
これで辺境まで一緒に行ける。
黒竜ありがとう。
「……ご厚意に感謝します」
「いや、お嬢さんにも、そこの赤い髪の
お嬢さんにも俺は悪い事をしたからな。
特に赤い髪のお嬢さん。あんたの魔力を
根こそぎ喰らってしまって悪かった。
あんたの魔力を喰らったお陰で帝国から
逃げ切る事が出来たんだ。
だが、すまなかった。
あんた魔力を失くしてしまったろう?」
黒竜がアルマさんに頭を下げる。
……アルマさんの事、黒竜は覚えていたんだ。
「私の魔力を食べたお陰で黒竜が帝国の
手に落ちずにすんだのなら、良かった。
もし、黒竜が帝国に支配されていたら、
赤竜と黒竜の二匹の竜を相手にしなければ
ならない事になっていたかもしれない。
結果的にアルトリアのためになった。
なら言う事はないです」
「……そう言ってもらえると助かる。
あんたらは俺の血を浴びただろう?
痕になっているはずだ。俺なら消せる。
今すぐ消そうか?」
「あ、私はいいです。この傷痕が愛しいと
言ってくれる人がいるから」
アルマさんが照れながら言う。
きゃ~~!!マクドネル卿よね?
うわ、素敵!
「あ、私もいいです。アルと出会った時の
思い出の痕だから」
アイリスさんも照れながら言う。
きゃ~~!!
アイリスさんも言うわ~~!
「なんだ。なんか惚気られて終わったな。
人間って変な生き物だな。やれやれ」
黒竜がぼやく。
人の価値観は色々だものね。
うん。でも、二人とも素敵。
「そうか、アイリスもアニエスも『穴』を
使って辺境まで移動するのね。
……黒竜、私ね、白竜の声を聞いたかも
しれないわ。キルバンに転移する直前に
『良かったな。お前にはお迎えが来たよ』
と言う女の人の声を聞いたの。
私が王女宮に閉じ込められる前に聞いた
声と同じだった」
姫様が黒竜に遠慮がちに言う。
お前にはお迎えか。
白竜もお迎えを待っているのかな。
「そうか……早く迎えに行かないとな。
もう、数百年も待たせている。
待ちくたびれているだろうなぁ。白竜」
黒竜は切なそうに窓の外を見る。
会いたい人に会えないのは辛い。
ましてや囚われて使役されているのだから。
早く白竜が解放されるといいな。
私は女神像の庭に似たキルバンの庭園を
静かに眺めた。
白い薔薇が風に吹かれ花びらが散る。
アルトリアよりも暖かいキルバンの風。
この風に乗って私の祈りが届くといい。
私は白竜のために祈った。
やれやれだ。あの匂い は勘弁して欲しい。
なあ?クロ、迷惑過ぎるよな」
青竜だ。
なんなのこいつ。
失礼な。
「……確かに臭い。あれは不味い。思わず
アーサーに押しつけたくなるほどだった」
ロイシュタール様だ。
何?こいつ。せっかく好感度を上方修正した
けれど、下方修正するわよ。
臭いって?私?また、臭い疑惑なの?
以前、グレン様にも言われた事がある。
……やだ、本当に私って臭いの?
「……馬鹿。お前ら言い方を考えろ。
見ろ。お嬢さん達のあの冷たい視線を!」
黒竜だ。
よし。黒竜、ちゃんと空気を読める大人だ。
それに比べてこいつらは……。
思わず青竜とロイシュタール様を睨む。
王女宮にロイシュタール様、アーサ ー様。
黒竜に青竜が訪ねて来た。
私を見た瞬間、青竜が言い始めた。
「……ちょっと?そこの青蜥蜴!あなた、
アニエスに許してもらいたいのではないの?
それなのに何?まるでアニエスが臭い
みたいな事を言って!油をかけて焼くわよ?
ロイ!あなたも……何て失礼なの。
もう、一発、食らいたいらしいわね?」
「そこの人外の青蜥蜴は最初から女性を襲う
ような馬鹿で無礼者でしたけれど……。
しばらくお会いしないうちにずいぶん
失礼な方になりましたねロイシュタール様」
「女性に対する発言じゃありませんよね。
最低……姫様、やめます?結婚」
姫様、アイリスさん、アルマさんも
お怒りだ。もちろん私もお怒りだ。
「ロイ義兄様……知りませんよ?
グレンの耳に入ったら、今度は魔石を全面
的に出荷停止にされますよ。
大体、女性に対して本当に失礼です。
アニエス、君、臭くないからね?」
アーサー様~ありがとうございます。
青竜の『穴』でキルバンに転移した後、
気を失った私を誰が運ぶか揉めたらしい。
黒竜、青竜、ロイシュタール様で押しつけ
あって結局、アーサー様が王女宮に運んで
下さったそう。
アーサー様、優しい!それに比べて……。
私って本当に臭いの?
「あ~!違う。臭いってそういう意味じゃ
ないんだ。何て説明すればいいんだ?
すまないアニエス嬢。君の臭いを嗅ぐと
変な気分になると言うか……。
今はそうでもないけれど、君達がキルバン
に来た時は臭いが酷くて困ったんだ。
……アルマ、変な事言い出すなよ。
結婚はやめないよね?エリザ?」
ロイシュタール様が慌てる。
ホントに姫様。結婚、考えた方がいいかも。
それ、やっぱり臭いと言っているのと
変わらない。
この人、やっぱりキライだ。
「……竜にしか感じない臭いだ。
竜の雌の発情臭。ロイシュタールは青竜の
血の契約者だから感じるんだろう。
催淫効果のある臭いだ。
まあ、強烈だったのは確かだな。
チビすけ、お前、小僧と発情するような事を
したろう?」
こ、黒竜!何を言い始めるの!
発情するようなって……キスしただけだよ?
やめて~~黒竜が変な事を言うから
みんなが生暖かい目で見る~~!!
「普通は婚姻鱗を交換して雌は発情する。
三ヶ月程で落ち着くんだけどな。
臭いの強い間は番と一緒に巣籠もりして
やり過ごす。でもお前は普段は全く無臭で
相手との接触で発情して臭いを出す。
変に人なんだなぁ。難儀な事だ」
「小僧もよくあの臭いを嗅いで平気だよな?
番の強い発情臭。普通欲情するだろうに。
鼻が悪いのか?いや、下の方が悪いのか?
あいつ、やっぱり不能……いや俺の婚姻鱗が
生えてきたという事は俺達の失恋が確定し
たはず。お前らやる事はやったんだよな?」
や、やるって?ちょっと何を言い始めた?
いや、グレン様は不能じゃないです。
いや、いや、いや何の話?!
「……黒竜、君の方が酷い。女性が夜の生活
をバラされるのは恥ずかしいだろ?」
ロイシュタール様が額に手を当て呻く
ように言う。
「いや、マジで危ない。俺達でも誘われる。
お前もヤバかったんだろう?慌ててた。
もう、この大陸には色つきの竜は俺達しか
いないとは思うが……。他の大陸から飛来
して来ていない保障はない。
それにアッシュドラゴンも寄ってくるし、
帝国のオズワルドも血の契約者だ。
奴にアニエスの居場所を教える事にもなる」
物凄く居たたまれないんだけど!
ほら、ほら!みんなの私を見る目が不憫な
子を見る目になっている。
もう、泣くから!
「という事でやるなら結界を張ってやれよ?
あと、発情臭が治まるまでしっかりやれ!」
私は一体何のアドバイスを受けているの?
黒竜、何で胸を張る?
……ひょっとして、いいアドバイスをしたと
思っている?アホかもしれない。黒竜。
「分かりました。グレン様に伝えます」
凛々しく応じるアイリスさん。
何を請け負っているんですかアイリスさん。
「……お嬢さんはアニエスと一旦、辺境へ
行くんだったな?手を出してもらえるか?
おい、アオ、髪をよこせ」
黒竜の言葉に青竜が鋭く爪を伸ばす。
自分の髪をほんの少し切ると黒竜に渡した。
黒竜は自分の髪も切り、合わせてそれを
アイリスさんの手のひらに乗せる。
黒竜は人差し指指でアイリスさんの
手のひらをちょんと触れた。
するとアイリスさんの手のひらが光り
文字のような黒い印が刻まれる。
「一度きりだが、俺と青竜の道を使える。
辺境に行くのは早い方がいいだろう?」
アイリスさんは辺境経由で帝国に行く。
これで辺境まで一緒に行ける。
黒竜ありがとう。
「……ご厚意に感謝します」
「いや、お嬢さんにも、そこの赤い髪の
お嬢さんにも俺は悪い事をしたからな。
特に赤い髪のお嬢さん。あんたの魔力を
根こそぎ喰らってしまって悪かった。
あんたの魔力を喰らったお陰で帝国から
逃げ切る事が出来たんだ。
だが、すまなかった。
あんた魔力を失くしてしまったろう?」
黒竜がアルマさんに頭を下げる。
……アルマさんの事、黒竜は覚えていたんだ。
「私の魔力を食べたお陰で黒竜が帝国の
手に落ちずにすんだのなら、良かった。
もし、黒竜が帝国に支配されていたら、
赤竜と黒竜の二匹の竜を相手にしなければ
ならない事になっていたかもしれない。
結果的にアルトリアのためになった。
なら言う事はないです」
「……そう言ってもらえると助かる。
あんたらは俺の血を浴びただろう?
痕になっているはずだ。俺なら消せる。
今すぐ消そうか?」
「あ、私はいいです。この傷痕が愛しいと
言ってくれる人がいるから」
アルマさんが照れながら言う。
きゃ~~!!マクドネル卿よね?
うわ、素敵!
「あ、私もいいです。アルと出会った時の
思い出の痕だから」
アイリスさんも照れながら言う。
きゃ~~!!
アイリスさんも言うわ~~!
「なんだ。なんか惚気られて終わったな。
人間って変な生き物だな。やれやれ」
黒竜がぼやく。
人の価値観は色々だものね。
うん。でも、二人とも素敵。
「そうか、アイリスもアニエスも『穴』を
使って辺境まで移動するのね。
……黒竜、私ね、白竜の声を聞いたかも
しれないわ。キルバンに転移する直前に
『良かったな。お前にはお迎えが来たよ』
と言う女の人の声を聞いたの。
私が王女宮に閉じ込められる前に聞いた
声と同じだった」
姫様が黒竜に遠慮がちに言う。
お前にはお迎えか。
白竜もお迎えを待っているのかな。
「そうか……早く迎えに行かないとな。
もう、数百年も待たせている。
待ちくたびれているだろうなぁ。白竜」
黒竜は切なそうに窓の外を見る。
会いたい人に会えないのは辛い。
ましてや囚われて使役されているのだから。
早く白竜が解放されるといいな。
私は女神像の庭に似たキルバンの庭園を
静かに眺めた。
白い薔薇が風に吹かれ花びらが散る。
アルトリアよりも暖かいキルバンの風。
この風に乗って私の祈りが届くといい。
私は白竜のために祈った。
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