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アニエス、義母とお茶をする
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今日はザルツコードに帰って来ている。
ここのところエルドバルドとザルツコード
を行ったり来たりと忙しい。
まだオズワルドを捕獲しに行った竜も
帝国にいるアルフォンス様も戻って来ない。
ただ、待つだけは意外と辛い。
辺境の砦の事も気がかりだ。
一度、戻りたいけれど、いつ事態が動くか
分からない。辺境に戻って行き違いは困る。
結局、待機しているしかない。
国軍の総大将であるグレン様がいつまでも
軍から離れているのは大丈夫なんだろうか。
気になって仕方がない。
まあ、グレン様は全然、動じていないから
大丈夫だとは思うけど、なんだか複雑。
今日はオーウェン義父様とマックス義兄様は
お仕事でお出かけ。
マリーナ義母様とお茶を飲みながら
は~~ああ。久しぶりにのんびりしていた。
グレン様はザルツコードにいていいと言って
くれているけれど、
エルドバルドの使用人の皆さんが……泣く。
あれは辛い。
ザルツコードに帰ると言うとその場では
笑顔だが、ふと気がつくと柱の陰で
しくしく泣かれる。
なんでそんなに私をもてなしたいのだろう。
いたたまれず、また戻ってくると伝えると、
それはそれは喜ばれる。
陰で手を合わせて拝まれる。
結果、ザルツコードとエルドバルドを
行ったり来たりするはめに。
『うちの使用人は有能だがちょっと……
いや、かなりおかしい。悪気は全くなく
善意の塊なのが質が悪い。
居心地が悪くてすまん。
まあ、あれも慣れればご愛嬌なんだがな』
グレン様から謝罪された。
慣れればご愛嬌ね?
いや、泣かれるのはちょっと……。
「エルドバルドの使用人はアーネスト様に
そっくりのグレンを本当に大切にしている
から、グレンの幸せ思う気持ちが強いのよ。
ごめんなさいね。オーウェンとマックスが
面倒臭くて、エルドバルドと板挟みで
大変しょう?
オーウェン達は私が黙らせるから、
アニエスはグレンの所にいていいのよ?」
マリーナ義母様がすまなそうに言う。
聞いてみても平気だろうか。
アーネスト様というのは
先代のエルドバルド公の事ですよね。
グレン様の伯父に当たる方。
グレン様にそっくりだったんだ。
マリーナ義母様は先代のエルドバルド公の
事をどう思っていたのだろう。
「ふふ、なぁに?アーネスト様の事を
聞きたい?そりゃ気になるわよね。
アーネスト・リード・エルドバルド様。
私の初恋は……あの方ね」
初恋……そ、そうなんだ。
「私は帝国では伯爵家の生まれだったの
だけれど、謀叛の疑いで家が取り潰されて
奴隷として売られたの。
魔力の高い私は高値で売られ転売に転売を
重ねられて時には怖い人達の所にもいたわ。
どんな人に買われるのか本当に怖かった。
最終的に引き渡されたのが
幸運にもあの方でね。
先々代の国王陛下からアーネスト様の
子供を産むように命じられたの。
でも、アーネスト様はそんな非道な事は
できないと、私をエルドバルドに連れて
来るとすぐに奴隷の腕輪を外してくれた。
出ていくのも残るも自由にしていい。
行く先がないのなら見つかるまで
いくらでも、ここにいていいと
おっしゃって下さって……。
本当に優しい方だった。
不幸続きの小娘がその優しさに
すがりついて恋に落ちるのには、
時間はかからなかった」
……優しさにすがりついて恋に落ちるか。
マリーナ義母様はどこか自重気味に
寂しく笑う。いつもの快活な義母様の
こんな顔は初めて見た。
「まるで相手にされなかったけどね!ふふ。
行くあてがないとエルドバルドに居座って
使用人の真似事をしながら、アーネスト様に
まとわりついて困らせていたわ。
陛下に命じられたからではなく、
私があの方の子供を産みたかった。
エロい夜着姿で夜這いを仕掛けて
目茶苦茶怒られたり、まあ色々やったわね。
オーウェンは私が何かする度に説教して
くる嫌な奴だったわ。よく喧嘩をしてた。
毎度アーネスト様に振られてはオーウェン
に小言を言われる。
ヨーゼフにはよく慰めてもらったわ。
懐かしい想い出ね」
……エロい夜着で夜這いですか!
あはは!そりゃすごい。
その辺はマリーナ義母様らしいわ。
オーウェン義父様は嫌な奴扱いですか?
なんだか不憫。
「私がエルドバルドに来て三年たった頃、
オーウェンがザルツコード侯爵家の後継に
選ばれてね。エルドバルドの騎士を退職。
第三騎士団の団長になった。
そのタイミングでアーネスト様から
オーウェンに嫁ぐように命じられて……。
好きな人に別の男に嫁ぐように命令される。
──ショックでね。
エルドバルドを飛び出した。
……あてもなく、街をフラフラ歩き回った。
夜になって疲れて動けなくなって、
じっとしていたら、何だか物凄く悲しく
なっちゃって自棄になって、
このまま飛び込んじゃおうかなとか思って
橋の上からじっと川を見つめていたの」
「え?身投げですか!」
「未遂よ。未遂!飛び込む前にオーウェンに
捕獲されたから。ずっと私の後をつけてきて
いたみたい。真顔で死ぬほど俺に嫁ぐのは
嫌かと聞かれたわ。
嫌なのはオーウェンの方でしょう?
いつも私に説教ばかりしてたじゃない。
私の事が嫌いでしょう?
そう言ってオーウェンに食ってかかったら
真っ赤な顔で
『ずっと好きだった。嫌いな訳がない。
アーネスト様のお相手だから言い出せ
なかった。
アーネスト様に夜這いをかける君をどんな
思いで見ていたと思う?
ザルツコードの家督を継ぐ事が決まった時に
アーネスト様からいい加減気持ちを伝えろと
叱られた。でも、中々言えなくて……。
業を煮やしたアーネスト様が先に君に婚姻を
命じてしまった。
君の気持ちがアーネスト様にあるのは
分かっている。
君の気持ちが俺に向くまでいつまでも待つ。
どうか俺と結婚して欲しい』
オーウェンにプロポーズされたの」
「うわ!嫌われていると思っていた
相手から真っ赤な顔でプロポーズ!
それはちょっと心が揺れるかも」
きゃあ~ロマンスねぇ!
あのオーウェン義父様が真っ赤な顔で
プロポーズ。人の事だけどドキドキする。
「……そうね。いつまでも待つとか言われて
ちょっとときめいたわ。でも、それ以上に
腹が立ってね。
『私を好きなら少しでもいいから、そういう
素振りをみせなさいよ!分からないから、
嫌われているのかと思って傷ついた。
私は鈍いからきちんと言葉にして!』
そう言ってオーウェンに思い切り怒ったの。
それからよ……溢れんばかりの尋常じゃない
愛情表現をするようになったのは。
もう、極端なんだから」
……その愛情表現はまだ続いてますね。
ふうん。そんな感じでオーウェン義父様と
結婚したのか。
「結局私は絆されてオーウェンと結婚した。
でも先々代の国王陛下からは婚姻の許可は
いただけたけれど、ひどく叱責された。
私はアーネスト様の子供を産むためだけに
買われた奴隷だったから無理もない。
オーウェンは気にするなと言って
笑っていたけど、私は笑えなかった。
しかも私達が結婚してすぐに
アーネスト様が視察中に領地の別邸の
火事で亡くなられてね。
悲しくて苦しくて気が変になりそうだった。
ひどい火事で遺体すら見つけられなくて、
主を亡くしたヨーゼフ達の悲しみようは
見ていて本当に辛かった。
そんな時にマルクがお腹にいるのが
分かったの。
アーネスト様が視察に行く前にうちに
訪ねて来られてね。
『君達の生んだ子供でなくてもいい。
この国の未来を担う強い子供を育ててくれ。
今のままではこの国は駄目になる。
次の世代に期待したい。
頼んだよオーウェン』
そうオーウェンに言い残していった。
まるで遺言のように。
お腹に子供が宿った。
私はこの子を強く賢い子に育てよう。
まだ、膨らみもないお腹に手をあてて
私はそう心に誓ったわ。
オーウェンがキャンプを始めたきっかけは
たぶんそれだと思うの」
エルドバルド公は白竜の生贄となって
亡くなった。
マリーナ義母様はその事を知らない。
遺言のようにではなく
確実に遺言だった。
オーウェン義父様は王家の影の後継に
なった時に敬愛するアーネスト様が
生贄になる事を知ったはず。
やりきれない思いを抱えていた事だろう。
地獄のキャンプはエルドバルド公の遺言
から誕生日したのか。
キャンプ出身の者達が中心となって今、
帝国や魔物の脅威から国を守っている。
想いがちゃんと繋がっているんだね。
そのキャンプ出身のアルフォンス様と
アイリスさんが王都に戻って来たのは
翌日の事だった。
ここのところエルドバルドとザルツコード
を行ったり来たりと忙しい。
まだオズワルドを捕獲しに行った竜も
帝国にいるアルフォンス様も戻って来ない。
ただ、待つだけは意外と辛い。
辺境の砦の事も気がかりだ。
一度、戻りたいけれど、いつ事態が動くか
分からない。辺境に戻って行き違いは困る。
結局、待機しているしかない。
国軍の総大将であるグレン様がいつまでも
軍から離れているのは大丈夫なんだろうか。
気になって仕方がない。
まあ、グレン様は全然、動じていないから
大丈夫だとは思うけど、なんだか複雑。
今日はオーウェン義父様とマックス義兄様は
お仕事でお出かけ。
マリーナ義母様とお茶を飲みながら
は~~ああ。久しぶりにのんびりしていた。
グレン様はザルツコードにいていいと言って
くれているけれど、
エルドバルドの使用人の皆さんが……泣く。
あれは辛い。
ザルツコードに帰ると言うとその場では
笑顔だが、ふと気がつくと柱の陰で
しくしく泣かれる。
なんでそんなに私をもてなしたいのだろう。
いたたまれず、また戻ってくると伝えると、
それはそれは喜ばれる。
陰で手を合わせて拝まれる。
結果、ザルツコードとエルドバルドを
行ったり来たりするはめに。
『うちの使用人は有能だがちょっと……
いや、かなりおかしい。悪気は全くなく
善意の塊なのが質が悪い。
居心地が悪くてすまん。
まあ、あれも慣れればご愛嬌なんだがな』
グレン様から謝罪された。
慣れればご愛嬌ね?
いや、泣かれるのはちょっと……。
「エルドバルドの使用人はアーネスト様に
そっくりのグレンを本当に大切にしている
から、グレンの幸せ思う気持ちが強いのよ。
ごめんなさいね。オーウェンとマックスが
面倒臭くて、エルドバルドと板挟みで
大変しょう?
オーウェン達は私が黙らせるから、
アニエスはグレンの所にいていいのよ?」
マリーナ義母様がすまなそうに言う。
聞いてみても平気だろうか。
アーネスト様というのは
先代のエルドバルド公の事ですよね。
グレン様の伯父に当たる方。
グレン様にそっくりだったんだ。
マリーナ義母様は先代のエルドバルド公の
事をどう思っていたのだろう。
「ふふ、なぁに?アーネスト様の事を
聞きたい?そりゃ気になるわよね。
アーネスト・リード・エルドバルド様。
私の初恋は……あの方ね」
初恋……そ、そうなんだ。
「私は帝国では伯爵家の生まれだったの
だけれど、謀叛の疑いで家が取り潰されて
奴隷として売られたの。
魔力の高い私は高値で売られ転売に転売を
重ねられて時には怖い人達の所にもいたわ。
どんな人に買われるのか本当に怖かった。
最終的に引き渡されたのが
幸運にもあの方でね。
先々代の国王陛下からアーネスト様の
子供を産むように命じられたの。
でも、アーネスト様はそんな非道な事は
できないと、私をエルドバルドに連れて
来るとすぐに奴隷の腕輪を外してくれた。
出ていくのも残るも自由にしていい。
行く先がないのなら見つかるまで
いくらでも、ここにいていいと
おっしゃって下さって……。
本当に優しい方だった。
不幸続きの小娘がその優しさに
すがりついて恋に落ちるのには、
時間はかからなかった」
……優しさにすがりついて恋に落ちるか。
マリーナ義母様はどこか自重気味に
寂しく笑う。いつもの快活な義母様の
こんな顔は初めて見た。
「まるで相手にされなかったけどね!ふふ。
行くあてがないとエルドバルドに居座って
使用人の真似事をしながら、アーネスト様に
まとわりついて困らせていたわ。
陛下に命じられたからではなく、
私があの方の子供を産みたかった。
エロい夜着姿で夜這いを仕掛けて
目茶苦茶怒られたり、まあ色々やったわね。
オーウェンは私が何かする度に説教して
くる嫌な奴だったわ。よく喧嘩をしてた。
毎度アーネスト様に振られてはオーウェン
に小言を言われる。
ヨーゼフにはよく慰めてもらったわ。
懐かしい想い出ね」
……エロい夜着で夜這いですか!
あはは!そりゃすごい。
その辺はマリーナ義母様らしいわ。
オーウェン義父様は嫌な奴扱いですか?
なんだか不憫。
「私がエルドバルドに来て三年たった頃、
オーウェンがザルツコード侯爵家の後継に
選ばれてね。エルドバルドの騎士を退職。
第三騎士団の団長になった。
そのタイミングでアーネスト様から
オーウェンに嫁ぐように命じられて……。
好きな人に別の男に嫁ぐように命令される。
──ショックでね。
エルドバルドを飛び出した。
……あてもなく、街をフラフラ歩き回った。
夜になって疲れて動けなくなって、
じっとしていたら、何だか物凄く悲しく
なっちゃって自棄になって、
このまま飛び込んじゃおうかなとか思って
橋の上からじっと川を見つめていたの」
「え?身投げですか!」
「未遂よ。未遂!飛び込む前にオーウェンに
捕獲されたから。ずっと私の後をつけてきて
いたみたい。真顔で死ぬほど俺に嫁ぐのは
嫌かと聞かれたわ。
嫌なのはオーウェンの方でしょう?
いつも私に説教ばかりしてたじゃない。
私の事が嫌いでしょう?
そう言ってオーウェンに食ってかかったら
真っ赤な顔で
『ずっと好きだった。嫌いな訳がない。
アーネスト様のお相手だから言い出せ
なかった。
アーネスト様に夜這いをかける君をどんな
思いで見ていたと思う?
ザルツコードの家督を継ぐ事が決まった時に
アーネスト様からいい加減気持ちを伝えろと
叱られた。でも、中々言えなくて……。
業を煮やしたアーネスト様が先に君に婚姻を
命じてしまった。
君の気持ちがアーネスト様にあるのは
分かっている。
君の気持ちが俺に向くまでいつまでも待つ。
どうか俺と結婚して欲しい』
オーウェンにプロポーズされたの」
「うわ!嫌われていると思っていた
相手から真っ赤な顔でプロポーズ!
それはちょっと心が揺れるかも」
きゃあ~ロマンスねぇ!
あのオーウェン義父様が真っ赤な顔で
プロポーズ。人の事だけどドキドキする。
「……そうね。いつまでも待つとか言われて
ちょっとときめいたわ。でも、それ以上に
腹が立ってね。
『私を好きなら少しでもいいから、そういう
素振りをみせなさいよ!分からないから、
嫌われているのかと思って傷ついた。
私は鈍いからきちんと言葉にして!』
そう言ってオーウェンに思い切り怒ったの。
それからよ……溢れんばかりの尋常じゃない
愛情表現をするようになったのは。
もう、極端なんだから」
……その愛情表現はまだ続いてますね。
ふうん。そんな感じでオーウェン義父様と
結婚したのか。
「結局私は絆されてオーウェンと結婚した。
でも先々代の国王陛下からは婚姻の許可は
いただけたけれど、ひどく叱責された。
私はアーネスト様の子供を産むためだけに
買われた奴隷だったから無理もない。
オーウェンは気にするなと言って
笑っていたけど、私は笑えなかった。
しかも私達が結婚してすぐに
アーネスト様が視察中に領地の別邸の
火事で亡くなられてね。
悲しくて苦しくて気が変になりそうだった。
ひどい火事で遺体すら見つけられなくて、
主を亡くしたヨーゼフ達の悲しみようは
見ていて本当に辛かった。
そんな時にマルクがお腹にいるのが
分かったの。
アーネスト様が視察に行く前にうちに
訪ねて来られてね。
『君達の生んだ子供でなくてもいい。
この国の未来を担う強い子供を育ててくれ。
今のままではこの国は駄目になる。
次の世代に期待したい。
頼んだよオーウェン』
そうオーウェンに言い残していった。
まるで遺言のように。
お腹に子供が宿った。
私はこの子を強く賢い子に育てよう。
まだ、膨らみもないお腹に手をあてて
私はそう心に誓ったわ。
オーウェンがキャンプを始めたきっかけは
たぶんそれだと思うの」
エルドバルド公は白竜の生贄となって
亡くなった。
マリーナ義母様はその事を知らない。
遺言のようにではなく
確実に遺言だった。
オーウェン義父様は王家の影の後継に
なった時に敬愛するアーネスト様が
生贄になる事を知ったはず。
やりきれない思いを抱えていた事だろう。
地獄のキャンプはエルドバルド公の遺言
から誕生日したのか。
キャンプ出身の者達が中心となって今、
帝国や魔物の脅威から国を守っている。
想いがちゃんと繋がっているんだね。
そのキャンプ出身のアルフォンス様と
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