刺されて始まる恋もある

神山おが屑

文字の大きさ
2 / 56

1.

しおりを挟む
「月兎、今日飲みに行かね?」

「ごめん、今日バイトだわ、また合コン?」

「おうよ、ぜってぇ今年のクリスマスは女の子と過ごしてやる!」

大学からの付き合いで少し引っ込み思案な俺の数少ない友達である花岡誠はなおかまこと、今年二十歳になったのをいいことに週に3回のペースで合コンに参加している。

明るい花岡は目鼻立ちもはっきりしており所謂イケメンであり、大学内では結構女子からも人気らしい。ただ俺の知る限り彼女がいたことは無い、何故なら

「あ~まじ、創成魔女っ子のルアたんみたいな女の子空から降ってこないかな~」

「あ、そういえば今日雨とか言ってたな傘忘れた」

いつものように訳の分からない妄想を口にする花岡を無視し空に目をやる。

察しの通り花岡はオタクである、さらに合コンでは、
「初恋は昔のローカルアニメの主人公ルアたんでいつかルアたんみたいな女子に出会えると信じてます!」と毎回開口一番挨拶をする。

顔はいいが所謂残念なイケメンである花岡は顔だけで判断してはダメだと女子に思わせ他のフツメン達でも合コンで輝けるため毎日のように合コンに引っ張りだこだ。

少し暗めで顔も特に特徴もない俺とは正反対ではあるが同じアニメ好きであり、何よりローカルアニメ創成魔女っ子を知っていたのがきっかけで俺は花岡に親友認定されたようだ。

いわく「創成魔女っ子好きに悪いヤツはいない!」だそうだ。

「あ、そろそろ行かないと、んじゃバイト頑張っ!叔父さんによろしく!」

「んー、ルアたんに会えるといいな~」

「そう言ってくれるのはお前だけだ!またな!」

からかいのつもりで言ったのだが純粋な花岡は心からの満面の笑みで俺にハグして去っていった。
花岡が俺にハグをするのは良くあることだ。
そのせいで最近それを見た女子たちが俺たちに恋人疑惑をかけて「付き合ってるの?」と聞いてきたこともある。

が、「ごめん、月兎は可愛いけどルアたんとは違うタイプだ」と真面目な顔で告ってもいないのに振られそれを見ていた女子たちから改めて花岡は「見る用イケメン」と認定されていた。

そんな可哀想な友の背中を見送りっていると周囲の女子たちがざわつき始めた。

「見て、城田君だ、この間も雑誌に出てたけどほかの男なんて目じゃないくらい目立ってた」

「マジで芸術の域だよね~」


城田雪人しろたゆきと、名前通りの透けるような真っ白な肌に整ったそれぞれの顔パーツが完璧に配置され、スラッとした手足に程よくついた筋肉、どこぞの美術館に飾られてもおかしくないような容姿の男。
大学内で城田雪人を知らないものはいないイケメンである。

入学式初日に二桁に告白されただの、女子が全員城田に見惚れ講義にならず教授がマイクでブチ切れただの数多くの噂が流れ大学内にその名を轟かせた。

さらに大学内だけでなく田舎から出てきたらしい城田はすぐにスカウトの目にとまったが芸能界に興味が無いと断ったもののスカウトも引き下がらず読モのアルバイトだけならと時々雑誌のモデルをしているらしい。

顔は良いが愛想は悪いらしくあまり人と話すことは無いらしいが女子達には逆にその冷たい感じがいいらしく名前と合わせて雪の王子と呼ばれているとかいないとか。

まぁ、自分とは一生関わることは無いだろうと思った矢先、何を思ったか雪の王子様がこちらに向かって歩いてきてピタリと目の前で止まった。

黒川月兎くろかわつきと君、これ君のでしょ?教室の前に落ちてた」

驚いてフリーズしていると城田は俺の学生証を差し出してきた。
カバンに付けたカードケースが外れていたようだ。

「あ、ありがとう、でもなんで俺のって」

「事務室に届けようと思ったけど写真と同じ顔が居たから」

確かに学生証には写真があるがプチ大学デビューして髪型も変えコンタクトにした俺は学生証の写真とは別人のようだとよく言われるので不思議に思っていると痺れを切らしたのか

「要らないの?」

「あ、ごめん、本当ありがとう助かった」

お礼を言って慌てて受け取ると

「気をつけろよ、じゃあ」

とだけ言って去っていった。気をつけろという前に少し笑った気がして男相手なのにドキッとしてしまった。

周りの女子達がまたクールだの優しいだの騒いでいる。

俺は周りからの好機の目に耐えられずそそくさとバイトに向かった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ハッピーライフのために地味で根暗な僕がチャラ男会計になるために

ミカン
BL
地味で根暗な北斗が上手く生きていくために王道学園でチャラ男会計になる話 ※主人公へのいじめ描写ありのため苦手な方は閲覧ご注意下さい。

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

【完結】俺とあの人の青い春

月城雪華
BL
 高校一年の夏、龍冴(りょうが)は二つ上の先輩である椰一(やいち)と付き合った。  けれど、告白してくれたにしては制限があまりに多過ぎると思っていた。  ぼんやりとした不信感を抱いていたある日、見知らぬ相手と椰一がキスをしている場面を目撃してしまう。  けれど友人らと話しているうちに、心のどこかで『椰一はずっと前から裏切っていた』と理解していた。  それでも悲しさで熱い雫が溢れてきて、ひと気のない物陰に座り込んで泣いていると、ふと目の前に影が差す。 「大丈夫か?」  涙に濡れた瞳で見上げると、月曜日の朝──その数日前にも件の二人を見掛け、書籍を落としたのだがわざわざ教室まで届けてくれたのだ──にも会った、一学年上の大和(やまと)という男だった。

バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?

cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき) ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。 「そうだ、バイトをしよう!」 一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。 教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった! なんで元カレがここにいるんだよ! 俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。 「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」 「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」 なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ! もう一度期待したら、また傷つく? あの時、俺たちが別れた本当の理由は──? 「そろそろ我慢の限界かも」

美人王配候補が、すれ違いざまにめっちゃ睨んでくるんだが?

あだち
BL
戦場帰りの両刀軍人(攻)が、女王の夫になる予定の貴公子(受)に心当たりのない執着を示される話。ゆるめの設定で互いに殴り合い罵り合い、ご都合主義でハッピーエンドです。

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

僕を惑わせるのは素直な君

秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。 なんの不自由もない。 5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が 全てやって居た。 そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。 「俺、再婚しようと思うんだけど……」 この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。 だが、好きになってしまったになら仕方がない。 反対する事なく母親になる人と会う事に……。 そこには兄になる青年がついていて…。 いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。 だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。 自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて いってしまうが……。 それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。 何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。

処理中です...