刺されて始まる恋もある

7.

恋人のフリをすることになってから毎日城田と昼ごはんを食べている、場所は食堂だったり、大学の外でだったりバラバラだ。

今や俺は、城田の胸ダイブ事件に続き、毎日城田といるところを目撃され大学の噂の的になっているらしい。

もちろんその噂は花岡の耳にも入り、「どういう関係なのか聞いてもいいか」という優しい花岡らしい言い回しで聞いてきた。

花岡には恋人のフリのところは城田のプライバシーもあるだろうから話さず、友達になったことだけを伝えていた。

そして恋人の振りを続けて1週間ほどした今日も城田と一緒に昼ごはんを食べるため、あのカフェに来ていた。
俺と城田、、、そして満面の笑みの花岡の3人で。

花岡に一緒に飯でもと誘われたので城田とご飯を食べに行くと伝えたところ付いて来たのだ。

席は城田、俺、花岡の順にコの字型に座っているため自然と二人は向かい合うのだが、
ニコニコする花岡に対して、城田も笑顔は笑顔なのだがどこかいつもと違う種類の笑顔な気がする。
初対面だろうし、もしかしたら緊張しているのかもしれない。

「いや、まさか、月兎が城田と友達なんてな、まさに月とスッポンて感じなのに、、、」

「、、、どうやら空調が強いみたいだな、黒川寒くないか？」

「うん、大丈夫、花岡から離れれば寒くなくなるだろうから」

「扱いひど！え？初対面だよね？」

いやその初対面に寒い親父ギャグを言ったお前が悪い、城田の反応は間違っていないぞ。



「お待たせ致しました、オムライス３つでございます。、、、腐腐(平凡受け)、ごゆっくりどうぞ」

丁度いいタイミングで料理を持ってきてくれた店員さんは城田と花岡のダブルイケメンを交互に見たあと、俺で視線を止めて何か独特な微笑みを向けてきた後何か囁いていた気がするが小さすぎて聞こえなかった。

「うま！なにこれ、うま！」

さっさと食べ始めた花岡が感嘆の声ををあげる。

俺もつい一週間前に知ったばかりのくせに誇らしげに、だろと自慢する。

そんな俺を見て城田がクスクス笑っている。
なんだか雰囲気いいんではなかろうか。
花岡もそして今や城田も俺にとって大事な友達だから、2人には仲良くして欲しいと思っていた。

食べてる途中も喋るのはほとんど花岡だったが、城田も適当そうではあるが相槌をしていて特に退屈そうではなくて安心した。

途中で御手洗に行って帰ってくると2人っきりの時に何を話していたのか何やら花岡が珍しく真面目な顔をしていた。

「最後にもう一つ聞く、この子をどう思う？」

花岡が真面目な顔をして城田に見せた画像を見てズッコケそうになる。
そこには花岡が愛してやまないアニメキャラ、ルアたんの画像があった。

結局それかい！どうせ2人の時もこういうしょうもないことを真面目な顔で語っていたのだろう。

だがこの返答は結構大事かもしれない、花岡にとってルアたんに対する反応で相手の印象が大きく変わる、城田の反応は、、、

「可愛い子だな」

城田らしい実にシンプルな受け答えだったがどうだろう、、

「城田雪人くん、、うん、うん、そうだろ、そうだろ！君は実に良い奴だ。」

どうやら合格らしい、花岡は満面の笑みを浮かべて城田の手を両手で取り上下に振り始めた。
花岡お前は実に単純な奴だ。

でもまぁ2人が仲良しそうで良かった。

帰り道花岡と別れた後城田に花岡はどうだったか聞くと、「騒々しいが悪いやつじゃないみたいだな」とこちらもそこそこ好印象のようだ。

それこそ花岡と城田は同じイケメンでも性格は真逆なので少し心配していたがこの分なら大丈夫そうだ。


それから時々3人で一緒にいることが多くなった。
何故かそういう時城田がやたら俺に近づいてくるが、曰く、どこからあの女が見てるか分からないからだそうだ。

それは分かるのだが、俺は知っている。


最近俺がイケメン2人から迫られ二人の間で心が揺れている三角関係だと一部の女子達が噂をしていることを、

だが俺と城田は恋人のフリをすると言った手前表立って否定することも出来ず、

花岡は「何それおもろ」と面白がって否定するどころか「どうだろうねー」と曖昧な返しをする事で、噂は尾びれも胸びれもついて拡がっていった。