【完結】契約結婚だったはずが、冷徹公爵が私を手放してくれません!

22時完結

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契約結婚の始まり

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没落した貴族の娘リリア・アルヴェールは、薄暗い小さな部屋で机に向かっていた。紙にはぎっしりと並ぶ数字と名前。リリアは家計簿をつけながら、頭を抱える。

「また赤字だわ……」

かつてのアルヴェール家は商業を手掛ける中規模の貴族で、社交界でもそれなりに名が知られていた。しかし、父親の投資の失敗によって財産のほとんどを失い、今では質素な生活を余儀なくされている。

リリアの手は、皿洗いで荒れた指先を見つめながら止まる。以前のように豪華なドレスや装飾品に囲まれていた日々は、遠い過去の記憶となりつつあった。

「お姉ちゃん、大丈夫?」
幼い弟のティモシーが心配そうに顔を覗き込む。まだ十歳にも満たない彼には、家計の苦しさなど理解できるはずもないが、それでも姉の苦労を感じ取っているのだろう。

リリアは微笑みを浮かべ、優しく彼の頭を撫でた。
「もちろんよ。心配しないで、私がなんとかするから」

そう言い聞かせるものの、現実は厳しい。母親は病に伏せがちで、薬代だけでも負担が大きい。弟たちにはまだ将来がある。自分が踏ん張らなくては、この家は本当に終わってしまう。

そんなある日、父親が慌ただしくリリアの部屋へと駆け込んできた。

「リリア、お前に縁談の話が来たぞ!」

「……縁談?」

思わず顔を上げたリリアは、父の手に握られた一通の手紙を目にした。そこには格式ある封蝋が押されており、その名を見た瞬間、息を呑む。

「ヴィンセント・クラウス公爵……ですか?」

冷徹公爵との契約

翌日、リリアは父親に連れられて公爵邸を訪れた。クラウス家は王国でも屈指の名家であり、財力・権力共に圧倒的な存在感を誇る。だが、当主であるヴィンセント・クラウスは「冷徹公爵」として知られ、社交界でも近寄りがたい人物として有名だった。

広大な屋敷の大広間に通されたリリアの前に、黒髪の男性が現れた。彼は高身長で、その鋭い紫の瞳がリリアを射抜く。均整の取れた顔立ちに冷ややかな表情が浮かび、彼の噂通りの威圧感が漂っていた。

「初めまして、リリア・アルヴェール嬢。私はヴィンセント・クラウスです」

彼の声は低く落ち着いており、余計な感情を一切感じさせない。リリアは緊張で喉が渇きそうになるのを必死に堪えながら、かろうじて礼を返す。

「お会いできて光栄です、公爵様」

ヴィンセントは椅子に腰掛けると、リリアを一瞥し、淡々と話を切り出した。
「今回の縁談について、単刀直入に話をしよう。私はこの結婚を形式的なものと考えている。互いに干渉せず、それぞれの生活を守る。ただし、契約期間は一年。その間、君には公爵夫人としての役割を果たしてもらう」

リリアはその言葉に戸惑いを隠せなかった。
「契約結婚……ということですか?」

「そうだ。一年後、必要がなくなれば君を自由にする。だが、それまでの間は君には貴族としての立場を全うしてもらう」

彼の冷淡な説明に、リリアの胸中には様々な思いが渦巻いた。しかし、家族のことを思えば、これ以上贅沢を言う余裕はない。

「承知しました、公爵様。ただし……」
リリアは震える声で言葉を紡ぐ。
「私も全力でこの役割を果たしますが、一つだけお願いがあります。私の家族には何もしないでください」

ヴィンセントは驚いたように目を細めた。
「それはどういう意味だ?」

「……公爵様がもしも、契約以上の干渉を家族にしようとするのであれば、私はこの話を受け入れることはできません」

その一言に、大広間の空気が張り詰める。だが、次の瞬間、ヴィンセントの口元に微かに笑みが浮かんだように見えた。

「君は……面白い女性だな、リリア・アルヴェール」



リリアの条件を聞いたヴィンセントは、しばらく黙ったまま彼女を見つめていた。その紫の瞳は、彼女の全てを見透かそうとしているかのようだった。リリアはその視線に射すくめられそうになりながらも、視線をそらさず彼に向き合う。

「家族を守るためにこの縁談を受け入れると言うのか?」
ヴィンセントが冷静な声で問いかけると、リリアはしっかりと頷いた。

「はい。私はアルヴェール家の長女として、この家族を支える責任があります。それが今回の結婚で果たせるなら、どんな条件でも受け入れる覚悟です。ただ、それ以上の犠牲は払えません」

その言葉に、ヴィンセントの表情が一瞬だけ柔らいだように見えた。しかし、それもすぐに消え、彼は再び冷徹な面持ちに戻った。

「分かった。君の条件を受け入れよう。契約結婚の範囲内で、君の家族には干渉しないことを約束する。ただし、公爵家の名誉に泥を塗るような行為だけは許さない。その点を忘れないでくれ」

「ありがとうございます、公爵様」

リリアは深く頭を下げた。その瞬間、自分が何を選び、どれだけ大きな覚悟を抱え込んだのかを改めて実感する。

結婚準備と孤独

契約が成立し、リリアは正式にクラウス家の人間として迎えられることになった。結婚式までの間、彼女は公爵家の礼儀作法や規則を徹底的に叩き込まれることになる。

公爵家の執事であるグレゴリーは、厳格ながらも的確な指導をする人物だった。彼はリリアに対して「あなたが公爵夫人となる以上、誰もが認める立場を確立しなければなりません」と告げ、完璧を求める。

「……厳しいですね」
リリアが疲れた顔でこぼすと、グレゴリーは一瞬だけ微笑を浮かべた。
「公爵様が選ばれた方です。期待を裏切らないことが大切です」

その言葉には、リリアを鼓舞するような優しさが込められていた。

だが、リリアは同時に不安を抱えていた。ヴィンセントとは必要最低限の会話しか交わさず、彼の心の中が全く読めない。それでも、彼女は自分に課せられた役割を全うしようと必死だった。

結婚式当日

結婚式は王国でも話題になるほど豪華なものだった。貴族たちが集まり、祝福の言葉を贈る中、リリアは緊張した面持ちで祭壇に立っていた。

ヴィンセントは変わらず冷静で、感情を一切表に出さない。その隣に立つリリアは、自分があまりにも小さく、無力な存在に思えてくる。

「誓いますか?」
神父の問いに、ヴィンセントはためらうことなく答えた。
「誓う」

続いて、リリアにも同じ問いが向けられる。
「……誓います」

その言葉を口にした瞬間、リリアは自分が戻れない場所に足を踏み入れたことを実感した。ヴィンセントは指輪を差し出し、淡々とリリアの指に通した。その手は冷たく、彼の感情の欠片も感じられなかった。

結婚式が終わり、披露宴が始まったものの、ヴィンセントはほとんどリリアに近づくことなく、客人たちとの会話に徹していた。彼がこちらを振り返ることは一度もなかった。

リリアは一人、部屋の隅でグラスを握りしめながら、自分がこれからどう公爵夫人として立ち回るべきかを考えていた。彼にとって、この結婚はただの形式に過ぎない。それでも、自分は役割を果たさなければならないのだ。

公爵邸での新生活

結婚式の翌日、リリアは正式にクラウス家の一員として迎え入れられた。しかし、夫婦としての生活は、形だけのものであることがすぐに分かった。ヴィンセントは多忙を理由に邸宅を空けることが多く、リリアと顔を合わせることはほとんどなかった。

使用人たちの目も厳しく、彼女を快く思わない者も少なくない。それでもリリアは、花が枯れた庭を手入れしたり、読書に励んだりして、自分の居場所を見つけようと努力した。

ある夜、リリアは偶然ヴィンセントと廊下ですれ違った。
「リリア、どうした?」
彼は珍しく話しかけてきたが、その声には冷たさとともに微かな疲労が感じられた。

「いいえ、ただ……あなたが忙しいのは分かっていますが、何か私にできることがあれば教えてください」
リリアが控えめにそう言うと、ヴィンセントは一瞬だけ驚いたように目を見開いた。

「……君に求めるのは、公爵夫人としての振る舞いだけだ。それ以外のことに気を回す必要はない」

彼の言葉は冷たかったが、その視線の奥にある何かを、リリアは見逃さなかった。それは彼自身も気づいていない、微かな揺らぎのように感じられた。



ヴィンセントの一言に、リリアは何も返せなかった。彼の背中が廊下の奥へと消えていくのを、ただ黙って見送るしかなかった。
「公爵夫人としての振る舞いだけ……」
リリアはその言葉を反芻し、心に波紋が広がるのを感じた。自分はただの飾りでしかないのだろうかと。

その夜、リリアは眠れないままベッドに横たわっていた。暗闇の中、天井を見つめながら、自分の役割について考える。ヴィンセントが望むのは完璧な「公爵夫人」であって、彼自身の心に触れることは望まれていない。リリアはその現実を受け入れるしかないと自分に言い聞かせた。

孤独な日々

リリアの新しい生活は、予想以上に孤独なものだった。広大な公爵邸の中で、彼女の居場所はほとんどなかった。使用人たちは一応の礼儀を持って接してくれるが、彼らの態度からは冷たい距離感が感じられる。

特にヴィンセントの秘書である女性、エレオノーラの態度はあからさまだった。
「公爵様のお時間を取らないでいただけますか。あの方は常に多忙なのです」
そう告げられるたび、リリアは自分の存在がまるで不要であるかのように思えてくる。

そんな中、リリアが心を寄せたのは、屋敷の庭だった。長い間手入れがされていない庭は、荒れ果てた状態だったが、そこに美しい花の芽を見つけたとき、リリアは心が救われるような気がした。

「ここを、もう一度美しい庭にしてみせるわ」
誰に言うでもなく、そう誓ったリリアは、毎日少しずつ庭の手入れを始めた。

偶然の邂逅

ある日、庭の手入れをしていたリリアは、ふと気配を感じて顔を上げた。そこには、ヴィンセントが立っていた。彼は仕事を終えたばかりなのか、黒い外套を羽織り、冷ややかな目で彼女を見下ろしている。

「何をしている?」
低い声で問いかけられたリリアは、一瞬驚いたが、すぐに花の手入れをしていた手を止めた。
「この庭を綺麗にしたいと思いまして。放っておくのはもったいないと思いましたので」

ヴィンセントは無言でリリアの足元に視線を移した。彼女の指先は泥で汚れており、普段の貴族の令嬢らしさとはかけ離れている。だが、彼はその姿に違和感を覚えるどころか、奇妙な興味を抱いた。

「それが君の仕事だとは思わないが……勝手にすればいい」
短くそう言い残し、ヴィンセントは踵を返した。

しかし、彼が去る前にリリアは勇気を出して一言を投げかけた。
「公爵様も、たまにはここで休んでみてはいかがでしょうか。この庭が綺麗になったら、きっと気分も良くなりますよ」

その言葉に、ヴィンセントは立ち止まった。そして、振り返ることなく小さく呟いた。
「……君がどれだけのことをできるか、見せてもらおう」

それは、彼なりの承認だったのかもしれない。リリアはその場に立ち尽くしながら、彼の背中が再び遠ざかるのを見送った。

リリアの努力

その後もリリアは毎日庭の手入れに励んだ。ヴィンセントとの接触は少ないものの、彼の「見せてもらおう」という言葉が胸に響き、彼女を支える糧となった。

数週間が経つ頃には、庭には色とりどりの花が咲き始めていた。リリアはその美しい光景を見て、少しだけ自信を持てるようになった。自分にも役割があり、何かを成し遂げられるのだと。

ある日、庭を眺めていたリリアの元に、思いがけない訪問者が現れた。それは再びヴィンセントだった。彼は庭を見渡しながら、静かに口を開いた。

「ここまでやるとは、少しだけ君を見直した」

その言葉にリリアは驚き、彼の顔を見上げた。だが、彼の表情はいつもの冷たいままだ。それでも、彼が自分の努力を認めてくれたことが嬉しかった。

「ありがとうございます、公爵様。これからももっと綺麗にします」

リリアの瞳は輝いていた。それを見たヴィンセントは、心の奥底で微かに何かが揺れるのを感じた。しかし、彼はそれを表に出さないまま、静かにその場を去った。

新たな絆の予兆

リリアの努力と健気さは、少しずつ屋敷の空気を変えていった。使用人たちも次第に彼女に対して敬意を持つようになり、エレオノーラでさえ態度を和らげる兆しを見せていた。

そしてヴィンセントもまた、リリアの存在を無視できなくなりつつあった。彼にとって、この結婚は形式だけのものであるはずだった。しかし、リリアの純粋な努力と優しさが、少しずつ彼の心を溶かし始めていたのだ。
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