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本編
82話 雪原にて その4
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「ですがまぁ・・・」
タロウはゆっくりと首を傾げる、まだあるのかとタロウを見つめる男達、
「あくまで・・・その・・・私が好きな・・・というか、ある書のね、印象に残った部分でしかないのですが・・・」
あっさりとぶっちゃけるタロウである、昔読んでこれはと夢中になってしまった孫氏の兵法の解説本の受け売りであり、その書が大変に分かりやすく読みやすかった為、中学生であったタロウはこれだこれだとはしゃいだものであった、中二病まっ盛りな時期である、
「他にもあるのだな」
ギランと目を輝かせるボニファース、
「はい、あるにはあります」
「で?」
「つまらないので、この辺で」
ニコリと微笑むタロウであった、ムッと睨みつけるボニファース、軍団長らもカラミッドも不愉快そうに目を細める、
「・・・あー・・・すいません、その出し惜しみという訳では無くてですね」
流石にタロウも慌ててしまい、しかし、ンーと腕を組み瞑目すると、
「私としては、それこそ・・・この場にいる皆様の経験こそを書にしてまとめるべきと考えます」
カッと目を見開き一同を見渡した、急に何だとさらに目を細める男達、
「いや・・・それこそが、大事でしてね・・・私の読んだ書、それには戦略と戦術、そして戦争とは何かまでもが網羅されております、で、ここで大事なのが戦争とは何かなのでしてね、その何かを理解すればこそ、戦略の重要性も間諜の価値も理解できるというものでして・・・」
あの頃色々読み漁ったなーとタロウは右目を閉じた、様々な情報が雪崩のように舞い込むも、それらは面白い事に数える程度の名前に集約され、その中でタロウが知っているのは孫氏とクラウゼヴィッツ、少し外れるがマキャベリの三つである、そしてタロウが口にしたのは孫氏であり、さらには戦争とはなんぞやとの問いの規範となるのがクラウゼヴィッツであった、
「なので・・・そうですね、こうしてお話しするのは簡単・・・ではないのですね、私としても大変に・・・その、ズレた事を言っては申し訳ないなとも思いますし・・・なのですが、どうでしょう、やはり王国にあって、戦略論、戦術論、及び戦争論というものを確立してみてはと思うのです・・・」
ウンウンと悩みながら続けるタロウ、
「確立?」
「はい、折角ほら、これだけ軍を率いて、前線に立って、勝利してきた優秀な指揮官が揃っているのです、どうでしょう、その成功体験というのかな、あの火計は上手く行ったとか、あの戦は上手く行ったとか、ではなぜ上手く行ったのかを考え、その概要を記していく、で、さらに重要なのは失敗体験ですね、こうしたら失敗した、あの戦ではこのように負けた、ではどうすれば良かったのか、こうすれば被害を防げたはず、こうすれば逃げ切れた・・・とか・・・もう、赤裸々に書き出しまして、で、皆で論評してみてもいいかもしれません、で、その先に出来上がるのが・・・戦術論であり、その戦術を行使する前に取り得た策を上げていけば戦略論になるものと思うのですよ・・・」
「それはまた・・・」
男達がザワザワと顔を見合わせる、そして、
「学問にしろというのかな?」
ボニファースがジッとタロウを見つめた、
「はい、その通りですね、流石陛下、察しが早い」
ニコリと微笑むタロウである、少しばかり無礼かなと思うが、ここはどこまでも柔らかく対するのが得策であろう、厳めし男達と厳めしい話しをしている中で、さらに厳めしくしては回る頭も回らない、
「フッ・・・しかし・・・確かに・・・うむ、面白そうではあるな・・・」
鼻で笑いつつフヌーと考え込むボニファース、その隣のアンドリースも腕を組み、軍団長らも考え込んでいる様子、その背後の従者達の黒板を鳴らす音が静かに響き渡った、あっ、しっかりメモされていたんだなとやっと気付いたタロウである、
「・・・まぁ・・・その先に・・・なんですが」
タロウは思い出したもう一つの名前から別の提案をしてみる事とした、
「先に?」
ボニファースがゆっくりとタロウを睨みつけ、アンドリースもスッと顔を上げる、
「はい、恐らく・・・そうやって戦術から戦略、そして戦争とは何かを考えていくと・・・君主とは何か国とは何か・・・にまで考えが及ぶものと思います」
「それはまた・・・なんだ、儂に文句でもあるのか?」
ニヤリと微笑むボニファース、軍団長らもそれはとタロウを睨みつける、
「いいえ、文句は無いですよ」
あっさりと答えニコリと微笑むタロウ、
「しかし・・・そうですね、いずれ誰かが行きつく問いではあると思います、第一・・・答えられます?君主とは何か?国とは何か?という問いに対し、誰しもが納得できる答え・・・」
「・・・難しいな・・・」
これまたあっさりと答えるボニファース、
「なるほど、ですと陛下も実は悩まれた事がある・・・違いますか?」
「・・・その通りだな・・・」
フフッと楽しそうに目元を和らげるボニファース、エッとアンドリースが目を丸くし、他の軍団長も意外そうにボニファースを見つめてしまう、
「ですよね、だからこそ、難しいとなるのですよ」
フフッと微笑み返すタロウである、
「では、貴様の答えを聞きたいが・・・答えられるか?」
「無理です」
再びあっさりと答えるタロウ、これには軍団長らもエッとタロウを見つめ、すぐ側のカラミッドでさえ呆れ顔である、
「何故かと言えば・・・君主の概念が国によって、または時代によって大きく異なるからですね、なので、私が口にできる君主のあり方は、私の故郷のそれであって、この王国にあって、今、この時を生きる皆様にとってはだいぶ違和感の強いものとなります」
「それほどに違うのか?」
「はい、まるで別物でして・・・恐らく理解は難しいものと思います・・・」
「それほどか?」
「はい、それほどです、なので、一旦、話しを戻しますが、まず皆さんに考えて欲しいのは、戦争とは何か、その下に戦略やら戦術やらがぶら下がってきますが、これはあくまで技術論です、これはちゃんとした学問になり得ますし、皆さんの経験を活かすという意味でも構築しておいて損は無いです、戦争にもある程度強くなりましょうしね・・・それと、どのようなね、些細な戦術、戦略であっても文字として残しておけば後代への重要な遺産になります、学園長とも話しましたが、やはり記録を残すというのは大事です、どんな取るに足らないと感じる事でもね、それを記録し残しておいてこそ、やがて文化となりその国やそこに住む人達への贈り物となると思います、とても大事な事です」
フヌーと一息ついて茶を口にするタロウ、また話しが変わってないかと訝し気にタロウを見つめる男達、
「で、戦争とは何かを考えると、どうしても政治とはなんだ、統治とはなんだ、君主とはなんだとなると思います、何故なら戦争を引き起こすのは大概君主であり、政治だからなんですね」
「言いおるわ」
ニヤリと微笑むボニファース、
「ですが、真実でしょ」
ニコリと微笑むタロウ、その通りだなとボニファースが呟く、
「今回の戦争もそう考えると面白くて・・・以前話したように、帝国という国は常にどこかしらと戦って、征服し、力を固辞しつづけなければならない国です、そういう統治体制なんですね、で、国の、特に君主である統治者の周りの人達がそういう思考で動いてます、皇帝その人の周りですね、だから・・・まぁ、皇帝もどうしてもそう考えてしまうし、そう動かざるを得ない、もしその力が無ければどうなるかというと国が瓦解してしまう・・・と彼等は考えているし、力の無い統治者には従わないとも明言しているようです、まぁ、その気持ちは分かります、皆さんも陛下であるからこそこうして結集しているのでしょう?そして何故そうしているかと言えば、現王家が強力で、陛下自身が聡明な君主であると考えているからではないですか?違います?」
タロウが片眉を上げて男達を見渡す、頷く者多数、その表現はどうかとタロウを睨み返す者多数、ボニファースその人はニヤニヤと微笑んでおり、カラミッドはムーと眉根を寄せている、この場にあってカラミッドだけは少しばかり事情が異なっている、リシャルトもまた同様に困惑している様子であった、
「では、視点を変えて、魔族と・・・その西の蛮族ですね、そちらについてはどうかと申せば、私が考えるにまず西の蛮族、これは仕方ない・・・と言っては駄目ですが、あれでしょう、恐らくですが、食うに困ってなのではないですか?こちらに攻めてくるのは・・・」
「・・・それはその通りだな・・・」
軍団長の一人が答えた、
「でしょうね、聞く限り、安定的な農作が望めない土地に住んでいるようですし・・・狩猟民族なのでしょう、となるとどうしてもね、よくある事です、食うものが無くてそれが在る所に攻め込む、となれば食うものを与えれば良いとなればいいのですが、そうもいかない・・・彼らは一つ所に定住する習慣を持たないですからね、良き隣人とも良き国民ともなり得ない、王国の民は基本的に農耕民族ですから、恐らくどうしても・・・受け入れられないし・・・折角耕した畑にね、勝手に侵入したりする事もあるでしょうから・・・そうなるともうね、それだけで人死にが出る程に荒れます・・・相容れないのですよね、どうしても・・・ですが、その点、ハイランダーは賢いですね、ちゃんと定住して王国にも貢献している、恐らく西の蛮族とハイランダーは同じ民族だと思うのですが、やはり部族単位で考え方も生活習慣も大きく異なるのでしょう、ハイランダーは良き隣人で、王国民の一部です、まぁ、見た目からして違うから少しばかり違和感はありますし、似たような部族、民族は私が知らないだけで王国内に多数存在すると思いますが、彼等もまた王国の在り方に順応し、王国民であろうとしています、であればやはりそれは立派な王国民なのですよね」
思わず天井を見る男が数人、そして確かになと頷く、ハイランダーと聞いてゲインの存在を思い出し、そして確かにそのハイランダーと西の蛮族は共通点が多いと察したのだろう、
「そんな蛮族達も危機となれば集まって他国に攻め入るんですから・・・大した結束力だし、中心となる部族も大したものだと思いますが・・・攻められる側はたまったものではないですけどね・・・で、魔族に関してですが、これも似たようなものですね、ですが、彼らが求めたのは食糧では無く、快適な土地でした、まぁ、北ヘルデルはね、冬となれば大変に不便な土地ですが、彼等の故郷から比べれば・・・もう、楽園のような土地ですからね」
エッとタロウを見つめる者多数、アッと気付くタロウ、何気に魔族については秘するべきだと黙していたがうっかり口にしてしまった、
「そうなのか?」
カラミッドが思わず身を乗り出す、
「えっと・・・まぁ、はい、そのように魔族から聞いております」
やばいと思って誤魔化すタロウ、しかし、
「魔族と話せるのか」
アンドリースも叫んでしまう、他の軍団長も目を丸くしていた、
「えぇ・・・まぁ、ほら、何かと器用なものでして・・・」
エヘヘと笑うタロウ、まったくとボニファースは目を細め、
「わかった、話しを戻せ」
と先を促す、
「あっ、はい、つまりは・・・事程左様に戦争そのものの原因は異なるのですよ、となれば何故そうなるかを考えると・・・統治の問題、技術の問題、土地の問題、等々・・・これまた千差万別となります、で、その一つに」
「統治者の問題、つまりは・・・」
「はい、君主に行きつきます、かと言って・・・君主、王であるとか、皇帝であるとか、他には・・・あれか、都市国家のように多頭政治ですかね、複数人の代表者が政治を担う形もありまして、それぞれにまた問題点も利点も異なりますけど、その点も面白いのですが・・・まぁ・・・なので、ひっくるめてね、統治者、または国の代表を君主として論じるのが良いのかなと・・・なので・・・私としてはこの国、そして今この時代に生きる皆様のですね、その考え方こそ形にするべきで、さらにはそれが国の規範ともなります、そしてそれがある程度形になると・・・恐らくですが君主のあり方が明示され、次いで貴族のあり方も明確になりましょう、そしてさらには王国民のあり方が示される・・・まぁ、平民のそれはね、勤勉に働けとか、納税は義務であるとか、法律には従うべしとかそういう・・・ある意味で、当たり前の文言になるでしょうけど、それでもね、それは立派な規範となります、で、それを明文化する事で、時代による変遷が見て取れる・・・その時代、何が重要視され、どう考えられたか、時を経てどのように変わっていったか・・・ですね・・・まぁ、そこまでやってやっと学問ですね、何十年、何百年後の事ですけど・・・それでもね、それを王国で初めて確立し、広めたとなれば・・・うん、後の世の人達には高く評価されるでしょうね」
どんなもんかなと言葉を区切るタロウ、相変わらずあっちこっちとまとまりが無かったが、まぁ、この場は誤魔化せたようだし、煙に巻けたとも思う、実際男達は何とも難しい顔で考え込んでおり、ボニファースだけが楽しそうに口元を歪めていた、そこへ、
「失礼します、敵軍、動きあり」
階上からヒデオンの部下が駆け下りて来た、オオッと慌てて立ち上がる男達であった。
タロウはゆっくりと首を傾げる、まだあるのかとタロウを見つめる男達、
「あくまで・・・その・・・私が好きな・・・というか、ある書のね、印象に残った部分でしかないのですが・・・」
あっさりとぶっちゃけるタロウである、昔読んでこれはと夢中になってしまった孫氏の兵法の解説本の受け売りであり、その書が大変に分かりやすく読みやすかった為、中学生であったタロウはこれだこれだとはしゃいだものであった、中二病まっ盛りな時期である、
「他にもあるのだな」
ギランと目を輝かせるボニファース、
「はい、あるにはあります」
「で?」
「つまらないので、この辺で」
ニコリと微笑むタロウであった、ムッと睨みつけるボニファース、軍団長らもカラミッドも不愉快そうに目を細める、
「・・・あー・・・すいません、その出し惜しみという訳では無くてですね」
流石にタロウも慌ててしまい、しかし、ンーと腕を組み瞑目すると、
「私としては、それこそ・・・この場にいる皆様の経験こそを書にしてまとめるべきと考えます」
カッと目を見開き一同を見渡した、急に何だとさらに目を細める男達、
「いや・・・それこそが、大事でしてね・・・私の読んだ書、それには戦略と戦術、そして戦争とは何かまでもが網羅されております、で、ここで大事なのが戦争とは何かなのでしてね、その何かを理解すればこそ、戦略の重要性も間諜の価値も理解できるというものでして・・・」
あの頃色々読み漁ったなーとタロウは右目を閉じた、様々な情報が雪崩のように舞い込むも、それらは面白い事に数える程度の名前に集約され、その中でタロウが知っているのは孫氏とクラウゼヴィッツ、少し外れるがマキャベリの三つである、そしてタロウが口にしたのは孫氏であり、さらには戦争とはなんぞやとの問いの規範となるのがクラウゼヴィッツであった、
「なので・・・そうですね、こうしてお話しするのは簡単・・・ではないのですね、私としても大変に・・・その、ズレた事を言っては申し訳ないなとも思いますし・・・なのですが、どうでしょう、やはり王国にあって、戦略論、戦術論、及び戦争論というものを確立してみてはと思うのです・・・」
ウンウンと悩みながら続けるタロウ、
「確立?」
「はい、折角ほら、これだけ軍を率いて、前線に立って、勝利してきた優秀な指揮官が揃っているのです、どうでしょう、その成功体験というのかな、あの火計は上手く行ったとか、あの戦は上手く行ったとか、ではなぜ上手く行ったのかを考え、その概要を記していく、で、さらに重要なのは失敗体験ですね、こうしたら失敗した、あの戦ではこのように負けた、ではどうすれば良かったのか、こうすれば被害を防げたはず、こうすれば逃げ切れた・・・とか・・・もう、赤裸々に書き出しまして、で、皆で論評してみてもいいかもしれません、で、その先に出来上がるのが・・・戦術論であり、その戦術を行使する前に取り得た策を上げていけば戦略論になるものと思うのですよ・・・」
「それはまた・・・」
男達がザワザワと顔を見合わせる、そして、
「学問にしろというのかな?」
ボニファースがジッとタロウを見つめた、
「はい、その通りですね、流石陛下、察しが早い」
ニコリと微笑むタロウである、少しばかり無礼かなと思うが、ここはどこまでも柔らかく対するのが得策であろう、厳めし男達と厳めしい話しをしている中で、さらに厳めしくしては回る頭も回らない、
「フッ・・・しかし・・・確かに・・・うむ、面白そうではあるな・・・」
鼻で笑いつつフヌーと考え込むボニファース、その隣のアンドリースも腕を組み、軍団長らも考え込んでいる様子、その背後の従者達の黒板を鳴らす音が静かに響き渡った、あっ、しっかりメモされていたんだなとやっと気付いたタロウである、
「・・・まぁ・・・その先に・・・なんですが」
タロウは思い出したもう一つの名前から別の提案をしてみる事とした、
「先に?」
ボニファースがゆっくりとタロウを睨みつけ、アンドリースもスッと顔を上げる、
「はい、恐らく・・・そうやって戦術から戦略、そして戦争とは何かを考えていくと・・・君主とは何か国とは何か・・・にまで考えが及ぶものと思います」
「それはまた・・・なんだ、儂に文句でもあるのか?」
ニヤリと微笑むボニファース、軍団長らもそれはとタロウを睨みつける、
「いいえ、文句は無いですよ」
あっさりと答えニコリと微笑むタロウ、
「しかし・・・そうですね、いずれ誰かが行きつく問いではあると思います、第一・・・答えられます?君主とは何か?国とは何か?という問いに対し、誰しもが納得できる答え・・・」
「・・・難しいな・・・」
これまたあっさりと答えるボニファース、
「なるほど、ですと陛下も実は悩まれた事がある・・・違いますか?」
「・・・その通りだな・・・」
フフッと楽しそうに目元を和らげるボニファース、エッとアンドリースが目を丸くし、他の軍団長も意外そうにボニファースを見つめてしまう、
「ですよね、だからこそ、難しいとなるのですよ」
フフッと微笑み返すタロウである、
「では、貴様の答えを聞きたいが・・・答えられるか?」
「無理です」
再びあっさりと答えるタロウ、これには軍団長らもエッとタロウを見つめ、すぐ側のカラミッドでさえ呆れ顔である、
「何故かと言えば・・・君主の概念が国によって、または時代によって大きく異なるからですね、なので、私が口にできる君主のあり方は、私の故郷のそれであって、この王国にあって、今、この時を生きる皆様にとってはだいぶ違和感の強いものとなります」
「それほどに違うのか?」
「はい、まるで別物でして・・・恐らく理解は難しいものと思います・・・」
「それほどか?」
「はい、それほどです、なので、一旦、話しを戻しますが、まず皆さんに考えて欲しいのは、戦争とは何か、その下に戦略やら戦術やらがぶら下がってきますが、これはあくまで技術論です、これはちゃんとした学問になり得ますし、皆さんの経験を活かすという意味でも構築しておいて損は無いです、戦争にもある程度強くなりましょうしね・・・それと、どのようなね、些細な戦術、戦略であっても文字として残しておけば後代への重要な遺産になります、学園長とも話しましたが、やはり記録を残すというのは大事です、どんな取るに足らないと感じる事でもね、それを記録し残しておいてこそ、やがて文化となりその国やそこに住む人達への贈り物となると思います、とても大事な事です」
フヌーと一息ついて茶を口にするタロウ、また話しが変わってないかと訝し気にタロウを見つめる男達、
「で、戦争とは何かを考えると、どうしても政治とはなんだ、統治とはなんだ、君主とはなんだとなると思います、何故なら戦争を引き起こすのは大概君主であり、政治だからなんですね」
「言いおるわ」
ニヤリと微笑むボニファース、
「ですが、真実でしょ」
ニコリと微笑むタロウ、その通りだなとボニファースが呟く、
「今回の戦争もそう考えると面白くて・・・以前話したように、帝国という国は常にどこかしらと戦って、征服し、力を固辞しつづけなければならない国です、そういう統治体制なんですね、で、国の、特に君主である統治者の周りの人達がそういう思考で動いてます、皇帝その人の周りですね、だから・・・まぁ、皇帝もどうしてもそう考えてしまうし、そう動かざるを得ない、もしその力が無ければどうなるかというと国が瓦解してしまう・・・と彼等は考えているし、力の無い統治者には従わないとも明言しているようです、まぁ、その気持ちは分かります、皆さんも陛下であるからこそこうして結集しているのでしょう?そして何故そうしているかと言えば、現王家が強力で、陛下自身が聡明な君主であると考えているからではないですか?違います?」
タロウが片眉を上げて男達を見渡す、頷く者多数、その表現はどうかとタロウを睨み返す者多数、ボニファースその人はニヤニヤと微笑んでおり、カラミッドはムーと眉根を寄せている、この場にあってカラミッドだけは少しばかり事情が異なっている、リシャルトもまた同様に困惑している様子であった、
「では、視点を変えて、魔族と・・・その西の蛮族ですね、そちらについてはどうかと申せば、私が考えるにまず西の蛮族、これは仕方ない・・・と言っては駄目ですが、あれでしょう、恐らくですが、食うに困ってなのではないですか?こちらに攻めてくるのは・・・」
「・・・それはその通りだな・・・」
軍団長の一人が答えた、
「でしょうね、聞く限り、安定的な農作が望めない土地に住んでいるようですし・・・狩猟民族なのでしょう、となるとどうしてもね、よくある事です、食うものが無くてそれが在る所に攻め込む、となれば食うものを与えれば良いとなればいいのですが、そうもいかない・・・彼らは一つ所に定住する習慣を持たないですからね、良き隣人とも良き国民ともなり得ない、王国の民は基本的に農耕民族ですから、恐らくどうしても・・・受け入れられないし・・・折角耕した畑にね、勝手に侵入したりする事もあるでしょうから・・・そうなるともうね、それだけで人死にが出る程に荒れます・・・相容れないのですよね、どうしても・・・ですが、その点、ハイランダーは賢いですね、ちゃんと定住して王国にも貢献している、恐らく西の蛮族とハイランダーは同じ民族だと思うのですが、やはり部族単位で考え方も生活習慣も大きく異なるのでしょう、ハイランダーは良き隣人で、王国民の一部です、まぁ、見た目からして違うから少しばかり違和感はありますし、似たような部族、民族は私が知らないだけで王国内に多数存在すると思いますが、彼等もまた王国の在り方に順応し、王国民であろうとしています、であればやはりそれは立派な王国民なのですよね」
思わず天井を見る男が数人、そして確かになと頷く、ハイランダーと聞いてゲインの存在を思い出し、そして確かにそのハイランダーと西の蛮族は共通点が多いと察したのだろう、
「そんな蛮族達も危機となれば集まって他国に攻め入るんですから・・・大した結束力だし、中心となる部族も大したものだと思いますが・・・攻められる側はたまったものではないですけどね・・・で、魔族に関してですが、これも似たようなものですね、ですが、彼らが求めたのは食糧では無く、快適な土地でした、まぁ、北ヘルデルはね、冬となれば大変に不便な土地ですが、彼等の故郷から比べれば・・・もう、楽園のような土地ですからね」
エッとタロウを見つめる者多数、アッと気付くタロウ、何気に魔族については秘するべきだと黙していたがうっかり口にしてしまった、
「そうなのか?」
カラミッドが思わず身を乗り出す、
「えっと・・・まぁ、はい、そのように魔族から聞いております」
やばいと思って誤魔化すタロウ、しかし、
「魔族と話せるのか」
アンドリースも叫んでしまう、他の軍団長も目を丸くしていた、
「えぇ・・・まぁ、ほら、何かと器用なものでして・・・」
エヘヘと笑うタロウ、まったくとボニファースは目を細め、
「わかった、話しを戻せ」
と先を促す、
「あっ、はい、つまりは・・・事程左様に戦争そのものの原因は異なるのですよ、となれば何故そうなるかを考えると・・・統治の問題、技術の問題、土地の問題、等々・・・これまた千差万別となります、で、その一つに」
「統治者の問題、つまりは・・・」
「はい、君主に行きつきます、かと言って・・・君主、王であるとか、皇帝であるとか、他には・・・あれか、都市国家のように多頭政治ですかね、複数人の代表者が政治を担う形もありまして、それぞれにまた問題点も利点も異なりますけど、その点も面白いのですが・・・まぁ・・・なので、ひっくるめてね、統治者、または国の代表を君主として論じるのが良いのかなと・・・なので・・・私としてはこの国、そして今この時代に生きる皆様のですね、その考え方こそ形にするべきで、さらにはそれが国の規範ともなります、そしてそれがある程度形になると・・・恐らくですが君主のあり方が明示され、次いで貴族のあり方も明確になりましょう、そしてさらには王国民のあり方が示される・・・まぁ、平民のそれはね、勤勉に働けとか、納税は義務であるとか、法律には従うべしとかそういう・・・ある意味で、当たり前の文言になるでしょうけど、それでもね、それは立派な規範となります、で、それを明文化する事で、時代による変遷が見て取れる・・・その時代、何が重要視され、どう考えられたか、時を経てどのように変わっていったか・・・ですね・・・まぁ、そこまでやってやっと学問ですね、何十年、何百年後の事ですけど・・・それでもね、それを王国で初めて確立し、広めたとなれば・・・うん、後の世の人達には高く評価されるでしょうね」
どんなもんかなと言葉を区切るタロウ、相変わらずあっちこっちとまとまりが無かったが、まぁ、この場は誤魔化せたようだし、煙に巻けたとも思う、実際男達は何とも難しい顔で考え込んでおり、ボニファースだけが楽しそうに口元を歪めていた、そこへ、
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