セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

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本編

13話 夏の日の策謀 その6

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午後になると食堂にはヘッケル夫妻とエレインとオリビアがテーブル越しに対面していた、

「先に図面の方を見て頂きたいのだが」

ブラスは咳払いを一つして説明を始めた、数枚の木簡と黒板を取り出しテーブルに並べると、店舗の改築案を説明する、エレインとオリビアは一つ一つに頷きながら理解を示し、ブノワトは隣りで厳しい顔である、

「以上となりますが、此処までで質問等あれば」

ブラスはそう言って一息吐いた、仕事上話し続ける事は稀な為、若干口周りに違和感を覚える、

「はい、大丈夫かと思います、でも」

とエレインは図面に視線を落としたまま口淀んだ、

「今のうちよ、言いたい事はなんでも言ってしまってね、図面上の変更は幾らでもできるけど、工事が始まってからでは直しようが無いものばかりだからね」

ブノワトは優しく助言する、

「はい、ありがとうございます、でも、そうですね、概ねこちらの要望は盛り込まれていると思います、はい、それにある程度柔軟性を持たせたつもりでしたので、大丈夫かと思います」

エレインは黒板の一つを手に取ってジッと見詰めた、その黒板には店舗の完成予想図が描かれていた、店舗を斜め上から見たような線画となっている、

「その、すごい絵ですね、何か、フワフワしたものが形になったようで・・・」

エレインは自身が始めた事、それが着実に形になっている事に小さな感動を覚えた、

「お嬢様、まだまだこれからですよ」

オリビアはそんなエレインに現実を突きつけるが、自身もまたエレインの手にする完成予想図に目を奪われている、

「そうよー、あなた達の目標は店舗を立てる事じゃないの、建てた店舗で商売を成功させる事よ」

ブノワトはニコリと笑顔になる、

「そうですね、はい、分かっているのですが、いざ目にすると嬉しいものですわね」

エレインは手にした黒板をオリビアに渡した、

「そうよねー、この店舗があなた達の第一歩になるんだから、重大よね」

「はい、なので、はい、妥協は出来ないです」

オリビアも瞳を輝かせている、

「では、図面の方は納得頂けたという事でいいかな?」

ブラスはエレインとオリビアに確認を取る、二人は静かに頷いた、

「うっし、じゃ、一番大事な点だな」

ブラスは再び咳払いをすると木簡をもう一枚テーブルに置いた、

「えーと、これが見積になります、正直な値段なのだがどうだろうか?」

木簡には数種類の項目と金額が並び最下段に集計が記されていた、

「なるほど、はい、想像の範疇ではありますわね」

エレインは金額にはさほど驚かず、オリビアもまたうんうんと何度か頷くだけであった、

「大丈夫かい?貴族とはいえ学生には少々お高いと感じるが・・・」

ブラスの正直な感想である、

「確かに、金額としては高いと思いますが、それだけの価値があるものとも思っておりますわ、故に、納得せざるを得ません、それとヘッケル夫妻に任せれば値段以上の物が出来ると確信しておりますし」

エレインが全幅の信頼を表明すると、ブラスは眉を顰め、ブノワトは笑顔になる、

「エレインお嬢様にそこまで言わせたんだ、いい仕事してくれよ、旦那」

ブノワトは景気良く旦那の肩を叩くが、ブラスはあらためて緊張したらしい渋い顔はそのままである、

「では、工期について伺いたいのですが」

オリビアは仲の良い二人の様を斜めに見つつ、先を促す、

「おう、えっとだ、工期についてはそれほどかからないと思う、雨が振らなければ4日、余裕を持って5日もあれば完成するかな?、予備日を貰っておいて引き渡し前に建物内を検査して修正があれば修正、追加があれば追加で、追加の場合は別途費用が発生するし、修正の場合はその必要は無い、但しこの修正と追加については現場でしっかりと話し合う事として、で、諸々考えると、切りのいい所で7月1日引き渡しでどうだろう?」

「はい、そうなると、そこからさらに数日後に開店したとして、夏祭りには間に合いますわね」

7月の祭りは10日に開催される夏祭りである、初夏祭りと同等の規模の祭りであり、初夏祭りは豊穣祈願祭、夏祭りは豊穣感謝祭と定義されている、

「うんうん、あれだな、ミルクアイスケーキを売るには最適な時期かもな、再来月になると若干寒くなるしな、うん」

ブラスはエレインの戦略に理解を示す、

「では、それで契約で宜しいですか?お嬢様?」

どうもこの店舗改築についてはオリビアが最もやる気のようである、エレインの尻を叩くのが自身の仕事と自覚している為であろうか、

「そうですわね、はい・・・と、その前に、ブノワトさんから何か助言的なものはありますか?」

エレインはブノワトを正面から見据えた、

「助言?今更?うーん・・・この建物については私も旦那を信頼してくれとしか言いようがないのよね、立場的にも」

とブノワトは薄っすら笑みしてブラスを横目に睨む、

「その後については、以前にも何となく話したと思うけど・・・」

とブノワトは一転して真剣な顔になる、

「そうだねぇ、今の内に人を確保しておくのが良いかなと思うよ、学生達だけで店舗を回すのは無理があるし、エレインさんが補助に回るにしても一人では難しいだろうしね、それと、ギルド関連の雑務が増えるでしょ、その時間もね、これはエレインさん自身が動かなければならないから、うん、これに関しては私が出来るだけ立ち会ってあげるわね、その方がお互いスムーズだとも思うし、それから・・・現金は常に確保しておくこと、何よりも重要よね、出納関連はオリビアさんが担当する事になるのかしら、であれば信頼できると思うけど、他人に任せるのであれば注意することね・・・」

それからーとブノワトは腕を組む、

「うん、前にも言ったけどあんた達には木工細工の恩もあるからね、軌道に乗る迄は助けてあげるわよ、但し、ちゃんと相談して欲しいかしらね、いい?黙っていても気にしてくれて助けてくれるのは、同じ屋根の下に住んでいる家族だけよ、助けて欲しい時や悩んだ時は遠慮しないで相談なさい、問題解決は速ければ速いほど良いと思うしね」

そんな所かしらとブノワトはブラスに問う、若干恥ずかし気なのは夫の前でかっこつけたからであろうか、

「良いこと言うな、さすが自慢の嫁さんだ」

ブラスはニヤケてブノワトの頭を無遠慮に撫でまわす、

「ちょ、止めてよ」

急に始まった夫婦の戯れにエレインとオリビアは白けた顔をするのであった。
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