セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

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13話 夏の日の策謀 その5

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翌日、生徒達が学校へ行った後、ソフィアはユーリとクロノスに捕まっていた、

「えっとー、私もほら日常業務ってものがあるじゃない?」

「そうね、知ってるわ」

ユーリはニコヤカな笑顔である、

「それにユーリだって、授業があるんでしょ、この時間は」

「そうね、その通りよ」

ユーリの笑みは消えない、

「ふむ、ソフィアよ、俺が此処にいる理由を話すべきかな?」

クロノスもまたニコヤカな笑顔である、

「はて、なんででしょうねぇ」

ソフィアはどうしたものかと思案しつつ二人の眼光をノラリクラリと躱している、

「まぁ、いろいろと聞きたい事はあるんだよ、君とタロウには、なぁ、ユーリ?」

「えぇ、そうね、私としても1年半位かしら離れていた時期があったでしょう?あの時、貴方達が何をしていたとか、何処で何を見たとか・・・」

「うんうん、この間の洗髪だったか、あれもエルフの習慣?だったよな、それと何だっけ他にもあるんだっけ?」

クロノスは楽し気である、

「それと、最も大事な点なんだけどー」

ユーリは笑顔はそのままにジッとソフィアを見詰める、ソフィアはその視線を視線で逸らせようと木戸から見える街路に目を向けるが、無駄であった、

「そうだな、簡単に聞こうか・・・あの娘は何者だ?」

クロノスは最重要である疑問を口にした、

「んー、それ聞く?」

ソフィアは目を閉じ首を傾ける、

「勿論だ」

クロノスはそっけない、

「初めて会った時から不思議な娘だとは思ってたのよ、それでもねぇ、あなたが養女にしたって言うし、まぁ、親を亡くした子供なんて珍しくもないしね、そういう事もあるかと思っていたんだけど、それでも、やっぱり、違和感は・・・あるわよねぇ」

「まぁ、そうかも知れないわね・・・」

ソフィアはどうしたものかと沈思して、

「えっとね、ユーリには言ったわよね、その彼女の事は彼女から打ち明けられる筈だって」

「ええ、そんなような事は聞いたわ」

「なら、それを待つって事は出来ないかしら?」

「どういう事だ?」

クロノスが目を光らせる、

「えっとね、そういう約定らしいのよ、彼女とその世界との・・・いや、私とタロウと彼女とのね、だから、前にも言った通り、彼女に関して私が語る事は無いし、話せる事も無いわ、それはタロウも一緒だし、ミナは・・・そうね、恐らく覚えていないと思うけど・・・」

ソフィアはしどろもどろになりつつ何とか説明しようと言葉を紡いだ、

「なんだ、そのような説明だとお前らでもどうしようも無い事があると認めているようなもんだぞ」

とクロノスは言って、その自分の言葉の意味を再認識すると、

「・・・そうなのか?」

と笑みを消して深刻な顔でソフィアを見詰める、

「ちょっと、あなた、それはだって」

とユーリも事の大きさを理解したようである、

「これ以上は、あなた達でも言えないかしら、ね、そういうもんだと理解してくれるとありがたいわ・・・こういう風に言うのは嫌いだけど、昔の仲間を信じてよ」

ソフィアは理解を求めるが、ユーリとクロノスは険しい表情のままである、

「あんたの事もタロウの事も信じているわよ、でも、そうだからと言って放置して良いかどうかは別だと思うわよ、ましてその判断すら出来ないのは違うと思うわ」

ユーリの意見は全くもって正しい、

「今なら、クロノスや私もいるし、その気になればなんとでもなる・・・が、私達の生き方でしょ、そうだったじゃない、違う?」

「だから、それとこれとはまた違うのよ、ミナの事を考えた上での現状よ、そう思って欲しいのよ」

「待って、レインの為ではなく、ミナの為なの?いよいよもって分からないわ・・・」

ユーリの眉間の皺が深くなる、

「そうよ、私達でもどうしようもない事をレインは支えてくれているの、私から言えるのはここまで」

ソフィアはそう言い切って腕を組むと口を閉じる、ユーリはソフィアをじっと睨み、クロノスは天を仰いで大きく息を吸い込むと、

「タロウは何て言っていたんだ?」

スッと顔を下ろしてソフィアを視界の中心に据えると静かに問うた、

「タロウは・・・そうね、うん、暫くは悩んでいたわよ、それで、何とか納得したみたい」

「そうか、それであいつは放浪しているのか?」

「それは違うと思うわ、今のタロウはこの件とはまったく別の論理で生きてる・・・と思うんだけどね」

ソフィアの答えにクロノスは黙り込む、そして、

「分かった、レインの件はお前達に任せる、もしこちらで出来ることがあれば遠慮なく話してくれ、以上だ、俺としては釈然としないが、お前達でどうにもならん事が俺にどうにかできるとは思えん、ユーリはどうだ?」

クロノスの明確な意見に、

「そりゃ、そうだけど、まぁ」

と消極的ではあるが同意して、でも、とユーリは言葉を続けた、

「文書の翻訳だけでもなんとか協力してもらえないかしら?昨日の件はあの場にいたあなた達と私、それとクロノスにしか言ってないから、秘密は守れると思うの、だから・・・」

「それは・・・そうねぇ」

とソフィアは渋面を隠さずに目を瞑り、暫し思案すると、

「なら、私が協力するわよ、翻訳作業、それでいいんでしょ」

「・・・簡単に言ったわね、出来るの?」

ユーリは疑念の籠った視線を無遠慮にソフィアへ向けた、

「まぁ、出来ると言えば出来るし、面倒と言えば面倒なのよね・・・」

ソフィアはそっぽを向く、

「なら、やれ、報酬も出す、必要であれば人手も出す」

「えー、報酬はまぁ、あれば貰うけど、人手はどうだろう?寮の雑務を任せられたらいいかしら?」

「いや、翻訳作業によ、人手は・・・」

「分かってるわよ、でもねぇ、きっと、人目につかない方がいいのよねー」

ソフィアはまぁ、やってみるわねーと何とも気の抜けた言葉で大仕事を受けたのであった。
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