セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

今卓&

文字の大きさ
93 / 1,471
本編

14話 踏み出す前の・・・ その1

しおりを挟む
翌朝、学生達と入れ違いでヘッケル工務店の男衆が資材と共に寮を訪ねる、

「おおー、大工のおっちゃんだー、おはよー」

玄関先に迎えに出たソフィアの後ろからミナが全速力で頭突きをかまし、見事に受け止めたブラスを見上げ、ミナは満面の笑顔である、

「朝から元気だな、ミナ坊」

「えへへ、ブノワトねーさんは?今日来るー?」

「んー、ねーさんは後から来るぞー」

「そっかー、で、おっちゃん何しに来たのー?」

「何しにって君、昨日の話覚えてないんか」

ブラスの困ったような顔を見て、ミナはむーと考え込む、

「ほら、今日からお店の工事なのよ、ミナ、ブラスさんを離してあげなさい」

ソフィアは優しくミナを抱え込むと、

「じゃ、取り合えず宜しくお願いしますねぇ」

「こちらこそ、少々騒がせますが宜しくです、あっ、それとブノワトが昼過ぎにガラス屋連れてくるって言ってましたけど、都合良いですか?」

「あら、嬉しい、大丈夫よ、昼過ぎね」

「へい、では」

ブラスは愛想の良い笑みを見せ背後の男衆に声を掛けると馬屋に向かった、

「ねぇねぇ、見てていい?楽しそうー」

ミナはソフィアを見上げる、

「うーん、そうねぇ、邪魔にならない所ならいいけど、危ないからなぁー」

「えー、見たいー、邪魔になるないようにするからー」

「そうは言ってもねぇ」

ソフィアが困った顔をしていると、

「なんじゃ、なら家の中から見れば良かろう、ミナ、1階の奥の部屋じゃ」

ヒョイと食堂から顔を出したレインの言葉に、

「あぁー、そうねぇ、あそこならいいわよ」

ソフィアは理解を示し、ミナの拘束を解いた、

「うん、わかった、じゃ、奥の部屋ね」

ミナはレインと共にダダーッと屋内に駆け込む、

「レイン、ちゃんと見てやってよー」

走り去る背中にソフィアは大声で注意する、

「了解じゃー」

と遠くでレインの声が聞こえたようであった。



日常業務を終えたソフィアは3階へ上がった、翻訳作業の続きをしようと取りかかるがレインがいないと作業にならない事を思い出し、一人、自身の間抜けぶりに一頻り自嘲の笑いを浮かべた後でさてどうするかと思案する、

「今日は静かですねー」

フラリとサビナが入ってきた、子供達が1階の個人部屋から離れない為確かに静かなのである、

「そうねぇ、改築中は静かになりそうよー」

ソフィアは思案しながらも上の空で返事をする、

「改築って何するんです?」

「馬屋をお店にするのよ、大きな屋台っぽく、それで、今日から作業なんだけどねー」

「へー、なんです?生徒達の発案ですか?」

「あー、エレインさんのね、商売の話よ、商会も作るらしくて本格的に」

「そりゃすごい、エレインさんってあの貴族の娘でしょ、独立ですか?」

「えぇ、そのつもりみたいよー」

「へー、やっぱあれですかね、貴族教育を受けると独立精神が培われるとかそんな感じなんですかね?」

サビナが丸っこい身体を揺らしながら妙に喰い付いてきた、

「貴族教育?、んー、関係あるのかしら?そこは分かんないわ」

ソフィアは曖昧な笑顔を浮かべる、

「でも商会設立って、結構な大事だと思うんですけど、どんな感じなんでしょう?」

「あら?独立に興味あるの?何か起業するつもり?」

「そういうわけではないのですが、でも、ほら興味はありますね」

「そう?」

「えぇ、今の彼氏も独立して店持ちたいって言ってますし、今後の為にも情報収集?的な?」

「へー、なに、彼氏って何屋さん?」

サビナはいよいよ席に着いて井戸端会議を始めてしまった、ソフィアもそう言った会話は嫌いではないのでついつい長話となってしまう、

「それでねー」

とサビナが調子良く話していると、

「・・・サビナさん?」

ゆらりと戸口にカトカが立っていた、ソフィアはキャッと小さな悲鳴を上げ、サビナも肩を揺らして驚くが、

「あら、カトカさん、何、さすがに飽きた?」

ゆっくりとカトカを見ると優しく対応する、カトカは表情を無くし目の下にはうっすらとクマを作っている、元々色白であったが、その雰囲気からよりその肌は白く透けているように感じられ、その美貌故に幽鬼か精霊かと言われたら誰もが躊躇わずに信じそうであった、

「何をいっているのです?魔石の研磨をお願いしたと思ったのですが、いつできるのですか?」

抑揚の無いカトカの声に若干の怒気が感じられる、

「もー、根を詰めすぎよー、所長も少しは力を抜けと言っていたでしょうに」

ソフィアはカトカの不機嫌そうな顔にまずいかなと腰を上げかけるが、サビナは調子を変えずに喋り続ける、

「そうは言われましたが、十分に寝てますし、食べてもいます」

「それは当然でしょ、ほら、座んなさい、立ってないで、今日は子供達はいないし、大人の時間よ、今は」

すっと立ち上がると戸口に近い自身の座っていた椅子を開け、奥の椅子に座り直す、

「ソフィアさんの仕事の邪魔になりますよ」

カトカは眼光鋭くソフィアを見る、表情の無いそれに感情は乗っていないがそれ故に冷たさのみがソフィアに突き刺さった、

「大丈夫よ、今日はレインがいないからね、実は仕事にならなかったのよ」

ソフィアはサビナに合わせて明るく笑い、手にしていた巻物をテーブルに置いた、

「そうですか・・・ソフィアさんでもそういう日があるのですか・・・」

カトカはそこでやっと緊張を解いたらしい、静かに入室すると空けられた席に着く、

「それでね、下の工事、気付いてる?あれがエレインさんのお店の改修工事なんですって」

「そうですか・・・初耳です」

「そうよねー、急に決まっちゃってね、エレインさんもあれよね動き出したら止まらない上に急なのよねーいろいろとー」

ソフィアは他人事のようにそう評するが、誰でも無いソフィア自身が原因であり炊き付けた事をすっかり忘れているようである、

「そんな事言って、またソフィアさんが何か仕掛けたんじゃないですか?」

サビナはいやらしく口元を歪めた、

「そんな事無いわよー、そりゃ、いろいろ言ったかもしれないけど、馬屋を改造しろとは言ってないわねー」

「思い出しました、ソフィアさん、少しお伺いしてよろしいですか?」

カトカはズイッとソフィアに顔を近付ける、例え表情が無くても顔色を無くしていてもカトカの美貌は崩れない、その顔が急にソフィアに突きつけられ、ソフィアは喜ぶべきか驚くべきか戸惑いつつも、

「なにかしら?」

冷静を装いつつ、なんとか口を動かした、

「魔法石への魔力の貯蔵についてですが・・・」

カトカは堰を切ったようにここ数日の研究とその結果判明した事を淡々と話し出した、何の書類も無しに次々と詳細な数字やら見た目で判断される曖昧な点やらが羅列されていく、ソフィアとサビナはポカンとした顔でそのカトカを見詰めて、

「というわけで、どうにも上手くいかないのです・・・」

カトカがそう締めて口を閉じたと同時に、ソフィアとサビナはホヘーと何とも間の抜けた吐息を吐いて呼吸を再開できた事を自覚した、

「・・・えっと、うん、カトカさんのがんばりは良く分かったわ・・・うん」

とソフィアは何とか言葉にし、

「そうね、流石カトカね、すごいわ・・・」

サビナも呆れつつも賛辞を送る、

「はい、それで、ソフィアさんが以前言っていたヒントなるものを頂ければと思うのですが・・・」

じっと冷徹な上にねっとりした視線がカトカから放たれる、

「そう・・・ねー」

ソフィアが何とも困った顔で視線を外した瞬間、

「ソフィアはおるかー」

今度はレインが戸口に立つ、

「あら、いらっしゃい、ソフィアさんならいるけど、どうしたの?」

サビナが腰を上げると、

「ソフィアに客人じゃ、ブノワトとガラス屋と言っておるぞ」

レインはそれだけ告げるとあっという間に姿を消した、

「あ、もうそんな時間、ごめんね、カトカさん詳しい話は明日でいいかしら?それとサビナさん、ちょっとだけお付き合い頂ける?」

ソフィアは腰を上げサビナに目配せするとそそくさと退室した、サビナは私でいいのかしらとぶつぶつ言いながらその後に続く、あっという間に一人残されたカトカは何とも居た堪れなくなり、取り合えず腰を上げるのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

救世の結界師マールちゃん~無能だと廃棄されましたが、敵国で傭兵のおっさん達に餌付けされてるので、今さら必要と言われても戻りません~

ぽんぽこ@3/28新作発売!!
ファンタジー
「ウチの子、可愛いうえに最強すぎるんだが――!?」 魔の森の隣、辺境伯家。 そこで八歳のメイド・マールは、食事も与えられず“要らない人間”として扱われていた。 ――そしてある日ついに、毒と魔獣の禁忌領域《魔の森》へ捨てられてしまう。 「ここ……どこ?」 現れた魔獣に襲われかけたその瞬間。 救いに現れたのは――敵国の”イケオジ”傭兵隊だった。 「ほら、食え」 「……いいの?」 焚き火のそばで差し出された“温かいお粥”は、マールに初めての「安心」と「ごはん」を教えてくれた。 行き場を失った幼女は、強面のおじさん傭兵たちに餌付けされ、守られ、少しずつ笑えるようになる―― そんなシナリオだったはずなのに。 旅の途中、マールは無意識に結界を張り、猛毒の果実を「安全な食べ物」に変えてしまう。 「これもおいしいよ、おじさん!食べて食べて!」 「ウチの子は天才か!?」 ただ食べたいだけ。 だけどその力は、国境も常識もくつがえす。 これは、捨てられた欠食幼女が、敵国でお腹いっぱい幸せになりながら、秘められた力で世界を巻き込んでいく物語。 ※若干の百合風味を含みます。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情され、異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

処理中です...