セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

今卓&

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本編

36話 講習会と髪飾り その5

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「あら、もう出来たの?早いわねー」

「えへへ、どう使うのか気になっちゃって」

寮の食堂ではブノワトとコッキーを出迎えたソフィアの前に、先日注文したばかりの金属製品の試作品が並べられた、パッと見た感じ10枚程であろうか、鉄製の長い三角形の薄い板である、内側が矢尻のようにくり貫かれており、三角形の内側に三角の突起が付いている何とも形容のし難い品であった、

「そっかー、でも、こんなに?」

ソフィアが試作品の一つを取り上げて、裏表を確認する、一枚一枚の違いとしては形は似通ったものであるが大きさと厚みが異なっている様子である、

「はい、用途が分からないと大きさとか難しくって、なら、何種類か作って、4本フォークの時みたいに選んで貰おうかと」

ブノワトはそう説明し、コッキーはなるほどと一つを取り上げてマジマジと観察している、

「うん、でも、いいんじゃない?穴も空いてるし、この穴が大事なのよねー、それに尖っている所も無いわね、良い仕事してるわ」

ソフィアはウキウキと微笑み、

「そんなに大事です?この穴?」

コッキーが小さな穴を覗き込む、

「ふふん、そうよ、無くても良いんだけど、あったら楽ね、じゃ、どうしようかしら、ミナが戻ったら・・・でも、ミナだとそっか、目立たないかな?じゃ、その間に作ってしまって・・・ちょっと待っててね、お茶を入れるから」

「あ、お構いなく」

ブノワトが遠慮するが、

「お構いますからお構いなくー」

ソフィアは誰にともなくそう言って厨房へ向かう、

「あ、母ちゃんがよく言うやつだ」

「うん、うちでも言ってた」

ブノワトとコッキーは小声でほくそ笑む、ソフィアはすぐに食堂へ戻り茶をそれぞれに供すると今度は奥の部屋に消えた、やがて木箱を抱えて戻ると中をゴソゴソと探り、

「あった、これでいいかな、うん」

と一人納得して裁縫道具と布の塊らしきものを持ってブノワトとコッキーの元へ戻る、

「わ、可愛いですね」

「うん、レースの造花ですか?」

「そうよー、スリッパを作る時にねついでに作ってたの、これをね」

ソフィアは金属片の一枚を手に取るとその穴へ造花を括りつけ始める、その時、

「もどったー」

玄関にけたたましくミナの声が響き、バタバタと支度の音が続く、やがて食堂の扉が勢い良く開かれ、

「あー、ねーさんとねーちゃんだー」

ミナの明るい嬌声が食堂を満たした、

「おつかれー」

「おかえりー」

「ごくろうさまー」

3人に出迎えられミナはムフーと得意気に微笑む、

「何してるのー?」

「お仕事だよー」

「なんの仕事ー?」

「なんだろ、なんて言えばいいんです」

ブノワトがソフィアへ問う、

「うーん、面白いもの作ってるの」

ソフィアは一旦手を止めると、

「レインは?」

「なんじゃ?」

買い物籠を下げたレインがノソリと食堂へ入ってきた、

「あ、おつかれ、ありがとねー」

「うむ、ねーさんにねーちゃんか、忙しいのう」

珍しくもニコリと二人を労う、

「あら、もう、また、そんなヨボヨボのばーさんみたいな口きいてー」

「うん、ちょっと老け過ぎよレインちゃん」

「ほおっておけい」

レインは嫌そうに口をへの字に曲げると、

「干し肉の良いのがあったぞ、それと、葉野菜じゃな、こんなもんで良いじゃろ」

買い物籠を掲げて見せる、

「うん、ありがと」

ソフィアは立ち上がり買い物籠を受け取りつつ、

「そうだ、ミナー、ちょっと待っててねー、レインもよー」

と厨房へ向かう、

「ねー、何これー」

ソフィアが留め置く必要も無く、二人はテーブルに並べられた金属片に目を奪われた、

「ねー、何だろねー」

「ソフィアさんが教えてくれないのー」

「そうなのー?」

「うん、あ、あれだよ、ミナちゃんが来るの待ってたのよ」

「あ、そっかー、そうかも」

「えー、なんだろ、なんだろ、これはお花?かわいーねー」

「そうねー」

「うん、どうするんだろね、スリッパに着けるのかな」

「えー、どうだろう、わざわざ?」

3人はキャッキャと楽しそうにはしゃぎ、レインも静かではあるが興味はあるようで金属片を手に取った、

「レインちゃん、わかるー?」

「新種のくさびかのう?」

「えー、でも、ソフィアさんがそんなのわざわざ作らせる?」

「わからんぞ、ソフィアは変人だからのー」

レインがシレッと毒を吐く、

「あー、そんな事言ってー」

「うん、ソフィアさんに怒られるぞー」

「ヘンジンってなーにー?」

「タロウやソフィアやユーリの事じゃ」

「レインちゃん酷いなー」

ブノワトは楽しそうに苦笑いし、

「はっきり言っちゃった」

コッキーは不思議そうにレインを見つめる、

「なんじゃ、笑っているところを見ると、そう思っておったのであろう」

レインがニヤリと二人を睨む、

「えー、そんな事ないですー」

「そうですよ、良くしてもらってますもん」

ネー、とブノワトとコッキーは微笑みあう、

「どうじゃろうのう、本音はどうじゃ」

レインが追い打ちをかけると、

「・・・ちょっとだけ」

「うん、良い意味で、良い意味でよ」

コッキーは申し訳なさそうに微笑み、ブノワトは誤魔化し笑いを浮かべた、

「ほらのう」

レインはやっぱりなと言わんばかりに踏ん反り返る、

「ねー、ヘンジンってなーにー」

ミナが不思議そうに3人を見上げた所に、

「あんたらー、聞こえてるんだからねー」

ソフィアが頬を引くつかせて戻ってきた、

「む、変人が戻ってきたぞ」

レインがサッと距離を取り、

「ソフィー、ヘンジンってなーにー?」

ミナは純粋な疑問を口にし続ける、

「あー、すいません」

「はい、ごめんなさい」

ブノワトとコッキーは小さくなって謝罪を口にした、

「もう、別にいいけど、ミナに変な言葉を教えないでよ」

ソフィアは別段怒るわけでもなく席に戻ると作業を再開した、

「むー、ねー、これ何するのー」

ミナの興味はすぐにソフィアの手元へと向かい、

「そうね、もうちょっと待ってね、すぐ終わるから、しっかりと縫い付けないと外れちゃうからねー」

ソフィアは静かになると作業に集中する、4人の視線が集まる中作業を終えると、

「うん、良い感じかな、じゃ、ミナおいで」

ソフィアはミナを鏡の前に座らせ、ヘアブラシでミナの髪を整えると、

「前髪をわけわけして、あ、レイン、それ頂戴」

レインの手にしていた金属片を受け取ると、

「こんな感じで、止めてあげて、レイン、もう一個」

レインはなるほどと気付いたようですぐに金属片をソフィアへ手渡す、ソフィアはミナの前髪を中央から二つに分けてそれぞれを金属片で耳に引っかけるように留めると、

「ほら、こんな感じ、可愛くなったでしょ」

パッと手を離してブノワトとコッキーへ振り向いた、

「え、これ、髪留めですか・・・なるほど・・・可愛い・・・」

「うん、そっか、わ、使いやすそう・・・」

ブノワトとコッキーは鏡越しにミナを見つめ素直に驚いている、しかしソフィアが思っていたほどの反応ではない、髪留め自体がミナの黒色の髪色の中で目立たない事が一番の理由のようである、

「ミナはどう?」

ソフィアがミナに問うと、

「むー、いいかんじー」

「あっはっは、良い感じかー、生意気ねー」

ミナの反応も薄いものであった、ソフィアは笑いながら造花の付いた髪留めを手にして、

「じゃ、これを着けるとどうかなー」

右側の髪留めを外して造花のそれと付け替える、

「わー、かわいいー、ミナちゃんかわいいよー」

「うん、髪留めだけだと地味かなって思ったけど、そっか、そういうふうに使うのかー」

「これ可愛いー、ミナ、これ好きー」

ミナは嬉しそうに微笑んでソフィアを見上げ、ブノワトとコッキーもやっとその有用性に気付いた様子である、

「でしょー、どう?重くない?」

「重くない、可愛いー、触っていい?」

「いいわよー、一旦外して自分で着けてみなさい」

「わかったー」

ミナは髪留めをそっと外して髪を抑えつつ四苦八苦しながら着け直す、

「出来たー、これでいい?これでいい?」

ミナがソフィアに鏡越しに確認し、

「うん、可愛い、簡単でしょ」

「うん、簡単だね、ミナにも出来るよー、えへへ、お姫様みたいー」

満面の笑みを見せるミナ、

「なるほど・・・」

「あの、ソフィアさん、私もいいですか?」

「どうぞー、ミナ、ねーさん達に代わってあげなさい」

「うん、いいよー」

ミナが跳ねるように席を立ち、ブノワトとコッキーがサッと席に着くと、髪留めを手にしてあーだこーだとやり始める、

「なるほど、これ便利かも」

「うん、仕事中でも使えますね」

「前髪邪魔な時あるしね」

「そうですよ、あ、でも少し曲げた方がいいのかな、これ」

「そうね、頭の丸みに沿わせようか」

「もう少し細くて長くてもいいかも・・・」

「うん、あ、でも、コッキーの髪に合うね、明るい茶色だから黒色が目立つんだな」

「なるほど、ん、どっちが上だ?中を外?外を中?どっちでもいいのか、なら外側を髪の下に入れてもいいんだ、凄いな、便利だな」

「あ、そっか、そうすると目立たないんだ、スゲー」

「あ、内側の三角を長くしてもいいかも」

「うん、その方が保持力は上がりますね」

「そうなると・・・そっか、金属の弾性が丁度いいんだ、木だと厳しいかな・・・」

「もう少し薄くできます?軽いほうがいいと思うなー」

「そだね、でも薄くしすぎると簡単に曲がっちゃうからなー」

「そっかー、色つけたいなー、白とか黄色とかー」

「それいいね」

「あ、ガラス玉をつけてみますか、可愛いかも」

「それもいいね」

「だしょー」

ソフィアはやれやれと微笑みつつ、

「じゃ、どうしようか、レインのも作るか、何色の造花がいい?」

ソフィアがレインに問う、

「何色でも良いぞ、なんでも似合うからの」

一人離れて見ていたレインであるが乗り気のようである、

「そっか、じゃ、同じ色で形を変えようかしら」

ソフィアが木箱の中を漁り、レインとミナが並んで木箱を覗き込む、

「これ、このヒラヒラ」

「む、こっちの色が良いぞ」

「えー、派手じゃない?」

「地味よりは良いじゃろ」

「レインの髪は綺麗な真っ黒だからなー、明るい色の方がいいかな」

「なら、これじゃ」

「むー、こっち、こっちはー」

「あら、綺麗ね、じゃ、それで、色が違うから形は同じにしますか」

「うむ、任せた」

ソフィアがニコリと微笑んで造花の制作が始まり、ミナとレインはワクワクとソフィアの手元を覗き込むのであった。
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