セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

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本編

37話 やっぱりニャンコな編み物とか その10

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「では、商会の新しい商品の披露になります」

エレインはジャネットとケイス、それから研究所組を集めるとガラスペンの入った木箱をテーブルに勿体ぶって置き、厳かに開いて見せた、

「わ、キレー」

「うん、ガラス?だよね」

「え、凄い、何ですかこれ?」

口々に絶賛の声が上がるがその用途に言及したものは無い、皆、その芸術的、工芸的な外見の美しさを褒め称えている、エレインの光の精霊による柔らかい光の下、ガラスペンは妖艶にその姿を照り返し、皆の視線が集まる中一層その美しさを際立たせていた、

「ふふ・・・こちら、ソフィアさんの指導の元に作成した品なのです・・・が、何に使用するか分かります?」

エレインはふと思い付き、口元に嫌らしい笑みを浮かべ意地悪く問いかける、

「また、ソフィアー」

ユーリの悲痛な叫び声を皮切りに、

「え、ソフィアさんの指導って・・・」

「うん、そうなると、ちょっと普通ではないですよね・・・」

「なんだろう、実用的には見えないけど」

「ガラスの工芸品ではないのですか?」

「あれ・・・どこかで・・・でも・・・ん?」

「にしては・・・そうね、この先の部分ってなんでこんなに捩じれてるの?」

「そこだけ共通してますね」

「えっと、何かの実験器具?」

「ソフィアさんだと、調理器具とか?」

「なら、新しい食器?あの4本スプーンみたいな」

「美容の道具かも」

「どうやって使うのよ・・・」

「えっと、どうやるんだろう?」

「・・・悔しいけどまったくわからんわ、ソフィアめー」

ユーリの憎々し気な発言を最後に一同は黙り込み、エレインとテラは楽しそうにその様子を観察する、

「もしかして・・・あ、あれですか・・・」

サビナが思い出したようである、

「分かりました?」

「えぇ、わかりますね、思い出しました・・・その・・・その場に居たので・・・でも、こんなに綺麗な品になるなんて・・・いや、想像できませんでした、これ凄いですね・・・」

サビナは惚れ惚れとガラスペンに見入る、

「じゃ、サビナさんは黙っててね」

エレインはニヤリと微笑み、サビナもその笑みの真意を理解しフフッと鼻で笑いつつ小さく頷いた、

「ふー、って、あ、何?お披露目会?」

片付けを終えたソフィアが食堂へ戻ってくる、その後ろにオリビアが続き二人共に前掛けで手を拭っている、

「ソーフィーアー」

ユーリがジロリとソフィアを睨み、

「あんた、今度は何やったのよー」

腹の底から響いてくる恐ろしい声である、

「何よ、別に私は何もしてないわよ」

「したからこれがあるんでしょうが」

ユーリの言葉は全くもってその通りである、皆、二人の遣り取りに苦笑いとなった、

「私が作ったんじゃないわよー、コッキーさんのとこのデニス君よ、若いのに良い職人さんよねー」

「そういう事を聞いてるんじゃないの、面白そうなものは先に教えてって言ってるでしょうが」

「えー、めんどー」

「あにおー」

二人のいつもの応酬である、皆、慣れた感じであるが、テラのみが大丈夫かしらとキョロキョロしている、

「さて、で、どうしたの?」

ソフィアはやれやれと席に着き、

「はい、何に使うものか問題を出したのですよ」

エレインがニヤりと視線を返す、

「あ、そういう事、ふーん、なら、どうする?当てられたら何か商品でも出す?」

「それいいですね、この品は無理ですが、別の品ならいいかもです」

ソフィアとエレインはニヤニヤと笑いあい、テラとオリビアは呆れたように微笑んでいる、

「む、何よそれ、ムカつくわねー」

ユーリがいよいよ眉を吊り上げるが、ソフィアは涼しい顔である、

「あー、せめてその・・・助言というか・・・手掛かりというか・・・」

「うん、まるで分かんないよ、何かない?」

ケイスとジャネットが上目遣いでエレインへ視線を送る、

「あら、もう降参ですの?」

エレインはニヤニヤ笑いを隠さない、

「会長、あまり気を持たせても・・・」

テラがやんわりとエレインを窘め、

「そうですよ」

オリビアも非難の目をエレインに向ける、

「もー、折角楽しんでいたのにー」

エレインは残念そうに微笑みながら足下に置いた別の箱から羊皮紙を一枚取り出し木箱の隣りに置くと、

「これで分かります?」

再び一同に問う、

「紙?」

「紙ですわ」

「紙ですね・・・」

「えっと・・・もしかして」

カトカが何かに気付いたようである、

「分かりました?」

「そうですね、恐らくですが・・・」

「ふふ、他の方はどうです?」

エレインはさらに勿体ぶっている、しかし、カトカ以外の表情は尚暗い、

「では、これで」

エレインはインク壺を紙の隣りに置いた、

「え、まさか」

「嘘でしょ」

「全然、分からなかった・・・」

「良かった、合ってた」

「ソフィアー、どういう事よ、聞いた事無いわよー」

「そりゃそうでしょ、言った事無いもの・・・?あれ?そうだっけ?」

ソフィアが首を傾げた、

「ふふ、もう、お分かりですね、こちらガラスペンになります、ガラス製のペンですわ」

エレインが勝ち誇った笑みを浮かべ、

「えー、嘘だー」

「ペンって・・・これで書くのですか?」

「え、ほんとに?」

「・・・何か、使うのに気後れしちゃうなー」

「こんなに綺麗なペンですか・・・」

一同は答えを告げられても懐疑の念が強い様子である、いち早く気付いたカトカも信じられないといった顔であった、

「ショチョー、報告したじゃないですかー」

サビナが眉を顰めてユーリを睨む、

「え、嘘、ほんと?」

「報告しましたよ、ほら、メーデルガラス店の工場にソフィアさんと行った時の事ですよー」

「え、覚えてない・・・」

ユーリは心底驚いた様子である、

「あ、そうだ、そうだよ、アンタあたしに突っかかって来たじゃない」

ソフィアも当時の記憶を思い出した様子である、

「え、うそ・・・」

ユーリが信じられないといった顔でソフィアを見る、

「・・・まぁ、立ち話程度でしたしね、その時のそれですよ」

サビナは実に曖昧に説明した、

「その時のそれって言ってもさー、先月の話しよね・・・」

「そうですね、でも、しっかり作ってたんだねー、メーデルガラス店も大したもんですね、ガラス鏡もそうですけど」

「そうね、うん、確かに」

ユーリは改めてガラスペンに視線を落とし、サビナは腕を組んで頷いている、ソフィアはいろいろあったしなー等とどうでもいい事を考えていた、

「では、実際に使ってみて欲しいんですが、こちらの品はちょっとあれなんで、こっちで」

エレインは続いて木軸のガラスペンを取り出す、こちらは木軸部分は雑な作りであるが、ペン先は見事な螺旋状のガラスである、さらにそのペン先には幾つか種類がある様子であった、一見しただけでもその違いは明瞭で、イチゴ型のものからやや長いもの、渦となった溝が多いもの等多彩である、

「このペン先の構造はほぼ同じなのですね、で、こちらもソフィアさんの提案で、普段使いに使えるようにとの事で作られました、木軸の部分は本職ではないので雑なのはお目こぼし下さい」

エレインは続いてペン先の違いを簡単に説明すると、

「では、ユーリ先生、実際に使ってみて下さい、ペン先をちょっとインクに浸ければいいですよ、この長いのが分かり易いかな?」

木軸ガラスペンの一本をユーリに手渡し、インク壺の蓋を開ける、ユーリはそのペン先をクルクル回して観察すると、インク壺を手前に引き寄せ慎重に差し入れた、途端、

「わ、吸い上げてる?」

「うん、インクが上っているのが見える」

「すげー、え、なんで?」

「綺麗だねー」

「・・・凄いな、何だこれ・・・」

ユーリは感激しつつペン先を観察し、おもむろに羊皮紙へ自分の名前を書き付けた、

「わ、書きやすい・・・」

「え、そうなんですか?」

「えっと、先生、私にも・・・」

こうして交代しながら羊皮紙へはそれぞれの名前が記入されていく、

「いかがでしょう?」

エレインが一通り手にした事を確認すると楽しそうに問う、

「うん、大したもんだわ」

ユーリは素直にガラスペンを認めたようである、鼻息を吐き出しつつ悔しそうに呟き、

「そうですね、これは売れるでしょうね、私も欲しいですよ・・・すごいな」

「インクを使う機会が少ないですけどね、うん、実用性のある芸術作品って・・・考えられないな・・・」

「これもうちで取扱うの?」

「ひやー、いよいよ高級品って感じだなー、何か、別世界だよね・・・」

口々にこの異質な品に向けた賞賛の声が上がった、

「そうですね、こちらの商工ギルドでは出来るだけ羊皮紙や上質紙を使うようにしているらしいのですね、そうするとこういった筆記具も需要が拡大していくと思われます、というか現時点でも需要はかなりあるのではないかなと思います、ですので取り組むには十分価値のある品ですね」

テラが実に商売人らしい補足を口にした、

「そっかー、なるほどなー」

皆納得してうんうんと頷く、その様子をエレインは観察しつつ頃合いを測り、

「それで、ユーリ先生にお願いしたいのですが」

唐突に話しを変える、

「こちらの木軸ガラスペンを数本お渡しするので実際に使用して欲しいのですね、で、使い勝手とかの意見を頂ければと思うのです、お願いできますでしょうか?」

「え、使い勝手?使用感とか改善案が欲しいって事よね?・・・あ、うーん、どうだろう・・・面白そうだけど・・・カトカとサビナが良ければ・・・」

ユーリは首を捻りつつ二人へ視線を向ける、二人は突然の事に難しい顔となるが、

「・・・エレインさん・・・というか商会さんには冷凍箱とか溶岩板とか意見を頂いてますからね」

「・・・そうですね、断る理由はないですし、なによりそれは不義理になりますね、こちらから一方的にお願いしてばかりでしたから・・・」

カトカとサビナは難しそうな口振りであるが、その口元は若干ニヤついている様子である、

「あんたらがいいなら良いわよ、うん、確かにね、商会には世話になってるし、ここは一肌脱ぎますか」

ユーリもどこか楽しそうに承諾し、

「ありがとうございます」

エレインはニコニコと謝意を口にする、

「えー、いいなー、私もお試ししたいですー」

「なら、私もー」

ケイスとジャネットがブーブー言い出すが、

「インク・・・高いですよ・・・紙も・・・」

オリビアの冷静な言葉に二人とも溜息と共に黙り込んでしまった、

「ま、ほら、先日のように複写の仕事が必要になるかもしれませんから、その時には活用しましょう、事務所にも1本は置いてありますし、それに研究所さんからの案を元により良い品になれば、本格的に生産可能になると思いますよ、木軸ガラスペンに関しては特に・・・あ、会長、洗浄の方法も指導された方が良いと思います」

テラがやんわりと宥め、エレインはそうねと頷いて洗浄方法の説明が始まるのであった。
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