セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

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本編

39話 チンチクリンな職人さん その2

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やがて、従業員が参集し店舗が開店する、都合の良い事にマフレナが店番の日であった、エレインとテラが状況を説明し、マフレナはそれは良かったと笑顔となる、それなりに気にしていたとの事であった、エレインは折角だからとベールパンと土産用のロールケーキの作成をマフレナに指示しテラはその手伝いに回った、そしてエレインとテラはそろそろかしらと頃合いを見計らって屋敷の前の持ち主が使用していたであろう大型の衝立を事務所へ運び込む、それをガラス鏡の前に置いて目隠しとした、世間には噂として漏れ伝わっている様子であるが、不要な揉め事を回避する為の事前策である、

「さて、こんなもんかしら」

エレインとテラが一息吐いたと同時に来客のようである、玄関先に男性の声が響き、テラは大きく返事をしながら玄関へ向かい、エレインもいよいよかしらと身嗜みを整える、

「失礼します」

ほどなくテラが3人の客を事務所へと案内する、エフモントを先頭にして女性が二人静かに入ってきた、

「おはようございます、エレイン会長」

エフモントが柔らかい笑みを浮かべ、

「おはようございます、エフモントさん」

エレインも柔らかい笑みで3人を迎えた、

「さ、どうぞ、こちらへ」

テラが打ち合わせ用の席を示し、3人はその席へ腰を下ろした、エフモントは落ち着いたものであったが、女性二人はキョロキョロと事務所内へ視線を飛ばしつつ、それでも心の内を表に出さないように口元に力を籠めている様子である、

「お茶かソーダ水を用意致します、それと、ちょっとした軽食もありますので、そうですね、私としてはソーダ水がお薦めです、どちらが宜しいですか?」

テラがニコヤカな微笑みで3人へ問う、

「あ、いや、これは申し訳ない、そんな気を使わなくても」

エフモントが恐縮するが、

「あら、エフモントさんならご存知でしょう、これが当商会の流儀ですわ」

エレインが優雅に告げる、

「あ・・・そうでしたな、はい、確かに」

エフモントははにかみつつ、

「お二人はどうします?ここはオススメに従いましょうか」

静かな二人にそう問いかけ、二人はコクリと小さく頷いた、

「すいません、テラさん、では、ソーダ水でお願い致します」

「はい、では少々お待ち下さい」

テラがさっと動いて厨房へ一声かけると直ぐに戻ってくる、

「今日はマフレナさんもおりますが、同席されます?」

テラは意地悪そうにそう問うた、

「いや、それは、どうでしょう」

エフモントは素直に難色を示し、

「そうね、それはそれ、これはこれですわ」

エレインも何を言い出すかのかと不思議そうにテラを伺う、

「ふふ、ちょっとした諧謔というものです、ほら、大事なお客様が固くなっておりますから、エフモントさんまで固くなってしまっては話しになりませんしね」

テラはニコニコと静かな二人に視線を向ける、しかし、エフモントは渋い顔であり、

「うーん、笑えないかしら?」

エレインも容赦が無い、

「あら、そうですか?」

テラが不満そうに口を尖らせた所にマフレナがソーダ水とベールパンを給仕する、流石に元メイドである、その所作は実に静かで上品なものであった、無駄口をきかずに無表情のままマフレナは一礼して退室した、

「さ、どうぞ、頂きながらお話しにしましょう」

エレインは率先してソーダ水に手を伸ばし、女性二人も思いもよらない歓待に顔を見合わせつつソーダ水へと手を伸ばした、

「そうでしたね、こちらの流儀でしたな・・・うん、これは見習うべき事かもしれません」

エフモントはベールパンを見ながらそう呟き、

「いや、私なんぞはどうしても面接の相手はムサイ男ばかりでして、それも柄が悪い事この上ない・・・あ、違いますね」

エフモントもその緊張からやや解かれたようである、自虐的に微笑みつつ、

「では、紹介からさせて頂きます」

静かな女性二人に視線を合わせると、

「まずは、こちら、フィロメナ・グルアさん、で、お隣がマフダ・グルアさん、マフダさんがこちらで修行をしたいとの事です、フィロメナさんは・・・まぁ、保護者というか付き添いというかそんな感じです」

フィロメナとマフダは背筋を伸ばして静かに頭を垂れた、フィロメナは長身で細身であり派手な身なりである、長く綺麗な金髪をきっちりと結い上げ、両耳にはこれ見よがしに金色の耳飾りが輝いていた、珍しい事に若干の化粧もしているようである、目元に濃いめの赤が、唇にも赤に近い紫色の紅を差している、エレインとテラから見ても美人の類である、化粧等しなくてもその容姿と相まって人目を惹くことは簡単であろう、対してマフダは小柄で地味である、茶色の髪を短くまとめてあり、それだけでもどこか田舎くさい印象を受ける、さらに化粧は勿論装飾品の類も一切身に着けてはいない、服装も質は良い物のようであるが、着古した品である、それが一般的なのであるが、どうしても二人が並んでいる為見比べてしまい、より貧相な印象を受けてしまった、

「なるほど、では、私がエレイン・アル・ライダー、六花商会の会長をしております、で、こちらがテラ・ベイエルさん、当商会の番頭さんです、宜しくお願い致します」

エレインとテラはフィロメナとマフダを観察しつつ丁寧に頭を下げる、

「それでは、えーと、お見合いみたいでなんか変ですな」

エフモントが無理して笑い声を上げ、

「ふふ、そうですわね、では、そうですね、エフモントさんから仔細というか要望は伺っております、修行・・・または弟子入りでしたか、そのように伺っておりますが」

エレインが小さく微笑みつつマフダへと話しを振った、

「ひゃい・・・あ・・・」

マフダが元気よく声を出すが意図せずどもってしまい、恥ずかしそうに顔を赤らめ俯いてしまう、

「あー、御免なさい、この子あがり症なもんだから」

変わってフィロメナが薄く微笑みつつ間を取り持った、

「えっと、親父と一緒にお店の開店の時にお邪魔したんですよ、私」

フィロメナはやや低い声である、不機嫌なわけではない、どうやら彼女は世間話から始めるつもりのようである、

「あら、あ、確かにお会いしてるかしら?確かエフモントさんが引き合わせてくれた時にいらっしゃいましたよね」

「覚えてくれてました?嬉しいわ、ほら、あの時は暑いし、急に親父に連れ出されたもんだから、メンドーでね、ちゃんと挨拶もしなかったから、失礼しましたわ」

フィロメナはとても柔らかい魅力的な微笑みを見せる、先程迄の表情の無いそれと違いエレインは当然のように、テラでさえもその微笑みに魅せられてしまう、

「こちらこそです・・・えぇ、確かに随分綺麗な人がいるもんだと・・・失礼ですわね」

エレインがしどろもどろに答えた、

「そう言って頂けると嬉しいです、お店の方にも時々妹達を連れて来てるんですよ、家からだと若干遠くて、市場の方に出してくれれば毎日でも行くのにって、妹達にはブーブー言われちゃって」

「あー、すいません、始めたばかりですので」

「いやいや、妹達も贅沢なんですよ、美味しいものを頂くには少しばかりの苦労なんて・・・ねぇ」

フィロメナはそう言ってニコリと笑顔を見せつつ、

「それに、簡単に手に入るものはやがて飽きるものです、価値あるものには相応の対価が必要であると・・・それが家訓ですから」

「まぁ、それはまた堅実な」

「堅実なんでしょうか・・・実家の話しはエフモントさんから聞いておりますか?」

フィロメナも話好きではあるらしい、主役であるマフダを差し置いて気持ちよく舌が回りだした様子である、

「はい、そのグルア商会さんですよね、詳細というものではないですが、伺いました、ですが、私もテラさんもモニケンダムが地元ではないので、今一つ要領を得ないのですよ」

「あら、そうなんですか、なら、簡単に言いますね、親父の仕事は女衒です、それと盗賊ではないですね、ゴロツキをまとめているから暴力団の頭目・・・というのが近いかしら?モニケンダムでははっきり言って鼻つまみ者の集団ですね」

フィロメナは実にあっさりと物騒な事を口にした、

「そんな言い方は・・・」

エフモントが鼻白むが、フィロメナは特に気にする事は無く、

「なので、今日もほら、本来であれば親父か母親が付き添えればいいんでしょうけどね、家にいる一番上の私が着いてきてると、まぁ、そんな感じなんです」

どこか冷めた口調である、

「そうですか、そうなると・・・」

エレインはどこまで話題にしていいのかを考えつつ、

「これも伺いましたが、御姉妹は養女が多いと・・・」

「そうですね、巷では10人姉妹とか言われてますけど」

フィロメナはうーんと視線を斜めに上げて、

「実際は、何人だろう、正式な養女は16人くらい?」

「えっ」

エレインとテラとエフモントが同時に驚き、

「それで、養女ではないですが間借り人が6人くらいかしら?これも出たり入ったりで・・・まったく」

やれやれと他人事のように溜息を吐くフィロメナである、

「で、私が5番目でこの子が10だっけ?」

「9女って言われたけど、いつの間にか10になってた・・・ました」

マフダがやっと緊張から開放された様子で顔を上げた、しかし、慌てて言葉遣いを直して恥ずかしそうに押し黙る、

「ふふ、ま、そんなもんね、ほら、親父が女衒でしょ、困った女性とか、捨てられたり、孤児になった子供とか犬猫みたいに拾ってくるのよ、で、ある程度大きいと仕事を世話してやって、子供だったらそのまま育ててって、ま、私も拾われた身だからね」

何とも重い事実をあっけらかんと話すフィロメナである、

「あ、勘違いして欲しくないのは、女衒だからってあれよ、全員を娼婦にしようなんてしてないからね」

フィロメナは急に慌てたように取り繕った、それは素直に驚いているエレインではなく、テラの視線に含まれる疑念を感じ取ったからである、

「親父曰く、娼婦なんざ無理して出来る仕事じゃない、儲かる事は儲かるし、股開いていればいいって考えている馬鹿もいるが、そんな簡単なもんじゃねー、少なくともお前には無理だ・・・って・・・それであたしは遊女やってるんだけどさ、どうなんだろうね」

何故かエフモントに問うフィロメナである、エフモントは何とも困った顔となり、

「難しい事を聞きなさんな、遊女だって簡単にできる仕事ではないだろ」

「そう思う?」

嬉しそうに微笑むフィロメナである、

「うん、まぁ、こんな感じ、特にこの子はね、姉妹の中でもチンチクリンだから」

ニコリと笑ってマフダの頭をグリグリと撫で回し、

「そのチンチクリンがやりたい事があるって言い出してね、それで親父経由でエフモントさんに泣きついたって訳・・・どう、少しは落ち着いた?」

フィロメナがマフダに問い、マフダは大きく頷いた。
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