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本編
39話 チンチクリンな職人さん その3
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「それで、あの・・・」
マフダはキッと強い視線をエレインに向ける、
「えっと、お店で・・・あ、お店っていうのは私が修行させて貰っているお店なんですけど、裁縫の店なんですが、そこで、下着の資料を見せて貰って、その、これだって思ったんです」
強い思いが感じられる言葉を、ゆっくりと様々な感情を押さえ付けながらマフダは語り続ける、
「下着そのものも素晴らしいと思ったんですが、それよりも、女性の身体の美しさを見せる為の衣装・・・それがそのこうビリッて感じで心に響いて、で、それが私がやりたい事だったんだってそう思えて、それで・・・その、何でもやりますから勉強させて下さい、裁縫なら3年間勉強してきました、それと掃除も料理も得意です、あと、子供の世話とかも好きです、なので、服飾に関しては自信があります、姉妹の服は私が作ってますし、お店でも重宝されていると思います、それから・・・」
マフダは興奮気味に声を荒げて黙り込んだ、真摯な瞳でエレインをみつめ、口元を強く引き締めている、その容貌からは似つかわしくない意思の表出であった、
「なるほど・・・」
エレインはマフダから感じられる想定していた人格との乖離に若干戸惑いを感じつつも、愚直で不器用そうなその小柄な娘に好感を持ち始めていた、マフダの視線を正面から受け止めて何を話すべきかを組み立てる、
「素晴らしい熱意ですね、ふふ、こそばゆいくらいです」
エレインはニコリと微笑み、
「では、マフダさんは当商会で服飾の仕事をしたいと、そう考えていらっしゃるのですか?」
「はい、えっと、下着の資料にありました女性の魅力を活かす服、それを作りたいのです、胸の形を綺麗にみせて、胸を中心にして全身を整える服装・・・私はそのように考えました、現状の服ですと、どうしても女性の身体の美しさを覆い隠しているように思うんです、なので、その綺麗な線というか、柔らかい雰囲気というか、女性らしい服というか、その全然モヤモヤしている感じなんですけど、そういうのを作りたいです」
「それは素晴らしいですね、しかし、何でもやりますと仰いました、それは良いとして、修行させて欲しいとなると、少し話しが変わってきます」
エレインはどう伝えるべきか言葉を探しつつ、
「そうですね・・・正直にお話しさせて頂きますね」
六花商会としての下着の取扱いと、主としている商品について静かに説明する、マフダはいちいちコクコクと頷き、エフモントとフィロメナも口を出すことなく傾聴している、
「さらに・・・どうしましょう、見せてもいいでしょうか?」
エレインは唐突にテラへと視線を向けた、
「そうですね、それが手っ取り早いかと、恐らくですが、フィロメナさんも疑問に思っているのではないでしょうか」
テラはフィロメナの様子を探る、その顔はどこか納得いっていない顔であった、
「そうね、マフダさんもフィロメナさんも服飾関係に参入していくものと思って、こちらの門を叩いたのでしょうから」
マフダとフィロメナはエレインの言葉にいよいよ疑問を持った様子である、
「どうぞ、お二人ともこちらへ」
エレインは席を立つと衝立の奥へ二人を招き、
「当商会としては現在こちらの商品へ注力しているところなのです」
二人へガラス鏡を披露した、
「わ、何だこりゃ」
「え、鏡・・・それもとても綺麗・・・輝いてる・・・」
「はい、ガラス鏡ですね、少々暗いかしら」
エレインは自ら衝立を畳むと、
「さ、これならよく見えるでしょう、いかがです」
ニコリと二人へ視線を向ける、
「え、えっと、座ってもいいの?」
フィロメナが鏡の前の椅子を指差す、
「どうぞ、ほら、マフダさんも」
二人は驚いた顔のまま鏡の前の席に着いた、
「ふふ、どうぞ、ゆっくり見て下さい」
エレインは二人の様子に微笑みつつ自席へ戻った、フィロメナとマフダは先程とは別種の緊張に包まれつつも鏡の中の顔をマジマジと見つめ、やがて、囁き声で何事かを話しだす、
「あー、女性には格別な品ですわな」
エフモントがやれやれと二人の背を眺めながら一息吐いた、
「それはもう」
テラが優しく微笑み、
「さて、そうね、私としては欲しい人材なんですが、テラさんはどうです?」
エレインがこちらも小声になって相談する、
「はい、良い人だと思いますよ、フィロメナさんも好人物ですね、ふふ、さすが遊女さんですね、男も女も虜にするのが上手なのかしら」
「それはもう、この街で一番の遊女屋の店主ですからね、フィロメナさんの信奉者は老若男女問わずですよ」
エフモントが他人事であるのに自慢げである、
「まぁ、そんな人がわざわざ来るなんて・・・ふふ、面白いですわね、あ、テラさん、あわせ鏡も見せてあげましょう」
エレインは再び席を立ち、テラと共に二人の背後にあわせ鏡を持って立つ、
「いかがです?」
楽しそうに微笑むエレインとテラを鏡越しに見て、マフダとフィロメナは、
「わ、こんな事もできるの?」
「後ろ頭だ、え、な、なんで・・・」
再び驚きの声を上げた。
やがて、マフダとフィロメナがそこそこに満足したであろう頃合いで、
「ほら、二人共、話半分だぞ」
エフモントのやんわりとした警句が二人の背に届き、二人はあっと小さく言葉を発して名残惜しそうに腰を上げ自席へ戻った、
「さ、折角ですから、頂いて下さい」
テラがニコニコとベールパンに手を伸ばす、
「あ、はい」
フィロメナは先程までとは打って変わって何とも可愛らしい感じになっており、マフダはどうやら場違いな所に来たのかもと内心焦りだしていた、エレインもそんな二人の様子を観察しつつベールパンを口に運ぶ、
「ふふ、少々はしたないですが勢いよく噛り付くのが美味しいのですよ」
エレイン自らが大口を上げて頬張る姿に、マフダとフィロメアは顔を見合わせてその姿を真似た、
「わ、美味しい・・・」
「うん、フワフワだー、モチモチだ」
「あ、そうだ、開店の時のお土産って購入できます?」
「えっと、あー、確かスポンジケーキでしたわね、販売してますよ」
「そうですか、開店の時に頂いたのはあたし食べてないんですよ、全部、こいつらに食べられちゃって」
ジロリと妹を睨むフィロメナである、
「えー、食べていいって言ったじゃない」
「そうだけどさー、少しは残すもんでしょー、楽しみにしてたのにー」
「先に言ってよー、ノールとノーラに取られちゃってサスキアが泣いちゃったんだもん、私だってちょっとしか食べてないし・・・」
ノールとノーラそれとサスキアは年少の姉妹の名前である、
「むー、躾はあんたの仕事でしょ」
「躾とこれは違うじゃない」
姉妹は緊張し続けて逆に弛緩してしまったらしい、エフモントは普段のツンとしたフィロメナとは違う表情に驚き、エレインとテラは微笑ましく二人を眺める、
「ふふ、ではそうですね、実際に見て頂いて分かったかと思うのですが」
エレインは事務的な口調にならないように気を付けながら話し始める、
「先程の品の販売を考えているのです、先に貴族向けとして展開する予定なのですが、時機を見て平民向けにも販売する予定なのですね」
「なるほど、いや、売れると思うし、欲しいです、お店にもだし、家にもね」
「うん、絶対欲しい、喧嘩になっちゃうかな?でも、あんなに大きかったら大丈夫かな?」
「大丈夫だろ、それより店が先だよ、絶対高価だしね」
「そっかー」
マフダは残念そうに溜息を吐く、
「そうですね、値段もありますが・・・ほら、さっきのあわせ鏡、あのくらいの大きさであれば手頃な価格にできますよ」
「え、そうなの?」
「はい、平民向けにはちゃんと平民向けの商品をと思っております、勿論、店舗で使う用のも考えておりますので、期待して下さい」
「・・・すごいな・・・うん、あー、何か違うね」
フィロメナはエフモントへ視線を送る、
「そう言いましたよ、あの商会はちょっと訳ありだって」
エフモントは目を細めて視線を返す、
「そっかー、うん、どうするマフダ・・・」
フィロメナは寂しそうにマフダを見る、
「え、でも・・・」
不安そうに見返すマフダである、
「あら、何もそんな悲しい顔にならなくても」
エレインは左手の人差し指を上げ、
「3つほど提案があります、フィロメナさんにとっても良い話しになるかと思いますが聞いていかれます?」
ニヤリと微笑むエレインにフィロメナは何事かと眉間に皺を寄せ、マフダは身を縮こまらせた。
マフダはキッと強い視線をエレインに向ける、
「えっと、お店で・・・あ、お店っていうのは私が修行させて貰っているお店なんですけど、裁縫の店なんですが、そこで、下着の資料を見せて貰って、その、これだって思ったんです」
強い思いが感じられる言葉を、ゆっくりと様々な感情を押さえ付けながらマフダは語り続ける、
「下着そのものも素晴らしいと思ったんですが、それよりも、女性の身体の美しさを見せる為の衣装・・・それがそのこうビリッて感じで心に響いて、で、それが私がやりたい事だったんだってそう思えて、それで・・・その、何でもやりますから勉強させて下さい、裁縫なら3年間勉強してきました、それと掃除も料理も得意です、あと、子供の世話とかも好きです、なので、服飾に関しては自信があります、姉妹の服は私が作ってますし、お店でも重宝されていると思います、それから・・・」
マフダは興奮気味に声を荒げて黙り込んだ、真摯な瞳でエレインをみつめ、口元を強く引き締めている、その容貌からは似つかわしくない意思の表出であった、
「なるほど・・・」
エレインはマフダから感じられる想定していた人格との乖離に若干戸惑いを感じつつも、愚直で不器用そうなその小柄な娘に好感を持ち始めていた、マフダの視線を正面から受け止めて何を話すべきかを組み立てる、
「素晴らしい熱意ですね、ふふ、こそばゆいくらいです」
エレインはニコリと微笑み、
「では、マフダさんは当商会で服飾の仕事をしたいと、そう考えていらっしゃるのですか?」
「はい、えっと、下着の資料にありました女性の魅力を活かす服、それを作りたいのです、胸の形を綺麗にみせて、胸を中心にして全身を整える服装・・・私はそのように考えました、現状の服ですと、どうしても女性の身体の美しさを覆い隠しているように思うんです、なので、その綺麗な線というか、柔らかい雰囲気というか、女性らしい服というか、その全然モヤモヤしている感じなんですけど、そういうのを作りたいです」
「それは素晴らしいですね、しかし、何でもやりますと仰いました、それは良いとして、修行させて欲しいとなると、少し話しが変わってきます」
エレインはどう伝えるべきか言葉を探しつつ、
「そうですね・・・正直にお話しさせて頂きますね」
六花商会としての下着の取扱いと、主としている商品について静かに説明する、マフダはいちいちコクコクと頷き、エフモントとフィロメナも口を出すことなく傾聴している、
「さらに・・・どうしましょう、見せてもいいでしょうか?」
エレインは唐突にテラへと視線を向けた、
「そうですね、それが手っ取り早いかと、恐らくですが、フィロメナさんも疑問に思っているのではないでしょうか」
テラはフィロメナの様子を探る、その顔はどこか納得いっていない顔であった、
「そうね、マフダさんもフィロメナさんも服飾関係に参入していくものと思って、こちらの門を叩いたのでしょうから」
マフダとフィロメナはエレインの言葉にいよいよ疑問を持った様子である、
「どうぞ、お二人ともこちらへ」
エレインは席を立つと衝立の奥へ二人を招き、
「当商会としては現在こちらの商品へ注力しているところなのです」
二人へガラス鏡を披露した、
「わ、何だこりゃ」
「え、鏡・・・それもとても綺麗・・・輝いてる・・・」
「はい、ガラス鏡ですね、少々暗いかしら」
エレインは自ら衝立を畳むと、
「さ、これならよく見えるでしょう、いかがです」
ニコリと二人へ視線を向ける、
「え、えっと、座ってもいいの?」
フィロメナが鏡の前の椅子を指差す、
「どうぞ、ほら、マフダさんも」
二人は驚いた顔のまま鏡の前の席に着いた、
「ふふ、どうぞ、ゆっくり見て下さい」
エレインは二人の様子に微笑みつつ自席へ戻った、フィロメナとマフダは先程とは別種の緊張に包まれつつも鏡の中の顔をマジマジと見つめ、やがて、囁き声で何事かを話しだす、
「あー、女性には格別な品ですわな」
エフモントがやれやれと二人の背を眺めながら一息吐いた、
「それはもう」
テラが優しく微笑み、
「さて、そうね、私としては欲しい人材なんですが、テラさんはどうです?」
エレインがこちらも小声になって相談する、
「はい、良い人だと思いますよ、フィロメナさんも好人物ですね、ふふ、さすが遊女さんですね、男も女も虜にするのが上手なのかしら」
「それはもう、この街で一番の遊女屋の店主ですからね、フィロメナさんの信奉者は老若男女問わずですよ」
エフモントが他人事であるのに自慢げである、
「まぁ、そんな人がわざわざ来るなんて・・・ふふ、面白いですわね、あ、テラさん、あわせ鏡も見せてあげましょう」
エレインは再び席を立ち、テラと共に二人の背後にあわせ鏡を持って立つ、
「いかがです?」
楽しそうに微笑むエレインとテラを鏡越しに見て、マフダとフィロメナは、
「わ、こんな事もできるの?」
「後ろ頭だ、え、な、なんで・・・」
再び驚きの声を上げた。
やがて、マフダとフィロメナがそこそこに満足したであろう頃合いで、
「ほら、二人共、話半分だぞ」
エフモントのやんわりとした警句が二人の背に届き、二人はあっと小さく言葉を発して名残惜しそうに腰を上げ自席へ戻った、
「さ、折角ですから、頂いて下さい」
テラがニコニコとベールパンに手を伸ばす、
「あ、はい」
フィロメナは先程までとは打って変わって何とも可愛らしい感じになっており、マフダはどうやら場違いな所に来たのかもと内心焦りだしていた、エレインもそんな二人の様子を観察しつつベールパンを口に運ぶ、
「ふふ、少々はしたないですが勢いよく噛り付くのが美味しいのですよ」
エレイン自らが大口を上げて頬張る姿に、マフダとフィロメアは顔を見合わせてその姿を真似た、
「わ、美味しい・・・」
「うん、フワフワだー、モチモチだ」
「あ、そうだ、開店の時のお土産って購入できます?」
「えっと、あー、確かスポンジケーキでしたわね、販売してますよ」
「そうですか、開店の時に頂いたのはあたし食べてないんですよ、全部、こいつらに食べられちゃって」
ジロリと妹を睨むフィロメナである、
「えー、食べていいって言ったじゃない」
「そうだけどさー、少しは残すもんでしょー、楽しみにしてたのにー」
「先に言ってよー、ノールとノーラに取られちゃってサスキアが泣いちゃったんだもん、私だってちょっとしか食べてないし・・・」
ノールとノーラそれとサスキアは年少の姉妹の名前である、
「むー、躾はあんたの仕事でしょ」
「躾とこれは違うじゃない」
姉妹は緊張し続けて逆に弛緩してしまったらしい、エフモントは普段のツンとしたフィロメナとは違う表情に驚き、エレインとテラは微笑ましく二人を眺める、
「ふふ、ではそうですね、実際に見て頂いて分かったかと思うのですが」
エレインは事務的な口調にならないように気を付けながら話し始める、
「先程の品の販売を考えているのです、先に貴族向けとして展開する予定なのですが、時機を見て平民向けにも販売する予定なのですね」
「なるほど、いや、売れると思うし、欲しいです、お店にもだし、家にもね」
「うん、絶対欲しい、喧嘩になっちゃうかな?でも、あんなに大きかったら大丈夫かな?」
「大丈夫だろ、それより店が先だよ、絶対高価だしね」
「そっかー」
マフダは残念そうに溜息を吐く、
「そうですね、値段もありますが・・・ほら、さっきのあわせ鏡、あのくらいの大きさであれば手頃な価格にできますよ」
「え、そうなの?」
「はい、平民向けにはちゃんと平民向けの商品をと思っております、勿論、店舗で使う用のも考えておりますので、期待して下さい」
「・・・すごいな・・・うん、あー、何か違うね」
フィロメナはエフモントへ視線を送る、
「そう言いましたよ、あの商会はちょっと訳ありだって」
エフモントは目を細めて視線を返す、
「そっかー、うん、どうするマフダ・・・」
フィロメナは寂しそうにマフダを見る、
「え、でも・・・」
不安そうに見返すマフダである、
「あら、何もそんな悲しい顔にならなくても」
エレインは左手の人差し指を上げ、
「3つほど提案があります、フィロメナさんにとっても良い話しになるかと思いますが聞いていかれます?」
ニヤリと微笑むエレインにフィロメナは何事かと眉間に皺を寄せ、マフダは身を縮こまらせた。
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