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本編
50話 光柱は陽光よりも眩しくて その9
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「やっと来たわね、まったく」
ミナの甲高い声でソフィアの来訪に気付いたユーリとサビナが歩み寄り、その背後では事務長が難しそうな顔でついて来た、サビナはその大きい肩に肩掛けベルトの付いた黒板を幾つもぶら下げており、何とも珍妙な有様となっている、
「まぁね、カトカさんの困った顔を堪能できたからお代はそれでいいわよ」
ソフィアが意地悪くニヤリと微笑む、カトカがモーと不満を漏らすと、
「えっ、何よそれ、カトカは私のだかんね」
「駄目ですー、カトカさんは私のですー、今日決めましたー、今決めましたー」
学園長を前にして二人はふざけ合うがカトカはいよいよ不愉快そうな顔で、学園長は何の事やらと困惑する、
「なによ、あんたにはミナもレインもいるでしょ、カトカは渡さないわよ」
「嫌ですー、全部私の物ですー、ねー、カトカさん、ユーリみたいな乱暴な女捨てちゃいなさい、私なら優しくするからー」
急に話しを振られたカトカはまったくと一息ついて、
「学園長も事務長もいらっしゃる所で遊ばないで下さい」
至極当然の言葉で二人を諫める、
「そうだけどー、朝から慣れない事したもんだから、癒しが欲しいのよー」
「そうねー、そう言われればそうなのよねー、カトカー、癒してー」
「は?何言っているんですか?こんなもの朝飯前とかさっき言ってたじゃないですか」
「そうだっけ?」
「あっそれ、強がりだから、ユーリは昔から負けず嫌いでねー」
「そうそう強がり、ソフィア良い事言った、ホントはとってもお疲れなのよ、だ・か・ら」
急に手を組む幼馴染の二人である、
「だから何なんですか?二人して」
「えー、癒してほしいなーって」
「うん、カトカさんの素敵な笑顔が見たいかなーって」
「それいいねー」
「この状況で何言っているんです、適当な事言わないで下さい」
「えーっ、適当じゃないわよー、こっちは真剣にカトカさんの笑顔を求めるのにー」
「真剣に求めないで下さい」
「そう言わないでさー」
「言いますよ」
いつも以上に能天気な二人であった、カトカは言い争いに疲れて大きく溜息を吐き、学園長は普段は垣間見せる事すらないその有様にやや驚きつつも戯れているだけかと理解し、そう理解した上で一緒にカトカを茶化そうかとも思うが、これに参戦するのは自傷行為だなと長年の経験から察して曖昧な笑みを浮かべ傍観に徹する事にした、
「はいはい、遊んでないで、所長はお迎えでしょ」
しかし、そこにサビナは遠慮なく水を差す、
「えー、何よー、サビナまでー」
「何よじゃないです、クロノス様が待っておられるのですから、礼はしっかりと尽くしませんと、大事な資金提供者なんですから」
「えー、ここでそれ言うのー」
「どこででも言いますよ、ほら、所長はお迎えに行って下さい」
「うー、しょうがないなー、もー」
ユーリはやれやれと肩をすくめて校舎に向かう、
「大丈夫なのかの?」
学園長が不安そうにその背を見つめるが、
「あれです、緊張の前の弛緩です、陛下がいらっしゃるとなれば所長でも緊張するんです、なので、今のうちに盛大に弛緩しているんです、それだけですよ」
サビナが学園長の疑問に鼻息交じりで答え、
「そうなのか?」
学園長の隣りに立った事務長も不安そうにサビナに問う、
「はい、御自分でそう言ってましたからそうなんですよ・・・普段でも教壇に立つ前と事務室にいる時ではまるで人が違いますから、そういう人なんです」
サビナはどこまでも他人事のように答えた、実際にユーリの事である以上他人事ではある、
「なら、良いのか・・・な?」
「ふむ、任せるしかないですな」
学園長と事務長はついぞ知りえなかったユーリの奇行に不安そうに顔を見合わせる、
「大丈夫でしょ、なんのかんの言ってもやる時はやる人なので」
サビナも追加とばかりにまったくと溜息交じりで答え、
「あ、で、ソフィアさん、少し聞いてもいいですか?」
肩から下げた数枚の黒板を重ねて持ってソフィアへと向き直った、
「ん?何かあった?」
「何かも何もこれほどの結界は見た事が無いです、より詳細を聞いておきたいのです、実際の所私もカトカも朧気ながら感じられる程度でして、何か凄いのがあるのは分かるのですが、より詳しく記録したいのですよ」
「あれを感じれるだけでも大したもんじゃない、流石ユーリが認めただけはあるわね」
ソフィアはあら驚いたと目を剥いて、
「でも、ユーリに聞いてないの?説明はあっちの方が上手でしょ」
「それは勿論、所長が担当した部分は聞き取りました、それだけでも大したものなのは分かるのですが、それはあくまで補完と補助と聞いております、根幹部分はソフィアさんの手になるものとの事でしたので、まずはその一番の元になる部分に関して伺いたいのです」
何とも事務的な言葉使いである、ソフィアはサビナも真面目な人だなーとのんびりと微笑んだが、
「ほう、それは興味深いのう、昨日聞いただけでは要領を得ない部分も多かったのじゃ」
学園長が身を乗り出し、
「ふむ、結界と簡単に言っていますが、普通であれば一枚二枚が関の山でしょうな、どうなっているのですか?」
事務長も学園長と共にずいっと距離を詰めた、事務長もまた魔法学園の運営に携わってうん十年の熟練者である、幼少の頃は研究者を目指していたが卓越した事務処理能力を買われて運営側に席を置くこととなった人であった、故に、魔法に関する感度は高く、また研究者気質も持ち合わせてもいる、魔法に対する興味や知識欲に関してのみならば何気に学園長よりも厄介な人物であり、今日の日常業務は完全に事務員に投げてここに来ている、故にその厄介さには鎖が付いていない、つまり、普段以上により厄介なのである、そして、ユーリはその気質を薄々とは感じていたが、ソフィアは付き合いが短くかつ希薄である為まるで気付いていなかった、今、ソフィアは学園長以上の理解者兼信奉者となり、かつ、その自由の敵となる人物と改めて遭遇した事となる、
「そうですね・・・」
3人それぞれがそれぞれに思惑を込めた視線をソフィアにぶつけ、ソフィアはどうしたものかと小首を傾げる、
「うふふ、ソフィアさーん、私も知りたいなー、興味ありまくりですよー」
そこへカトカがここぞとばかりに参戦した、先程迄の鬱憤もあるのであろう、その立ち位置をサビナの隣りに変え、蠱惑的な笑みをソフィアへ向ける、
「えっ、何よカトカさんまで・・・」
その美しくも恐ろしい笑顔にソフィアは背筋にゾクゾクとした愉悦を感じるも同時に冷たい戦慄を覚えた、実に素晴らしい笑顔である、あー、カトカさんそういうの・・・とソフィアは快楽の言葉を飲み込み、愉悦に浸りかけるが、4人の視線は尚強くソフィアを射貫き、ソフィアはハッと我に返ると、
「えっと・・・ミナ・・・」
何とか逃げようと愛娘の姿を探す、しかしその背はレインと共に遠くにあり、昨日と同じようにどこからか拾ってきた棒を元気に振り回していた、御叮嚀に今日はレインも棒を持っている、二人は遠慮無く巨大な画板を自由に使っている様子で、あー楽しそうだなーとソフィアは羨望の眼差しを向ける、しかし、
「ミナちゃんに逃げるのは無しですよー」
カトカが追い打ちとばかりにズイッと迫り、
「そうですね」
サビナもその巨体でソフィアに圧をかける、
「じゃのう・・・」
「ですね」
学園長と事務長はソフィアが女性である為に過剰な圧こそないが、ソフィアを逃がすつもりは無いらしい、
「えへへ・・・ですよねー」
ソフィアは冷や汗を一つタラリとこめかみから頬へと垂らすと、
「えっと・・・そうだな・・・昨日学園長に説明した事であれば・・・」
と学園長へ縋るような視線を向けた、
「うむ、あれで良いと思うぞ、ソフィアさんは説明下手と卑下しているが十分に理解できた、基本を押さえた者であれば簡単ではないが難しくはなかろう」
「それは良かったです・・・」
「しかしの、一晩考えてじゃな、どうも理解に難しい点が出てきてのう」
「・・・それは・・・また・・・」
「うむ、そうじゃな、まずは未知の者に改めて説明願いたいのう、その上で質疑という事でどうであろう?」
「そうですね、それが段取りとしては良いかと思います」
「うふふ、楽しみです」
サビナとカトカは学園長の提案に笑顔で賛同し、
「勿論ですよ」
事務長も乗り気となった、
「えっと・・・では、どうしようかな・・・」
ソフィアはいよいよ覚悟を決めるしかなくなった。
ミナの甲高い声でソフィアの来訪に気付いたユーリとサビナが歩み寄り、その背後では事務長が難しそうな顔でついて来た、サビナはその大きい肩に肩掛けベルトの付いた黒板を幾つもぶら下げており、何とも珍妙な有様となっている、
「まぁね、カトカさんの困った顔を堪能できたからお代はそれでいいわよ」
ソフィアが意地悪くニヤリと微笑む、カトカがモーと不満を漏らすと、
「えっ、何よそれ、カトカは私のだかんね」
「駄目ですー、カトカさんは私のですー、今日決めましたー、今決めましたー」
学園長を前にして二人はふざけ合うがカトカはいよいよ不愉快そうな顔で、学園長は何の事やらと困惑する、
「なによ、あんたにはミナもレインもいるでしょ、カトカは渡さないわよ」
「嫌ですー、全部私の物ですー、ねー、カトカさん、ユーリみたいな乱暴な女捨てちゃいなさい、私なら優しくするからー」
急に話しを振られたカトカはまったくと一息ついて、
「学園長も事務長もいらっしゃる所で遊ばないで下さい」
至極当然の言葉で二人を諫める、
「そうだけどー、朝から慣れない事したもんだから、癒しが欲しいのよー」
「そうねー、そう言われればそうなのよねー、カトカー、癒してー」
「は?何言っているんですか?こんなもの朝飯前とかさっき言ってたじゃないですか」
「そうだっけ?」
「あっそれ、強がりだから、ユーリは昔から負けず嫌いでねー」
「そうそう強がり、ソフィア良い事言った、ホントはとってもお疲れなのよ、だ・か・ら」
急に手を組む幼馴染の二人である、
「だから何なんですか?二人して」
「えー、癒してほしいなーって」
「うん、カトカさんの素敵な笑顔が見たいかなーって」
「それいいねー」
「この状況で何言っているんです、適当な事言わないで下さい」
「えーっ、適当じゃないわよー、こっちは真剣にカトカさんの笑顔を求めるのにー」
「真剣に求めないで下さい」
「そう言わないでさー」
「言いますよ」
いつも以上に能天気な二人であった、カトカは言い争いに疲れて大きく溜息を吐き、学園長は普段は垣間見せる事すらないその有様にやや驚きつつも戯れているだけかと理解し、そう理解した上で一緒にカトカを茶化そうかとも思うが、これに参戦するのは自傷行為だなと長年の経験から察して曖昧な笑みを浮かべ傍観に徹する事にした、
「はいはい、遊んでないで、所長はお迎えでしょ」
しかし、そこにサビナは遠慮なく水を差す、
「えー、何よー、サビナまでー」
「何よじゃないです、クロノス様が待っておられるのですから、礼はしっかりと尽くしませんと、大事な資金提供者なんですから」
「えー、ここでそれ言うのー」
「どこででも言いますよ、ほら、所長はお迎えに行って下さい」
「うー、しょうがないなー、もー」
ユーリはやれやれと肩をすくめて校舎に向かう、
「大丈夫なのかの?」
学園長が不安そうにその背を見つめるが、
「あれです、緊張の前の弛緩です、陛下がいらっしゃるとなれば所長でも緊張するんです、なので、今のうちに盛大に弛緩しているんです、それだけですよ」
サビナが学園長の疑問に鼻息交じりで答え、
「そうなのか?」
学園長の隣りに立った事務長も不安そうにサビナに問う、
「はい、御自分でそう言ってましたからそうなんですよ・・・普段でも教壇に立つ前と事務室にいる時ではまるで人が違いますから、そういう人なんです」
サビナはどこまでも他人事のように答えた、実際にユーリの事である以上他人事ではある、
「なら、良いのか・・・な?」
「ふむ、任せるしかないですな」
学園長と事務長はついぞ知りえなかったユーリの奇行に不安そうに顔を見合わせる、
「大丈夫でしょ、なんのかんの言ってもやる時はやる人なので」
サビナも追加とばかりにまったくと溜息交じりで答え、
「あ、で、ソフィアさん、少し聞いてもいいですか?」
肩から下げた数枚の黒板を重ねて持ってソフィアへと向き直った、
「ん?何かあった?」
「何かも何もこれほどの結界は見た事が無いです、より詳細を聞いておきたいのです、実際の所私もカトカも朧気ながら感じられる程度でして、何か凄いのがあるのは分かるのですが、より詳しく記録したいのですよ」
「あれを感じれるだけでも大したもんじゃない、流石ユーリが認めただけはあるわね」
ソフィアはあら驚いたと目を剥いて、
「でも、ユーリに聞いてないの?説明はあっちの方が上手でしょ」
「それは勿論、所長が担当した部分は聞き取りました、それだけでも大したものなのは分かるのですが、それはあくまで補完と補助と聞いております、根幹部分はソフィアさんの手になるものとの事でしたので、まずはその一番の元になる部分に関して伺いたいのです」
何とも事務的な言葉使いである、ソフィアはサビナも真面目な人だなーとのんびりと微笑んだが、
「ほう、それは興味深いのう、昨日聞いただけでは要領を得ない部分も多かったのじゃ」
学園長が身を乗り出し、
「ふむ、結界と簡単に言っていますが、普通であれば一枚二枚が関の山でしょうな、どうなっているのですか?」
事務長も学園長と共にずいっと距離を詰めた、事務長もまた魔法学園の運営に携わってうん十年の熟練者である、幼少の頃は研究者を目指していたが卓越した事務処理能力を買われて運営側に席を置くこととなった人であった、故に、魔法に関する感度は高く、また研究者気質も持ち合わせてもいる、魔法に対する興味や知識欲に関してのみならば何気に学園長よりも厄介な人物であり、今日の日常業務は完全に事務員に投げてここに来ている、故にその厄介さには鎖が付いていない、つまり、普段以上により厄介なのである、そして、ユーリはその気質を薄々とは感じていたが、ソフィアは付き合いが短くかつ希薄である為まるで気付いていなかった、今、ソフィアは学園長以上の理解者兼信奉者となり、かつ、その自由の敵となる人物と改めて遭遇した事となる、
「そうですね・・・」
3人それぞれがそれぞれに思惑を込めた視線をソフィアにぶつけ、ソフィアはどうしたものかと小首を傾げる、
「うふふ、ソフィアさーん、私も知りたいなー、興味ありまくりですよー」
そこへカトカがここぞとばかりに参戦した、先程迄の鬱憤もあるのであろう、その立ち位置をサビナの隣りに変え、蠱惑的な笑みをソフィアへ向ける、
「えっ、何よカトカさんまで・・・」
その美しくも恐ろしい笑顔にソフィアは背筋にゾクゾクとした愉悦を感じるも同時に冷たい戦慄を覚えた、実に素晴らしい笑顔である、あー、カトカさんそういうの・・・とソフィアは快楽の言葉を飲み込み、愉悦に浸りかけるが、4人の視線は尚強くソフィアを射貫き、ソフィアはハッと我に返ると、
「えっと・・・ミナ・・・」
何とか逃げようと愛娘の姿を探す、しかしその背はレインと共に遠くにあり、昨日と同じようにどこからか拾ってきた棒を元気に振り回していた、御叮嚀に今日はレインも棒を持っている、二人は遠慮無く巨大な画板を自由に使っている様子で、あー楽しそうだなーとソフィアは羨望の眼差しを向ける、しかし、
「ミナちゃんに逃げるのは無しですよー」
カトカが追い打ちとばかりにズイッと迫り、
「そうですね」
サビナもその巨体でソフィアに圧をかける、
「じゃのう・・・」
「ですね」
学園長と事務長はソフィアが女性である為に過剰な圧こそないが、ソフィアを逃がすつもりは無いらしい、
「えへへ・・・ですよねー」
ソフィアは冷や汗を一つタラリとこめかみから頬へと垂らすと、
「えっと・・・そうだな・・・昨日学園長に説明した事であれば・・・」
と学園長へ縋るような視線を向けた、
「うむ、あれで良いと思うぞ、ソフィアさんは説明下手と卑下しているが十分に理解できた、基本を押さえた者であれば簡単ではないが難しくはなかろう」
「それは良かったです・・・」
「しかしの、一晩考えてじゃな、どうも理解に難しい点が出てきてのう」
「・・・それは・・・また・・・」
「うむ、そうじゃな、まずは未知の者に改めて説明願いたいのう、その上で質疑という事でどうであろう?」
「そうですね、それが段取りとしては良いかと思います」
「うふふ、楽しみです」
サビナとカトカは学園長の提案に笑顔で賛同し、
「勿論ですよ」
事務長も乗り気となった、
「えっと・・・では、どうしようかな・・・」
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