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本編
50話 光柱は陽光よりも眩しくて その8
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「ソフィアさんいますー」
それからすぐにカトカがフラリと食堂へ顔を出した、
「わっ、カトカさん、どうしたんですか?」
ルルが顔を上げ、新入生達も一斉にカトカへ振り向く、
「あー、カトカだー」
ミナが駆け寄るが、カトカは知らない顔ばかりだと足を止め、あっと気付いて、
「そっか、新人さんかー、一気に増えたねー」
柔らかく魅力的な笑顔を見せた、表面には出ていないが内心では非常に慌てた為に余所行き用の外面になってしまう、それは意表を突かれた為に仕方の無い事なのであるが、問題はその余所行き用の外面状態の笑顔はカトカを最も魅力的に見せる最上の仕草であり、老若男女あらゆる生物を魅了する至高の微笑みであったことである、
「わっ・・・」
「えっ・・・」
「ひえー・・・」
その魔力を存分に振るわれた一同は言葉も無く固まり、食堂内はシンと静まり返る、街路に響く子供の嬌声がうっすらと響き、レインはん?と顔を上げ、ミナはカトカの足に捕まって不思議そうに見上げ、突然の沈黙に何かあったかと皆の顔を見渡し、再びカトカを見上げると、
「どうしたの?」
と当然の事を聞く、
「あっ、やば・・・・」
カトカは陶然とした幾つもの視線を振り切るように俯き、そのまましゃがみ込むと、
「ソフィアさんいる?」
「いるよー、あっちー」
ミナは素直に厨房を指差した、
「そっか」
と俯いたまま腰を上げ厨房へ向かいかけた瞬間、ソフィアとレスタが厨房から戻ってきた、
「あ、すいません、ソフィアさん」
「あら、カトカさんどうしたの?」
「はい、向こうの準備が整ったのでソフィアさんにも来て欲しいとの事でした」
「そっか・・・やっぱり私いなきゃ駄目?」
「私に聞かれても困ります、所長と学園長の指示ですし」
「うーん、ユーリがいればいいと思うんだけどなー」
「そう言われても・・・おう・・・じゃなかった、偉い人達が揃うんですから・・・」
カトカは一転渋い顔になる、ソフィアにしか見えなかったであろうそれは先程の笑顔と真逆で実に陰険で恐ろしい、ソフィアはカトカさんもこういう顔するんだと内心で思いつつ、これはこれで魅力的だわねとのほほんと眺め、やっぱり美形な人は怒ると怖さが倍増なのよね、怒った顔も見てみたいけど・・・等とカトカの反応を堪能すると、
「でもなー」
なんとなくからかいたくなってぐずって見せた、
「でもなじゃないですよ」
「だから、ユーリで十分じゃない」
「そういう訳にはいかないと思いますよ」
「でもなー」
グチグチと煮え切らないソフィアにカトカはモーと憤慨する、コロコロと変わるカトカの表情にソフィアはウフフと表には出さずに微笑み、これは面白いかもと陰湿な愉悦に浸っていると、
「ほら、行きましょう、ミナちゃんも行くでしょ?」
カトカは二人の遣り取りをポカンと見ていたミナへ標的を移した、
「行くー、絶対行くー」
ミナはピョンと飛び跳ねるが、すぐさま、
「どこに?」
と小首を傾げた、
「ほらー、ミナは分かってないんだからー」
ソフィアがニヤニヤと微笑むが、
「学園です、学園長が待ってるぞって言ってましたから」
カトカとしては子供のおつかいではないのであるから、さっさと連れていきたいのであるが、ソフィアが妙に意地が悪いようで、相手が相手であるだけに強硬に出るわけにもいかず、となれば搦め手としてミナを篭絡するしかないとの判断である、流石のソフィアもミナとレインだけで王族の相手はさせないであろうとの咄嗟の機転であった、
「なら行くー、ガクエンチョウセンセーどうしたのー」
「偉い人達が来ますからね、お迎えです」
「偉い人ー?」
「そうですよ、ミナちゃんがいると明るくなるからって」
なんとも適当な言い訳である、
「もう、分かったからそんなに一生懸命にならなくても」
ソフィアは漸く出向く気になったようで、ヤレヤレと微笑みつつ、
「じゃ、レスタさんはどうしようか、ゆっくりしてなさい、ルルさんお願いね」
「あっ、はい」
ルルはビクリと背を伸ばした、カトカの魅了に捕らわれぼーっとカトカをの姿を追っていたのである、同様にグルジアもサレバもコミンもハッと我に返って、恥ずかしそうにバタバタと何をするでもないが書を整えたり、図面を伸ばしたりと取り敢えず両手を動かした、他人の目よりも自分自身を誤魔化す仕草である、ソフィアはあら何かしらとその異様な行動に気付くが別に害悪は無さそうだと判断し、
「じゃ、ミナ、レイン、行くわよー、サンダル持ってきてー」
「分かったー」
「うむ、仕方ないのう、では、後は縫い付けるだけじゃぞ」
ミナはピョンと飛び跳ね玄関へ走り、レインはルルへと編み物の成果物を渡す、
「あっ、ありがとうございます」
ルルは慌てて礼を言い、
「うむ、気にするな」
レインは実にアッサリとしたものであった、
「行こう、行こう、ほら、早くー」
ミナはすぐに戻って来る、その手には3人分のサンダルがあった、
「あら、早い、じゃ、留守番お願いね」
とソフィアは誰にともなく依頼し、ミナとレインを連れ階段へ向かう、カトカは良かったーと小さく溜息を吐いてその背を追った、残された面々はあっという間の出来事に、
「えっ、今の人は?」
「すんごい綺麗な人ー」
「そうですよね、ビックリしました」
「カトカさんっていうんです」
「えっ、どういう人なの?」
「うん、何してる人?」
「えっと、研究所の所員さんらしいですが、それ以上は・・・はい」
「えー、いいなー、カッコイイよねー」
「カッコイイ?美しいでは無くて?」
「カッコ美しいですよー」
「なんですそれ?でも、分かるな、なんか目が離せなくなりましたね」
「うんうん、あー、じっくり眺めていたい」
「あっ、それ分かる、ずーっと見てられるよね」
「なんだろ、身体も細いし何から何まで完璧って感じで」
「確かにー、いいなー」
「ねー、憧れるよねー」
4人はカトカの背が見えなくなった瞬間にワッとはしゃぎ出す、女性らしい明るくも下品にはならないギリギリの騒ぎであるが、カトカの魅了にかからなかったレスタは一人なんの事やらと呆然と立ち尽くすのであった。
「あっ、いたー」
学園の修練場に着いた途端、ミナは学園長へと駆け寄った、
「おう、来たか」
「うん、来たー、誰が来るのー、何するのー」
全く事情を知らないミナは学園長に笑顔で抱き着き、
「うむ、陛下が来るからのう、クロノス様とイフナース様もじゃ」
ニコニコと答える学園長である、ソフィアはあら直接的な名前だわと驚くが学園長の周囲には誰も居らず、修練場の旗付近にはユーリとサビナの姿が見え、そこからやや離れた所には事務長の姿がある、どうやら学園側で立ち会うのは学園長と事務長の二人であり、研究所の3人とソフィア一家が今日のこちら側の総員であるらしい、
「おう、ソフィアさんも、なんじゃ、逃げるつもりであったのか?」
学園長は意地の悪い笑みを浮かべ、
「そんな、逃げるなんて、寮の仕事もありますから」
あからさまな誤魔化し笑いを浮かべるソフィアである、実際の所朝からユーリと二人、修練場にて仕上げ作業と点検を行い、数度の試用を終えて二人共にこれなら大丈夫であろうと納得した頃合いでダナがレスタを連れて来た、オドオドと小さい身体をさらに小さくしている少女をソフィアはこれは丁度良いと寮へと戻る口実にし、ユーリはそれに文句を言いかけたが二人の手前何とも難しい状況であった、変に変な事は言えず、かと言ってこちらを優先しろとはソフィアが寮母である限り難しい、ソフィアは諸々を都合よく利用してユーリを置いてサッサと寮へ帰ったのである、しかし、結局はカトカによって呼び出された、研究所の二人が居るという事はユーリが呼んだのであろう、この二人であれば王族関係にも対処できるし、何よりも今回の一連の騒動は魔法技術として考えればかなり稀有な実例となる、王族側から考えれば何も無ければそれが一番とも思えるが、研究者として客観的な立場から見れば大変興味深い出来事である、その点、ユーリはやはり研究者であり、その1番弟子2番弟子となるサビナとカトカも突然の事ではあるがそれなりに対応している様子である、
「ほう、これはまた厳重な事だ・・・」
学園長から若干離れレインは修練場を一望し、小さく鼻で笑い、
「昨日の続き描くー」
ミナが我慢できずに駆け出したのを見て、それも良いなとその背を追った、どこに行ってもミナとレインは奔放であり、また、それを望まれてもいるのである。
それからすぐにカトカがフラリと食堂へ顔を出した、
「わっ、カトカさん、どうしたんですか?」
ルルが顔を上げ、新入生達も一斉にカトカへ振り向く、
「あー、カトカだー」
ミナが駆け寄るが、カトカは知らない顔ばかりだと足を止め、あっと気付いて、
「そっか、新人さんかー、一気に増えたねー」
柔らかく魅力的な笑顔を見せた、表面には出ていないが内心では非常に慌てた為に余所行き用の外面になってしまう、それは意表を突かれた為に仕方の無い事なのであるが、問題はその余所行き用の外面状態の笑顔はカトカを最も魅力的に見せる最上の仕草であり、老若男女あらゆる生物を魅了する至高の微笑みであったことである、
「わっ・・・」
「えっ・・・」
「ひえー・・・」
その魔力を存分に振るわれた一同は言葉も無く固まり、食堂内はシンと静まり返る、街路に響く子供の嬌声がうっすらと響き、レインはん?と顔を上げ、ミナはカトカの足に捕まって不思議そうに見上げ、突然の沈黙に何かあったかと皆の顔を見渡し、再びカトカを見上げると、
「どうしたの?」
と当然の事を聞く、
「あっ、やば・・・・」
カトカは陶然とした幾つもの視線を振り切るように俯き、そのまましゃがみ込むと、
「ソフィアさんいる?」
「いるよー、あっちー」
ミナは素直に厨房を指差した、
「そっか」
と俯いたまま腰を上げ厨房へ向かいかけた瞬間、ソフィアとレスタが厨房から戻ってきた、
「あ、すいません、ソフィアさん」
「あら、カトカさんどうしたの?」
「はい、向こうの準備が整ったのでソフィアさんにも来て欲しいとの事でした」
「そっか・・・やっぱり私いなきゃ駄目?」
「私に聞かれても困ります、所長と学園長の指示ですし」
「うーん、ユーリがいればいいと思うんだけどなー」
「そう言われても・・・おう・・・じゃなかった、偉い人達が揃うんですから・・・」
カトカは一転渋い顔になる、ソフィアにしか見えなかったであろうそれは先程の笑顔と真逆で実に陰険で恐ろしい、ソフィアはカトカさんもこういう顔するんだと内心で思いつつ、これはこれで魅力的だわねとのほほんと眺め、やっぱり美形な人は怒ると怖さが倍増なのよね、怒った顔も見てみたいけど・・・等とカトカの反応を堪能すると、
「でもなー」
なんとなくからかいたくなってぐずって見せた、
「でもなじゃないですよ」
「だから、ユーリで十分じゃない」
「そういう訳にはいかないと思いますよ」
「でもなー」
グチグチと煮え切らないソフィアにカトカはモーと憤慨する、コロコロと変わるカトカの表情にソフィアはウフフと表には出さずに微笑み、これは面白いかもと陰湿な愉悦に浸っていると、
「ほら、行きましょう、ミナちゃんも行くでしょ?」
カトカは二人の遣り取りをポカンと見ていたミナへ標的を移した、
「行くー、絶対行くー」
ミナはピョンと飛び跳ねるが、すぐさま、
「どこに?」
と小首を傾げた、
「ほらー、ミナは分かってないんだからー」
ソフィアがニヤニヤと微笑むが、
「学園です、学園長が待ってるぞって言ってましたから」
カトカとしては子供のおつかいではないのであるから、さっさと連れていきたいのであるが、ソフィアが妙に意地が悪いようで、相手が相手であるだけに強硬に出るわけにもいかず、となれば搦め手としてミナを篭絡するしかないとの判断である、流石のソフィアもミナとレインだけで王族の相手はさせないであろうとの咄嗟の機転であった、
「なら行くー、ガクエンチョウセンセーどうしたのー」
「偉い人達が来ますからね、お迎えです」
「偉い人ー?」
「そうですよ、ミナちゃんがいると明るくなるからって」
なんとも適当な言い訳である、
「もう、分かったからそんなに一生懸命にならなくても」
ソフィアは漸く出向く気になったようで、ヤレヤレと微笑みつつ、
「じゃ、レスタさんはどうしようか、ゆっくりしてなさい、ルルさんお願いね」
「あっ、はい」
ルルはビクリと背を伸ばした、カトカの魅了に捕らわれぼーっとカトカをの姿を追っていたのである、同様にグルジアもサレバもコミンもハッと我に返って、恥ずかしそうにバタバタと何をするでもないが書を整えたり、図面を伸ばしたりと取り敢えず両手を動かした、他人の目よりも自分自身を誤魔化す仕草である、ソフィアはあら何かしらとその異様な行動に気付くが別に害悪は無さそうだと判断し、
「じゃ、ミナ、レイン、行くわよー、サンダル持ってきてー」
「分かったー」
「うむ、仕方ないのう、では、後は縫い付けるだけじゃぞ」
ミナはピョンと飛び跳ね玄関へ走り、レインはルルへと編み物の成果物を渡す、
「あっ、ありがとうございます」
ルルは慌てて礼を言い、
「うむ、気にするな」
レインは実にアッサリとしたものであった、
「行こう、行こう、ほら、早くー」
ミナはすぐに戻って来る、その手には3人分のサンダルがあった、
「あら、早い、じゃ、留守番お願いね」
とソフィアは誰にともなく依頼し、ミナとレインを連れ階段へ向かう、カトカは良かったーと小さく溜息を吐いてその背を追った、残された面々はあっという間の出来事に、
「えっ、今の人は?」
「すんごい綺麗な人ー」
「そうですよね、ビックリしました」
「カトカさんっていうんです」
「えっ、どういう人なの?」
「うん、何してる人?」
「えっと、研究所の所員さんらしいですが、それ以上は・・・はい」
「えー、いいなー、カッコイイよねー」
「カッコイイ?美しいでは無くて?」
「カッコ美しいですよー」
「なんですそれ?でも、分かるな、なんか目が離せなくなりましたね」
「うんうん、あー、じっくり眺めていたい」
「あっ、それ分かる、ずーっと見てられるよね」
「なんだろ、身体も細いし何から何まで完璧って感じで」
「確かにー、いいなー」
「ねー、憧れるよねー」
4人はカトカの背が見えなくなった瞬間にワッとはしゃぎ出す、女性らしい明るくも下品にはならないギリギリの騒ぎであるが、カトカの魅了にかからなかったレスタは一人なんの事やらと呆然と立ち尽くすのであった。
「あっ、いたー」
学園の修練場に着いた途端、ミナは学園長へと駆け寄った、
「おう、来たか」
「うん、来たー、誰が来るのー、何するのー」
全く事情を知らないミナは学園長に笑顔で抱き着き、
「うむ、陛下が来るからのう、クロノス様とイフナース様もじゃ」
ニコニコと答える学園長である、ソフィアはあら直接的な名前だわと驚くが学園長の周囲には誰も居らず、修練場の旗付近にはユーリとサビナの姿が見え、そこからやや離れた所には事務長の姿がある、どうやら学園側で立ち会うのは学園長と事務長の二人であり、研究所の3人とソフィア一家が今日のこちら側の総員であるらしい、
「おう、ソフィアさんも、なんじゃ、逃げるつもりであったのか?」
学園長は意地の悪い笑みを浮かべ、
「そんな、逃げるなんて、寮の仕事もありますから」
あからさまな誤魔化し笑いを浮かべるソフィアである、実際の所朝からユーリと二人、修練場にて仕上げ作業と点検を行い、数度の試用を終えて二人共にこれなら大丈夫であろうと納得した頃合いでダナがレスタを連れて来た、オドオドと小さい身体をさらに小さくしている少女をソフィアはこれは丁度良いと寮へと戻る口実にし、ユーリはそれに文句を言いかけたが二人の手前何とも難しい状況であった、変に変な事は言えず、かと言ってこちらを優先しろとはソフィアが寮母である限り難しい、ソフィアは諸々を都合よく利用してユーリを置いてサッサと寮へ帰ったのである、しかし、結局はカトカによって呼び出された、研究所の二人が居るという事はユーリが呼んだのであろう、この二人であれば王族関係にも対処できるし、何よりも今回の一連の騒動は魔法技術として考えればかなり稀有な実例となる、王族側から考えれば何も無ければそれが一番とも思えるが、研究者として客観的な立場から見れば大変興味深い出来事である、その点、ユーリはやはり研究者であり、その1番弟子2番弟子となるサビナとカトカも突然の事ではあるがそれなりに対応している様子である、
「ほう、これはまた厳重な事だ・・・」
学園長から若干離れレインは修練場を一望し、小さく鼻で笑い、
「昨日の続き描くー」
ミナが我慢できずに駆け出したのを見て、それも良いなとその背を追った、どこに行ってもミナとレインは奔放であり、また、それを望まれてもいるのである。
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