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本編
75話 茶店にて その41
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「それでは」
と早速口を開くタロウである、書き付けを手にそこに記された文言を口頭で確認する、とりあえずこんなものになります、少しばかり長くなりますが宜しいですかと眼前の王妃とパトリシアを伺い、他一同もゆっくりと頷いたのを見渡して、
「あっ、ですがあれですね、順番は少し変更になります、話しの流れもありますので、あっちこっちと飛ぶ可能性があるかと思います・・・というか飛びます」
タロウはニコリと微笑み、
「まずはエルマさん、こちらへ」
とエルマを教壇へ呼びつけた、えっもう?とエルマはビクリと肩を震わせ、慌てて立ち上がる、ユーリや研究所の三人、エレインとテラが嬉しそうに微笑んでおり、どういう事かと振り返る王家の面々とユスティーナ達、視線が集まる中をエルマは音も無く教壇の隣りに立った、
「じゃ、お願いします」
タロウがニコリとエルマに微笑み、エルマがもうと薄く微笑む、マルルースが心配そうに目を細めるも、エルマはゆっくりと俯きベールに手を掛けた、エッと驚く一同、御付きの者達も事情は聞いており、ベールを着けた女性も一緒になるかもしれないが、口出しは無用であるとアフラから強く言い含められている、そして、エルマがベールを小さく折りたたんでグッと手の中に隠しゆっくりと顔を上げた、
「まぁ・・・」
「あら・・・」
「アー・・・」
と王族の短い驚きの声が響き渡り、
「もう、アナタはー・・・」
マルルースがバッと立ち上がりエルマに駆け寄った、
「マルルース様のお陰です、この通り、すっかり綺麗になりました」
エルマが両目に涙を溜めて呟くと、
「そうね、そうね、よかったわね、何よ、早く言いなさいよ、こんな講義なんてどうでもいいわよもう、嬉しいわ、うん、本当に綺麗になって・・・よかったわ、本当によかった・・・」
エルマを抱き締めるマルルース、エフェリーンとウルジュラも席を立ち、二人に優しく手を沿える、パトリシアも腰を上げようとして踏みとどまった、少しばかり狭い為明日にも生まれるというその腹では難儀であった為で、アフラがスッと近寄り手を貸そうとするが、ここはいいわよと軽く手で押さえた、ユスティーナやレアン、マルヘリートもエルマの事情は聞いている、祝福の為に席を立とうと思うも、ここはと自重する事とし優しい視線で見守っている、
「エフェリーン様もウルジュラ様も、パトリシア様もありがとうございます、夢のようなのです」
何とか言葉を続けるエルマにエフェリーンとウルジュラも嬉しそうに微笑み、パトリシアはまったくと微笑む、
「そうね、夢のようね、もう、ほら、しっかり見せて、残っていないの?痛い所とか無い?」
スッとエルマの顔を両手で持ち上げるマルルース、それは流石にとウルジュラとエフェリーンが抑えようとするもエルマは為すがままで、
「はい、首と肩の方ももうすっかり、残っているのは背中の方ですが、そちらはまったく支障が無いので、それでいいかなと・・・」
「まぁ・・・タロウさん、そちらも治療できるでしょ、やるべきよ」
涙で濡れた顔をキッとタロウに向けるマルルース、タロウはタロウでサプライズ成功だなーとノホホンと眺めていた所で、
「あっ、そう・・・ですね、はい、可能は可能です」
「でしょう、やりなさい」
ビシリと言い放つマルルースに、タロウは素直に頷く事しか出来ず、エルマはもうと微笑みその手をそっと下ろさせる、
「それはいつでもできますから、こうしてベールに頼らなくても皆様にお会いできるだけで、私は幸せです」
「何を言っているの、その程度は当たり前の事よ」
「そだねー、当たり前だよねー」
「まったくだわ、すっかり綺麗になって・・・あれかしら、あの肌の手入れもしたの?ツヤツヤしてるわよ」
「あっ、ホントだー」
「いえいえ、それなんですが・・・」
とエルマが振り返る、その先のタロウがコクリと頷き、
「そこが主題となるのですよ」
と割って入った、
「主題?」
「はい、なので、どうしましょう、エルマさんにはこのまま教材になって頂きまして、ほら、後程ゆっくりお話しもできましょうから、そこで改めて」
ニコリと微笑むタロウである、マルルースはムゥと顔を顰めるも、
「はい、なので、取り合えずこの場はタロウさんにお任せしましょう、また、後程ゆっくりとお礼をさせて下さい」
「お礼なんていらないに決まっているでしょ、水くさい事を言わないの、第一、なに?わざわざベールを着けて来たの?あなたも随分意地が悪くなったわ」
グチグチと口うるさくなるマルルース、
「もう、母様はー、ほら、離れて、座って」
「何を言うの」
「邪魔でしょー、後でゆっくり話せばいいのー、今日はそっちが先ー」
「そっちって・・・もう、わかったわ、でも、いいエルマ、許しませんからね、覚えておきなさい」
娘に諭されて何とか席に戻るマルルース、エフェリーンも苦笑いで席に戻り、エルマが嬉しそうに明るくハイと返して、手拭いを取り出し目元を拭う、今日は朝から事ある毎に涙を流している、すっかり枯れたと思った涙である、嬉し泣きの涙はきっと悲しみのそれとは別に溜めてあるのだろうな等と思ってしまう、
「じゃ、続けますねー」
少し無粋だなーと思いつつタロウは教壇に戻った、エルマは若干離れてタロウへ視線を向ける、
「で、見て頂いたようなので、わかるかと思いますが、エルマさんの肌、これが大変に美しいです」
タロウはエルマを伺い、エルマはどうすればいいのかと押し黙るも、一同の視線が一斉にエルマに集まる、
「えっと、失礼かもですが、エルマさん、今の年齢はおいくつですか?」
さらに無遠慮な質問がタロウから放たれ、それを問うのかとマルルースがムッとタロウを睨むも、
「はい、30後半、そろそろ40です」
エルマが手拭いで軽く目元を押さえて答えた、答えちゃ駄目でしょと今度はエルマを睨むマルルース、
「ですね、となると、テラさんよりも上?」
「そう・・・ですね、はい、そう思います」
エルマがどうかしらとテラを伺い、テラがコクリと頷いたようである、
「ですね、でも、どうでしょう、テラさんと比べてというのは少しあれですが、随分と若いように見えません?」
タロウはそこで少しばかり気を使ってみた、ここで王妃二人を引き合いに出すとほぼ確実に雰囲気が悪くなると思われる、二人もほぼ同世代であり、見た目からするとテラよりも年上となる、無論、その立場、職責もあり苦労も絶えなかったであろう、それだけの苦労がどうしても表に滲み出ているもので、故にこれから述べる事があくまで事実の陳列であるとしてもそこは気を利かせるべきで、テラには事前に話しており、テラもエルマの肌の状態には気付いており、今朝ソフィアからその理屈を聞いた時にはそんな事があるのかと素直に驚いた程である、
「そうね、見えるわね」
「そう・・・そうかも・・・だけど・・・」
「はい、具体的に指摘しますと・・・」
とタロウは若干の空気の悪さを感じつつも、エルマの顔を例にとり小皺の少なさと染みそばかすは元より黒ずみ等が目立たない点を上げ、
「これがですね、実はその黒いベールのお陰でもあるのですよ」
と続ける、エッと目を丸くする一同、エルマとテラ、ユーリは事前に聞いていた為若干懐疑的な顔となっている、
「何故かと申せば」
タロウは黒板に向かい紫外線の悪影響について絵図面を駆使して語って聞かせた、これが今日の主題の一つとなる、サビナ達は猛然と黒板を慣らしており、しかし今一つピンときていない者が多いようで、タロウはさてと一同を見渡しまぁそうなるよなーと苦笑しつつ、
「その太陽の光ですね、良くない部分、これをねエルマさんは黒いベールでもって遮っておりまして、さらに家からもあまり出なかったとの事なので、肌に対する悪影響ですね、これが少なかったのです、さらにベールのお陰で保湿も出来ていたと思います、夏場とかは熱気が籠って仕方なかったと思われますが・・・あれです、皆さんはもうお使いになられていると思いますが、ソフィアの何とかクリームですね、あれほどではないですが、近い効果があったのでしょう、ベール一枚と言えど侮れませんね」
「・・・それ、どこまで本当なのよ・・・」
ポカンと押し黙る王家の人達に代わってユーリが疑問の声を上げる、
「どこまでって・・・全部本当だよ、エルマさんのこの肌がその証明だね」
「そうだろうけど・・・だって、それだとあれよ、天気の良い日に日向ぼっこも出来ないって事よね」
「うん、その通り」
タロウはコクリと頷き、ナッと顔を顰めるユーリ、
「でも、ほら、あくまで肌の事を考えたらって事ね、太陽の光そのものはとっても大事、特に子供達の成長には必要なものでね」
「なによそれ」
「そうなんだよ、あー・・・」
ここでビタミンDがどうのこうのなんて話しても通じる訳がない、タロウは少しばかり思案し、
「うん、植物と一緒、育つためには必要なんだけど、育ちきったら不要・・・とまではいかないがあんまり気にしなくていい、そういう程度に理解して欲しいかな」
とどんなもんかなとユーリを見つめ、なによその理屈はとユーリは睨み返すも、
「そんな感じで捉えて欲しいです、なので、そうですね、うちの生徒さん達?10代の後半くらいかな?背が伸びている間って感じでもいいですけど、その程度までは太陽の光は有用なんですけど、20代に入ったら太陽の光は避けた方が良いと思います」
「・・・また、難しい事を・・・」
ムッとパトリシアが眉を顰める、
「そうですね、で、なんですが、もうこれは出してしまいますね、三本しかないので乱暴に扱わないで下さい」
タロウは懐をまさぐりズオッと太い棒状のものを取り出す、またやりやがったとユーリは睨み、なんだそれはとその物よりもタロウの所作に驚く一同、タロウはまるで無視して、
「これがエルフさんが日常的に使用している日傘というやつです」
ナッと驚く女性達、
「ちょ・・・あんた、マジか・・・」
ユーリが叫んでしまう、
「マジだよー、ほら、エルフさんの存在を信じられない人も多いだろうけどねー、これが一つの証明になるかな、どうでしょう、これ、どう使うかわかります?」
ニヤリと微笑むタロウ、タロウの手にする物体は木の棒に布を巻きつけた代物で、一見する限りただの奇妙な棒である、
「タロウ、ちょっと見せなさい」
パトリシアが叫ぶ、
「はいはい、あっ、あれだね、パトリシア様はこっちの布の方に興味ある?」
タロウはその一本をパトリシアに差し出し、もう一本を王妃二人の元へ、もう一本をユスティーナに手渡した、それぞれ恐る恐ると手を伸ばし、レアンや他の面々もワッとばかりに席を立って覗き込む、
「どうかな?分る?」
ジックリと観察している一同に再度問いかけるタロウ、しかし、顔を上げる者はいない、まずエルフの名前もそうであるが、日傘そのものに目を奪われてしまう、布質が素晴らしくシルクと思われるが大変に厚みがあった、また装飾であろう緑色の刺繍が入っており、これまた素晴らしい輝きを見せている、
「・・・ジャッカローブの布に似てますわね・・・」
ジッと目を細めたパトリシアが呟いた、それは六花商会へ贈ったエプロンの材料である、
「そうですね、はい、とってもツヤツヤして輝いてます」
エレインも同意のようで、
「確かに、でも、こんな布は見た事がないです」
ここはとマルヘリートが声を上げる、そうねそうねと騒がしくなる一同、タロウはそこじゃないんだけどなー等と思うも取り合えず傍観する、女性達は日傘を縦にしたり横にしたりして、さらに布の手触りを試し、木窓から入る陽光に透かしてみたりしていた、
「はい、で、なんですが」
とタロウは難しそうだなと判断し、王妃に渡した一本をすいませんと引き取ると、
「こうします」
根本を少し捩じってスッと日傘を開いた、バサッとばかりに広がる布、あっという間に広がったその様子にオワッと驚く女性達、
「で、この根本をですね、ここに軽く引っ掛けて」
タロウは番傘で言うろくろ部分を留めると、
「この状態で使います、エルフさんはこんな感じで太陽の光を遮って生活してました、どうです、それなりに御洒落でしょ?」
ニコリと微笑み肩に乗せて構えて見せる、タロウとしては慣れた所作であるが、王国民達からすればその姿は何とも目新しく斬新で、まぁ俺では絵にならんなーと苦笑するも、大きく見開いた女性達の視線はタロウに突き刺さったままとなる、
「・・・ありゃ、駄目ですか?」
ムゥとタロウは眉を顰め、
「じゃ、はい、エルマさん」
と開いた傘をそのままエルマに渡す、エッとエルマは受け取るも、どうしていいのやらとタロウを伺う、
「あっ、肩に置く感じで、で、片手で支える、あっ、両手で軽く触れるとカッコイイかな、うん・・・いい感じ、で、端の方、危ないからちょっと離れてね、そこが問題なんだよね、こればっかりは」
とエルマをモデルにするタロウ、エルマも言われるがままされるがままで、
「うん、こんな感じ、どうです、御洒落でしょ、貴族の御夫人には受けると思うけどなー」
タロウが反応が薄いなーと思って振り返る、途端、
「そうですね、はい、とってもいいです」
エレインが目を輝かせ、
「そうね、新しいはこれ」
「うん、欲しー、タロウさんこれちょうだい」
「待ちなさい、私が先よ」
「えー、姉様はお外でないでしょー」
「そういう問題じゃないわよ」
「そういう問題でしょー」
唐突に始まる姉妹喧嘩、エルマはこのままでいいのかなととりあえず傘を差しており、マルルースがやっと腰を上げたようで、あわててどうぞと差し出すも、やはり傘の扱いに慣れていない為、振り回すような仕草さになってしまう、タロウが慌てて日傘を押さえ、
「落ち着いて、先は危ないからね、何度も言うけどそこは注意して、じゃ、皆さんも触ってみて下さい、あっ、そっちのも開きますね」
とちょこまかと動き出すタロウであった。
と早速口を開くタロウである、書き付けを手にそこに記された文言を口頭で確認する、とりあえずこんなものになります、少しばかり長くなりますが宜しいですかと眼前の王妃とパトリシアを伺い、他一同もゆっくりと頷いたのを見渡して、
「あっ、ですがあれですね、順番は少し変更になります、話しの流れもありますので、あっちこっちと飛ぶ可能性があるかと思います・・・というか飛びます」
タロウはニコリと微笑み、
「まずはエルマさん、こちらへ」
とエルマを教壇へ呼びつけた、えっもう?とエルマはビクリと肩を震わせ、慌てて立ち上がる、ユーリや研究所の三人、エレインとテラが嬉しそうに微笑んでおり、どういう事かと振り返る王家の面々とユスティーナ達、視線が集まる中をエルマは音も無く教壇の隣りに立った、
「じゃ、お願いします」
タロウがニコリとエルマに微笑み、エルマがもうと薄く微笑む、マルルースが心配そうに目を細めるも、エルマはゆっくりと俯きベールに手を掛けた、エッと驚く一同、御付きの者達も事情は聞いており、ベールを着けた女性も一緒になるかもしれないが、口出しは無用であるとアフラから強く言い含められている、そして、エルマがベールを小さく折りたたんでグッと手の中に隠しゆっくりと顔を上げた、
「まぁ・・・」
「あら・・・」
「アー・・・」
と王族の短い驚きの声が響き渡り、
「もう、アナタはー・・・」
マルルースがバッと立ち上がりエルマに駆け寄った、
「マルルース様のお陰です、この通り、すっかり綺麗になりました」
エルマが両目に涙を溜めて呟くと、
「そうね、そうね、よかったわね、何よ、早く言いなさいよ、こんな講義なんてどうでもいいわよもう、嬉しいわ、うん、本当に綺麗になって・・・よかったわ、本当によかった・・・」
エルマを抱き締めるマルルース、エフェリーンとウルジュラも席を立ち、二人に優しく手を沿える、パトリシアも腰を上げようとして踏みとどまった、少しばかり狭い為明日にも生まれるというその腹では難儀であった為で、アフラがスッと近寄り手を貸そうとするが、ここはいいわよと軽く手で押さえた、ユスティーナやレアン、マルヘリートもエルマの事情は聞いている、祝福の為に席を立とうと思うも、ここはと自重する事とし優しい視線で見守っている、
「エフェリーン様もウルジュラ様も、パトリシア様もありがとうございます、夢のようなのです」
何とか言葉を続けるエルマにエフェリーンとウルジュラも嬉しそうに微笑み、パトリシアはまったくと微笑む、
「そうね、夢のようね、もう、ほら、しっかり見せて、残っていないの?痛い所とか無い?」
スッとエルマの顔を両手で持ち上げるマルルース、それは流石にとウルジュラとエフェリーンが抑えようとするもエルマは為すがままで、
「はい、首と肩の方ももうすっかり、残っているのは背中の方ですが、そちらはまったく支障が無いので、それでいいかなと・・・」
「まぁ・・・タロウさん、そちらも治療できるでしょ、やるべきよ」
涙で濡れた顔をキッとタロウに向けるマルルース、タロウはタロウでサプライズ成功だなーとノホホンと眺めていた所で、
「あっ、そう・・・ですね、はい、可能は可能です」
「でしょう、やりなさい」
ビシリと言い放つマルルースに、タロウは素直に頷く事しか出来ず、エルマはもうと微笑みその手をそっと下ろさせる、
「それはいつでもできますから、こうしてベールに頼らなくても皆様にお会いできるだけで、私は幸せです」
「何を言っているの、その程度は当たり前の事よ」
「そだねー、当たり前だよねー」
「まったくだわ、すっかり綺麗になって・・・あれかしら、あの肌の手入れもしたの?ツヤツヤしてるわよ」
「あっ、ホントだー」
「いえいえ、それなんですが・・・」
とエルマが振り返る、その先のタロウがコクリと頷き、
「そこが主題となるのですよ」
と割って入った、
「主題?」
「はい、なので、どうしましょう、エルマさんにはこのまま教材になって頂きまして、ほら、後程ゆっくりお話しもできましょうから、そこで改めて」
ニコリと微笑むタロウである、マルルースはムゥと顔を顰めるも、
「はい、なので、取り合えずこの場はタロウさんにお任せしましょう、また、後程ゆっくりとお礼をさせて下さい」
「お礼なんていらないに決まっているでしょ、水くさい事を言わないの、第一、なに?わざわざベールを着けて来たの?あなたも随分意地が悪くなったわ」
グチグチと口うるさくなるマルルース、
「もう、母様はー、ほら、離れて、座って」
「何を言うの」
「邪魔でしょー、後でゆっくり話せばいいのー、今日はそっちが先ー」
「そっちって・・・もう、わかったわ、でも、いいエルマ、許しませんからね、覚えておきなさい」
娘に諭されて何とか席に戻るマルルース、エフェリーンも苦笑いで席に戻り、エルマが嬉しそうに明るくハイと返して、手拭いを取り出し目元を拭う、今日は朝から事ある毎に涙を流している、すっかり枯れたと思った涙である、嬉し泣きの涙はきっと悲しみのそれとは別に溜めてあるのだろうな等と思ってしまう、
「じゃ、続けますねー」
少し無粋だなーと思いつつタロウは教壇に戻った、エルマは若干離れてタロウへ視線を向ける、
「で、見て頂いたようなので、わかるかと思いますが、エルマさんの肌、これが大変に美しいです」
タロウはエルマを伺い、エルマはどうすればいいのかと押し黙るも、一同の視線が一斉にエルマに集まる、
「えっと、失礼かもですが、エルマさん、今の年齢はおいくつですか?」
さらに無遠慮な質問がタロウから放たれ、それを問うのかとマルルースがムッとタロウを睨むも、
「はい、30後半、そろそろ40です」
エルマが手拭いで軽く目元を押さえて答えた、答えちゃ駄目でしょと今度はエルマを睨むマルルース、
「ですね、となると、テラさんよりも上?」
「そう・・・ですね、はい、そう思います」
エルマがどうかしらとテラを伺い、テラがコクリと頷いたようである、
「ですね、でも、どうでしょう、テラさんと比べてというのは少しあれですが、随分と若いように見えません?」
タロウはそこで少しばかり気を使ってみた、ここで王妃二人を引き合いに出すとほぼ確実に雰囲気が悪くなると思われる、二人もほぼ同世代であり、見た目からするとテラよりも年上となる、無論、その立場、職責もあり苦労も絶えなかったであろう、それだけの苦労がどうしても表に滲み出ているもので、故にこれから述べる事があくまで事実の陳列であるとしてもそこは気を利かせるべきで、テラには事前に話しており、テラもエルマの肌の状態には気付いており、今朝ソフィアからその理屈を聞いた時にはそんな事があるのかと素直に驚いた程である、
「そうね、見えるわね」
「そう・・・そうかも・・・だけど・・・」
「はい、具体的に指摘しますと・・・」
とタロウは若干の空気の悪さを感じつつも、エルマの顔を例にとり小皺の少なさと染みそばかすは元より黒ずみ等が目立たない点を上げ、
「これがですね、実はその黒いベールのお陰でもあるのですよ」
と続ける、エッと目を丸くする一同、エルマとテラ、ユーリは事前に聞いていた為若干懐疑的な顔となっている、
「何故かと申せば」
タロウは黒板に向かい紫外線の悪影響について絵図面を駆使して語って聞かせた、これが今日の主題の一つとなる、サビナ達は猛然と黒板を慣らしており、しかし今一つピンときていない者が多いようで、タロウはさてと一同を見渡しまぁそうなるよなーと苦笑しつつ、
「その太陽の光ですね、良くない部分、これをねエルマさんは黒いベールでもって遮っておりまして、さらに家からもあまり出なかったとの事なので、肌に対する悪影響ですね、これが少なかったのです、さらにベールのお陰で保湿も出来ていたと思います、夏場とかは熱気が籠って仕方なかったと思われますが・・・あれです、皆さんはもうお使いになられていると思いますが、ソフィアの何とかクリームですね、あれほどではないですが、近い効果があったのでしょう、ベール一枚と言えど侮れませんね」
「・・・それ、どこまで本当なのよ・・・」
ポカンと押し黙る王家の人達に代わってユーリが疑問の声を上げる、
「どこまでって・・・全部本当だよ、エルマさんのこの肌がその証明だね」
「そうだろうけど・・・だって、それだとあれよ、天気の良い日に日向ぼっこも出来ないって事よね」
「うん、その通り」
タロウはコクリと頷き、ナッと顔を顰めるユーリ、
「でも、ほら、あくまで肌の事を考えたらって事ね、太陽の光そのものはとっても大事、特に子供達の成長には必要なものでね」
「なによそれ」
「そうなんだよ、あー・・・」
ここでビタミンDがどうのこうのなんて話しても通じる訳がない、タロウは少しばかり思案し、
「うん、植物と一緒、育つためには必要なんだけど、育ちきったら不要・・・とまではいかないがあんまり気にしなくていい、そういう程度に理解して欲しいかな」
とどんなもんかなとユーリを見つめ、なによその理屈はとユーリは睨み返すも、
「そんな感じで捉えて欲しいです、なので、そうですね、うちの生徒さん達?10代の後半くらいかな?背が伸びている間って感じでもいいですけど、その程度までは太陽の光は有用なんですけど、20代に入ったら太陽の光は避けた方が良いと思います」
「・・・また、難しい事を・・・」
ムッとパトリシアが眉を顰める、
「そうですね、で、なんですが、もうこれは出してしまいますね、三本しかないので乱暴に扱わないで下さい」
タロウは懐をまさぐりズオッと太い棒状のものを取り出す、またやりやがったとユーリは睨み、なんだそれはとその物よりもタロウの所作に驚く一同、タロウはまるで無視して、
「これがエルフさんが日常的に使用している日傘というやつです」
ナッと驚く女性達、
「ちょ・・・あんた、マジか・・・」
ユーリが叫んでしまう、
「マジだよー、ほら、エルフさんの存在を信じられない人も多いだろうけどねー、これが一つの証明になるかな、どうでしょう、これ、どう使うかわかります?」
ニヤリと微笑むタロウ、タロウの手にする物体は木の棒に布を巻きつけた代物で、一見する限りただの奇妙な棒である、
「タロウ、ちょっと見せなさい」
パトリシアが叫ぶ、
「はいはい、あっ、あれだね、パトリシア様はこっちの布の方に興味ある?」
タロウはその一本をパトリシアに差し出し、もう一本を王妃二人の元へ、もう一本をユスティーナに手渡した、それぞれ恐る恐ると手を伸ばし、レアンや他の面々もワッとばかりに席を立って覗き込む、
「どうかな?分る?」
ジックリと観察している一同に再度問いかけるタロウ、しかし、顔を上げる者はいない、まずエルフの名前もそうであるが、日傘そのものに目を奪われてしまう、布質が素晴らしくシルクと思われるが大変に厚みがあった、また装飾であろう緑色の刺繍が入っており、これまた素晴らしい輝きを見せている、
「・・・ジャッカローブの布に似てますわね・・・」
ジッと目を細めたパトリシアが呟いた、それは六花商会へ贈ったエプロンの材料である、
「そうですね、はい、とってもツヤツヤして輝いてます」
エレインも同意のようで、
「確かに、でも、こんな布は見た事がないです」
ここはとマルヘリートが声を上げる、そうねそうねと騒がしくなる一同、タロウはそこじゃないんだけどなー等と思うも取り合えず傍観する、女性達は日傘を縦にしたり横にしたりして、さらに布の手触りを試し、木窓から入る陽光に透かしてみたりしていた、
「はい、で、なんですが」
とタロウは難しそうだなと判断し、王妃に渡した一本をすいませんと引き取ると、
「こうします」
根本を少し捩じってスッと日傘を開いた、バサッとばかりに広がる布、あっという間に広がったその様子にオワッと驚く女性達、
「で、この根本をですね、ここに軽く引っ掛けて」
タロウは番傘で言うろくろ部分を留めると、
「この状態で使います、エルフさんはこんな感じで太陽の光を遮って生活してました、どうです、それなりに御洒落でしょ?」
ニコリと微笑み肩に乗せて構えて見せる、タロウとしては慣れた所作であるが、王国民達からすればその姿は何とも目新しく斬新で、まぁ俺では絵にならんなーと苦笑するも、大きく見開いた女性達の視線はタロウに突き刺さったままとなる、
「・・・ありゃ、駄目ですか?」
ムゥとタロウは眉を顰め、
「じゃ、はい、エルマさん」
と開いた傘をそのままエルマに渡す、エッとエルマは受け取るも、どうしていいのやらとタロウを伺う、
「あっ、肩に置く感じで、で、片手で支える、あっ、両手で軽く触れるとカッコイイかな、うん・・・いい感じ、で、端の方、危ないからちょっと離れてね、そこが問題なんだよね、こればっかりは」
とエルマをモデルにするタロウ、エルマも言われるがままされるがままで、
「うん、こんな感じ、どうです、御洒落でしょ、貴族の御夫人には受けると思うけどなー」
タロウが反応が薄いなーと思って振り返る、途端、
「そうですね、はい、とってもいいです」
エレインが目を輝かせ、
「そうね、新しいはこれ」
「うん、欲しー、タロウさんこれちょうだい」
「待ちなさい、私が先よ」
「えー、姉様はお外でないでしょー」
「そういう問題じゃないわよ」
「そういう問題でしょー」
唐突に始まる姉妹喧嘩、エルマはこのままでいいのかなととりあえず傘を差しており、マルルースがやっと腰を上げたようで、あわててどうぞと差し出すも、やはり傘の扱いに慣れていない為、振り回すような仕草さになってしまう、タロウが慌てて日傘を押さえ、
「落ち着いて、先は危ないからね、何度も言うけどそこは注意して、じゃ、皆さんも触ってみて下さい、あっ、そっちのも開きますね」
とちょこまかと動き出すタロウであった。
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俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。
そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・
「俺、死んでるじゃん・・・」
目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。
新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。
元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
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アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
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神に同情された転生者物語
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ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
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救世の結界師マールちゃん~無能だと廃棄されましたが、敵国で傭兵のおっさん達に餌付けされてるので、今さら必要と言われても戻りません~
ぽんぽこ@3/28新作発売!!
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「ウチの子、可愛いうえに最強すぎるんだが――!?」
魔の森の隣、辺境伯家。 そこで八歳のメイド・マールは、食事も与えられず“要らない人間”として扱われていた。
――そしてある日ついに、毒と魔獣の禁忌領域《魔の森》へ捨てられてしまう。
「ここ……どこ?」
現れた魔獣に襲われかけたその瞬間。
救いに現れたのは――敵国の”イケオジ”傭兵隊だった。
「ほら、食え」
「……いいの?」
焚き火のそばで差し出された“温かいお粥”は、マールに初めての「安心」と「ごはん」を教えてくれた。
行き場を失った幼女は、強面のおじさん傭兵たちに餌付けされ、守られ、少しずつ笑えるようになる―― そんなシナリオだったはずなのに。
旅の途中、マールは無意識に結界を張り、猛毒の果実を「安全な食べ物」に変えてしまう。
「これもおいしいよ、おじさん!食べて食べて!」
「ウチの子は天才か!?」
ただ食べたいだけ。 だけどその力は、国境も常識もくつがえす。
これは、捨てられた欠食幼女が、敵国でお腹いっぱい幸せになりながら、秘められた力で世界を巻き込んでいく物語。
※若干の百合風味を含みます。
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