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本編
75話 茶店にて その42
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「すいません、エルフさんとやらはこれを普通に使っているんですか?」
女性達が日傘の回りでキャーキャーやっているのをタロウは少し離れて眺めていると、カトカがスッと近寄り黒板を構える、
「ん、あっ、そうだね、それこそ男も女も外に出る時は絶対使ってる」
「えっ、男性も?」
「うん、あの人達強迫的に太陽光を嫌っているからね、でもねー、森の中に住んでるからまわりは大木ばかりなんだよ、だから・・・そこまでしなくてもーって思うんだけど、木漏れ日もヤダって言っててさ、そりゃ徹底してるなーって笑ったら睨まれた」
アッハッハとタロウは笑うもカトカはガリガリと黒板を鳴らし、
「あの布はなんですか?」
「ん?あっあれはシルクの一種だと思うよ、すんげーデカイ繭から糸をとってるんだ、綺麗な布でしょ、それに丈夫だしね」
「なるほど・・・あの持ち手とかも初めて見ましたけど」
「あっ、あれは竹っていう植物、こっちには無いよね」
「タケですか?」
「うん、王国内では見てないかな、帝国にはあったけど」
「木なんですか?」
「あー・・・厳密には木よりも草って感じで・・・いや・・・でも、あれはどう言えばいいんだろ・・・難しいな、竹って木なのかな草なのかな?植物は植物だよな・・・」
ハテと首を傾げるタロウ、よくよく考えてみれば竹とは実に不思議な植物である、地下茎で増え、花を咲かすのは数十年周期、樹木とするに難しく草とするにも巨大すぎ、さらには見事に他の植物を排斥するように生い茂る、タロウは帝国でタケノコを数本確保し、そのうち王国でも栽培しよう等と考えていたが、小規模であればまだしも気候が合って大繁殖しようものなら現状の植生を破壊しかねず、ここは考えて対応しないと駄目だなと自重していたりする、しかし、その竹そのものは実に便利な材となる、その用途は多岐に渡るであろう事は明白であり、それは軍事に限らず日常生活でも当然で、特に王国のこの文化であればあっという間に活用され広がる事であろうなと考えていた、
「なんですそれ?」
ムーとカトカがタロウを睨む、タロウであればもう少ししっかりと答えるものと思っていた、
「まぁ、そんなもん、世界にはね、便利なんだがよくわからんものが溢れてるって事でさ勘弁してくれ」
ニヤリと誤魔化すタロウである、カトカはモウと呟きつつも白墨を動かし、そこへ、エレインがスッと近寄る、
「すいません、もっとありますか?」
タロウを見上げるエレイン、
「ん?傘?ごめん、三本だけ」
「そんなー、絶対隠してますでしょー」
「そんな顔しても駄目だよ、だから・・・」
とタロウはフフッと鼻で笑い教壇に戻ると、パンパンと大きく手を叩く、ギロリと女性達の視線がタロウに刺さる、
「はい、じゃ、本題に戻りますね」
タロウはニコリと微笑む、本題とは?と怪訝そうにタロウを見つめる女性達、
「ほら、肌に関する件ですよ、それはあくまでその道具、なので・・・どうでしょう、一本はエレインさん、というか六花商会さんに渡して、似たような物を作ってもらいましょう、で、王都にも一本、北ヘルデルにも一本って事で、各地で作ってみてはどうですか?」
事前に考えていた事を口にするタロウである、実際そのうちブラスに頼んで作ってもらおうかなとは考えていた、しかし、ブラスもやたらと忙しくなっており、さらにはタロウ自身はそれほど必要としていなかった為後回しになっていたのだ、となればその開発も活用も含めて御婦人方にお任せしてしまうのが得策であろう、
「そう・・・ね・・・」
「確かに、うん、エレインさんどうなの?」
「はい、職人さんを集めれば」
「あの、ヘルデルでも作りたいです・・・」
「それはだって、布の提供はヘルデルになるでしょう」
「そうね、この形の布ってないわよね」
「あっ、それもそうね」
「となると、飾りと芯の部分になるかしら」
「それこそ職人次第だわね」
「服飾と木工細工を合わせる感じですよ」
「これは難しいわ」
タロウを無視して話し込む女性達、モウとタロウは口を尖らせ、
「はい、なので、そんな感じで良いですか?今日はまだまだあるのですから、取り合えずお席にお戻りください、それは閉じちゃいますね、本来は部屋の中で開くものでは無いですから」
タロウはまずはと近場のアフラが持っていた傘を受け取ってサッと閉じた、オウとこれにも驚く女性達、しかしすぐにエフェリーンとレアンが真似をしてあぁこうなるのかと納得したらしい、
「はい、でなんですが」
とタロウは手にした日傘をエレインに渡し、教壇に戻る、エレインはいいのかなとアフラとパトリシアを伺い、二人はコクリと頷いたようで、見ればエフェリーンが一本を、レアンが手にしたそれはレアン自らパトリシアの元へ持って来た、ありがとうと受け取るパトリシア、レアンはムフンと嬉しそうに微笑み席へと戻る、どうやらタロウの提案が受け入れられたらしい、レアンとしてはエレインが製作に取り掛かるとなれば自分達も関われる筈で、タロウの差配は納得いく事であったのだろう、
「以前にね、ソフィアが教えた何とかクリーム、あれもですし、太陽の光を避けるという生活習慣、さらには以前施術しましたお肌の手入れ、ムダ毛の処理とかもですね、それと先程もチラリと話した湿気もあるのですが、事程左様に肌を磨くもしくは管理するというのが美容にとってはとっても大事、髪は女の命、と、私の国ではいいますが、肌の白いは七難隠すとも私の国では言われています」
女性達が席に戻ったのを確認し、タロウが続けた、
「七難?ですか?」
すっかり口が軽くなったエフェリーンが即座に問いかける、
「はい、あれです別にね、七つの難、駄目な事があるって訳じゃなくて、肌が白くて美しいと、それだけで美人に見えるという意味あいですね」
「まぁ・・・随分ね」
「そうですね、でも、確かにその通りなんです、男性からみても肌の清潔感とか美しさ?それはもうその人の本質的な美しさなんだろうなと思いますし、女性から見てもそうなんじゃないかなと思います、やはり相手を見てまず大きく映るのは肌です、いくら目が大きいとか鼻筋が通っているとかいっても、それは一部に過ぎなくて、肌そのものの美しさ、そこに整った目鼻立ちがあればより美しく見える・・・それが大事だと思うのです、で、それを上手い事何とか誤魔化すのが・・・」
「化粧かしら?」
ユスティーナが口を挟む、
「はい、その通り、以前お伝えしました通り、ニコリーネさんが上手い事肌に合った色の顔料かな、を調色してもらいましたけど、あんな感じでアラを隠すのが化粧の大目的になるでしょうね、で、話しを戻すと、エルマさんについては、まぁ、御本人は不本意でしたでしょうけど肌をね、良い状態に保つ事が出来たということです」
タロウがニコリとエルマに微笑む、エルマも自席に戻っていたが、確かに不本意ではあったなと眉を顰めた、
「ですが、一つ注意点がありまして、こちら、あくまで現状維持が良い所かなと思います、あっ、日差しを避けるという手法ですね」
「あら・・・どういう意味?」
「はい、先程も軽く説明しましたが、日差しによる良くない刺激を抑えるだけになりまして、より艶やかになるとか、皺が減るとかそういう効果を望むのは・・・たぶん難しいかなと・・・」
「そういう事・・・」
「はい、そんな感じです、なので、エルマさんも10代の肌とまでは言えないんですよ、それがある意味で限界」
そうかもねと振り返りエルマを見つめる女性達、エルマもここはちゃんと見せるべきと背筋を伸ばしている、
「それと勿論ですが速攻性は低いです、数年経ってやっぱり違うなってのが分る感じだと思います、実際ソフィアもね、エルマさんの肌を見るまでは懐疑的でした」
アラッと視線を戻す一同、
「そりゃあれです、ソフィアもエルフさんの事は知ってますけど、あの人達みんな白いんですよ、もう病的に、なので、その違いが分らないほどでして、ソフィアも何もそこまでと笑ってましたから当時は・・・」
あー、そんな事言っていたかもなとユーリやユスティーナが頷いた、
「なので、エルマさんを今回は良い例として上げさせて頂きました、より実感できたかなと思います、やはり、ほら、数年かけなければ違いが明瞭とはなりませんし、それを実生活で実験するのは無理がありますから、なので、エルマさんは大変に貴重な実例となります、後程じっくり見せてもらって下さい、そういう事で皆さんエルマさんに拍手」
タロウは率先して手を叩き、エッと驚きつつも手を叩く女性達、エルマはもうと困り顔で、しかしゆっくりと頭を下げたようである、
「とまぁ、こんな感じで、肌に関する事の追記になりますね、このへんをしっかり押さえれば肌を若々しく保つ事が出来ると思います、美容にとっては最重要、あっ、勿論日々の手入れを怠ってはなりません、洗顔もですが、入浴も大事ですし、後程取り上げる湿気ですね、特に今の寒い時期は注意が必要ですし、何とかクリームもとても有効・・・なんですが、まぁ、正直どこまでやるか、やれるかは人それぞれ、さらにはその効果も人によって大きく変わると思います、色々試してもらって自分に合った美容方法を見つける事と、それを飽きずに続ける事が肝要なのかなと・・・うん、まぁ、そういう風に思います、何せ・・・私はほら、やったこと無いので」
タロウはアッハッハと笑い、コイツはーと睨みつける者多数、まぁ、そりゃそうなんだろうなとタロウを見つめて理解する者多数である、
「はい、では、以上が今日の一つ目の題目になりますね、次は・・・こちらからやりましょう、リーニーさんお願いします」
リーニーがいよいよかと顔を引き締め腰を上げる、そのまま教壇の隣りに立った、先程のエルマと同じ位置となる、
「えーと・・・以前パトリシア様にもお話しした件ですね、もうお聞き及びかと思いますが、実際に作成して着用してもらってます」
「楽しみだわ・・・」
パトリシアがニヤリと微笑む、ネーと微笑むウルジュラ、どうやらこれが今日の本題になると気合が入る御付きの者達、
「はい、じゃ、お願いします」
タロウがリーニーを促し、リーニーはコクリと頷き外套を脱いだ、わざわざ今日は大きめの外套を身に着けてきている、タロウがそうするように頼み、エレインやテラもそれがいいわねと同意済みで、街中を歩くときにも隠せるようにとの配慮もあった、いまだ王国にはこの一着しかない特別な服となる、リーニーはそれを披露する大役に興奮するどころか落ち着き払って見えた、大したもんだとタロウは思う、そして、
「まぁ・・・」
「スッキリしてるわね・・・」
「うん、カッコイイ・・・」
「リンドさんが言った通りです・・・」
「そうね、へー、なるほど・・・随分と細かく縫い合わせてるわね」
「そうだねー、大変そう」
「その下はどうなってるの?」
「あっ、その襟は外せるの?」
「まぁまぁ、ゆっくり説明しますから」
パトリシアとウルジュラの質問が飛び交い、ザワザワと騒ぎ出す女性達、リーニーはどうしようかとタロウを伺う、タロウが苦笑いで二人を諫めると、
「まずですね、これが立体縫製、という手法を使って縫いあげた衣服になります、理屈は難しくないです、身体に布を当てて身体の曲線に合わせて形作る、ただそれだけなのですが、こちらの衣服、それの型紙になるのがこちらです」
とタロウが目配せし、マフダとメイド達が上質紙を配り始める、それには一目ではとても衣服にはならなさそうな模様が描かれており、ん?と首を傾げる者多数、マフダはそうなるよなーとほくそ笑んでしまい、アッと思って顔面に力を込めた、この場、この状況に迎え入れられているだけで自分のような立場の者としては光栄な事であって、決して気を緩めるような事はあってはならない、先程も一歩引いてヒガサなるものを観察している、ここはメイドさん達と同じく控えるべき立場なのである、
「あっ、これはあれです、小さくしてありますんで、これをこのまま裁断しても着れませんので」
タロウがニコリと微笑む、ここが笑いどころと思ったが、誰も顔を上げずにジックリと型紙を見つめており、ありゃとリーニーを伺うタロウ、リーニーはエヘヘと愛想笑いを浮かべた、どうやらちゃんと聞いてくれていたらしい、すると、
「そんな事は分ります、で、これはどこのどの部分なの!!」
パトリシアがムキッとタロウを睨み上げる、
「はい、番号が振ってありまして、あっ、リーニーさん寒いかもだけど」
「はい、大丈夫です」
と上着を脱ぐリーニー、そしてブラウスの裾を腰から引き抜く、これはマフダとも話してそうした方がいいなと決めていた事である、型紙とブラウスの形、それをちゃんと合わせて確認した方が良いとの判断であった、
「あっ、悪いね、気を遣ってもらったか・・・」
タロウもすぐに気付いたようで、大丈夫ですと小さく答えるリーニー、タロウは、
「じゃ、分かりやすい所から、型紙にあります1番と2番ですね、それが、前の部分、中央でボタン留めにしている為、このような形になってます、脇の手前と肩の下あたりかなここまでが一枚って感じですね」
リーニーが見えやすいようにと手を広げ、食い入るように見つめる女性達、御付きの者達もこれはと白墨を動かしたようで、逆にサビナ達はすでにある程度把握している、持ち込んだ黒板と照らし合わせるように確認していた、
「で、なんですが、問題点として皆さんすぐに頭に浮かぶ点があると思います、サイズですね、大きさです、それを合わせるにはですが」
タロウがそのまま続ける、本格的になってきたとレアンやマルヘリートも目を輝かせ、こりゃ本当に一日かかるんじゃないかと目を細めてしまうユーリであった。
女性達が日傘の回りでキャーキャーやっているのをタロウは少し離れて眺めていると、カトカがスッと近寄り黒板を構える、
「ん、あっ、そうだね、それこそ男も女も外に出る時は絶対使ってる」
「えっ、男性も?」
「うん、あの人達強迫的に太陽光を嫌っているからね、でもねー、森の中に住んでるからまわりは大木ばかりなんだよ、だから・・・そこまでしなくてもーって思うんだけど、木漏れ日もヤダって言っててさ、そりゃ徹底してるなーって笑ったら睨まれた」
アッハッハとタロウは笑うもカトカはガリガリと黒板を鳴らし、
「あの布はなんですか?」
「ん?あっあれはシルクの一種だと思うよ、すんげーデカイ繭から糸をとってるんだ、綺麗な布でしょ、それに丈夫だしね」
「なるほど・・・あの持ち手とかも初めて見ましたけど」
「あっ、あれは竹っていう植物、こっちには無いよね」
「タケですか?」
「うん、王国内では見てないかな、帝国にはあったけど」
「木なんですか?」
「あー・・・厳密には木よりも草って感じで・・・いや・・・でも、あれはどう言えばいいんだろ・・・難しいな、竹って木なのかな草なのかな?植物は植物だよな・・・」
ハテと首を傾げるタロウ、よくよく考えてみれば竹とは実に不思議な植物である、地下茎で増え、花を咲かすのは数十年周期、樹木とするに難しく草とするにも巨大すぎ、さらには見事に他の植物を排斥するように生い茂る、タロウは帝国でタケノコを数本確保し、そのうち王国でも栽培しよう等と考えていたが、小規模であればまだしも気候が合って大繁殖しようものなら現状の植生を破壊しかねず、ここは考えて対応しないと駄目だなと自重していたりする、しかし、その竹そのものは実に便利な材となる、その用途は多岐に渡るであろう事は明白であり、それは軍事に限らず日常生活でも当然で、特に王国のこの文化であればあっという間に活用され広がる事であろうなと考えていた、
「なんですそれ?」
ムーとカトカがタロウを睨む、タロウであればもう少ししっかりと答えるものと思っていた、
「まぁ、そんなもん、世界にはね、便利なんだがよくわからんものが溢れてるって事でさ勘弁してくれ」
ニヤリと誤魔化すタロウである、カトカはモウと呟きつつも白墨を動かし、そこへ、エレインがスッと近寄る、
「すいません、もっとありますか?」
タロウを見上げるエレイン、
「ん?傘?ごめん、三本だけ」
「そんなー、絶対隠してますでしょー」
「そんな顔しても駄目だよ、だから・・・」
とタロウはフフッと鼻で笑い教壇に戻ると、パンパンと大きく手を叩く、ギロリと女性達の視線がタロウに刺さる、
「はい、じゃ、本題に戻りますね」
タロウはニコリと微笑む、本題とは?と怪訝そうにタロウを見つめる女性達、
「ほら、肌に関する件ですよ、それはあくまでその道具、なので・・・どうでしょう、一本はエレインさん、というか六花商会さんに渡して、似たような物を作ってもらいましょう、で、王都にも一本、北ヘルデルにも一本って事で、各地で作ってみてはどうですか?」
事前に考えていた事を口にするタロウである、実際そのうちブラスに頼んで作ってもらおうかなとは考えていた、しかし、ブラスもやたらと忙しくなっており、さらにはタロウ自身はそれほど必要としていなかった為後回しになっていたのだ、となればその開発も活用も含めて御婦人方にお任せしてしまうのが得策であろう、
「そう・・・ね・・・」
「確かに、うん、エレインさんどうなの?」
「はい、職人さんを集めれば」
「あの、ヘルデルでも作りたいです・・・」
「それはだって、布の提供はヘルデルになるでしょう」
「そうね、この形の布ってないわよね」
「あっ、それもそうね」
「となると、飾りと芯の部分になるかしら」
「それこそ職人次第だわね」
「服飾と木工細工を合わせる感じですよ」
「これは難しいわ」
タロウを無視して話し込む女性達、モウとタロウは口を尖らせ、
「はい、なので、そんな感じで良いですか?今日はまだまだあるのですから、取り合えずお席にお戻りください、それは閉じちゃいますね、本来は部屋の中で開くものでは無いですから」
タロウはまずはと近場のアフラが持っていた傘を受け取ってサッと閉じた、オウとこれにも驚く女性達、しかしすぐにエフェリーンとレアンが真似をしてあぁこうなるのかと納得したらしい、
「はい、でなんですが」
とタロウは手にした日傘をエレインに渡し、教壇に戻る、エレインはいいのかなとアフラとパトリシアを伺い、二人はコクリと頷いたようで、見ればエフェリーンが一本を、レアンが手にしたそれはレアン自らパトリシアの元へ持って来た、ありがとうと受け取るパトリシア、レアンはムフンと嬉しそうに微笑み席へと戻る、どうやらタロウの提案が受け入れられたらしい、レアンとしてはエレインが製作に取り掛かるとなれば自分達も関われる筈で、タロウの差配は納得いく事であったのだろう、
「以前にね、ソフィアが教えた何とかクリーム、あれもですし、太陽の光を避けるという生活習慣、さらには以前施術しましたお肌の手入れ、ムダ毛の処理とかもですね、それと先程もチラリと話した湿気もあるのですが、事程左様に肌を磨くもしくは管理するというのが美容にとってはとっても大事、髪は女の命、と、私の国ではいいますが、肌の白いは七難隠すとも私の国では言われています」
女性達が席に戻ったのを確認し、タロウが続けた、
「七難?ですか?」
すっかり口が軽くなったエフェリーンが即座に問いかける、
「はい、あれです別にね、七つの難、駄目な事があるって訳じゃなくて、肌が白くて美しいと、それだけで美人に見えるという意味あいですね」
「まぁ・・・随分ね」
「そうですね、でも、確かにその通りなんです、男性からみても肌の清潔感とか美しさ?それはもうその人の本質的な美しさなんだろうなと思いますし、女性から見てもそうなんじゃないかなと思います、やはり相手を見てまず大きく映るのは肌です、いくら目が大きいとか鼻筋が通っているとかいっても、それは一部に過ぎなくて、肌そのものの美しさ、そこに整った目鼻立ちがあればより美しく見える・・・それが大事だと思うのです、で、それを上手い事何とか誤魔化すのが・・・」
「化粧かしら?」
ユスティーナが口を挟む、
「はい、その通り、以前お伝えしました通り、ニコリーネさんが上手い事肌に合った色の顔料かな、を調色してもらいましたけど、あんな感じでアラを隠すのが化粧の大目的になるでしょうね、で、話しを戻すと、エルマさんについては、まぁ、御本人は不本意でしたでしょうけど肌をね、良い状態に保つ事が出来たということです」
タロウがニコリとエルマに微笑む、エルマも自席に戻っていたが、確かに不本意ではあったなと眉を顰めた、
「ですが、一つ注意点がありまして、こちら、あくまで現状維持が良い所かなと思います、あっ、日差しを避けるという手法ですね」
「あら・・・どういう意味?」
「はい、先程も軽く説明しましたが、日差しによる良くない刺激を抑えるだけになりまして、より艶やかになるとか、皺が減るとかそういう効果を望むのは・・・たぶん難しいかなと・・・」
「そういう事・・・」
「はい、そんな感じです、なので、エルマさんも10代の肌とまでは言えないんですよ、それがある意味で限界」
そうかもねと振り返りエルマを見つめる女性達、エルマもここはちゃんと見せるべきと背筋を伸ばしている、
「それと勿論ですが速攻性は低いです、数年経ってやっぱり違うなってのが分る感じだと思います、実際ソフィアもね、エルマさんの肌を見るまでは懐疑的でした」
アラッと視線を戻す一同、
「そりゃあれです、ソフィアもエルフさんの事は知ってますけど、あの人達みんな白いんですよ、もう病的に、なので、その違いが分らないほどでして、ソフィアも何もそこまでと笑ってましたから当時は・・・」
あー、そんな事言っていたかもなとユーリやユスティーナが頷いた、
「なので、エルマさんを今回は良い例として上げさせて頂きました、より実感できたかなと思います、やはり、ほら、数年かけなければ違いが明瞭とはなりませんし、それを実生活で実験するのは無理がありますから、なので、エルマさんは大変に貴重な実例となります、後程じっくり見せてもらって下さい、そういう事で皆さんエルマさんに拍手」
タロウは率先して手を叩き、エッと驚きつつも手を叩く女性達、エルマはもうと困り顔で、しかしゆっくりと頭を下げたようである、
「とまぁ、こんな感じで、肌に関する事の追記になりますね、このへんをしっかり押さえれば肌を若々しく保つ事が出来ると思います、美容にとっては最重要、あっ、勿論日々の手入れを怠ってはなりません、洗顔もですが、入浴も大事ですし、後程取り上げる湿気ですね、特に今の寒い時期は注意が必要ですし、何とかクリームもとても有効・・・なんですが、まぁ、正直どこまでやるか、やれるかは人それぞれ、さらにはその効果も人によって大きく変わると思います、色々試してもらって自分に合った美容方法を見つける事と、それを飽きずに続ける事が肝要なのかなと・・・うん、まぁ、そういう風に思います、何せ・・・私はほら、やったこと無いので」
タロウはアッハッハと笑い、コイツはーと睨みつける者多数、まぁ、そりゃそうなんだろうなとタロウを見つめて理解する者多数である、
「はい、では、以上が今日の一つ目の題目になりますね、次は・・・こちらからやりましょう、リーニーさんお願いします」
リーニーがいよいよかと顔を引き締め腰を上げる、そのまま教壇の隣りに立った、先程のエルマと同じ位置となる、
「えーと・・・以前パトリシア様にもお話しした件ですね、もうお聞き及びかと思いますが、実際に作成して着用してもらってます」
「楽しみだわ・・・」
パトリシアがニヤリと微笑む、ネーと微笑むウルジュラ、どうやらこれが今日の本題になると気合が入る御付きの者達、
「はい、じゃ、お願いします」
タロウがリーニーを促し、リーニーはコクリと頷き外套を脱いだ、わざわざ今日は大きめの外套を身に着けてきている、タロウがそうするように頼み、エレインやテラもそれがいいわねと同意済みで、街中を歩くときにも隠せるようにとの配慮もあった、いまだ王国にはこの一着しかない特別な服となる、リーニーはそれを披露する大役に興奮するどころか落ち着き払って見えた、大したもんだとタロウは思う、そして、
「まぁ・・・」
「スッキリしてるわね・・・」
「うん、カッコイイ・・・」
「リンドさんが言った通りです・・・」
「そうね、へー、なるほど・・・随分と細かく縫い合わせてるわね」
「そうだねー、大変そう」
「その下はどうなってるの?」
「あっ、その襟は外せるの?」
「まぁまぁ、ゆっくり説明しますから」
パトリシアとウルジュラの質問が飛び交い、ザワザワと騒ぎ出す女性達、リーニーはどうしようかとタロウを伺う、タロウが苦笑いで二人を諫めると、
「まずですね、これが立体縫製、という手法を使って縫いあげた衣服になります、理屈は難しくないです、身体に布を当てて身体の曲線に合わせて形作る、ただそれだけなのですが、こちらの衣服、それの型紙になるのがこちらです」
とタロウが目配せし、マフダとメイド達が上質紙を配り始める、それには一目ではとても衣服にはならなさそうな模様が描かれており、ん?と首を傾げる者多数、マフダはそうなるよなーとほくそ笑んでしまい、アッと思って顔面に力を込めた、この場、この状況に迎え入れられているだけで自分のような立場の者としては光栄な事であって、決して気を緩めるような事はあってはならない、先程も一歩引いてヒガサなるものを観察している、ここはメイドさん達と同じく控えるべき立場なのである、
「あっ、これはあれです、小さくしてありますんで、これをこのまま裁断しても着れませんので」
タロウがニコリと微笑む、ここが笑いどころと思ったが、誰も顔を上げずにジックリと型紙を見つめており、ありゃとリーニーを伺うタロウ、リーニーはエヘヘと愛想笑いを浮かべた、どうやらちゃんと聞いてくれていたらしい、すると、
「そんな事は分ります、で、これはどこのどの部分なの!!」
パトリシアがムキッとタロウを睨み上げる、
「はい、番号が振ってありまして、あっ、リーニーさん寒いかもだけど」
「はい、大丈夫です」
と上着を脱ぐリーニー、そしてブラウスの裾を腰から引き抜く、これはマフダとも話してそうした方がいいなと決めていた事である、型紙とブラウスの形、それをちゃんと合わせて確認した方が良いとの判断であった、
「あっ、悪いね、気を遣ってもらったか・・・」
タロウもすぐに気付いたようで、大丈夫ですと小さく答えるリーニー、タロウは、
「じゃ、分かりやすい所から、型紙にあります1番と2番ですね、それが、前の部分、中央でボタン留めにしている為、このような形になってます、脇の手前と肩の下あたりかなここまでが一枚って感じですね」
リーニーが見えやすいようにと手を広げ、食い入るように見つめる女性達、御付きの者達もこれはと白墨を動かしたようで、逆にサビナ達はすでにある程度把握している、持ち込んだ黒板と照らし合わせるように確認していた、
「で、なんですが、問題点として皆さんすぐに頭に浮かぶ点があると思います、サイズですね、大きさです、それを合わせるにはですが」
タロウがそのまま続ける、本格的になってきたとレアンやマルヘリートも目を輝かせ、こりゃ本当に一日かかるんじゃないかと目を細めてしまうユーリであった。
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王太子の婚約者ソフィアは、卒業パーティーで断罪された。 しかし、その顔に絶望はなかった。なぜなら、その「断罪劇」こそが、彼女の完璧な計画だったからだ。
彼女の魂は、前世で薬学研究に没頭し過労死した、日本の研究者。 王妃の座も権力闘争も、彼女には退屈な枷でしかない。 彼女が求めたのはただ一つ——誰にも邪魔されず、未知の植物を研究できる「アトリエ」だった。
追放先『霧深き森』は「死の土地」。 だが、チート能力【植物図鑑インターフェイス】を持つソフィアにとって、そこは未知の薬草が群生する、最高の「研究フィールド(ランクS)」だった!
石造りの廃屋を「アトリエ」に改造し、ガラクタから蒸留器を自作。村人を救い、薬師様と慕われ、理想のスローライフ(研究生活)が始まる。 だが、その平穏は長く続かない。 王都では、王宮薬師長の陰謀により、聖女の奇跡すら効かないパンデミック『紫死病』が発生していた。 ソフィアが開発した『特製回復ポーション』の噂が王都に届くとき、彼女の「研究成果」を巡る、新たな戦いが幕を開ける——。
【主な登場人物】
ソフィア・フォン・クライネルト 本作の主人公。元・侯爵令嬢。魂は日本の薬学研究者。 合理的かつ冷徹な思考で、スローライフ(研究)を妨げる障害を「薬学」で排除する。未知の薬草の解析が至上の喜び。
ギルバート・ヴァイス 王宮魔術師団・研究室所属の魔術師。 ソフィアの「科学(薬学)」に魅了され、助手(兼・共同研究者)としてアトリエに入り浸る知的な理解者。
アルベルト王太子 ソフィアの元婚約者。愚かな「正義」でソフィアを追放した張本人。王都の危機に際し、薬を強奪しに来るが……。
リリア 無力な「聖女」。アルベルトに庇護されるが、本物の災厄の前では無力な「駒」。
ロイド・バルトロメウス 『天秤と剣(スケイル&ソード)商会』の会頭。ソフィアに命を救われ、彼女の「薬学」の価値を見抜くビジネスパートナー。
【読みどころ】
「悪役令嬢追放」から始まる、痛快な「ざまぁ」展開! そして、知識チートを駆使した本格的な「薬学(ものづくり)」と、理想の「アトリエ」開拓。 科学と魔法が融合し、パンデミックというシリアスな災厄に立ち向かう、読み応え抜群の薬学ファンタジーをお楽しみください。
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
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