セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

今卓&

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本編

76話 王家と公爵家 その18

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「また・・・こんなものを・・・」

ブラスが呆れ顔で竹トンボをクルクルと手慰み、

「凄いな・・・楽しそう・・・」

羨まし気に振り返るバーレント、壁際に従者然と控えるデニスもその注意は子供達へ向けたまま逸らす事が出来ない、

「まぁ、それはほら、別に竹でなくても作れるだろ」

タロウがニヤリと微笑み背を丸めた、

「そうなのか?」

クロノスがこれは意外だとタロウを見つめる、

「おう、軽い木でも作れると思うぞ、強度は少し不安かもだけどな、その点竹は優秀だよね」

「ですね、うん、分かります」

「そうなのか?」

バーレントが不思議そうにブラスを伺い、そうなんだよとブラスは頷いた、男達とレインは炬燵を囲んで背を丸めており、その背後で子供達はキャッキャッと楽しそうに竹トンボに夢中である、タロウはただ飛ばすだけだとつまらんからと、テーブルを軽く整頓しその一つにぬいぐるみを置いた、そのぬいぐるみに一番近い場所に落とした者が勝ちという実に簡単なルールを設定した途端、子供達は躍起になって竹トンボを飛ばし始め、キャーキャーギャーギャーと飛び跳ねている、やはり竹トンボのような単純な遊びも競技性を付加した途端により面白く感じられるらしく、フロールがぬいぐるみにコツンと当てた時には極大の歓声が食堂を震わせている、

「あっ、で、本題いいですか?」

バーレントが申し訳なさそうに微笑む、先程デニスが久しぶりに工場に顔を出したと思えば、クロノスとタロウの仕事の依頼であるらしい、それは嬉しいとバーレントはすぐに足を向けようとするが、デニスがコッキーやら職人達に捕まり盛大にからかわれてしまい、デニスはデニスでさらに意地になって従者らしくするものだから皆爆笑してしまった、ほんの数日離れて暮らしただけなのである、デニスの変貌ぶりは目にしていたが、しかしそれはやはり付け焼刃と言ってよいもので、その本質までは変わらないし変えられるものでは無い、顔を真っ赤にしてプルプル震えるデニスを嬉しそうに茶化すコッキーと職人達、バーレントはほれ行くぞとその悪夢のような状況から実弟を救い出し寮へと足を向ければ、道中でブラスとばったり遭遇し、聞けばブラスも寮へ行く所だと言う、何故かと問えば手にした古ぼけた大工道具に視線を落とし、タロウさん程の人にはちゃんとした道具を使って欲しいんだよと大工らしい事を言う始末、バーレントはどういう事かと首を傾げるも何のことは無い、タロウが使っていた道具類が錆びついてあまりにも酷かった為に錆を落として研ぎ直したのだとか、それを届けに行く所だとの事で、であればと同行する事になっている、

「そだね、でだ、デニス君にも相談したんだけど・・・あー・・・ユーリ呼ぶか?」

「だな」

「ん、じゃ、ちょっと待ってな」

とタロウが腰を上げかけると、デニスが自分がと一歩進み出る、アッと振り返るタロウ、おう頼むとクロノスが返し、ハイッと気持ち良く階段へ向かうデニスである、

「あー・・・悪いね」

「構わん、今のあれの仕事だ」

「ですね、フフッ、嬉しい限りです」

バーレントがニコリと微笑み、大したもんだとブラスも眩しそうにデニスの背を見送る、

「やっぱりあれだな、お前さんは命令する事に慣れてるよな」

しみじみと呟くタロウ、

「なんだよそれは」

「生まれついての貴族様って事、平民はね、まず自分で動くか、命令するとしてもせいぜい子供か嫁さんか旦那にしか命令しないもんだ、いや、仕事場では別かな・・・」

「あー・・・それ分かります」

「ですねー」

「何を言っている」

クロノスは嫌そうに目を細めタロウとブラス、バーレントを順繰りと睨む、

「いや、そういうもんだって話だ、で、本題なんだけど」

とタロウが隣りの炬燵へ手を伸ばし数枚の黒板をヨッとまとめて移すと、さてここからだと気合を入れて黒板を取り出すバーレント、ブラスもまたどうせ変なものなのだろうと顔を顰めつつも背筋を正した、

「これが醸造器ってやつでね・・・」

とその目的と使い方を説明し始める、すぐにユーリとカトカとゾーイも食堂に下りて来た、問題はその三人も竹トンボに驚く所からとなる、めんどくせーなとクロノスが一喝し、確かにと渋々と打合せに集中する三人であった。



「となるとあれですか?もうこれのでかいやつがこっちにも北ヘルデルにもあるんですか・・・」

呆然とするバーレント、それは知らなかったと絶句するブラスである、

「まぁね、ほれ、フィロメナさんの所で飲んだ酒な、あれをどうしても作りたいってクロノスがうるさくてさ」

「うるさいとはなんだ」

ギッとタロウを睨むクロノス、

「うるせーだろうがよ、まぁ、俺もあれは好きだからだけどさ、で、そっちは金属製、リノルトさんに作らせようかと思ったんだが、まぁ、そっちはこれほど厳密な装置ではないからね、難しくないだろうし、なによりほれ、その酒蔵?そっちに任せてしまっているからね、下手に口出ししない方がいいかなって思ってね」

「・・・でしょうけど、アイツ悔しがりますよ・・・」

バーレントが眉を顰め、だなーとブラスも同意する、

「まぁ、そこは勘弁してよ、そういう巡り合わせってものもあるさ」

タロウは適当に流す事にして、そういわれたら黙るしかないブラスとバーレントであった、

「で、作れるの?」

ユーリが黒板を確認しながら口を開く、三階でデニスと打合せした時にはガラスの容器類は当然難しくないが、細い管については一考が必要であろうとの事であった、その一考の為にバーレントが呼び出されている状況となる、

「はい、何とかと思いますが、すいません、少し時間が欲しいです、で・・・うん、どうでしょうタロウさん、この細い管は理解できるのですが、グルグルとこう螺旋にするのは絶対必要ですか?」

「ん-・・・やっぱりそこ?」

「はい、目的を考えますと・・・でも、そっか、距離が必要なのかな・・・」

「そうなんだよ、で、出口はあくまで下方でね、となるとこんな感じにグネグネにして、出来ればこれに流水を当てたいんだな、もしくは氷」

「流水に氷ですか?」

「うん、湯気を冷やして水に戻すにはね、冷たくしてあげる必要があって、流水で持って冷やしてあげるって感じかな、氷でもいいんだけど、多分流水の方がいいのかなー・・・何も無くても良いと言えばいいんだろうけどあれば尚良しって感じ、このぐねぐねがまるっと別のガラス容器に納まる感じで・・・上から水を流し入れる・・・いや、そこまでやれば別にあれか流水じゃなくてもいいかな、氷水につける感じになるか・・・想像できる?」

「はい、わかります・・・なるほど、そうなると・・・デニス、どう思う?」

バーレントが顔を上げる、その先には壁際で背を正す実弟の姿があり、その目はしっかりとテーブル上の黒板に注がれている、

「ハッ・・・いや、えっと・・・」

反射的に従者として答えてしまうデニス、しかし、相手は兄である、違うかなと瞬時に口調を変えるもクロノスの手前それも違うと軽く混乱したようで、

「あー・・・構わんぞ、デニス、というかお前も座れ、堅苦しくてかなわん」

クロノスがギリッとデニスを睨み上げる、

「いえ、その、そういう訳には・・・」

「・・・これだから・・・まったく・・・面白いだろ?こいつら絶対服従だとか何とか言っておいて、平気で命令を無視しやがる、いや、俺もそうだったから分かるんだが、こういう不合理は今一つ好かん」

ムスッとクロノスが顔を顰め、そう言われてもと悲しそうに顔を顰めるデニス、

「そういうもんだろ、デニス君を虐めちゃいかん」

「虐めて無いだろ」

「虐めてるでしょー」

「ですよー、ねー」

カトカに優しく微笑みかけられ、思わず頷きそうになるデニス、しかし、そこは違う違うと首を振る、

「なんでもいいよ、で、デニス君はどう思う?」

タロウが先を促した、

「はい、先程もお話した感じです、細い管は作れると思いますが、それを捻じ曲げるのはどうしたもんだかと思います、恐らくですが管の厚みを維持するのが難しくなりますし・・・歪みも生じます、中が繋がっていればそれでいいって事でしたけど、その湯気がちゃんと通るかどうかも不安です、なので・・・恐らくですがかなり太いものであれば作成できると考えます」

背筋を正しスラスラと答えるデニス、どうやらバーレントを呼びに行く間もタロウの依頼を実現できるかどうかと思案していたらしい、やはりそこは立派な職人なのであった、

「その通りだな・・・うん、一度やってみますが・・・その・・・タロウさんの理想通りとはいかないかもです・・・」

バーレントも苦しそうに口を開く、

「まぁ、それはそれでいいよ、取り合えず出来る所までやってもらって、そしたらそしたでまた色々やってみようぜ」

「・・・いいですか?」

「そりゃだって、そういうもんだもん、これだって初めて作る代物なんだから最初から完成させる事なんて難しいよ」

「そうですけど・・・」

「いや、その通りだよ」

ブラスが腕を組んでムーと難しい顔である、タロウには似たような事を昨日も言われている、こうして図面上ではなく、実際の物を目にしてもその再現となるとやはり難しく、昨日はリノルトと共にあーだこーだと相談しながらの帰途になったが、取り合えずやってみるしかないとの結論しか出なかった、

「だね、まぁ、ちょっと色々やってみてよ、大丈夫、ガラスペンなんて細かい物を作れるんだから、何とかなるよ」

「また、そんな・・・いや、はい、やってみます、デニスにもコッキーにも負けられませんから」

フンと鼻息を荒くするバーレント、実際の所細かい細工ものについては妹と弟に技術的に負けていると感じていた、兄としてはここが踏ん張りどころかもしれないと背筋を正す、

「その意気だ・・・で、他には・・・」

何かあったかなとタロウがユーリを伺う、じゃとユーリが引き継いだ所に、来客のようで、

「母ちゃんだー」

とブロースが玄関に走った、もうそんな時間かと顔を上げる大人達、ソフィアが厨房から出てきて玄関へ向かい、何やら話している間にブロースが戻ってきて、

「帰るー、タケトンボもらっていいのー」

と叫んだ、ムッとブロースを睨むフロール、

「おう、いいぞ、ただし、気をつけて遊べよ」

ニヤリと微笑むタロウに、ありがとーと叫ぶブロース、フロールも嬉しそうに竹トンボを胸に抱き、外套を取りに向かう、

「あっ、街中で飛ばすなよ、誰かに取られるかもだからな」

ブラスがすぐに注意する、

「うん、家でやるー、じーちゃんと遊ぶー」

ブロースはニコニコと微笑みフロールの差し出した外套に腕を通した、それでいいと微笑むブラス、元気だわねーと女性陣も頬を綻ばせた、そうしてブロースとフロールが帰途につき、もうそんな時間かと思いつつ打合せを再開する大人達、そこへソフィアが、

「タロウさんね、そろそろ頼める?」

と声をかけた、

「おう、行く」

「あっ、見せろ」

何故かクロノスも腰を上げた、

「で、ホントに美味いんだろうな」

「まずなー・・・あっ、ブラスさんね、バーレントさんも、どうだ、少し飲んでくか?」

ニヤリとタロウが振り返り、エッと顔を上げる二人、ユーリもアン?と訝し気にタロウを睨みあげる、

「おう、そうしろ、デニス、城に戻りが遅くなると伝えてくれ、ついでにイフナースを呼んで来い、リンドも戻ってるだろうから声をかけろ、それとお前もだ、付き合え」

これは命令だとばかりにクロノスが睨みつけ、デニスも事情を把握していない為、ハッと背筋を伸ばすも、いいのかな?と首を傾げつつ階段に向かった、リンドさんにも声をかけるとなれば指示を仰ぐのが正しいであろうとすぐに切り替える、

「あっ、待て」

しかしすぐさまクロノスに止められるデニス、ビタリと足を止めて振り返ると、

「リンドに聞いて酒を持ってこい、俺の執務室のやつな、とっておきのヤツと言えば分かる」

フンと鼻息の荒いクロノス、ハッと再び答え、ダダッと階段を駆け上がるデニス、

「ふふん、なんだお前、随分と太っ腹だな」

「まずな、酒は俺が保証する、問題はそっちだ」

「ほう・・・言ったな」

ムスリと顔を顰めるクロノスとニヤニヤと微笑むタロウが厨房に入り、なんだそりゃと見送るしかない大人達であった。
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