5 / 28
5
しおりを挟む
平和とは、かくも得難いものであったか。
ルシアンは、修繕されたテラス(キース作)で、湯気の立つ紅茶(キースが汲んだ水を使用)を啜りながら、しみじみと思っていた。
別荘生活三日目。
廃屋同然だった屋敷は、謎の隣人キースの超人的なDIY能力によって、急速に「住める城」へと進化していた。
雨漏りは止まり、隙間風は消え、床は磨き上げられ、庭の雑草すら綺麗に刈り取られている。
「……快適すぎる」
ルシアンは独り言ちた。
本来なら、不便な生活の中で孤独を噛み締める予定だったのだが、結果的に「至れり尽くせりの孤独」という、貴族でも味わえないような贅沢な時間を過ごしている。
キースは相変わらず神出鬼没だ。
朝食を置いていき、昼間はどこかで作業をし(音は最小限)、夕方には薪を割って去っていく。
会話は一日三言程度。
『飯』『直した』『邪魔だ(作業の)』。
これだけだ。
ルシアンにとって、彼はもはや空気清浄機や全自動掃除機と同じカテゴリに分類されつつあった。つまり、いてくれると助かるが、情緒的な交流は不要な存在だ。
(このまま、世界から忘れ去られたい……)
ルシアンがページをめくろうとした、その時だった。
バササササッ!!
空から何かが降ってきた。
「きゃっ!?」
ルシアンは反射的に本で頭を守る。
テーブルの上に降り立ったのは、一羽の猛禽類――王家の伝書鷹だった。
その足には、金色の封蝋が施された筒が括り付けられている。
鷹は「ギョエーッ!」と、静寂を切り裂くような汚い声を上げた。
「……静かにしなさい」
ルシアンは眉間に皺を寄せた。
王家の鷹。
嫌な予感しかしない。
筒から手紙を取り出すと、そこには見覚えのある、無駄に装飾の多い筆跡で『愛しき迷える子羊、ルシアンへ』と書かれていた。
「…………」
ルシアンの体温が二度は下がった。
差出人は見るまでもない。
アラン・クリフォード第一王子だ。
(読まなくていいわよね? どうせろくなこと書いてないし)
ルシアンはそのまま筒に戻そうとしたが、鷹が鋭い嘴で「読め」とばかりにつついてくる。
「……わかったわよ。読めばいいんでしょう、読めば」
彼女は渋々、手紙を開いた。
瞬間、強烈な薔薇の香水の匂いが漂ってきた。
「くさっ……!」
森の清浄な空気が、人工的な香りで汚染される。
ルシアンはハンカチで鼻を押さえながら、文面に目を通した。
『親愛なるルシアン。
君が泣きながら王都を去ったと聞いて、私の心は痛んでいる(嘘ではないぞ!)。
あのボロ屋敷で、君は今頃、寒さと孤独に震えていることだろう。
夜の闇に怯え、私の温もりを恋しく思っている姿が目に浮かぶようだ。
だが、安心してほしい。私は寛大だ。
もし君が、今すぐ王都に戻り、ミナに土下座をして謝罪し、私の靴にキスをして許しを乞うならば、側室の末席くらいには加えてやらなくもない。
感謝するがいい。これはラストチャンスだ。
さあ、急いで返事を書け。そして愛の言葉を綴るのだ!
追伸:ミナが「お姉様が可哀想だから、私のお古のドレスを恵んであげたい」と言っている。彼女の慈悲深さに涙するがいい。
未来の王、アランより』
読み終わるのに要した時間は三十秒。
ルシアンの感想は一文字だった。
「……薪(まき)」
それ以外の用途が思いつかない。
内容の全てが、ルシアンの神経を逆撫でするように構成されている。
孤独に震えている? いいえ、快適です。
温もりが恋しい? キースが設置した最新式の薪ストーブの方が優秀です。
戻ってこい? 死んでも御免です。
ルシアンは立ち上がると、リビングの暖炉へと向かった。
そこには、ちょうど火が消えかかっている熾火(おきび)があった。
「ちょうどよかったわ。少し肌寒くなってきたところだったの」
ルシアンは手紙を丸めた。
躊躇なく。
慈悲もなく。
そして、ポイッと暖炉の中へ放り込んだ。
ボッ。
香水の染み込んだ高級紙は、実によく燃えた。
薔薇の香りが焦げ臭い匂いに変わり、アランの綴った愛(自己愛)の言葉が灰へと変わっていく。
「……ふぅ。これで少しは暖まるかしら」
ルシアンが手を翳していると、背後で気配がした。
「……!」
いつものことながら、音もなく現れたキースが立っていた。
彼は暖炉の中の燃えカスと、ルシアンの顔を交互に見ている。
「……手紙か」
「ええ。不要なゴミが届いたので、燃料としてリサイクルしました」
「……王家の紋章が見えたが」
「見間違いではありませんか? あれはただの、燃えるゴミです」
ルシアンは真顔で言い切った。
国家反逆罪スレスレの発言だが、この森の中ではルシアンが法だ。
キースは「ふっ」と短く息を吐いた。
笑ったのだ。
「……良い判断だ」
彼はそう言うと、懐から分厚い封筒を取り出した。
「……ついでだ。これも燃やせ」
「え? それは?」
「……俺宛の、見合い写真だ」
「ええっ!?」
ルシアンは驚愕した。
「貴方、見合いの話があるのですか? しかも、こんなに大量に?」
封筒の厚みからして、十人や二十人ではない。
「……うるさい親戚が送ってくる。……迷惑だ」
キースは心底嫌そうな顔をした。
「俺は、興味がない」
「興味がないって、結婚にですか?」
「……他人にだ」
彼はルシアンと同じ人種だった。
キースは封筒ごと、暖炉に投げ込んだ。
ボオオオオオッ!!
アランの手紙とは比較にならないほどの火力で、見合い写真の束が炎上する。
「……あったかいな」
「……ええ、そうですね」
二人は並んで、燃え盛る炎を見つめた。
元婚約者の戯言と、無数の令嬢たちの希望が、物理的な熱エネルギーへと変換されていく。
シュールな光景だった。
しかし、不思議な連帯感がそこにはあった。
「あの、キースさん」
「……ん」
「貴方も、一人が好きなのですか?」
ルシアンが問いかけると、キースは炎を見つめたまま、静かに頷いた。
「……煩わしいのは嫌いだ。言葉は誤解を生む。人は裏切る。……静寂だけが、嘘をつかない」
「……名言ですね」
ルシアンは深く同意した。
「私もそうです。言葉は騒音でしかない。沈黙こそが至高のコミュニケーションです」
「……ああ」
キースが視線をルシアンに移す。
その瞳は、やはり静かだった。
「……だが」
「はい?」
「……お前との沈黙は、悪くない」
「…………っ」
ルシアンは言葉に詰まった。
それは、彼女が昨日感じたことと同じだったからだ。
彼がそばにいても、息苦しくない。
彼が立てる音は、不快ではない。
むしろ、彼がいることで、静寂がより深くなるような気がする。
(な、なによ……。調子が狂うわ)
ルシアンが顔を赤らめて俯いていると、窓の外から再び「ギョエーッ!」という鳴き声が聞こえた。
あの鷹だ。
返事を待って、まだ待機していたらしい。
「……しつこい鳥だ」
キースが低い声で呟く。
「追い払いましょうか。シッシッ、とやれば帰るかしら」
「……貸せ」
キースは窓を開けると、鷹に向かって手を伸ばした。
鷹は鋭い爪で威嚇しようとしたが、キースが放った『殺気』――のような何かを感じ取り、ピタリと動きを止めた。
キースは鷹の足の筒に、暖炉の底から拾った『灰』を詰め込んだ。
アランの手紙の成れの果てだ。
「……これを、持って行け」
短く命じて、鷹を空へ放り投げる。
鷹は恐怖に駆られたように、一目散に王都の方角へと飛び去っていった。
「……あれで、通じるかしら」
ルシアンが心配すると、キースはニヤリと笑った(ような気がした)。
「……『返事は灰になった』。つまり『消え失せろ』という意味だ。……伝わる」
「貴方、意外と過激ですね……」
「……お前の敵は、俺の敵だ」
「え?」
「……なんでもない」
キースはそそくさと窓を閉め、また無表情に戻ってしまった。
「夕飯は、シチューだ」
「あ、はい。……って、また作ってくれるんですか?」
「……作りすぎた」
嘘だ。
一人暮らしでシチューを作りすぎるなんて、そんなベタな言い訳があるか。
だが、ルシアンは追求しなかった。
暖炉の火は暖かく、外は静かで、そして今夜は美味しいシチューが待っている。
アランの手紙がもたらした騒音は、結果として二人の距離を(物理的にも精神的にも)少しだけ縮める薪となったのだった。
*
一方、王都の王宮。
アラン王子の元に、鷹が帰還した。
「おお! 帰ってきたか! さぞかし涙で濡れた手紙が入っていることだろう!」
アランは満面の笑みで筒を開け、中身を手のひらにぶちまけた。
バサッ。
出てきたのは、黒い灰と、燃え残った紙切れ一枚。
そこには、『薪』とルシアンが呟いた時の想いがこもった、焦げた匂いだけが残っていた。
「…………は?」
アランの顔が引きつる。
「こ、これは……なんという……情熱的な……!!」
「殿下?」
「見ろミナ! 彼女は感動のあまり、言葉にならず、身を焦がすような想いを『灰』に託したのだ! つまり、彼女の心は私への愛で燃え尽きているということだ!」
「ええー……ポジティブすぎません?」
ミナですら引いていた。
「よし、次は直接迎えに行ってやろう! 待っていろルシアン! この私が、その激しい愛を受け止めてやる!」
勘違いは、時に山火事のように燃え広がる。
森の平穏が本当の意味で崩壊するのは、もう少し先の話である。
ルシアンは、修繕されたテラス(キース作)で、湯気の立つ紅茶(キースが汲んだ水を使用)を啜りながら、しみじみと思っていた。
別荘生活三日目。
廃屋同然だった屋敷は、謎の隣人キースの超人的なDIY能力によって、急速に「住める城」へと進化していた。
雨漏りは止まり、隙間風は消え、床は磨き上げられ、庭の雑草すら綺麗に刈り取られている。
「……快適すぎる」
ルシアンは独り言ちた。
本来なら、不便な生活の中で孤独を噛み締める予定だったのだが、結果的に「至れり尽くせりの孤独」という、貴族でも味わえないような贅沢な時間を過ごしている。
キースは相変わらず神出鬼没だ。
朝食を置いていき、昼間はどこかで作業をし(音は最小限)、夕方には薪を割って去っていく。
会話は一日三言程度。
『飯』『直した』『邪魔だ(作業の)』。
これだけだ。
ルシアンにとって、彼はもはや空気清浄機や全自動掃除機と同じカテゴリに分類されつつあった。つまり、いてくれると助かるが、情緒的な交流は不要な存在だ。
(このまま、世界から忘れ去られたい……)
ルシアンがページをめくろうとした、その時だった。
バササササッ!!
空から何かが降ってきた。
「きゃっ!?」
ルシアンは反射的に本で頭を守る。
テーブルの上に降り立ったのは、一羽の猛禽類――王家の伝書鷹だった。
その足には、金色の封蝋が施された筒が括り付けられている。
鷹は「ギョエーッ!」と、静寂を切り裂くような汚い声を上げた。
「……静かにしなさい」
ルシアンは眉間に皺を寄せた。
王家の鷹。
嫌な予感しかしない。
筒から手紙を取り出すと、そこには見覚えのある、無駄に装飾の多い筆跡で『愛しき迷える子羊、ルシアンへ』と書かれていた。
「…………」
ルシアンの体温が二度は下がった。
差出人は見るまでもない。
アラン・クリフォード第一王子だ。
(読まなくていいわよね? どうせろくなこと書いてないし)
ルシアンはそのまま筒に戻そうとしたが、鷹が鋭い嘴で「読め」とばかりにつついてくる。
「……わかったわよ。読めばいいんでしょう、読めば」
彼女は渋々、手紙を開いた。
瞬間、強烈な薔薇の香水の匂いが漂ってきた。
「くさっ……!」
森の清浄な空気が、人工的な香りで汚染される。
ルシアンはハンカチで鼻を押さえながら、文面に目を通した。
『親愛なるルシアン。
君が泣きながら王都を去ったと聞いて、私の心は痛んでいる(嘘ではないぞ!)。
あのボロ屋敷で、君は今頃、寒さと孤独に震えていることだろう。
夜の闇に怯え、私の温もりを恋しく思っている姿が目に浮かぶようだ。
だが、安心してほしい。私は寛大だ。
もし君が、今すぐ王都に戻り、ミナに土下座をして謝罪し、私の靴にキスをして許しを乞うならば、側室の末席くらいには加えてやらなくもない。
感謝するがいい。これはラストチャンスだ。
さあ、急いで返事を書け。そして愛の言葉を綴るのだ!
追伸:ミナが「お姉様が可哀想だから、私のお古のドレスを恵んであげたい」と言っている。彼女の慈悲深さに涙するがいい。
未来の王、アランより』
読み終わるのに要した時間は三十秒。
ルシアンの感想は一文字だった。
「……薪(まき)」
それ以外の用途が思いつかない。
内容の全てが、ルシアンの神経を逆撫でするように構成されている。
孤独に震えている? いいえ、快適です。
温もりが恋しい? キースが設置した最新式の薪ストーブの方が優秀です。
戻ってこい? 死んでも御免です。
ルシアンは立ち上がると、リビングの暖炉へと向かった。
そこには、ちょうど火が消えかかっている熾火(おきび)があった。
「ちょうどよかったわ。少し肌寒くなってきたところだったの」
ルシアンは手紙を丸めた。
躊躇なく。
慈悲もなく。
そして、ポイッと暖炉の中へ放り込んだ。
ボッ。
香水の染み込んだ高級紙は、実によく燃えた。
薔薇の香りが焦げ臭い匂いに変わり、アランの綴った愛(自己愛)の言葉が灰へと変わっていく。
「……ふぅ。これで少しは暖まるかしら」
ルシアンが手を翳していると、背後で気配がした。
「……!」
いつものことながら、音もなく現れたキースが立っていた。
彼は暖炉の中の燃えカスと、ルシアンの顔を交互に見ている。
「……手紙か」
「ええ。不要なゴミが届いたので、燃料としてリサイクルしました」
「……王家の紋章が見えたが」
「見間違いではありませんか? あれはただの、燃えるゴミです」
ルシアンは真顔で言い切った。
国家反逆罪スレスレの発言だが、この森の中ではルシアンが法だ。
キースは「ふっ」と短く息を吐いた。
笑ったのだ。
「……良い判断だ」
彼はそう言うと、懐から分厚い封筒を取り出した。
「……ついでだ。これも燃やせ」
「え? それは?」
「……俺宛の、見合い写真だ」
「ええっ!?」
ルシアンは驚愕した。
「貴方、見合いの話があるのですか? しかも、こんなに大量に?」
封筒の厚みからして、十人や二十人ではない。
「……うるさい親戚が送ってくる。……迷惑だ」
キースは心底嫌そうな顔をした。
「俺は、興味がない」
「興味がないって、結婚にですか?」
「……他人にだ」
彼はルシアンと同じ人種だった。
キースは封筒ごと、暖炉に投げ込んだ。
ボオオオオオッ!!
アランの手紙とは比較にならないほどの火力で、見合い写真の束が炎上する。
「……あったかいな」
「……ええ、そうですね」
二人は並んで、燃え盛る炎を見つめた。
元婚約者の戯言と、無数の令嬢たちの希望が、物理的な熱エネルギーへと変換されていく。
シュールな光景だった。
しかし、不思議な連帯感がそこにはあった。
「あの、キースさん」
「……ん」
「貴方も、一人が好きなのですか?」
ルシアンが問いかけると、キースは炎を見つめたまま、静かに頷いた。
「……煩わしいのは嫌いだ。言葉は誤解を生む。人は裏切る。……静寂だけが、嘘をつかない」
「……名言ですね」
ルシアンは深く同意した。
「私もそうです。言葉は騒音でしかない。沈黙こそが至高のコミュニケーションです」
「……ああ」
キースが視線をルシアンに移す。
その瞳は、やはり静かだった。
「……だが」
「はい?」
「……お前との沈黙は、悪くない」
「…………っ」
ルシアンは言葉に詰まった。
それは、彼女が昨日感じたことと同じだったからだ。
彼がそばにいても、息苦しくない。
彼が立てる音は、不快ではない。
むしろ、彼がいることで、静寂がより深くなるような気がする。
(な、なによ……。調子が狂うわ)
ルシアンが顔を赤らめて俯いていると、窓の外から再び「ギョエーッ!」という鳴き声が聞こえた。
あの鷹だ。
返事を待って、まだ待機していたらしい。
「……しつこい鳥だ」
キースが低い声で呟く。
「追い払いましょうか。シッシッ、とやれば帰るかしら」
「……貸せ」
キースは窓を開けると、鷹に向かって手を伸ばした。
鷹は鋭い爪で威嚇しようとしたが、キースが放った『殺気』――のような何かを感じ取り、ピタリと動きを止めた。
キースは鷹の足の筒に、暖炉の底から拾った『灰』を詰め込んだ。
アランの手紙の成れの果てだ。
「……これを、持って行け」
短く命じて、鷹を空へ放り投げる。
鷹は恐怖に駆られたように、一目散に王都の方角へと飛び去っていった。
「……あれで、通じるかしら」
ルシアンが心配すると、キースはニヤリと笑った(ような気がした)。
「……『返事は灰になった』。つまり『消え失せろ』という意味だ。……伝わる」
「貴方、意外と過激ですね……」
「……お前の敵は、俺の敵だ」
「え?」
「……なんでもない」
キースはそそくさと窓を閉め、また無表情に戻ってしまった。
「夕飯は、シチューだ」
「あ、はい。……って、また作ってくれるんですか?」
「……作りすぎた」
嘘だ。
一人暮らしでシチューを作りすぎるなんて、そんなベタな言い訳があるか。
だが、ルシアンは追求しなかった。
暖炉の火は暖かく、外は静かで、そして今夜は美味しいシチューが待っている。
アランの手紙がもたらした騒音は、結果として二人の距離を(物理的にも精神的にも)少しだけ縮める薪となったのだった。
*
一方、王都の王宮。
アラン王子の元に、鷹が帰還した。
「おお! 帰ってきたか! さぞかし涙で濡れた手紙が入っていることだろう!」
アランは満面の笑みで筒を開け、中身を手のひらにぶちまけた。
バサッ。
出てきたのは、黒い灰と、燃え残った紙切れ一枚。
そこには、『薪』とルシアンが呟いた時の想いがこもった、焦げた匂いだけが残っていた。
「…………は?」
アランの顔が引きつる。
「こ、これは……なんという……情熱的な……!!」
「殿下?」
「見ろミナ! 彼女は感動のあまり、言葉にならず、身を焦がすような想いを『灰』に託したのだ! つまり、彼女の心は私への愛で燃え尽きているということだ!」
「ええー……ポジティブすぎません?」
ミナですら引いていた。
「よし、次は直接迎えに行ってやろう! 待っていろルシアン! この私が、その激しい愛を受け止めてやる!」
勘違いは、時に山火事のように燃え広がる。
森の平穏が本当の意味で崩壊するのは、もう少し先の話である。
291
あなたにおすすめの小説
婚約破棄から50年後
あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで、王子が婚約者に婚約破棄を宣言した。王子は真に愛する女性と結ばれ、めでたしめでたし。
そして50年後、王子の孫の王子は、婚約破棄された女性の孫と婚約する事に。そこで明かされた婚約破棄の真実とは。
これって私の断罪じゃなくて公開プロポーズですか!?
桃瀬ももな
恋愛
「カタリーナ・フォン・シュバルツ! 貴様との婚約を破棄し、国外追放に処す!」
卒業パーティーの最中、第一王子アルフォンスから非情な宣告を突きつけられた公爵令嬢カタリーナ。
生まれつきの鋭い目つきと、緊張すると顔が強張る不器用さゆえに「悪役令嬢」として孤立していた彼女は、ついに訪れた「お決まりの断罪劇」に絶望……するかと思いきや。
(……あれ? 殿下、いま小さく「よっしゃあ!」ってガッツポーズしませんでした!?)
『外見しか見なかったあなたへ。私はもう、選ぶ側です』
鷹 綾
恋愛
「お前のようなガキは嫌いだ」
幼く見える容姿を理由に、婚約者ライオネルから一方的に婚約を破棄された
公爵令嬢シルフィーネ・エルフィンベルク。
その夜、嫉妬に狂った伯爵令嬢に突き落とされ、
彼女は一年もの間、意識不明の重体に陥る――。
目を覚ました彼女は、大人びた美貌を手に入れていた。
だが、中身は何ひとつ変わっていない。
にもかかわらず、
かつて彼女を「幼すぎる」と切り捨てた元婚約者は態度を一変させ、
「やり直したい」とすり寄ってくる。
「見かけが変わっても、中身は同じです。
それでもあなたは、私の外見しか見ていなかったのですね?」
静かにそう告げ、シルフィーネは過去を見限る。
やがて彼女に興味を示したのは、
隣国ノルディアの王太子エドワルド。
彼が見ていたのは、美貌ではなく――
対話し、考え、異論を述べる彼女の“在り方”だった。
これは、
外見で価値を決められた令嬢が、
「選ばれる人生」をやめ、
自分の意思で未来を選び直す物語。
静かなざまぁと、
対等な関係から始まる大人の恋。
そして――
自分の人生を、自分の言葉で生きるための物語。
---
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
10回目の婚約破棄。もう飽きたので、今回は断罪される前に自分で自分を追放します。二度と探さないでください(フリではありません)
放浪人
恋愛
「もう、疲れました。貴方の顔も見たくありません」
公爵令嬢リーゼロッテは、婚約者である王太子アレクセイに処刑される人生を9回繰り返してきた。 迎えた10回目の人生。もう努力も愛想笑いも無駄だと悟った彼女は、断罪イベントの一ヶ月前に自ら姿を消すことを決意する。 王城の宝物庫から慰謝料(国宝)を頂き、書き置きを残して国外逃亡! 目指せ、安眠と自由のスローライフ!
――のはずだったのだが。
「『顔も見たくない』だと? つまり、直視できないほど私が好きだという照れ隠しか!」 「『探さないで』? 地の果てまで追いかけて抱きしめてほしいというフリだな!」
実は1周目からリーゼロッテを溺愛していた(が、コミュ障すぎて伝わっていなかった)アレクセイ王子は、彼女の拒絶を「愛の試練(かくれんぼ)」と超ポジティブに誤解! 国家権力と軍隊、そしてS級ダンジョンすら踏破するチート能力を総動員して、全力で追いかけてきた!?
物理で逃げる最強令嬢VS愛が重すぎる勘違い王子。 聖女もドラゴンも帝国も巻き込んだ、史上最大規模の「国境なき痴話喧嘩」が今、始まる!
※表紙はNano Bananaで作成しています
君といるのは疲れると言われたので、婚約者を追いかけるのはやめてみました
水谷繭
恋愛
メイベル・ホワイトは目立たない平凡な少女で、美人な姉といつも比べられてきた。
求婚者の殺到する姉とは反対に、全く縁談のなかったメイベル。
そんなある日、ブラッドという美少年が婚約を持ちかけてくる。姉より自分を選んでくれたブラッドに感謝したメイベルは、彼のために何でもしようとひたすら努力する。
しかしそんな態度を重いと告げられ、君といると疲れると言われてしまう。
ショックを受けたメイベルは、ブラッドばかりの生活を改め、好きだった魔法に打ち込むために魔術院に入ることを決意するが……
◆なろうにも掲載しています
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる